監視・影響調査専門調査会(第31回)議事録

  • 日時: 平成20年10月3日(金) 9:30~11:51
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席委員:
    • 監視・影響調査専門調査会:
    • 鹿嶋会長
    • 植本委員
    • 大沢委員
    • 勝又委員
    • 袖井委員
    • 橘木委員
    • 畠中委員
    • 山口委員
    • 横田委員
    • 生活困難を抱える男女に関する検討会:
    • 阿部委員
    • 白波瀬委員
    • 湯澤委員
    • ※生活困難を抱える男女に関する検討会と合同開催
  2. 議題
    • (1) 橘木委員発表 「深刻な日本の貧困問題」
    • (2) 阿部委員発表 「日本における貧困の実態」
    • (3) これまでの意見と当面の作業について
  3. 議事録
鹿嶋会長
おはようございます。ただいまから、男女共同参画会議「監視・影響調査専門調査会」の第31回の会合を開催させていただきます。今回は「第2回生活困難を抱える男女に関する検討会」との合同開催となっております。
 まだ何人かの方はお見えになっていませんが、皆さん、お忙しい中、御参加いただきまして本当にありがとうございました。
 それでは、本日の審議を進めさせていただきます。まず「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女」というテーマにつきまして、橘木委員と阿部委員からお話をしていただき、それぞれ質疑応答を実施して、その後、これまでの意見と当面の作業について意見交換を予定しております。
 まず、橘木委員、どうぞよろしくお願いします。
坂橘木委員
はい。時間は何分ですか。
鹿嶋会長
30分程度です。
坂橘木委員
わかりました。
 ただいま御紹介に預かりました同志社大学の橘木と申します。今日は、阿部さんと私が2人で報告することになっていまして、阿部さんのレジュメを拝見すると、数字がいっぱい入っておりますので、私の報告は補完という意味で、こっちはクオンティタティブ、こっちはクオリティタティブという貧困の問題を話させていただきます。
 お手元に私と浦川邦夫の2人で東大出版会から出版しました『日本の貧困研究』という書物の第10章のコピーが配付されています。『日本の貧困研究』の現物はかなり分厚い本で、数字、計量分析、かなりレベルの高いことをやっておりまして、経済学をやっていない人にとっては非常に難しい文献ですので、数字、数学、統計は全部捨象して、クオリティタティブの話をさせていただきます。
 ついでながら、浦川邦夫という方は、京大の大学院を出られて、今、九州大学で専任講師をされている方です。2人の著作ということを強調したいと思います。
 お手元に配りました資料1-2の第10章というところにこの本の要約が書いてございますので、その要約を参照していただければ、日本の貧困問題はどんなふうになっているかということがわかっていただけますので、第1章~第10章まで、どんなことをやっているかということを御紹介したいと思います。
 まず、第1章は、貧困を平安時代、あるいは奈良時代のころからたどりまして、日本の歴史、1,000年以上の貧困がどうであるかという、現代までの比較をやっています。当然のことながら、近代の明治、大正、昭和が最大の関心ですが、昔の貧困と今の貧困とは性質が違う。昔の貧困というのは、飢餓とか、そんな問題で、人が食べられないから死んでいくというような話が貧困であった。今の貧困というのは、そういう貧困とは全然違う。
 竹中元経済大臣が日本には貧困問題はないという発言を2~3年前にされたことがあるんですが、彼の言いたいことは、飢餓とか、そういうのはないという貧困の意味で言われたんではないかという、彼の大胆な発言に対する私なりの弁護を多少できるかと思います。
 それから、戦前と戦後の貧困とを比較しますと、戦前、明治とか大正とか、第2次大戦前の貧困を一言で片づければ、今の貧困よりもはるかに深刻であったということの統計的な事実も出しております。それが第1章でございます。
