計画実行・監視専門調査会(第12回)議事録

  • 日時:令和4年3月2日(水)13:00~15:00
  • 場所:オンライン会議システム(Zoomウェビナー)にて開催
  1. 開会
  2. 議題
    女性の視点も踏まえた税制や社会保障制度等の検討
  3. 閉会

【配布資料】

資料1
女性の視点も踏まえた税制や社会保障制度等の検討(内閣府説明資料) [PDF形式:2,336KB]別ウインドウで開きます
資料2
配偶者控除について(財務省説明資料) [PDF形式:686KB]別ウインドウで開きます
資料3
第3号被保険者制度について(厚生労働省説明資料) [PDF形式:2,276KB]別ウインドウで開きます
資料4
民間企業における「配偶者手当」について(厚生労働省説明資料) [PDF形式:1,160KB]別ウインドウで開きます
資料5
国家公務員の配偶者に係る扶養手当の現状と今後の方向性について(人事院説明資料) [PDF形式:477KB]別ウインドウで開きます
資料6
全世代型社会保障構築会議について(内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局説明資料) [PDF形式:352KB]別ウインドウで開きます
参考資料1
計画実行・監視専門調査会委員名簿 [PDF形式:109KB]別ウインドウで開きます
参考資料2
女性活躍・男女共同参画の重点方針2021(令和3年6月16日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定) [PDF形式:1,377KB]別ウインドウで開きます

【出席者】

会長   
佐藤 博樹  
中央大学大学院戦略経営研究科教授
委員   
石黒 不二代 
ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長兼CEO
同    
井上 久美枝 
日本労働組合総連合会総合政策推進局長
同    
大崎 麻子  
関西学院大学客員教授
同    
窪田 充見  
神戸大学大学院法学研究科教授
同    
佐々木 成江 
名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻准教授、お茶の水女子大学ヒューマンライフイノベーション研究所准教授
同    
治部 れんげ 
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
同    
白波瀬 佐和子
東京大学大学院人文社会系研究科教授
同    
徳倉 康之  
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、株式会社ファミーリエ代表取締役社長
同    
内藤 佐和子 
徳島市長
同    
山口 慎太郎 
東京大学大学院経済学研究科教授
同    
山田 秀雄  
山田・尾﨑法律事務所代表弁護士
内閣府  
野田 聖子  
特命担当大臣(男女共同参画)
同    
林 伴子   
男女共同参画局長
同    
吉住 啓作  
大臣官房審議官(男女共同参画局担当)
同    
杉田 和暁  
男女共同参画局総務課長
同    
矢野 正枝  
男女共同参画局総務課調査室長
内閣官房 
鹿沼 均  
全世代型社会保障構築本部事務局審議官
人事院  
荻野 剛  
給与局次長
財務省  
青木 孝德  
大臣官房審議官(主税局担当)
厚労省  
高橋 俊之  
年金局長
同    
青山 桂子  
大臣官房審議官(労働条件政策、賃金担当)

議事録

○佐藤会長 定刻となりましたので、ただ今より、第12回計画実行・監視専門調査会を開催いたします。
まず、本日は、野田 聖子 男女共同参画担当大臣に御出席いただいておりますので、御挨拶を頂戴したいと思います。それでは、野田大臣、よろしくお願いいたします。

○野田大臣 佐藤座長をはじめ、皆さんこんにちは。
 恐らく今日で3回目です。皆さんにこうやってお目にかかる機会をいただきありがとうございます。
 今日は実は私は参議院の予算委員会に指名されているので、今からすぐに抜け出さなければいけないので、冒頭、お礼の気持ちを込めて御挨拶させていただきます。
 特に今日は社会保障、税制の在り方についてということなので、私も非常に熱心に取り組んできたジャンルなのですけれども、私は自民党という政党にいながら、いつもぎりぎりまで来て妙な空気に押し戻されるということの繰り返しだったので、ここはしっかりと今ある政策と一致を見るという合理的な理由で税制改正とかをやってほしいなと思います。
 私は安倍前総理と同期で、別に個人的には仲は悪くないのですけれども、配偶者の控除に関しては徹底的に犬猿の仲でありました。ただ、その理由は、私は働く側に立ってしまって、安倍さんは働かない女性、いわゆる専業主婦と言われている人たちへのリスペクトを忘れてはいけないというかみ合わない議論の中でこれが進まなかったことも原因であります。
 ただ、現実問題、国の政策のほうでは男女の賃金の格差をなくそうとか、同一労働同一賃金とか、基本的には希望する人は男性であれ、女性であれ、働くということでこの社会を支えるのだという建物に変わってきたので、その中の内装も当然そこに合わせていくのが当たり前であります。ややもすると男性の間ではすぐに女性間のバーサスをつくりたがるのですけれども、これはそこからちゃんと距離を置いて、冷静な議論をしてもらいたい。もう機は熟し過ぎているので、しっかりやっていければと思っています。
 あと、家事支援税制というものを塩崎さん、厚生労働省では人気がなかったと聞くのだけれども、彼が熱心に取り組んでいまして、男性が使われる接待費、女性ワーカーが必要としている家事支援との差があまりに大きいのではないか私は特区を担当しており、家事支援の外国人の特区とかをつくっているのですけれども、結局そういうところと連動していないので、せっかくそういう特区をつくっても利いていないなという感じがします。マクロ的にいろいろな政策が重なり合って初めて現実の中に入るということが一つ。
 あと、コロナ下でエッセンシャルワーカー、医療従事者、とりわけ看護師さん、ほとんど女性なのです。実は壁の問題というのは昔からあって、これまで一番困っていたのが医療の世界なのです。12月ぐらいになるとお金の調整をしなければいけないので、アルバイト、パートの看護師さんがそこで調整してしまう。そうすると、インフルエンザが流行るときに看護師さんが抜けてしまって充当化させるということは、コロナになる前からの問題で、そこでは子供の犠牲者も出てくるわけです。そういうところで深い議論をしていただき、本当に答えを出すときが来たよねという感じで、助けていただければありがたいと思います。
 至りませんけれども、有能な局長の横でしっかり皆さんの知見が形になるよう、頑張っていくことをお約束申し上げまして、私はこれにて失礼いたします。実りのある議論を期待しております。
 ありがとうございます。

○佐藤会長 ありがとうございました。
 今日は大臣のお話を踏まえながら、皆さんと議論していければと思います。
 今、大臣からも御説明がありましたように、大臣は公務のためこれで退席されますので、よろしくお願いします。

(野田大臣退室)

