- 日時: 平成18年5月15日(月) 15:00~17:00
- 場所: 内閣府本府庁舎3階特別会議室
(開催要領)
- 出席委員:
- 鹿嶋会長
- 勝又委員
- 神田委員
- 林委員
- 古川委員
- 山口委員
- 横田委員
- 議題
- (1) 開会
- (2) 多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する有識者ヒアリング及び質疑応答
- 政策研究大学院大学 黒澤 昌子 教授 「女性の能力開発の実態」
- お茶の水女子大学 三輪 建二 教授 「女性の生涯学習 成人教育学の立場を中心に」
- (3) 閉会
(配布資料)
- 資料1
- 有識者ヒアリング資料
- 資料1-1
-
黒澤晶子教授資料 [PDF形式:61KB]
- 資料1-2
-
三輪建二教授資料 [PDF形式:1000KB]
三輪建二教授資料その2 [PDF形式:549KB]
- 資料2
- 第7回監視・影響調査専門調査会議事録
【黒澤教授講義】
- 女性の能力開発については、女性の方が仕事と私生活の両立が困難であり、離職率が高いため、企業内訓練において統計的差別が行われやすく、その結果女性自身も人的投資を控えたり就労意欲が下がったりという悪循環が生じているのではないかと考えられる。そこで、特に女性の能力開発へ支援が必要となる。具体的には、①仕事と生活が両立しやすい職場環境の整備、②個別の能力や働きに応じた処遇、③転職しやすい再就職市場の整備、④能力開発への資金支援、⑤能力開発機会の提供が必要となる。
- 理学・工学の分野に進む女性が少ないという実態があるが、この分野では、特にキャリアを中断した場合の本人の技術の陳腐化の影響が大きいため、企業で統計的差別が行われているのではないか。
- 理系の大卒の場合、企業内訓練の機会が女性の方が少なく、文系の大卒も延べ時間を見てみると男女差がある。こうしたことが女性が男性より自己啓発を行うことの背景にあると推察される。
- 同一企業に勤めている男女を比較すると男性の方がOff-JTを受ける確率が高まる。
- 製造業ではoff-JTの受講率の男女格差はないが、専門職や大卒者の比率の高い産業で格差が大きい。そして、大企業の方で女性の受講率が低くなっている。
- 経済産業省の委託調査では、Off-JT実施率は、役ありの正社員では40歳以上で女性が高く、非典型では、40歳未満で女性が高い。自己啓発では、正社員では女性が高く、非典型では男性の方が高い。
- 教育訓練給付制度は、企業内訓練の対象外とされているグループが継続的に個人主導の能力開発をするということで一定の役割を果たしているが、一般被保険者であった期間が5年以上必要とされるため、特に労働市場からいったん退出した女性で対象になる人の比率が低くなっており、制度の拡充、新設等をすべきではないか。
【質疑応答】
- 女性は資格をとる傾向が高いように思う。MBA法科大学の女性の比率が高いのも高確率で弁護士になれそうだからではないか。
→資格は重要性ではあるが、実際、将来的キャリア・賃金には結びついていない。教育訓練給付の利用とその後の給与の関係は、男性は有意な効果なし、女性は有意にマイナスとなっている。自分の職務にどう有益になるか、今後のキャリア設計との関係はどうなるか等についてアドバイスなしに受講して労働市場とのミスマッチが生じているのではないか。アドバイスの必要性を感じる。 - 企業内訓練されているほど、自己啓発するが、逆の因果関係かもしれない。
- 訓練の成果についての調査はあるか。
→何年後の状況をみれば良いのか難しいが、2年後をみると、生産性、賃金にある程度効果が見えている。 - 理系で男女差が大きい背景は何か。
→推測だが、理系は企業が従業員を多く訓練する必要があるため、離職率の高い女性には、男性理系の大卒が就くような仕事に就かせていないのではないか。 - 自己啓発の中身に男女や年齢、働き方等で違いがあるか。
→自己啓発の内容は、無業・非典型では資格に結びつくものが多い。正社員では特に女性は語学など。非典型男性は専門性が高いため、自分の職務に直結した専門性の高い訓練となっていたと思う。 - 高校までの勉強と進学指導で、「女性は数学嫌いだから、あるいは得意でないなら理系はやめなさい」という流れがあるのではないか。
【三輪教授講義】
- 一見合理的なコミュニケーション能力を持つ定年退職男性の地域デビューにより、今まで女性たちが主体となって築き上げてきた地域のコミュニケーション・ネットワークが崩れてしまうのではないかという問題意識がある。
- 女性(婦人)学習の流れは、50年代に承り学習から自ら学ぶ学習へ、そして共同学習運動、60年代に系統学習へ、70年代から80年代にかけて社会教育から生涯学習へ、集団志向から個人志向へと転換がなされ、70年代にジェンダー学の登場と進展、80年代以降知識技術の高度化が進展し、また婦人学級以外の学習機会の整備が強調される一方、「インフォーマルな生涯学習」が出てきた。
- このような展開に伴い、行政の組織も80年代に「社会教育課」という名称から「生涯学習課」等の名称に変わり、女性の教育・学習が教育委員会だけに属するものではなくなるといった流れもあった。
- 生涯学習振興における行政の役割は、学習情報の提供と男女共同参画等の現代的課題の講座の提供ということが大きい。
- 90年代以降、行政との協働やグループ学習、女性リーダーの養成という流れとなるが、行政と協働する、提言を出すための能力開発をエンパワーメントという形で表現するようになってきた。
- たとえ女性学を学んでも、その成果がすぐに行動へとは結びつかないということがある。自分たちでグループを作って活動するなど、講座の組み立て方自体を自主性やエンパワーメントにつながるものにしていく必要がある。また、人生経験、職務経験や価値観を振り返り自覚するという作業が重要。
【質疑応答】
- 生涯学習の変化の要因は何か。
→学者主導ではなく、基本的には社会構造の変化によるものではないか。最近の行政との協働については行政主導もあるのではないか。 - 生涯学習の評価をどう考えていくか。
→評価は難しい。なじまないものもある。
→応募状況や満足度、フォローアップ調査などもあるが、質的な評価は難しい。 - 生涯学習は一貫して共同学習だったのではないか。
→共同学習も一貫してあったが、一時期行政的にそこに焦点を当てなくなったというのはある。 - 生涯学習は、キャリア形成等個人志向と社会参画等社会志向が分化したところが問題だと思う。男女共同参画がそれをつなげる枠になるのではないか。
- 参加型学習については、まとめて一つの方向を出す時期ではないか。プログラムの形態が講義では表面的なものになってしまう。それぞれの経験を取り入れながら学習するのが成人の学習の特徴。
- 自分たちで企画・マネージメントをすることは今まで欠けていた視点だが、大切。
- 生涯学習には点数がつけられないけれど、しなければならないこと。最近は学習よりも情報をどうつかむかが大事。
- 企画力・提案する力、地域や男性社会の中での交渉力を生涯学習で身につけて、多様な選択につないでいくことの必要性を感じた。
- なぜ「成人の」ではなく「成人女性の」生涯学習なのか。支配することを中心において物を発信していく文化を身につけてしまった世代の男性が地域に出てくることを考えると、「成人女性の」でないほうが良いのではないのか。
→男性も身近なところから話ができるようにならなければならないし、女性も力をつけて最終的には両方良いところをいかし合いながら学ぶことが大切だと思う。
(以上)