 第2章は、ほかの先進国との貧困の比較でございまして、特に日本と同じ経済制度を持っているヨーロッパやアメリカ、いわゆる先進諸国と言われている国との比較において、主に取り上げた国は、アメリカ、イギリス、北欧でございます。
 アメリカはいわゆる資本主義の盟主であり、競争賛美の国の代表です。
 なぜイギリスが入っているかというと、貧困問題を研究した方はよく御存じのことなんですが、研究水準はイギリスが一番高い。世界の先進国の中で、昔から非常にレベルの高い貧困研究をやっていますので、そういうものを比較するという目的です。
 北欧は、皆さん御存じのように福祉国家の最先端の国でございますから、比較の価値があるというわけです。
 この4つの国を比較しますと、アメリカの貧困の問題を考えた場合と、日本の貧困を考えたときに決定的な違いがあるということをここで強調したいと思います。どういうことかというと、アメリカの貧困の場合は、だれが貧困者かということを注目すると、人種の問題と移民の問題が出てくるということでございます。これは避けて通れない。
 ところが、日本の場合は、勿論移民もいるし、人種の問題もありますが、基本的にはホモジーニアスな国民ですので、そういう問題がアメリカほど出てこない。したがって、貧困がだれであるかということに注目した場合、アメリカと日本で決定的な違いがある。
 後で阿部先生から報告あると思いますが、アメリカが17.1%、日本が15.3%という貧困率であれば、日本がホモジーニアスな国でありながら15.3%の貧困率の高さというのは、考えようによってはアメリカよりも深刻である。人種問題だとか移民問題で貧困者の多いのがアメリカであって、日本はホモジーニアスな国であれば、貧困者は人種と移民と無関係なところで起こっているという意味で、日本の貧困問題の方が、考えようによっては深刻であるということが第2章に書いてあります。
 第3章以下は、日本の貧困率をいろんな角度から、貧困が何%か、いろんな指標を用いてやっています。これは物すごくテクニカルな話ですので、パスします。阿部さんが後で数字をいっぱい出されますので、そっちに期待して、飛ばします。
 しかしながら、第3章でわかったことをある程度要約すれば、日本の貧困者がだれであるかということで、いろんな統計分析をやったんですが、4つの代表のグループがある。1つは高齢単身者、2つ目は母子家庭、3番目は若者、4番目は身体的・肉体的・精神的なハンディキャップのある人、この4つが日本の貧困の顔であると理解していただいて結構でございます。
 したがいまして、アメリカは人種と移民、日本は高齢者、母子家庭、若者、そういう人が入ってくるということは、貧困がだれであるかということが非常に好対照になっているということを理解できる。そのことを我々の分析ではサポートしたということになります。
 ついでながら、貧困者の中で母子家庭の占める比率はそんなに高くないですが、母子家庭の約半分が貧困者であるという数字が出ているというのが特徴的です。
 我々の研究では、社会保障制度が貧困の削減にどれほど役立っているかということをいろんな角度から勉強しまして、幾つかの重要なファクトファインディングがございますので、それを述べさせていただきたいと思います。
 どんな社会保障制度があるかというと、例えば、公的年金制度だとか、生活保護制度だとか、最低賃金制度というのは社会保障制度には入りませんが、そういう制度がある。そういう制度が日本の貧困を生まないのにどれだけ役立っているかというのを分析したのが、この本の中の分析でございます。
 1つの結論は、公的年金制度の重要性を主張しております。高齢者が引退した後、年金を受給するわけですが、公的年金制度があることが高齢者の貧困率の削減に相当役立っているという結果を出しております。したがいまして、逆に言えば、公的年金制度がなければ、日本は高齢の貧困者だらけという社会になっていたのを、幸いなことに公的年金制度が不十分ながら定着してきましたので、公的年金制度というものが貧困を削減するのに役立っているということが第1番目の主張でございます。