○佐藤会長 それでは、議事に入らせていただきます。
 まず、内閣府の林男女共同参画局長から資料1で、本日の議論全体について御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○林男女共同参画局長 内閣府男女共同参画局長の林です。
 それでは、画面を共有させていただきます。
 今回、専門調査会で税制、社会保障制度を取り上げることになった経緯を申し上げます。
 昨年6月、経済財政運営の骨太の方針の中で、女性の視点も踏まえた税制や社会保障制度等の検討を行うことを決定いたしました。また、同じく6月に女性活躍・男女共同参画の重点方針の中でも、就業調整や格差是正などの観点から税制、社会保障制度の検討を行うことを政府として決定いたしました。こうしたことから今回御議論いただく次第であります。  振り返りますと、配偶者控除、すなわち妻が専業主婦であれば夫の所得税は安くなるという制度は昭和36年に、また、第3号被保険者制度、すなわち専業主婦の分の年金や医療などの社会保険料は、本人やその夫は支払わなくてよい、働いている人みんなで支えるという制度は昭和60年にできました。こうした制度ができた背景には、昭和の時代、専業主婦の妻が多かったということがあると思います。
 専業主婦としてこうした優遇を受けるためには、本人の年収が一定以下である必要があります。また、従業員に配偶者手当を支払っている民間企業も多くありますが、この場合も妻の収入が一定以下という要件を設けており、こうした年収の壁と連動していることが多いです。
 このため、妻は働く場合でもこうした年収の壁を超えないよう、働く時間や日数を調整して、収入を夫の扶養の範囲内に抑え、家計全体の手取りが減らないようにする、いわゆる就業調整が多くの妻に見られるところであります。
 これらの制度ができた時代、例えば昭和35年に比べますと、令和の現在は結婚が減って、離婚が増え、結婚件数は毎年50~60万件前後に対して、離婚は毎年20万件程度と、結婚の3分の1に上っております。また、50歳時点で結婚していない女性は、かつては1%台でしたが、今は16%になっています。
 単独世帯やひとり親世帯も増え、女性の死亡年齢で最も多い年齢、最頻値は92歳になっております。
 共働き世帯は1,240万世帯と大幅に増え、パートタイムが特に増える一方、専業主婦世帯は571万世帯と、共働き世帯数の半分以下にまで減少しております。第3号被保険者は現在793万人います。
 これを図示しますと、例えば現在50歳の男性で妻がいる人は67%、約3分の2で、3割以上の男性は未婚または離婚などで配偶者がいません。かつて、昭和60年は9割以上の男性に配偶者がいた、昭和の時代からは様変わりと言えると思います。
 また、家族類型を見ますと、かつて最も多かった夫婦と子供という世帯は、今は25%となり、単独世帯やひとり親世帯が全体の約半分にまで増えています。
 なお、横軸に夫の所得、縦軸に妻の有業率を取ってみますと、夫の所得が高くなればなるほど妻の有業率が低くなる、つまり専業主婦が多くなる関係が観察されます。経済学でダグラス・有沢の法則と呼ばれるものであります。
 夫の所得が高いほど専業主婦が多いということは、第3号被保険者などの恩恵を受けている世帯は、所得の高い層に多いということになります。
 また、男性では、結婚している人のほうが全体として所得が高い傾向にあります。グラフで赤系統の色が年収500万円以上、緑が年収200~400万円台であります。左上の男性の既婚者の方が、右上の男性の未婚者よりも赤が多いということが分かると思います。
 結婚している女性について、学歴と本人の所得を見ますと、例えばグラフの右端、大学、大学院卒では35歳以上では約6割の女性が年収200万円未満となっておりまして、教育投資に見合った所得を得ているとは言い難い状況であります。夫の扶養の範囲内で働くなど、何らかの就業調整をしている可能性もあると思います。
 このような中で、毎年20万組の夫婦が離婚し、両親が離婚した未成年の子が毎年20万人ずつ生じております。ひとり親世帯の半数は貧困線以下と大変厳しい状況であります。日本の相対的貧困率は、先進国で非常に高い部類に入っております。
 既婚女性の6割は年間所得200万円未満という現状は、離婚をはじめ人生で遭遇する様々なリスクに対して女性が脆弱な状況にあると言えると思います。
 こうした中で、経済団体からは様々な要望が出ております。例えば昨年夏、経済同友会からは、配偶者控除の撤廃や第3号被保険者制度を見直すべき、また、企業が出しております配偶者手当等について廃止すべきという提言が出されております。
 また、日本商工会議所からは、第3号被保険者制度については、廃止も含め抜本的な見直しを行うべきという要望が、これも昨年末に出ているところであります。
 また、経団連からも、会員企業のアンケート結果として、女性活躍を推進する上で見直しが必要だという制度として配偶者控除が挙げられまして、配偶者控除などの既存の社会制度が、男性は外で働き、女性は家庭で家事、育児に専念するべきという価値観の形成に影響しているというコメントが多数寄せられているということでございました。
 また、内閣府男女共同参画局で開催いたしました「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」では、コロナ下で非正規雇用のひとり親や単身女性の困窮、DVの増加など、コロナの影響が女性に強く出ておりまして、その背景には、非正規雇用による収入は家計の補助なので、いざというときは大黒柱の夫に頼れるから大丈夫といった昭和の家族を前提とした無意識の思い込み、アンコンシャスバイアスあるいは価値観、それに基づいている制度や労働慣行などが現代に合わなくなっているのではないかという指摘がございました。
 以上をまとめますと、配偶者控除、第3号被保険者、民間企業の配偶者手当といった慣行の3つが一体となって、専業主婦または妻は働くとしても家計の補助というモデルの枠内に女性をとどめる結果になっているのではないかと考えられます。
 離婚や独身者が増えた現在、こうした仕組みは制度の対象外にある人との公平性の問題もありますし、離婚したときの貧困化のリスクもございます。昭和の時代、女性の結婚は永久就職と言われ、結婚すれば一生安泰と思われていた時期もございましたが、今や離婚が増え、全然永久ではありません。
 現行の制度につきましては、まずは就業調整について、例えば新聞のマネー欄などを見ますと、手取りを増やすためには扶養の範囲内で、といった見出しで税・社会保障の知識が紹介されるなど、その存在自体が就業調整を選択する人を増やす結果になっているようなところもございます。
 また、離婚が増える中、夫の経済力に依存しやすい制度は男女間賃金格差も相まって、女性が経済的困窮に陥るリスクを高める結果になっているのではないかという指摘もございます。
 さらに、夫の所得が高いほど専業主婦が多いので、分配面では逆進性があるのではないかといった指摘もあります。
 誰かの配偶者であるということを要件とする制度でございますので、女性の立場から見ると、結婚している間は社会保険料を払わなくてよくて、離婚した途端に社会保険料を払わなければならないという理不尽さがございます。
 このように、女性の人生、家族の姿が多様化し、また、本人が望む、望まないにかかわらず、人生を通していろいろな変転がある中で、現在の税制、社会保障制度、企業の配偶者手当を三位一体として見ると、女性の視点からは様々な課題があると思います。
 本日は、どうぞ積極的な御議論をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 今日の議論の全体の図を描いていただきました。
 それでは、続けて財務省の青木大臣官房審議官から資料2について御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○青木財務省大臣官房審議官 内閣府からの資料の中にも年収の壁という資料があったと思いますが、いわゆる103万円の壁について、まず2ページ目でございます。
 配偶者の収入が103万円を超えると納税者本人が配偶者控除を受けられなくなることが配偶者の方の就労を抑制する壁になっているという指摘がございます。これがいわゆる103万円の壁でございます。これについては以前から御説明をさせていただいているのですが、配偶者の所得に応じて控除額を段階的に減少させる配偶者特別控除を昭和62年から導入いたしまして、下の絵にもありますように、103万円を境にしてがくんと手取りが逆転するような仕組みから、右側ですけれどもなだらかになっておりますので、そういう意味では、税制そのものが103万円の壁があるということではないのかなと我々としては認識しております。
 その上で、3ページ目をご覧ください。そうは言っても103万円の壁というのはいろいろなところで言われているわけで、平成29年度の改正におきまして、こういう考え方でございます。税制は103万円ですけれども、企業側でまさに配偶者手当の制度をいろいろ導入しておられるのだと思いますが、支給基準で103万円を援用されている場合、または103万円の壁というのがあちこちで言われていることもあって、心理的な壁として作用しているという指摘もございました。
 そういう部分もありまして、控除が満額適用される配偶者の給与収入を平成29年度改正で150万円に引き上げる見直しを実施しております。これはある意味103万円を150万円に上げたという見直しです。
 それと併せまして、2つ目のポツですけれども、納税者本人に配偶者控除の適用を受けるための所得制限を設けることといたしました。これによって、高所得者の方にはそもそも配偶者控除が適用されない、ある意味高所得者向けには配偶者控除が廃止されているという状況になっております。
 下に所得制限の図が書いてありますけれども、配偶者控除とか配偶者特別控除の額は給与収入で1095万円から逓減を開始いたしまして、1200万円以上の方には配偶者控除を適用しないという制度にさせていただいているところでございます。
 次のページをご覧ください。こういった見直しを行った際に、税制改正でございますので、与党の税制調査会で御議論いただいて決定するわけでございますが、与党の税制改正大綱という形で見直しの考え方が書かれておりますので、若干補足して御説明させていただきます。
 (1)の下線の部分ですけれども、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築するために、税制、社会保障制度、企業の配偶者手当制度など総合的な取組を進める必要があるということです。
 ちょっと飛んでいただいて、配偶者の方が就業時間を調整することによって、いわゆる103万円以内にパート収入を抑える傾向があると指摘されています。これについては、私どもが御説明したように、逆転しない仕組みにはなっているのですけれども、心理的な壁というお話もあります。
 次のページ、このような就業調整をめぐる課題に対応するために見直しを行いますということでございます。それが103万から150万ということで、下線は引いてありませんけれども、150万の根拠はその下の辺りに書いてございます。
 同時に、担税力の調整の必要性の観点から、納税者本人の合計所得金額に所得制限を設ける。1200万円の給与収入を超えるような方には配偶者控除を適用しないという仕組みを導入させていただいているところであります。
 最後に、同じように社会保障制度や企業の配偶者手当制度のほうでもしっかり見直しをしていただくことが大事だということが書かれております。
 財務省からの御説明は以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 続きまして、厚生労働省の高橋年金局長から資料3で御説明いただければと思います。

○高橋年金局長 年金局長の高橋でございます。
 第3号被保険者制度について、近年の議論を御紹介いたします。
 平成27年1月、社会保障審議会年金部会の議論の整理でございますけれども、ここでは共働きが増えている、女性の就労促進は重要な課題であるということから、第3号被保険者を将来的に縮小していく方向性については共有されております。
 その中で、第3号被保険者というのは様々な方がおられますので、単に専業主婦を優遇しているという捉え方ではなくて、多様な属性を持つ方が混在しているということを踏まえた検討が必要だということも共有されてございます。
 その上で、被用者保険の適用拡大を進めまして、被用者性が高い人については被用者保険を適用していくことを進めながら、第3号被保険者制度の縮小に向けたステップを踏んでいくといった方向になってございます。
 次のページは、これまでの第3号被保険者制度についての議論の構造を分かりやすく模式図にしたものでございます。
 左上にありますように、第3号被保険者制度への批判的な御意見は、応能負担あるいは個人単位を基本とする考え方が背景にあろうと考えられまして、片働き世帯を優遇しているとか、保険料負担がなくて基礎年金満額の給付があるのは不公平である、あるいは配偶者の年金保障は配偶者自身の負担に基づくべきであるといった考え方でございます。
 一方、右上に第3号被保険者制度の意義・役割を説く御意見は、応能負担や世帯単位など、社会保障制度のマクロ的な考え方に根差す御意見が多いと思います。世帯単位で給付・負担の均衡を図る、あるいは必要に応じた給付や被扶養配偶者個人の年金権を保障しなければいけない、こういった議論の背景構造があろうかと思っております。
 これまで長い間議論があるわけですけれども、大きく4つの方向の議論がございます。
 1つは、世帯の主な稼得者の方が納付した保険料を夫婦が共同して負担したものとみなせば、負担がないのに給付があるのはおかしいというふうにはならないのではないかという御意見でございます。これにつきましては、平成16年の年金法改正で、保険料の夫婦共同負担の基本的認識というもの厚生年金法の条文に明記いたしました。
 2つ目の方向性として、3号を有する世帯に追加負担を求めるべきだという御意見でございます。これについては、一方で応能負担という厚生年金制度の原則を変更すべきではないとか、同じ世帯収入でも共働きか片働きかで負担が変わってしまうとか、3号の保険料の事業主負担や事業主経由の徴収は困難であるといった御意見があります。
 3つ目のアプローチとして、3号への基礎年金給付を減額するという御意見もございます。これにつきましては、全国民共通の保障としての基礎年金の趣旨に反する、あるいは例えば健康保険の被扶養者にも追加負担や給付調整をするのかといった御意見もございます。
 現実的なところとして共有されているのが4つ目でありまして、被用者保険の適用拡大によりまして第3号被保険者制度の縮小へのステップを踏むということで、平成24年の年金機能強化法で、まずは500人超企業から適用拡大しました。令和2年の年金法改正では、令和4年10月から100人超企業、令和6年10月から50人超規模の適用拡大までのスケジュールが法律で決まっています。そこから先につきましては、次の年金制度改正の課題になってございます。
 次のページですが、第3号被保険者の現状でございます。第3号被保険者は平成7年度の1220万人をピークに減少傾向となっておりまして、令和元年度で820万人ということで大分減ってきてございます。しかしながら、35歳以上の女性については3割以上が3号被保険者となってございまして、依然として一定数の第3号被保険者がおられるというのが現状でございます。
 次のページに公的年金の負担と給付の構造について、世帯類型との関係で記述をしてございます。1人当たりの世帯の賃金水準が同じであれば、どの世帯類型でも1人当たりの年金額は同じで公平だという説明でございます。
 上の段は、例えば夫が40万円の収入で片働きである。そうしますと、年金給付は基礎年金2人分と40万円に応じた厚生年金がつきます。
 一方、共働きで世帯の1人当たり賃金が同じで設定しますと、20万円ずつの収入である。そうすると、基礎年金2人分と20万円ずつの厚生年金ですから、40万円分の厚生年金がある上の列と、1人当たりは一緒ということになります。
 一方、1人当たりという視点では単身世帯でございます。1人当たりの賃金が同じ20万円の単身世帯ですと、給付は基礎年金と20万円に対応する厚生年金がつくということです。
 そういう意味で、世帯の形に関わりなく1人当たりの賃金水準が同じであれば、1人当たりの年金額は同じという構造でございます。
 次に、被用者保険の適用拡大を行うと、いわゆる130万円の壁がなくなるといった御説明でございます。
 図の左側のように、適用拡大の前は130万円の被扶養者基準を超えますと、国民年金、国民健康保険の加入になります。そうしますと両者合わせてこのくらいの所得ですと月額2万2500ぐらいが本人負担になります。一方で、年金給付は国民年金ですので同じ基礎年金だけなのです。したがいまして、130万円を超えると負担が増えるのに給付は変わらないということがございまして、これはなかなかの壁であるということで就業調整される方もおられるということでございます。
 右の適用拡大は、週20時間、月8.8万円、年間に直しますと106万円を超えますと、厚生年金健康保険の加入になります。会社が半分負担してくれますので、月額1万2500円でございます。その上で厚生年金がつきます。それから、医療保険から傷病手当金・出産手当金も受給できるようになります。
 そういう意味で、負担は増えますけれども増えるということでございまして、これは壁ではないということで、いわゆる130万円の壁、被扶養者基準を意識せずに働く時間を増やすことができるというものでございます。
 次のページは、今のお話を縦軸、横軸で分解した図でございます。
 横軸に週労働時間を置いております。縦軸に年収を置いております。そう考えますと、斜めの線の下側のグレーのところですけれども、最低賃金との関係で対象者がおられないゾーンでございます。
 黄色の国民年金3号・健保被扶養者の方が就業時間を延ばすと、130万円のラインの上に上がりまして、水色の国民年金1号・国保のほうのラインになるわけです。そうすると、水色の吹き出しにありますように、3号から1号ということは負担が増えても給付は同じということで、ちょっと嫌だなということになっております。
 ところが、適用拡大しまして、真ん中の赤い枠の中は、今度は被用者保険になりますので、そうすると今度は3号から2号になる。負担が増えれば給付も増えるというゾーンになります。そのようになりますとこれは壁ではなくて、どんどん長く働こうということになるわけでございます。
 なお、緑色の点線は自給1,041円、東京都の最低賃金でございます。ここまで来ますと、1,041円で週20時間働くと、おのずと年106万円はクリアしてきますので、そういう意味で、賃金要件年106万円というのも実質的に意味がなくなるということでございまして、20時間を超えて働けば給付も増えるという仕組みになるわけでございます。
 次のページは、実際に500人規模の拡大をしたときにどうだったのかということなのですけれども、左側の図にありますように、適用拡大を回避するために労働時間を短縮した人よりも、青い棒のように労働時間を増やした人のほうが多かった。1号被保険者の方のほうが適用拡大対象は多かったのですけれども、それは当然なのですが、3号の方でも時間を増やした方のほうが多かった。
 右側の図のように、適用拡大前後で比べますと、労働時間が増えて、賃金も増えて、全体的に上にシフトしているということでございます。そういう意味で、適用拡大は令和2年改正のものをしっかりと進め、さらにその次へ進めていくことによりまして、130万円を意識せずに働けるような環境にしていきたいと考えてございます。
 年金局からは以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 次に厚生労働省の青山大臣官房審議官から資料4について御説明いただければと思います。

○青山大臣官房審議官 厚生労働省大臣官房審議官(労働条件、賃金担当)の青山でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 資料4に従いまして、御説明させていただきます。
 民間企業における「配偶者手当」についてでございます。
 なお、その紙の一番下にありますけれども、ここでも民間企業において配偶者がいる労働者に対して支給される手当を「配偶者手当」と呼んでおりますけれども、実際は企業の制度でございますので、企業によって「家族手当」「扶養手当」など様々な名称を使われていらっしゃることを留意いただければと思います。
 1ページをお願いいたします。上の四角囲みの1つ目の○でございますけれども、もとより民間企業の賃金制度は、各企業において労使の話合いを経て決定されるものでございます。ただし、先ほど来お話がありますとおり、配偶者の収入要件がある「配偶者手当」は、女性の就業調整の要因の一つとなっているとの指摘もあることから、平成26年12月16日の政労使会議取りまとめにおいても「労使は、その在り方の検討を進める」とされました。
 配偶者手当を含めた賃金制度の見直しは、もらっていた労働者、一部の労働者にとっては不利益となることもあり得ますので、賃金を含めた労働条件の見直しなどに関するルールを定める労働契約法や判例などを踏まえた丁寧な対応が必要だと認識しておりますので、厚労省のほうで検討会を設けまして、配偶者手当の円滑な見直しに向けた留意点などを整理いたしまして、平成28年4月に取りまとめをしております。
 この取りまとめを踏まえて、見直しの際の留意点や事例集などをまとめたリーフレットを作成して、我々の出先機関の都道府県労働局で、配偶者手当に関する相談対応、周知を行っておりますし、厚労省からも労働者団体、使用者団体のほうにもリーフレットを提供して、周知の協力依頼を行わせていただいております。この労使団体への周知も一度きりということではございませんで、資料のリバイスなどのタイミングに合わせて複数回行っております。
 このペーパーの下のほうに検討会報告書の概要がありますけれども、一部だけ紹介しますと、一番上にありますとおり、この報告書でも配偶者の収入要件がある配偶者手当については、配偶者の働き方に中立的な制度となるような見直しを進めることが望まれると、明確にメッセージを発しております。
 その他、その下にありますとおり、労使の真摯な話合いを進めたり、労働契約法等を踏まえた留意点として、従業員の納得性を高める取組や丁寧な話合い、合意、賃金原資総額を維持することや、経過措置、決定後の説明などについての留意点をまとめております。  2ページをご覧ください。配偶者手当の見直しが実施・検討された事例とあります。これは先ほど御紹介した厚労省の検討会で、当時、事務局のほうでいろいろな企業にお聞きしまして見直しを行った事例をまとめたものでございます。2000年以降に見直しをされた企業18社の事例を検討会報告書でも添付してございますが、このペーパーではまとめたものを書かせていただいております。
 上の箱の2つ目の○にありますとおり、実際に様々な見直しがされているのですけれども、総じて先ほどの留意点でも申しましたとおり、賃金原資の総額は維持されるように見直しが行われているということでございます。
 その次の○にありますとおり、先ほど支給されていた人にとっては不利益となり得るという話を申しましたけれども、実際にも支給されていた労働者を対象として経過措置を講ずるとしたケースも多いということでございます。
 その他、下に具体的に背景とか労使交渉等、具体例についてありますけれども、一部紹介しますと、労使交渉の欄ですけれども、1~2年程度の期間をかけて丁寧に労使で話合い、交渉して決定しているとか、先ほど申しました経過措置を講じていること。あと、一番下の一番幅が広い箱は、まさに配偶者手当の見直しの内容なのですけれども、上の四角ですが、配偶者手当自体を廃止する。ここも単純廃止というよりは、廃止して基本給に組み入れたとか、子供の手当のほうに移したといった見直しや、下の配偶者手当の縮小につきましても、一番上のポツにありますけれども、縮小して子供や親といった扶養家族1人当たりとして配偶者も含めて共通のものとして同額でならして支給するものに直したといった例でございます。
 3ページをご覧ください。民間企業における「配偶者手当」のデータでございます。のちほど、御説明があるかもしれませんが、人事院さんの調査を使わせていただいております。
 上の枠の1つ目の○でございますけれども、平成27年以降、配偶者への家族手当の支給は減少傾向にございます。配偶者の収入による制限のある配偶者手当の支給も減少傾向です。
 今、後者を申しましたのが、あるところが多いのですけれども、実際に配偶者の収入制限がなく手当を支払っている会社も1割弱あります。
 実際に下の表を見ていただきますと、赤で囲みました上の表の「配偶者の収入による制限がある」は、平成27年は58.6に対して、令和3年が47.9ということで、10ポイント以上落ちております。
 上の箱に戻っていただいて、2つ目の○ですけれども、支給額についてでございますが、平成27年と比べて令和3年は配偶者に対する支給額は減少している一方で、配偶者と子供を合わせた支給額は横ばいになっているということで、配偶者手当自体は縮小したけれども、子供のほうに寄せたりすることで、扶養家族全体では維持しているということも考えられるかと思います。
 次は参考ですが、まさに就業調整の理由になっているということで、女性のパートタイム労働者の就業調整の有無や理由についてのデータを改めて掲げております。
 これは平成28年のパートタイム労働者総合実態調査でございます。今のところデータがこれしかないものですから、その後に行われた税制や社会保険の制度改正がなされる前ということは御留意いただきたいのですけれども、女性のパートタイム労働者のうち22.8%が就業調整をしている状況でございます。
 理由については下の表でございます。「一定額を超えると配偶者の会社から配偶者手当が会社からもらえなくなるから」と回答した割合が23.4%でございますが、割合が多い順位で見ますと4番目でございまして、1番目が一番左の「自分の所得税の非課税限度額(103万円)を超えると税金を支払わなければならないから」、2番目は左から4番目の130万の社会保険の理由、3番目は左から2番目の配偶者控除を理由とするということでございます。
 参考2は就業規則による労働契約の内容の変更でございまして、先ほど言いましたとおり、賃金制度でございますので、まさに労働契約の内容である労働条件でございますけれども、多くの企業では、賃金制度は就業規則という使用者が定める集合的な労働条件のルールブックみたいなものに定められることが一般的でございますが、就業規則を変えることによって労働条件を変える場合には、労働契約法でルールがございまして、使用者が変えられる仕組みではあるのですけれども、不利益な変更をする場合には労働者と合意することなくすることはできないという原則。ただ、一定の場合、労働者への周知や変更が合理的なものである場合には、合意なく就業規則を変更できるという趣旨の規定がございますが、いずれにしましてもこういうルールをちゃんと認識した上で、よく労使で話し合って、円滑に見直しを議論していただくということを定めているものでございます。
 いずれにしましても、我々はこうしたことを引き続き留意点という形や、参考事例の提供などを続けまして、企業における円滑な配偶者手当の見直しを促していきたいと思っております。
 以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 それでは、続けて、公務員のほうだと思いますけれども、人事院給与局の荻野次長から、資料5で御説明をお願いいたします。