 これは、日本の社会の在り方、あるいは家族の在り方と非常に密接に結びついておりまして、戦前だとか、社会保障元年といわれる1971年以前では、公的年金制度は非常に不十分だった。そういうときには一体だれが高齢者の経済保障をやっていたかというと、3世代住居や、あるいは成人した子どもが親に送金をするというような形で、家族の間で経済支援をやっていたのが日本の過去の姿でございます。
 公的年金制度が充実してきたということがあって、年老いた親と成人した子どもが経済生活を独立してやるという制度が日本においてほぼ定着してきたということでございまして、公的年金制度の充実が高齢者の貧困を生まない要因として非常に重要な役割を果たしているという結論でございます。かなり込み入った数量分析を使っておりますが、それは省略しますので、御関心のある方はこの本を読んでいただければ、どんな方法で用いているかというのがわかっていただけるかと思います。
 次は、生活保護制度です。これはどんな制度であるかというのは、ここにおられる方はみんな御存じなので、説明する必要はないと思いますが、日本の生活保護制度が一体どれだけ日本の貧困者の削減に貢献してきたかということを、数字を用いて出しております。これは私たちのオリジナルな分析方法ではなくて、ベッカーマンというイギリスの経済学者の開発した方法を日本でそのまま応用したわけで、その結果を御紹介しますと、どういうことがわかったかというと、生活保護制度を考えるときは3つの視点がある。
 生活保護基準以下の所得の人が生活保護支給を一体どれだけ受けているかというのが第1番目の視点でございます。
 第2番目の視点は、同じく生活保護基準以下の所得しかない人が生活保護支給を受けて、結果として生活保護基準よりも高い所得を得ているということもあり得るわけです。ポバティーラインという生活保護基準より下の人は、本来、生活保護をもらう資格があるんですが、その資格を受けたときに、もらった額が生活保護基準より上になった。要するに、貧困ラインよりも上の所得を政府からもらっているというのが第2番目の視点です。
 第3番目の視点は、もともと生活保護基準より上にいる所得の人が生活保護をもらっているケースがある。
 そういう意味で、2番目と3番目は、言ってみれば生活保護制度に無駄があるという解釈です。生活保護基準以下の所得の人が生活保護支給を受けて、生活保護基準までの所得をいただいたという第1番目の視点は、生活保護支給制度の目的に沿った制度であると理解できます。したがいまして、第1番目と第2番目と第3番目の視点から日本の生活保護制度を評価すると、こういう結果が得られました。
 第1番目の生活保護基準以下の所得である人がどれだけ生活保護支給を受けて貧困者でなくなっているかというテストをしますと、極めて不十分であるというのが結果でございます。したがいまして、日本は、生活保護制度は貧困の削減に余り役立っていない。これはいろいろな問題があります。いろんな事例も社会で報告されていますように、捕捉率が不十分だとか、ミーンズテストが厳しいとか、いろんな形で、本来ならば生活保護を受けられる人が受けていないというふうに解釈していただいて結構でございます。
 第2番目と第3番目の、言ってみれば生活保護制度の無駄に関しては、日本の政府は効率的にやっている。要するに、無駄の支給は少ないという意味で、日本の生活保護制度、第2番目と第3番目の視点はかなりうまくいっているというわけで、政府は生活保護制度をうまく運営しているけれども、第1番目に関しては極めて不十分というのがここでの結論でございます。
 ついでながら、日本では捕捉率という概念がございます。本来ならば生活保護を受けられる資格のある人がどれだけ捕捉されているか、実際に受けることができているかというのが捕捉率という概念でございます。これはいろんな分析がございますが、日本の場合は大体20%以下の率しかないわけで、残り80%は、本来ならば生活保護制度の恩恵を受ける資格がありながら受けていないというのが日本の捕捉率の現状でございます。これは私たちの数字と、ほかの方のやった数字と、そんなに違いはないので、一般的に言えるのではないでしょうか。
 繰り返しになりますが、例えばミーンズテストの問題だとか、あるいは生活保護制度は、成人男性であればまずもらえない、まず働けということが出てまいりまして、例え生活保護基準よりも低い所得であっても受けていない人が結構いる。
 皆さん御存じのように、昨日、大阪のビデオ個室店で15人亡くなりました。生活保護をもらっていた人がいたらしいんですけれども、非常に難しい問題を提起している。ギャンブルですって低所得者になった人は本人の責任ではないか。こういう人たちに生活保護支給をするか、しないかというのは大変な問題を提起しているなというのを、昨日のテレビのニュースを見ながら感じました。皆さんもどう思われるか、後で議論できればいいかなと思います。
 それが日本の生活保護制度が一体どれだけ機能しているかという分析の結果でございます。
 次は、最低賃金制度でございます。最低賃金制度というのは、日本が法律でもって、1時間当たりの賃金はこれ以上でないと食べていけないから、これだけの賃金を出しなさいという制度でございますが、日本の場合は、最低賃金制度というのは、皆さん御存じのように、生活保護基準よりも低いのが現状でございますので、政府も最低賃金は上げたいということを盛んに主張しているんですが、なかなか最低賃金が上げられるまでにはいっていない。私たちのシミュレーションでは、最低賃金を上げると、限定的ではありますが、貧困者の数を減らすのに貢献するというのを数字で出しておりますので、最低賃金のアップというのは必要ではないかと思います。
 最低賃金制度というのは、今の日本の社会においては大変な問題になっておりまして、余りにも日本の最低賃金が低過ぎるというのは、日本の社会でかなり多くの人が気がついていますが、なかなか上げられない。上げられない理由が私は2つほどあるんではないかと思うんです。経営者の反対が強いというのは当然でございまして、経営者は必ずこういう論理を持ってくる。最低賃金を上げたら、おれたちの企業はつぶれる、つぶれてもいいのかという論理でございます。
 私が数日前の読売新聞で書いたことなんですが、ヨーロッパの企業では、特にデンマークなどは、こういう発想をするんです。人に賃金を払うときは、最低限、生きていくだけの賃金を出せない企業は社会的存在意義がないということを国民がわかっているらしいんです。デンマークの方から聞いたとき、私は目からうろこが落ちた思いで、人を雇うのであれば、最低食べていけるだけの賃金を出せない企業は退場しろということを言っている国がある。
 日本でそんな発想は全くない。とにかく企業は絶対に存続しなければいけないし、最低賃金を上げたら企業がつぶれていいのかというのが経営側の発想なわけです。今、申し上げましたようなデンマークの発想が日本にすぐには入らないのはよくわかっています。しかしそういう考え方も一部の国には存在するということでございます。
 もう一つの理由は、これは経営側がよく持ってくる論理なのですが、最低賃金を受けている人に注目すると、多くはパートタイムで、既婚の女性である。もう一つのグループは若者である。パートタイムで既婚の女性というのは、夫がいる限り、生活には困らないだろう。若者も、17とか24~25の若者であれば、親が経済的にサポートしているだろう。そういう人たちが最低賃金の辺りにいても生活に困らないから、最低賃金は上げなくてもいいという論理が、日本の社会で戦後50年、ずっと続いてきました。
 こういうような2つの論理でもって最低賃金は低く抑えられてきたんですが、第2番目の論理は、離婚率が増えて、母子家庭の数が非常に増えている。若者も、10代後半、あるいは20代前半であれば親のサポートは得られるでしょうが、30とか、そんな若者であれば最低賃金では食っていけないし、結婚などはとてもできないというわけで、自分の賃金、所得だけで食べていけない人の割合が増えております。そういう意味で、2番目の論理もなかなか通用しない時代になっているというわけで、最低賃金を上げるという政策は非常に重要ではないか。