○荻野次長  人事院給与局次長の荻野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、国家公務員の配偶者に係る扶養手当につきまして、現状と今後の方向性等について御説明をさせていただきたいと思います。
 資料の1ページをご覧ください。まず、国家公務員の配偶者に係る扶養手当の見直し等についてでございます。1つ目の●にありますとおり、国家公務員の給与、俸給とそれを補完します諸手当でございますけれども、民間準拠の原則を基本としまして設定してございます。扶養手当につきましても、民間企業の家族手当の状況等を参考にしまして、必要な改定をこれまでも実施してきているところでございます。
 直近では、平成28年には大きな見直しの勧告を行ってございます。2つ目の●でございますけれども、配偶者に係ります家族手当を支給する民間事業所の割合が減少傾向にあること、また、配偶者を扶養親族とする国家公務員が減少していること等を踏まえたものでございます。
 この勧告を踏まえまして、括弧内にありますとおり、平成29年4月から新しい制度が施行されまして、順次、実施されてございます。
 その見直しの内容でございますけれども、大枠を申し上げますと配偶者に係る手当を減少させて、子供に係る手当を増額させるというものでございます。
 具体的には、ボックス内をご覧ください。見直し前が左側でございます。本府省課長級、本府省室長級、その他の職員と区分してございますけれども、見直し前におきましては、その役職段階にかかわらず配偶者に係ります扶養手当は一律に1万3000円を支給していたところでございます。
 この見直しを行いまして、矢印右側、オレンジ色で囲ってある部分でございます。役職ごとに本府省課長級につきましては不支給、本府省室長級につきましては3,500円、係員や係長といったその他の職員につきましては1万3000円を半額にいたしました6,500円まで引き下げてございます。
 その減額によりまして原資が出ますので、その下に記載してありますとおり、配偶者に係る手当額を減額したことによって生じた原資を用いまして、子の手当額を増額しました。具体的には6,500円から1万円に引き上げるという措置を講じたところでございます。
 この見直しは、先ほど申し上げたとおり平成29年4月から順次行っておりますので、最終的にこの額になったのは令和2年4月1日からとなってございます。
 続いて、その下の●でございます。国家公務員における扶養手当の支給状況、令和3年国家公務員給与等実態調査に基づいた数字でございます。ここで言う国家公務員は給与法適用職員で、特別職などの職員を除いた職員でございますけれども、何らかの扶養手当を受けている受給者数は一番左側の欄にありますとおり、12万1000人余、48.3%、約半分が何らかの扶養手当の支給を受けております。
 そのうち、配偶者を扶養親族とする職員は7万7000人余、率にして30.7%でございます。この割合につきましては、先ほど申し上げましたとおり下がってはきておりますけれども、依然30%が対象となっているということでございます。
 一方、一番右側の子を扶養親族とする職員につきましては37.5%となってございます。
 一番下の※印でございます。国家公務員の扶養手当につきましては、他に生計の途がなく主として職員の扶養を受けているもの、年額130万円以上の恒常的な所得があると見込まれる者は対象外といたしまして、そういった職員に対して支給をしておるところでございます。
 2ページをご覧ください。続いて民間企業における家族手当の支給状況を調査してございますので、御紹介でございますが、先ほど厚労省さんの資料の中でも御説明がございましたので、ごく簡単に御説明したいと思います。
 まず、家族手当の支給状況でございます。昨年の調査では、全事業所の従業員のうち家族手当制度がある事業所に勤務する従業員の割合は74.1%でございまして、家族手当制度がないとしているところが一番右側の25.9%でございます。
 家族手当制度があるとした中で、配偶者に支給するとしている事業所に勤務している従業員の割合は74.5%です。※印にありますとおり、あるとしているところが100だった場合に74.5%でございまして、全体を100として見た場合の配偶者に支給する割合につきましては55.2%になっております。50%をちょっと超えるという状況でございます。
 続きまして、配偶者の収入制限の状況でございます。家族手当制度があって、さらに配偶者に家族手当を支給するところのうち、配偶者の収入制限があるかどうかと聞いてみますと、86.7%になっております。先ほどの資料4で47.9%というのが出てきたと思いますけれども、これは配偶者に家族手当を支給する55.2%に86.7%を掛けると47.9%になるという関係でございます。
 配偶者の収入制限がある中で、さらにどういった額になっているかを見ますと、103万円が45.4%、130万円が36.9%、150万円が7.0%となっております。
 最後に今後の方向性についてでございます。一番下の●でございます。初めに申し上げましたとおり、国家公務員の給与につきましては、民間準拠の原則を基本としてございまして、扶養手当につきましても、民間企業の家族手当の状況等を参考としているところでございます。民間の現状につきましては、先ほど申し上げたとおりのような状況でございますので、今後も民間企業の状況、税制、社会保障制度の見直しの状況等を踏まえまして、国家公務員の配偶者に係る扶養手当につきまして、引き続き必要な見直しを検討していくことにしてございます。
 説明は以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりますが、内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局鹿沼審議官から資料6で御説明いただければと思います。

○鹿沼審議官 内閣官房審議官の鹿沼でございます。よろしくお願いいたします。
 全世代型社会保障構築会議についてということで、まず1ページ目、検討体制でございます。総理、関係閣僚から成ります全世代型社会保障構築本部がありまして、それの下に全世代型社会保障改革担当大臣が主催いたします有識者から成る構築会議がございます。11月9日に第1回の会合を開催しております。
 なお、その下に介護、看護、保育等の現場で働く方々の収入を引き上げるための公的価格評価検討委員会というものが別途ございます。
 過去の経緯も含めて、これまでの全世代型社会保障についての検討の状況を参考資料から説明させていただきます。
 全世代型社会保障構築検討会議というものは安倍総理、菅総理の時代からございまして、令和元年に第1回の会合を開催して以降、3回の取りまとめを行っております。全ての世代が安心できる全世代型社会保障制度を目指し、働き方といったものの変化を中心に据えながら、社会保障全般にわたる改革を検討していくということでございます。
 ここにおける取りまとめを踏まえまして、それぞれ年金や労働につきまして制度改正を実施したり、また、介護の関係では予算で様々な対応を行ったり、さらに少子化対策、医療の関係では、前回の国会で全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律、子ども子育ての法律といったものについて対応を行ってきたものであります。
 そういった形で、全世代型社会保障会議の方針に基づきまして対応してきたわけですが、医療の中の全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律の附則の中で、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築する観点から、社会保障制度の改革及び少子化に対処するための施策について、その実施状況の検証を行うとともに、総合的な検討に着手し、その検討の結果に基づいて速やかに法制の整備その他の必要な措置を講ずるということが書かれてございます。この法律の附則も踏まえまして、昨年の骨太の中にも全世代型の関係について記載があり、今回の構築会議が新しい形でスタートしたものでございます。
 この構築会議での検討項目につきましては、現在、岸田総理がこの国会の施政方針演説で述べられておりますけれども、まず、子育て・若者世代に焦点を当てていく。その中で、会議において、男女が希望どおり働ける社会づくり、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支え合う、持続的な社会保障制度の構築に向けて議論を進めるとされているところでございます。
 この施政方針演説やこれまでの様々な議論の内容を踏まえまして、今後、有識者の方々に御議論いただきたいと思っておりまして、今、第2回の会議をセットしているところでございますが、そこで特に子育てを中心としながら議論を進めていただくということだと思っております。
 私のほうからは以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 今日は女性のライフキャリアに影響を与える税制と社会保険、年金と企業の配偶者手当、それぞれ連携していますので3つについて議論をするということです。
 改革はずっと進んできて、税制のほうは収入制限を受けないような形に徐々に変えてきていますし、年金のほうも、従来は週30時間以上の人が厚生年金の適用で、30時間より短めに働く人が結構いました。これが就業調整です。けれども、今度は20時間になったので、もちろん20時間以下にしている人もゼロではないけれども、20時間に下がったことによって逆に長く働く人が増えてきたというお話がありました。
 ただ、現状では30時間以上の年金に入っている人が500人以上だと。これは分かりにくい問題があるのだけれども、それでいいですか。

○高橋年金局長 通常の職員が500人規模以上の場合だけ。

○佐藤会長 従業員数ではないですよね。30時間の年金加入者が500人以上ですね。

○高橋年金局長 そういう意味でございます。

○佐藤会長 これは説明がないと誤解するのです。
 あとは企業の手当など、これについて御意見をお伺いしたいと思います。
 今日は治部委員が早く出なければいけないので、先に治部委員から御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