 したがって、経営側にどういう論理でもって最低賃金を上げることを認めさせるかというのは、今後、日本において大きな検討課題を突きつけられているというのが私が今、一生懸命やっていることでございます。
 それが最低賃金制度の役割でございまして、結論は、最低賃金を上げれば貧困の削減に貢献するということがわかりました。しかしながら、所得分配全般の平等化に貢献する割合は非常に限定的であるということも得られております。貧困者の削減には貢献するけれども、高所得者から低所得者全般の分配の平等にはそんなに貢献しないというのが結論でございました。
 その次の章は、日本人は貧困だとか、格差とか、そういう問題をどういうふうに倫理的に見ているかということについてアンケート調査をやりました。その結果を要約しますと、ロールジアンだとか、リバタリアンとか、いろんな哲学・倫理基準を使っておりますが、そんな難しいことは一切捨象して、言葉で結論を申しますと、日本人は結構、貧困者のない世界が望ましいという価値判断をしている人が多いです。非常にいい倫理観を持っている国民だということがわかった。我々の言葉で言えば、モディファイドロールジアンを、ロールズというのはアメリカの20世紀最大の哲学者なのですが、その方の言っていることの倫理をサポートする人が結構多いということがわかったので、非常に重要なファインディングだと思うのです。
 しかし、附属条件がついてまいりまして、その人がどの辺りの所得にいるか、自分が高所得者か、自分が中所得者か、自分が低所得者かによって、その価値判断は微妙に変わっているということも事実でございます。当然だと思います。高所得者であれば、いわゆる低所得者、貧困者がいない社会ということに対する支持は少ない。所得が低くなるほど、それに対する支持は高いというのも直感的にわかる議論でございます。
 では、政府が一体どれだけ再分配をやったらいいかという政策もございます。要するに、政府が税金やら社会保障制度でもって低所得者の所得を上げるという政策に対して、どういう価値判断を持っているかといいますと、自分より所得の高い人がますます所得が増えるということに対する抵抗感は非常に強い。これも直感的によくわかる論理です。したがいまして、こういう問題を扱うときは、その人が所得分配の位置でどこにいるか、高所得にいるのか、中所得にいるのか、低所得者にいるのか、貧困者であるか、どの地位にいるかによって倫理観が非常に違うというのが、この本でわかったことでございました。
 最後に、6番で「社会的排除と相対的剥奪」ということを話すつもりだったのですが、阿部先生が見事なレジュメを用意されて、この後お話しされますので、私はソーシャルエクスクルージョンとリラティブデプリベーションの話は致しません。阿部さんに期待してください。
 ちょうど時間になりましたので、私の報告はこれで終わらせていただきます。以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 質問の時間は15分程度しか用意していないんですが、今日の質問、意見の交換はポイントを置いて、こういう点でということで決めているわけではありませんので、今の橘木委員の解説に対して、質問、意見があれば、どうぞ御自由に、どういう視点からでも結構ですので、お願いします。
 7月の専門調査会では、金銭的な面と同時に、社会的、構造的な面といいますか、家族の変容とか、そういう問題も大分議論が出ました。今、制度的な問題の中で一部、母子家庭とか、離婚増とかは触れておりますが、その辺りで何か補足的に付け加えていただくことはありますか。
坂橘木委員
余りございませんが、日本においては、貧困者だとか低所得者ということを考えるときは、繰り返しになりますが、家族の変容というものが非常に大きく背後にある。例えば、3世代住宅というのは激減の状況でございます。
 それと、もう一つは、家族の在り方の変容に加えて、日本の産業構造の変化、あるいは労働移動の変化ということも非常に密接に結びついているということを一言述べます。