○治部委員 ありがとうございました。
 基本的に各省庁の方の発表や変化の方向性に私は賛成であります。どういうことかというと、現行の税や社会保障制度を変えていくということだと。変えていくときに、皆さんには言わずもがなではあるのですけれども、専業主婦と片働きの夫を想定したものを、ライフスタイルに忠実に変えていくということを今まで以上に求めていきたいと思っています。
 今日はギャラリーの方もすごく多いので改めて確認しておきたいのは、税制のベーシックなルールというのは、簡素で中立であるべきだということだと思います。現行の制度は中立ではないというところが問題だと思います。
 冒頭、野田大臣のお話にありましたように、この議論はずっと続いていまして、皆さんは実務の中でちょっとずつ頑張ってやっているのかなと思うのですけれども、ビッグピクチャーで見たときに私がずっと気になっているのは、極めて近視眼的な短期的な議論になりがちだということです。例えば今、共働きが増えているといった現状に合わせて変えていくべきなのか、もしくは専業主婦の内助の功を認めるべきかといった、ある種の価値観の対立になってしまう。もしくは、働く女性対主婦といった構図にされがちである。これは野田大臣がおっしゃっていたとおりです。
 そもそもこういう論点のつくり方自体がよくないのではないかと私は思っています。労働人口が減っている日本で高齢者が増えている中で、このままでは社会保障税制がもたないということは多くの方が御存じなわけです。なので、この国の持続可能性ということ、とりわけ次世代に対する責任を考えたときに、きちんと払える方には払っていただく、働ける方は働くという観点をもっとちゃんと出す必要があるのではないかと思います。
 私自身は、このままではもたない制度を既得権益の人が一時的に不利益を被るからといって変えないというのはすごく無責任なのではないかと考えています。こういうときに国内だけで議論をしていると硬直してしまうのですけれども、ほかの国はどうしているかということを少しだけお話ししたいと思います。
 今、我々がやっている会議体は、男女平等に関する中央政府の政策を議論しているわけです。男女平等の観点で見習うところがある国はいろいろあるのですけれども、そのうちの一つがスウェーデンかなと思っています。スウェーデンというのは、現在の駐日大使も、その前の駐日大使も両方とも男性なのですけれども、2人とも月単位で男性育休を取得しています。男性の家庭参画が進んでいて、これを見習うような形で日本の国家公務員の男性育休が進んできた経緯があります。
 このことについて、一緒に仕事をしたときに大使に何でスウェーデンで男性育休が進んだのかということを聞いたところ、この方は双子のお子さんを1人で1か月間見た、ワンオペをやったという経験があって、その間、妻は海外出張に行っていたそうなのですけれども、彼いわく、1970年代の税制改革ですよということを言っていました。この税制改革で、実は大使自体の御家庭は不利益を被ったのだそうです。つまり、大使のお父さん、お母さんはいわゆる専業主婦家庭であったので、税制の変更によって不利益を被って、当時、御両親はすごく文句を言っていたと言っていました。
 ここから学ぶことがあります。どんな国も転換点には制度を変える必要があるということです。それが40年、50年後の国の形をつくります。そういう意味で、皆が満足する形での改革がないかなと思いますので、そこは頑張って反対があっても変えていく必要があるかと思います。
 ちなみに、現大使も同様に、税制がスウェーデンの男女平等を大きく進めたと言っていました。これに関しては個人課税になったことで、女性が自分の収入を意識するようになって、経済的な自立が進んだということをおっしゃっていました。
 この専門調査会でもずっと女性の経済的自立ということを言っていますので、私は今日の各省庁の方々の改革の方向性は全面的に支持いたしますし、それがよりスピーディーに進むようなことも、もし今日傍聴の方にマスメディアの方がいらっしゃったら、ぜひ応援していただきたいと思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 治部委員は先に出られなければいけないということで先に御意見を伺ったのですけれども、これからの進め方なのですが、この後5分ぐらい休憩します。その後、残り55分ぐらいで、委員の方からはどなたにということも含めて御意見をずっと伺いますので、今日御報告いただいた方は自分についての質問なり意見だなと思ったらメモをしておいていただいて、重なりがあると思いますので、後でまとめて御回答いただくことにしたいと思います。一人一人、一対一でやりませんので、メモをしておいてください。
 あと、委員の先生方は、今日は10人ですので1人3分で30分になってしまうのです。報告した方からも御意見を伺いたいので、1巡目は2~3分で、次に時間があれば2巡目にしたいと思いますので、その辺を御協力いただければと思います。
 それでは、今から5分休憩にします。

(休憩)

○佐藤会長 税制についてとか、年金についてとかがあれば、少し言っていただいたほうがいいと思います。あるいは、全体ですでもいいと思います。
 報告していただいた方は、自分に関わるなということはメモをしておいていただいて、後でまとめてという形にしたいと思いますので、まずは1巡ということで、挙手のマークを出していただいた方を指名しますのでよろしくお願いします。
 では、窪田委員、お願いします。

○窪田委員 窪田でございます。簡単に発言させていただければと思います。
 本日は税制、社会保障という観点からということであったのですが、基本的には夫婦の場合の扱いと、独り親世帯の貧困の問題はかなり性格が違うのかなと思っております。夫婦の場合、特に今までの仕組みは片一方がというか、実際には女性のケースが多いと思うのですが、働くことを阻害するような仕組みになっていたという点については認識を共有しておりますし、それに対する手当が必要だということも十分理解しております。
 この問題なのですけれども、ちょっと厄介だなと思うのは、税制の問題に関して言いますと、先ほど治部委員がおっしゃったことと重なるとは思うのですけれども、治部委員は中立にということをおっしゃいましたが、中立だけれども税制が理想的な社会をつくっていくということを含んでおられたのだろうと思います。
 そうした観点からは、一定の目的の下で税制を変えていくことは比較的説明しやすい。当然政治的には抵抗とかいろいろなことがあるとしても、理論的には説明しやすいのだろうと思います。
 一方で気になりましたのは、今日お話がある中で、民間の配偶者手当の問題が位置づけとしてはかなり難しいのかなと思いました。難しいというのは、103万円の壁はないのだよということは財務省のほうからの御説明でもあって、丁寧に説明していただいてよく分かったのですが、一方で、民間における配偶者手当のところは相変わらず103万円という壁がどうも実質的には残っているのではないか。そうだとすると、税制のほうではいいとしても、103万円を超えてしまうと配偶者の手当が出なくなるということであると、やはり抑制してしまうのではないか、という点です。
 厄介なのは、民間の場合には、先ほどの御説明もありましたけれども、社会の仕組みはこうなるのだから、当然これでいいのだというふうに簡単に言えずに、原則、労働契約法9条の適用を受けるという形になりますので、きちんとした合意を得ない限りは前に進むことができない。そういう意味では非常に難しいと思いました。これは半ば感想となります。
 もう一点、ごく簡単に済ませたいと思います。今日は主としては触れられなかったと思うのですが、独り親世帯の貧困の問題に関しては、税制とか社会保障という問題以外に、離婚した配偶者がどれだけ負担するのかということがあります。実際には合意をしても履行されない、あるいはそもそも合意されないということが非常に問題になっております。この点に関しては、現在ちょうど進んでいるところなのですが、法務省の法制審議会の親子法制部会でこの点を含めて検討が進められておりますので、その点に関しては法務省とも連携しながら情報共有して検討を進めていっていただければと思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 配偶者手当について、民間企業の場合は税制を動かすとそれに合わせて動かしたりするわけですね。
 徳倉委員、お願いします。

○徳倉委員 ありがとうございます。
 治部さんからもお話がありましたが、この会議は男女平等という観点からお話をしないといけないので、今日はもちろん税制、社会保障と絡めてではあるのですけれども、基本的に例えば選択的夫婦別姓の問題とかも含めて、世帯から個人へという流れの中で、一番最初に林局長にお話しいただきましたし、各省庁もそこに沿って様々な抵抗はあるけれども、順番にそれを是正していくのだという大きな流れの中は私自身大賛成なのです。
 その中で何が抵抗になっていくのかというと、今までそれを享受していた層と、一方的に不利益に感じている層が復活できない仕組みとなっているので、先ほど財務省さんが資料で出されていましたけれども、例えば平成29年の改正のとき、当時の内閣の中で、自給1,000円で6時間、週5日間働くというベースの項目がありましたけれども、我々の会議の中で、女性が、男性がということを含めてですけれども、どのぐらいの賃金があって基本的な生活をしていけるのかというような、ある一定のデザインみたいなものをきちんとつくらないと、税制を考える上でも、社会保障を考える上でも、非常に難しいのではないか。
 これは御提案にはなりますけれども、今、最初の局長の資料の中で、大学院卒層で年収ベースがありましたけれども、このぐらいまでキャリアを積む人がどのぐらい望ましい社会みたいなところを、幾つかの資料には出てくると思いますが、ここは多様性なので様々あると思いますけれども、働いて、納税をして、生活をしてという一つの方法での一辺倒なモデルではなくて、これをある程度指し示しながら、こういう人たちがこう納税していく、だから将来社会保障がこうなっていくというような議論をこの中でできたらなと思います。  1点だけ質問です。私が不勉強なので大変申し訳ないのですが、財務省さんの中で、配偶者控除をなくして個人で課税をしていく場合の税の入ってくる量というのはどれぐらい変化があるものなのかみたいなことが試算されているようなものがあれば教えていただきたいなと思います。
 以上です。

○佐藤会長 続いて、井上さん、お願いいたします。

○井上委員 ありがとうございます。井上です。
 今日は就業調整の話がありましたけれども、連合傘下の組合でも年末になると就業調整をする女性が増えるという話も実際に聞いています。連合では、今年2月に非正規雇用の女性1,000人を対象としたネット調査を実施しました。その中で非正規雇用という働き方を選択した理由に就業調整を挙げた回答者は、配偶者のいる個人所得100万円未満の人では22.2%という結果が出ました。20代、30代の女性では、いずれも25%という結果でした。
 一方で、育児や介護に時間が必要だからと回答した20代が37.5%、30代が35.3%、家事に時間が必要だからと回答した30代が45.1%、40代が40%という数字が出ました。これを見ると、まだ固定的性別役割分担が家庭の中で残っているということだと思いますし、育児や家事に時間が必要だからというところでいくと、働きたくても働けない、男性中心型労働慣行がまだ残っているところかと思いますので、この2つを解消、是正することが急務ではないかと思います。
 また、今日は配偶者手当の話が中心でしたけれども、企業の中では福利厚生を中心とした家族手当がまだ残っています。その支給に当たって世帯主であることを要件にしている企業もあったりしますので、連合としては春季生活闘争でこの数年、世帯主要件の廃止を求めて取り組んでいるのですが、企業の仕組み自体も昭和の時代から大きく変わってきたというところを皆が認識をして変えていくことが必要だと思っています。
 以上です。

○佐藤会長 ありがとうございました。
 それでは、石黒委員、お願いいたします。

○石黒委員  私は今日の議論を聞いていて結構違和感がありまして、厚労省さんとか財務省さんとか、全ての御発表いただいたところに対する質問なのです。
 2021年のジェンダーギャップ指数で、日本はたしか120位だったと思います。先進国の中では断トツに低い。その主たる理由の一つが、女性にまつわる法律が非常に古いことからくる結果の女性の地位の低下という議論があります。
 今回違和感を覚えたというのは、この議論を聞いていて、改めて日本の税制とか年金とか保険制度というものが、林局長がおっしゃるように、本当に昭和の家族を前提につくられているものだと思いました。
 そもそも配偶者というのは、法律上の婚姻関係にある自分と対する人を指すわけなのですけれども、再三、配偶者という言葉が出てくるのですが、ここで配偶者と訳されているのは、収入がないとか、もしくは収入が一定基準以下の配偶者という意味になります。なぜ配偶者を意識して法律がつくられているのかということを根本的に見直さなくてはいけないと私は思うのです。非常に時代に合わなくなっていると思います。
 だからこそ、今日のお話を聞いていると、財務省さん、厚労省さん、こういった省庁のアプローチはどうしても段階的であり、順番に変えていこうとか、バランスを取りながら変えていこうというアプローチでありということを全体的に思いました。だからこそ、一方の国民も法律をにらみながら行動していくものだから、行動も徐々にしか変わらないというような悪循環があるのだと思います。
 しかしながら、若者を中心とする今の婚姻関係とか、そもそも婚姻の在り方とか、また、先進国の結婚観というものは、今、私たちがここで議論しているものと大きなギャップがあり、もっと根本的に法制度の考え方を変えないといけないという危機感を持ちました。国民の三大義務の一つは勤労です。私は、国が立法もしくは法律の改正をする場合に、もう主語を変えないといけないと思うのです。配偶者、それに、それを養う夫もしくは妻という主語ではなく、一人の人間である勤労者、納税者として国民を扱うべきだと思います。
 もちろんこういう議論をすると、例えば家事労働は勤労ではないのかというような議論はあると思いますが、これは婚姻とかにかかわらず対価を伴わない、平等な勤労であると私は思っていますし、また、勤労できない環境がある国民もいるし、私たち一人一人がそういう環境に容易に陥ることもあると思いますが、それを救っていくのは福祉であるという大前提に立って、もう少し大きな主語、つまり国民や勤労者を用いて法律を変えていかないと、もうスピード感が本当に遅くなるといった印象を持ちましたので、ぜひ考え方をそういった形に直していただきたいというのが私の意見です。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 山田委員、お願いします。

○山田委員 山田です。
 今、石黒さんがおっしゃったので少しかぶる部分があるのですが、全体の大きな流れとして、昭和の時代に主としてつくられた制度が、今、平成、令和と来て、あらゆることが変わったわけです。人の平均寿命、結婚、離婚の実態、就業の在り方、夫婦の在り方が変わってきた中で、それに伴って税制、年金の制度についての在り方を変えなければいけない、ここは絶対にコンセンサスであるということです。
 そこで感じることは、確かに全方位的にバランスを取りながら進めなければいけないという点は分かるのですが、最初に治部さんがおっしゃった公正である程度簡素な、もう一つ、今の制度の中で分かりにくいというのは物すごくあって、特に年金とか税制の問題は一般の人が普通に文字を読んでも、我々のような法律の専門家が読んでもなかなか理解に苦しむというところがあるので、分かりやすさということが物すごく求められているということと、公平・公正さに加えて、今、石黒さんがおっしゃったスピード感がないと、我々、女性の活躍を推進することを推奨している考え方からすると、60年たってやっとこのぐらいのところに来ているのかなという感じで、そういう意味での危機感を感じているというのが第一印象としてあります。ただ、大きな方向として変わっていくという方向性について、異論はありません。  私は実務家として、昭和、平成の時代に離婚とかDVとか物すごい数をやっていたのですが、その当時も実は貧困の問題はあったのですけれども、貧困の問題あるいは経済の問題が隠れていて、多くの女性は我慢して離婚しなかったという実態もあったのです。そこにはDVやモラルハラスメントが物すごくたくさんあったという実態があったのだけれども、離婚しないで我慢していたことで離婚の数が少なかった。それが平成の後半ぐらいになって、平成離婚の特徴は女性からの申立て、それから比較的年数の高いいわゆる熟年と言われる人たちの女性からの離婚の申立てが多くなっている。離婚理由もかなりファジーな、いわゆる犠牲問題とか労力だけではなくて、価値観の違いで離婚する人たちも増えてきて、ある程度経済的な大変さがあっても、女性は離婚するようになったのです。それはある意味、すごく進歩だなと評価しているのです。
 令和になってコロナの問題が起きて、パンデミックのときにはどうしても弱いところに行きますから、女性の自殺者数が増えたりとか、DVが急に増えてきたとか、また新たに弱い部分に問題が発生してしまって、それが構造的によく出ている。常に根底にあるのは経済の問題で、その問題をクリアしていく上では、税制とか年金の問題はドラスティックに変えていかないと追いつかないなという印象を持ちました。
 最初は3分ということでしたので、また後で発言できればさせていただきます。

○佐藤会長 内藤委員、お願いします。

○内藤委員 ありがとうございます。
 私も、先ほど治部委員や石黒委員、山田委員の御意見にもありましたけれども、女性の経済的な自立に向けて、税制や社会保障の改革はきちんとやっていかなければいけないという立場です。今までこの会議の中でも散々出てきてはいますけれども、モラハラやDVでの離婚の相談などは、コロナ禍前からもちろんあるのですが、先ほど山田委員からもありましたけれども、コロナでステイホームの時間が増えるにつれて、この問題が非常に大きくなっていると自治体の長としても考えています。  また、女性の非正規就労の課題も含めて、税制や社会保障で、自分が自立して稼ぐという意識がないと、これから少しずつ緩和されていっているとはいえ、結婚後に家事や育児は女性がやるものというままで日本は進んでいかざるを得ないように思います。  地方におきましては、まだまだそういう考え方が都市部より顕著ですので、徳島市は自治体としてもっとこの問題に取り組んではいきますけれども、国が改革の姿勢を見せるというインパクトは非常に大きいと思いますので、実効性とスピード感のある改革を期待しています。
 あと、今回のお話とは少し離れてしまうのですけれども、年金分割制度の周知についてもう少し御検討いただきたいと思っています。専業主婦が離婚した場合、離婚にまつわる様々なことで、特にお子さんがいらっしゃる方なんかは本当にばたばたして、なかなか自分のことまで手が回らずに、年金分割のことを知らないとか、あとはどうしていいのか分からないという人がすごく多いように思います。2年たった後でこのことを知って、どうにかならないのかというような御相談などもありますので、今は自動的に年金分割がされないような中で、元専業主婦だった方とかの離婚後の保障も含めて議論していければなと思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 山口委員、お願いします。

○山口委員 ありがとうございます。
 各省庁の皆様、御説明ありがとうございました。重要な論点が含まれていたと思いますし、変化の方向性に関しては賛成いたします。
 また、男女平等の観点から、税制、社会保障制度はどうあるべきかという規範的な議論についても委員の方々から多くのコメントがありまして、まだ不十分だという御指摘もありましたが、そちらについてももちろん賛成いたします。
 私からは、繰り返しにならないように、ちょっと違う論点から、専門の労働経済学の視点から1点申し上げたいと思います。
 多くの労働経済学の研究では、税制や社会保障制度が就業行動に大きな影響を及ぼすということはよく知られています。これは日本に限らず世界中でそうなのですが、そうした中での配偶者控除と第3号被保険者の制度の影響は特に大きいということが知られています。アンケートみたいな形で聞くものもありますし、より精緻な分析を行った研究でも、かなり数多くの研究が、この部分で就業調整が行われているという結果を出しており、確実にその部分は労働力の未活用につながってしまっているということが分かっています。
 人手不足のある中でこういった就業調整が行われているというのは労働力の未活用につながってしまっていますし、また、労働者のスキルといった観点から見た場合にも、一定時間働くことによって蓄積されるスキルもありますから、長期的にも人的資本が育たないという問題にもつながってきますので、これは放置すべき問題ではないと思っています。
 具体的なシミュレーションの結果も最近の研究で出てきています。つい2週間ぐらい前に出た論文ではあるのですが、例えば経済産業研究所にいらっしゃる北尾教授と東大の研究員の御子柴さんの研究では、配偶者控除、被保険者制度に加えて、今回の議論には入っていなかったのですが、遺族年金なども含めて、この辺が制度改正された場合には女性の就業率で見ると13%ポイント上昇し、所得については3割上がるという試算が出ております。
 同時に非常に興味深い結果として、そういった就業が増える、収入が増えるということに通じて、税と社会保険料の支払いが20%増えるということで、財政面からもプラスになるということが報告されています。
 こうした点を踏まえますと、配偶者控除、被保険者制度、第3号被保険者制度などの改正は必要なのではないかと考えております。
 以上です。ありがとうございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 大崎委員、お願いいたします。