 どういうことかといいますと、鹿児島で生まれて育った子どもが東京の大学を出て鹿児島に戻るケースは余りない。大体、東京に残って勤め始めるケースが多いです。昔、皆さん御存じのように、地域間労働移動が非常に大きな社会が日本の特徴でございました。地方で育って、中央で働く、みんな労働移動するというのが高度成長期以降、日本の特徴的な事象でございましたので、こういうような産業構造の変化、あるいは労働移動の変化というのは、家族の変容を背後からプッシュしたという解釈もできます。鹿児島で生まれて鹿児島で育っても、職がないのであれば、東京、大阪に出てこざるを得ないという構造の変化というものがあったわけで、家族が別居するという状況を経済の論理もプッシュしたという解釈もしていただきたいということでございます。
 一昔前であれば、東京に出てきた成人した子どもが鹿児島に残された親に送金はしていた。ところが、送金という手段がだんだんウェイトが低くなってきた。もう一つのことを言えば、東京に住んでいる息子、娘が鹿児島にいる親を呼んで東京で一緒に住もうというオプションだってあるんですが、それがだんだんなくなってきた。
 日本映画の最大のヒット作、小津監督の『東京物語』という映画は皆さん御記憶あるかと思います。広島の田舎で育った子どもが横浜か何かで勤めていて、親は横浜に出てきてしばらく一緒にいるんだけれども、都会になじめない、嫁さんと余りうまくいかないということで広島の田舎に帰るというストーリーがございました。『東京物語』は経済的要因と家族の在り方の象徴になっている映画でございまして、まさに私が今、言いたかったことを物語っているということを付け加えます。済みません、ちょっと長くなりました。
鹿嶋会長
どうぞ。
山口委員
大変興味深く伺いました。高所得者、中所得者、低所得者全体を、日本の場合には、金額とか、パーセンテージとか、そういうお調べがおありになったのかどうか。
坂橘木委員
はい、そうです。
山口委員
それがもしあったら、教えていただきたい。
坂橘木委員
申し訳ございませんが、それは一言ではちょっと無理です。
山口委員
ああ、そうですか。所得がある程度あって満足している人、不満と思うのは、例えば、私などは、時間がないというか、そういうのが貧しさの1つかなとも思うんですが、そういう貧困感の中身というのは相当詳しくお調べになったんでしょうか。
坂橘木委員
これは、阿部さんの社会的排除、例えば、お年寄りだって、ものすごくお金を持っている人もいるわけです。ところが、1人で住んでいると非常に不安だとか、あるいは話し相手がいないとか、そういう問題から不幸を感じる人だっているわけです。私の今までお話ししたのは、そういう問題は横に置いて、とにかく食べていけるか、食べていけないかということだけで貧困をしゃべっておりますので、例えば、お年寄りが話し相手がいないから、非常に疎外感を感じるとか、そういうような形から貧困を語ることだって当然可能ですから、そういう問題は阿部さんに期待しましょう。
山口委員
ありがとうございました。先ほどの細かいのは、これを読むと出てくるわけですか。
坂橘木委員
ちょっと難しいですけれどもね。申し訳ない。
山口委員
ありがとうございます。
鹿嶋会長
どうぞ。
白波瀬委員
済みません。技術的な細かい質問というか、確認になるんですけれども、生活保護のところで、3つの側面から制度の機能を検討するということがあったんですけれども、そこのところが若干混乱しておりまして、多分これは非常に重要なことだと思うので確認をさせていただきたいんです。まず、1点については、基準以下。ただ、ポバティレートという形で、相対的な貧困率と生活ということですか。
坂橘木委員
違います。貧困ラインというのを設定します。これ以下の所得の人を貧困というふうに定義して、それ以下の人が貧困ラインまで生活保護でもらっているなら第1番目の基準を満たしている。貧困ラインよりも上の所得を生活保護からもらっているというのが第2番目の不効率性です。
白波瀬委員
そのときの貧困ラインというのはどういう形ですか。
坂橘木委員
それは相対的貧困で、いわゆるOECDのミディアムインカムの50%のラインを貧困ラインとして計測しています。
白波瀬委員
わかりました。ありがとうございました。
鹿嶋会長
大沢先生、どうぞ。
大沢委員
ありがとうございました。公的年金制度によって貧困率がかなり改善されているのではないかということでしたが、若者のパートタイマーが増えていて、今、20~44歳ぐらいの層で親と同居している人がかなりいて、独身で、そのうちの半数ぐらいはパートタイマーと言われています。そうすると、今は親の年金によって生活を支えられている若者が、今後、自立できないという問題が出てくる可能性があるのではないかということなんです。
 つまり、今の年金制度はいいかもしれないけれども、将来的に見て、この制度を変えていく必要があるのではないかということが1点と、もう一つは、そこにパートタイマーの問題、先生がおっしゃったように、私のヒアリングの中でも、パートで働いていたけれども、生活保護をもらった方が生活が楽なので、今は生活保護をもらっているんだという人がいるわけです。この問題を考えていくと、最低賃金を上げるということも1つの解決方法だと思うのですが、パート賃金がなぜここまで低いのかという問題についても考えていかなければいけないと思います。
坂橘木委員
第1番目の問題は、今、高齢者について、公的年金制度が貧困者の削減に役立っているという評価で、今、現役で働いている人がお年寄りになったときに、公的年金は一体どれだけ貧困の削減に役立っているかというのは言えない。なぜかというと、公的年金制度が20年後、あるいは30年後、今のままで続いているかというと、御存じのように無理である。そういう意味で、第1番目の御質問に対しては、今の高齢者には役立っているけれども、次の世代の高齢者に関しては何も私たちは言っていない。逆に言えば、今の公的年金制度をどうかキープしてください、それでないと、将来、高齢者の貧困者はたくさん増えてしまいますよという警告にはなっています。だから、日本の公的年金制度が役立っているのを、そのままキープしてほしいという政策提言にはなります。
 2番目の御質問は、パートタイマーの人であっても、最低賃金が上がれば所得が上がりますから、役立つんではないでしょうか。今の日本の最低賃金は1時間当たり700円ぐらいです。イギリス、フランスが1,200~1,300円前後、日本とアメリカが最低賃金が一番低い額を競っていたんですけれども、最近、アメリカも上げましたので、日本が非常に低いレベルになっているんで、私は最低賃金を上げるということは、パートタイマーの賃金を上げるのに役立つと見ています。
大沢委員
私も最低賃金を上げることには全く反対ではありませんが、両方必要ではないかと考えています。
坂橘木委員
両方というのは、もう一つは何ですか。
大沢委員
つまり、パート賃金そのものについて、若者が増えてきて、夫に養われているからパート賃金が低くてもいいでしょうという論理は全然成り立たなくなっているにもかかわらず、賃金がそのまま最低賃金に張りついていて、仕事の責任度に合っていないという状況をやはり。
坂橘木委員
あなたの御質問にお答えするんであれば、同一労働同一賃金の原則に近づけということでしょうか。
大沢委員
先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
坂橘木委員
私も同一労働同一賃金の制度に持っていけとは主張していますが、あなたの御質問に答えるなら、それを徹底するしかないでしょう。同じ仕事をしているなら、1時間当たり賃金は正規と非正規で賃金差なし、そういう制度に持っていく必要があるかと思います。だから、あなたの意見に賛成です。最低賃金を上げることと、同一労働同一賃金の原則ということになるのではないでしょうか。
鹿嶋会長
ほかにありますか。
 さっき、日本の貧困者を4つに分けています。高齢単身、母子家庭、若者、ハンディキャップのある者、これはボリュームごとの順番かどうかというのが第1点。
坂橘木委員
1番は高齢単身者です。数的に言えば、圧倒的に高齢単身者が貧困の代表です。
鹿嶋会長
もう一つは、この4分類以外に、今後入ってきそうな第5の存在が何かあるかどうか。さっき言っていた若者をどの程度まで定義しているのか。若者だけではなくて、高齢でもない、中年程度でここに入ってくる可能性というのは、さっきの大沢委員の発言に加味すると、多分、パートで中年男性というのは今後かなり出てくるんです。