○大崎委員 ありがとうございます。
 担当省庁の皆様、今日は御報告ありがとうございました。大変勉強になりました。
 先ほど来出ていますように、少子高齢化が進む中で、いかに持続可能な税と社会保障制度を構築していくかという点と、女性の経済的エンパワーメント、女性の経済的自立、この2点から、制度の見直しは待ったなしといいますか、やらなければならないということが明らかになっていると思います。
 ただ、この話を進める前に、先ほど山田委員からも御指摘があったのですけれども、確かに日本の家族形態やライフスタイルが昭和の時代から変遷してきたので、それに合致する形でアップデートしていかなければいけないという側面はもちろん重要なのですが、昭和の時代も婚姻によってこうした制度の恩恵を受けなかった人たちがたくさんいまして、それがシングルマザーの貧困、女性の貧困、単身女性の高齢者の貧困を生み出してきた、本当に不平等を生み出してきたものでもあるということをしっかり認識する必要があるのではないかと思います。それを御指摘したかったのです。
 もちろんこれから見直しを進めていくべきだと思うのですが、その際に同時進行でやらなければいけないのがケアワークを男女が共に担えるような社会を構築していくということと、男女間賃金格差の解消をしなければ、配偶者控除、配偶者手当を撤廃した場合に、女性の貧困がさらに拡大する、そしてそれが次世代の子供たちに連鎖する可能性を大きく秘めているわけなので、いかに男女間賃金格差の解消、それからケアワークのところ、企業の取組も重要なのですけれども、今回議論すべきは政府がどういう法律、どういう政策制度を通じて男女間賃金格差の解消を進めていくかということだと思います。
 ちなみに、本日世界銀行が「Women, Business and the Law 2022」というレポートを発表いたしました。これはビジネスや経済活動に関する法律のありようを世界190か国近くで比較検討しているのですけれども、共同通信の報道によりますと、その中で日本は男女格差が103位に急降下という見出しがついております。
 ジェンダーギャップ、GGIももちろん低いのですけれども、これは政府が何をやっているか、どういう法律や政策があるかということを見ていて、その中で日本の順位が103位だと。アジア諸国の韓国や台湾、香港等々も日本からダブルスコアといいますか、もっと上なのです。法律の整備をすごく進めているわけです。その中には同一家事労働同一賃金に関する法律があるかとか、セクシュアルハラスメントを禁止する法律があるかとか、そういったものも指標にしていて、ほかの国はやっているということなのです。日本はそれができていないということは、政府はもっとやるべきことがあるのだろうと思います。G7では誰のお尻も見えないぐらいに後退しているわけなのです。さらに今、アジア諸国が物すごく進んでいる中で、これでいいのか。企業にだけ取組を求めるのではなくて、国の法律、公共政策がどうあるべきなのかというところが問われているのだと思います。
 男性育休取得の推進はまさに公共政策、法律でやるべきところで、取得率の情報開示だけではなくて、今後は取得期間、どれだけの日数取っているかというのを情報開示項目にするといったことも必要ですし、男女間賃金格差に関しても、各企業でちゃんとデータを取ってもらって、それを情報開示してもらう。そうしないと世界の投資家からも投資が来ないという本当にとんでもない状況になります。
 岸田総理もこの間の施政方針演説で、男女間賃金格差に関して情報開示を見直すということをおっしゃっていますので、その辺りのロードマップをこの重点方針で明確に示していただきたいということがございます。  最後に、税と社会保障、全世代型社会保障の検討を進められているということで、今日のような議論、まさにジェンダーの視点なのですが、それが有識者会議での議論だったりとか、これからいろいろな制度設計をされていくと思うのですけれども、そこにこういうジェンダーの視点をどういうふうに統合していかれる予定なのか、ぜひお聞きしたいと思います。
 以上です。

○佐藤会長 それでは、佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員 担当省庁の皆様、本当にいろいろと勉強になりました。ありがとうございます。
 ちゃんとよく知らないのですけれども、海外でどうなっているかということで、ジェンダー主流化というところでEUとかはピアタックスということで、共同所得みたいな感じで税がとなると女性の就業意欲の低下とかが起きている。日本と同じようなことが起きているそうで、個人の所得のほうにしていこう、段階的に進めていこうという方向になっているそうなのです。かなりドラスティックな変革をしなくてはいけない。そういった意味では、日本は個人個人で課税されてはいて、配偶者控除というものがオプションであります。そういった意味では、日本のほうが改革しやすいのかなという感じは受けています。なので、しっかり改革をしていくことが重要で、今回、海外の事例とか、先ほど山口委員が日本のシミュレーションも出してくれましたが、そういう事例をもう少し参考にしている例などがあるのかということをお聞きしたいということが1点。
 あと、婚姻の形がいろいろ変わってきていますけれども、事実婚や同性婚については配偶者控除はどのようになっているのかなということを教えていただきたいと思います。
 また、先ほど意見が出ましたけれども、個人所得になりましたから賃金格差が非常に問題になってくると思うのですが、林局長が示されたデータの中で、未婚の方の収入の割合は、高収入の女性はぎゅっと少なくなるというデータが出ておりました。収入格差は子供がいるとか、結婚しているとか、割とそこが問題になるのですけれども、そうではない方のところで収入の格差が起きているということをもう少し重要視してもいいのではないかと思います。
 以上です。

○佐藤会長 それでは、最後になりますが、白波瀬委員、お願いします。

○白波瀬委員 よろしくお願いいたします。
 今日の報告は大変勉強になりましたし、皆様がおっしゃっていることに大体同意いたしますけれども、基本的なところは、制度そのものについての方向性はあまり違わない。ただ、目標値としてどこまで、どれぐらいの早さで変えていくのかということについて、一つ一つの制度についてお話を伺うと、かなり緻密に上げられているということが本当によく分かるのです。それぞれの委員会とかに参加させていただいても、ここでこういうふうになるのかということも分かる。
 ただ、残念ながらマクロなところでその効果が出てこない。この間のギャップ間をどれだけ危機感を持って埋めていくのかという、この一言に尽きるのではないかと思います。そういう意味では、説明の仕方として、例えば荻野次長の御説明はとても分かりやすかったのですけれども、今、個人でやっても、世帯でやっても、結果はこうだよねと。負担が多くなると実際に老後の給付が多くなるのだよという説明をするのか、現状をベースにして変わったらこうですよという説明をするのか、あるいは逆向きに、例えば女性の1人当たりの最低、200万円ぐらいの収入でいきたいということであれば、それを実現するためにどういうことが改善されるとそこまでいけるのかという説明をするのかというのは大きく違うと思うので、就労調整なのですけれども、ある意味から言うと現状制度の中の利益の最大化なのです。皆さんそんなに頭は悪くないので、この制度の中でどれが一番自分たちにとって得かといったらこれしかないよということです。
 そういう意味で現状を変えないと、人々の行動はなかなか起きていかないというところを、みんなが思っているところはないので、デザインをどのようにしていくのかということは一つの落としどころであると。最終的には政治的なことになるかもしれないのですけれども、そういうことです。
 2点目、階層論研究者なので言わせていただきたいのは、これも御報告の最初のところにありました。夫婦といってもいろいろな人たちがいるし、状況といってもいろいろな人たちがいるし、子供の貧困といっても、ひとり親ではなくて二人親も数としては多い。このような現状の中で、試みのところを制度として細かく挙げていただく部分と、社会として全体にいこうと。課税単位は個人ですけれども、基本的に男女という個人のところで平等の達成というのを優先順位を高くして制度改革する。かなり大きな転換にはなりますけれども、分かりやすいマップで続けていただかないと、マクロで本当に効果が出るのは物すごく大変だと思います。そこを御説明並びに制度のほうの修正についても一歩出していただけるとありがたいと感じます。感想です。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 私から1つだけ。山田委員から分かりやすさということがあって、確かに白波瀬委員が言われたように、みんな賢くて、就業調整は短期的な合理性で判断しているのです。なので、もう少し中長期的に考えて合理的判断をする。そのためにきちんと情報を出していくことが大事だと思うのですけれども、ただ、なかなか難しいという話です。
 高橋年金局長に伺いたいのは、適用拡大についてです。例えば今、週28時間、適用拡大の対象です。勤務先で年金適用されている。でも、コロナだから転職しようと。今は規模ごとに違うので、転職しても週28時間でも厚生年金に入れるところを探そうと思ったときに分かるのかどうか。秋に100人以上になります。でも、100人というのは従業員数ではないのです。どの会社が100人以上入っているのかは、年金局しか分からないのです。分かりやすく言えば、30時間加入者数なのですね。だから、皆さんは管理できるのだけれども、働く人が家の近くのあの会社に勤めれば28時間でも厚生年金に入れるかというのは分からないです。こういう情報提供をどうされるのか、伺いたいのです。
 それでは、御意見なり個別の質問がありましたので、可能な範囲で結構ですので、先ほどと同じように、まず最初に財務省の青木大臣官房審議官から、感想でも結構ですのでお願いいたします。

○青木財務省大臣官房審議官 青木です。
 質問も幾つかいただいていましたので、分かる範囲でお答えさせていただきます。
 まず、配偶者控除を廃止したらどれぐらい税収が増えるのかといった御質問がございました。直結はしないのですけれども、今、うちでも配偶者控除が存在することによる減収額は計算していまして、0.4兆円程度になります。もちろん配偶者控除がなくなることによって人々の行動変化が生じて、間接的に様々な行動変容があるかもしれないので、そういったことは加味していませんけれども、配偶者控除についての減収額は今、0.4兆円です。
 それから、なだらかにしている部分の配偶者特別控除も0.1兆円ありますので、そういう意味では2つ合わせて0.5兆円になります。
 他方、もともと配偶者控除というのは扶養控除から派生してできていますので、仮に配偶者控除を廃止したときに、本当に全く働いていないような配偶者を扶養控除に含めるのかどうかとか、様々な論点は出てくると思います。扶養控除になったら、配偶者控除を廃止しても、名前が変わっただけみたいなことになります。
 さらに、扶養控除の在り方を見直すとすると、そもそも家計において養っているというか、扶養しているということの在り方について、税制としてどこまでそれに配慮するのか。例えば年老いた親御さんだったり、お子さんだったり、または成年でもなかなか家から出られなくて、家の中にずっと籠もっていらっしゃるような方とか、いろいろなタイプの方がいると思うのですけれども、それぞれどのように考えていくのかというのは結構難しい問題なのかなと、若干個人的ではありますけれども思います。
 事実婚とか同性婚の場合に配偶者控除が認められるのかどうかといった御質問がありました。この点については、現行法上、民法の規定による婚姻を前提にしていますので、事実婚や同性婚の場合は配偶者控除の適用対象にはなりません。
 個人単位の課税か、家族単位の課税かというものがありました。これは本当に各国でまちまちでして、日本の場合は、課税単位は個人なのですけれども、配偶者控除という形で配偶者に対する配慮をしている。主要国で言うとイギリスなんかはそうです。アメリカやドイツは二分二乗という形で、家族単位で課税することを選択することができるという形になっていますし、フランスの場合は家族単位での課税という形になっていますので、直近の状況かどうかは定かではないのですが、少し前の数字なのですが、そういった形で各国それぞれの考え方に基づいてやっています。
 最後に、いろいろな御意見をいただいたので、御意見に対する受け止めなのですけれども、おっしゃるとおり時代の前提が昔と大分変わってきて、かつ、まさに多様なライフスタイルが基本な世の中になってきていると思います。それに合わせて、税制は公平・中立・簡素という3つの原則がありますけれども、ライフコースに中立的な税制をつくっていく意味で大事だと思っています。
 他方、政治プロセスにこのお話を相談してきますと、公平とか配慮というようなお話も結構出てくるわけです。先ほど若干申し上げましたけれども、この場でも子育てはもっと支援すべしみたいなお話もあると思いますが、特定の属性の方に税制上でどこまで配慮するのかというのは、主税局は抑制的ではあるのですけれども、いろいろな御意見がありますので、そういう御意見の中で、民主主義の世界なので、最終的には政治プロセスでいろいろ決まっていくということになります。
 いずれにしても、我々としては時代の変化に応じて税制をきちんと変えていかなければいけないという気持ちで仕事をさせていただいているつもりでございます。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 次に高橋年金局長から、可能な範囲でお願いします。

○高橋年金局長 年金局長です。
 まず、佐藤会長からの分かりやすさということはそのとおりだと思います。確かに500人規模のところの規模要件は、社会保険完備として企業が人材募集をするときにアピールすれば別なのですけれども、そうではないときは分かりにくいです。そういう意味で、早く規模要件を撤廃するということが大事なのではないか。それが段階的にしか進まないということについては、確かに今回の令和2年改正でも、中小企業の負担増への配慮で段階的にやってくれという声は大きくて、今回このようになっているわけでございますけれども、その中で適用拡大のメリットとか、使用者側にも従業員確保に非常に役立つのだというアピールをいたしました。そういうことをしっかりとやっていきたいと思っています。
 あと、従業員の方に、年金の適用拡大で時間を増やすとよくなるよというのは、スマホとかで簡単に見られる年金シミュレーターというものを4月からやるのですけれども、これから働き方をこう変えて、賃金を増やすと、これだけ年金が増えるよとか、繰り下げをやるともっと増えるとか、簡単なシミュレーターを設計していまして、4月からやりたいと思っています。
 山口委員から、遺族年金を含めて男女差の問題がいろいろあると。これは御指摘のとおりでございまして、遺族年金は非常に男女差が大きくて、就労との関係で課題がございます。これは次の年金制度改正に向けた課題にもなっていまして、いろいろな検討をしています。  そのほかに、例えば配偶者の加給年金とか、昭和の世代の設計は幾つも残っていますので、そういう見直しの議論は進めてまいりたいと考えてございます。
 内藤委員から、年金分割の周知がまだ足りないのではないかと。よくそういう御意見を聞きます。できるだけ周知、拡大に努めてまいりたいと思います。
 ありがとうございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 それでは、厚労省の青山大臣官房審議官、お願いいたします。

○青山厚生労働省大臣官房審議官 青山でございます。
 配偶者手当について一部御意見もいただきましたので、多少感想的なコメントになりますが、させていただきます。
 窪田委員から、配偶者手当はなかなか変わっていないし難しいという話をいただきました。確かに御説明しましたとおり、企業の労使で丁寧に議論していただくことが必要であり、時間がかかるということはあると思いますので、引き続き配偶者手当の見直しがどうなされていくのか、慎重に注視して、情報提供していきたいと思っております。
 おっしゃったように、賃金制度全体がある中で配偶者手当だけを見直すというのは実際はないのだと思います。従業員のモチベーションや従業員構成など、いろいろ考えて賃金制度が体系づけられてつくられているので、そうした中では賃金制度全体を見直す中で配偶者手当も見直していくということが多いですし、今後も配偶者手当だけではなくて、会社としてどういうポリシーで処遇をしていくかということを労使で話し合う。能力、成果主義に行くのかとか、ライフスタイルの多様化に処遇制度がどう対応するかといったことをよく話し合って、その中で配偶者手当をどうしますかということなのではないかと思いますので、今回我々が提供している参考事例はそういうことがたくさん出ていますので、そういうものも引き続き共有しながら、実効ある見直しを促していきたいと思います。
 そうした場合に、先ほどから個人単位か世帯単位かという議論が税・社会保障の観点を中心にされていますけれども、企業の配偶者手当も従業員の奥に家族というものを見据えて会社が処遇しているわけです。なぜかというと会社は生活給という性格でも賃金を出している。そうしますと、生活給をどうしていくのかとか、生活給を見るときに、個人で見るのか、世帯を見るのかとか、収入のない配偶者はどうするのかとか、そういう観点を企業においても検討していくと思いますので、大きな目で今後も真摯な話合い、見直しが行われるよう、我々もサポートしていきたいと思っております。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 それでは、人事院の荻野次長、お願いいたします。

○荻野次長 いろいろ貴重なお話を聞かせていただき、大変ありがとうございます。
 御指摘で、今の制度は昭和の時代にできたもので、それが現在に合わなくなってきているのではないかという御指摘もいただいて、国家公務員の扶養手当、配偶者に係るものの支給率は先ほど最新の数字で30.7%と申し上げたのですけれども、確かに平成に入ってからの数字を見ても、随分と減少してきている状況だというのは確かだと思っています。私どもも、そういった状況に応じまして、さきほど申し上げましたとおり必要な見直しを行ってきているところでございます。
 どうしても公務員の特に給与になりますと、民間準拠の部分については基本に置く必要がございますけれども、その中で必要な見直し、もちろんそれだけではありません。公務の独自の状況等についても勘案しながらということになりますけれども、今後も民間企業の状況等を注視しまして、必要な見直しについては続けて行っていきたいと思います。
 以上でございます。

○佐藤会長 人事院は民間準拠と言うときと、民間より先にと言うときがあるのですね。使い分けて、民間より先に変えていくために、国から変えていくのだと言っているときもあるので、もしかしたらそっちを選んでもいい時期かもしれません。勝手なことを言ってすみません。
 それでは、内閣官房の鹿沼審議官、お願いします。

○鹿沼審議官 本日は貴重なお話をありがとうございます。
 私どもはまさに少子高齢化社会から今後、人口減少社会が到来していく中で、先ほども申し上げましたけれども、男女が希望どおり働ける社会づくりとか、勤労者皆社会保険といった検討を深めていきたいと思います。
 個別の話につきましては、各省庁からそれぞれお話があったとおりだとは思いますが、今後、まさに私どももこれから検討を深めていこうというところでございますので、男女共同参画局さんや各省庁と連携しながら、先ほど言ったテーマ、議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 今日は本当に各省庁から具体的に分かりやすい御説明をいただいてよかったと思います。
 もしどうしても言い残したことがある方がいらっしゃれば、委員の方から。もうそんなにないですから、せっかくの機会ですので。
 白波瀬委員、どうぞ。

○白波瀬委員 繰り返しというか、大したことではないのですけれども、今、青山審議官のほうからもありましたように、ただ単に配偶者控除の話だけではないということなのですが、その奥にあるのは、どういう夫婦の在り方であって、どういう関係なのか。今、生活給ということがありましたけれども、その世帯を中心とした生活保障機能がどの程度機能しているのか、していないのか。まさしくその議論だと思います。男女というところで配偶者控除が中心になりがちなのですけれども、ベースにあるのは昭和の家族という言葉に隠されたところがまさしく青山審議官がおっしゃったようなところなのです。
 逆に言えば、今、我々が強調していたのは、急に個人か世帯かという単位をどうのというところというよりも、そこに至るまでのこれまでの歴史の絡まった複雑な側面をどの程度まで丁寧に対応しながら変えていくのかというところで、御理解なり、多少の非難もあるけれども、変えていかなければいけないというところがあるのではないですかという全体の論調だと思いますので、よろしくお願いいたします。

○佐藤会長 改革の方向は皆さん共有されているのだと思います。税制も年金制度も、あと企業は自主的にやっていますからサポートする。ただ、もう少し連携をきちんと取っていただきながら、スピードもということだと思います。  いいですか。
 では、最後に林局長のほうから何かあればよろしくお願いします。

○林男女共同参画局長 先生方、また各省の幹部の皆様、本日は本当にありがとうございました。
 私どもの問題意識は2つありまして、1つは税と社会保障と民間企業の配偶者手当、一つ一つはちゃんとやっていても、三位一体になって女性の就労を阻害している、あるいは女性の働き方に制約を設けてしまっているという問題意識でございましたので、今日、関係省庁の皆様においでいただいて、一緒に議論できたのはよかったなと思っています。
 また、三位一体の制度が労働市場の構造と非常に深くリンクしているということもあると思いますし、男女間賃金格差の問題は、この間、総理からも施政方針演説でありましたように、企業の開示を進めていくということで、こちらも厚労省や金融庁と相談しながら進めようとしているところでございます。これとセット販売で、しっかり前に進めていかないといけないということを改めて感じました。
 また、私どもは婚姻関係が昭和の時代よりも本当に不安定になっているというところが、この問題について非常に意味があるのではないかと思っております。だからこそ、例えば女性の経済的自立ということを今回、女性版骨太の方針の柱の一つに持ってきたという側面がございます。女性が非正規雇用で働いている、賃金は低めで夫の扶養の範囲内で働いているという状況は、賃金を引き上げる上で阻害要因になっている側面もございます。非正規雇用の人の賃金を上げようとすると、上げなくていいですと言われることがあります。それは上げてしまうと夫の扶養を超えてしまうので、もう上げなくていいですと言われてしまうのです。夫がいる人はそれでよろしいのですけれども、いない人にとっては単に賃上げの機会を失うという大変残念なことなわけでありまして、そういう意味でも、三位一体になった仕組みが結果的に就業調整になっており、これは恐らく行動経済学のナッジみたいなもので、もしかしたら心理的な壁みたいなもので、一つ一つ計算したらそれほどでもなくスムーズになっていても、みんな意識して扶養の範囲内にするということが起きているのではないかと思います。それが女性の賃金が上がりにくい構造にもつながっている可能性もあって、そういう意味では、引き続き女性の視点から見た税・社会保障の問題は、まず、就業調整との関係、あるいは労働市場、賃金との関係、また、女性の人生が長い上に、離婚も含めてリスクが多くなっていることとの関係、分配においても、高所得層に専業主婦が多いという実態との関係など、引き続きしっかり議論していく必要があるのではないかと感じました。
 本日は本当にどうもありがとうございました。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 本当にお忙しい各役所の方に来ていただいて、長時間お付き合いいただいて、ありがとうございました。
 委員の皆さんも、活発な議論をしていただいて、ありがとうございます。
 それでは、ちょうど時間になりましたので、今日はここで終了させていただければと思います。また次回もよろしくお願いいたします。