坂橘木委員
まだ数は少ないですけれども、今後増える可能性は。
鹿嶋会長
フリーターの定義上から言うと、そこから外れている35歳以上というのはかなり流れている。
坂橘木委員
日本の貧困を語るときは、まだそのグループはそんなに大きなウェイトはないですが、今後、このままの日本の社会経済の状況が続けば、そういう人の貧困も出てくる可能性はございます。
阿部委員
子どもの貧困はいかがでしょう。率的には一番増えています。
坂橘木委員
この本の最大の弱みは子どもの貧困を語っていないことです。阿部さんがそれを多分サプリメントしてくれると思いますので、期待しますが、子どもの貧困を計測するときの問題というのは、子どもは、5歳の人は働けないわけですから、親の所得がどれだけ貧困かで決まるわけでしょう。だから、子どもの貧困だけを取り上げてやる価値もあるけれども、子どもの貧困だけを語らずに、全体の貧困を問題にすれば、子どもの貧困も間接的には扱っているんではないかという解釈はどうですか。
阿部委員
そうだと思います。ただ、新しいグループとして、若者層が今、子どもを持つ年齢になってきているということで、特に年齢の小さい子どもの貧困率が急激に上がっているということを指摘しておきたいと思います。
坂橘木委員
繰り返しになりますが、子どもの貧困を語っていないのが難点なのですが、阿部さんの言葉を借りれば、若者の貧困が多いということは、若者の子どもも貧困であるという解釈はできます。
鹿嶋会長
そのほかに質問、意見のある人はおりますか。よろしいでしょうか。では、橘木先生、どうもありがとうございました。
 それでは、次は、阿部委員に発表していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
阿部委員
国立社会保障人口問題研究所の阿部と申します。よろしくお願いします。
 自己紹介を兼ねて、どういう仕事をしているかということを簡単に申し上げますと、私はかなりのデータ屋だと思っております。ですので、橘木先生が貧困のクオリティブなところをがっちり押さえていただいたので、私の方はどちらかというと数字を中心にしてやっていきたいと思います。日本の貧困に関しての数字は非常に少なくて、それが私がこの仕事に入った1つのきっかけでもあるんですけれども、これらを使って政策論議に役立てていただけるということで、この場を与えていただいたことを非常に感謝しております。
 橘木先生とオーバーラップする部分が多いかと思ったので、多目にスライドを用意しまして、飛ばすところは飛ばそうと思ったので、全部カバーすることはできないかもしれませんので、カバーできなかったところは、お手元の資料として、後でごらんになっていただければ幸いです。
 (PP)
 今日、カバーしたいと思っていますのが、3つの貧困の定義による貧困です。最後の2つはどこまでカバーできるかわかりませんので、もし御興味があれば、また後で質問していただければと思います。
 1つ目が相対的所得による貧困、これがOECDやEUなどでよく使われる所得をベースにした貧困の定義です。
 もう一つが相対的剥奪、RELATIVE DEPRIVATIONと言われていますけれども、これは実質的な生活水準がどれぐらいであるかという価値の下で測られる水準です。
 3番目が社会的排除で、先ほど委員の方からもいろいろ御質問がありましたように、社会関係ですとか、社会の中でどれぐらい孤立しているかということを勘案した指標でございます。
 貧困指標というのは本当にいろいろあるんですけれども、一口にこの3つの指標をどこに位置づけるかということを御説明いたします。
 まず、1つ目のところが、所得だけで測るとか、消費だけで測るという一次元の方向と、あとは多次元の方向、DEPRIVATIONもSOCIAL EXCLUSIONもそうですけれども、所得以外にも、例えば健康ですとか、交友関係ですとか、複数の指標を用いるということで多次元ということがあります。そこが、一時点困窮とここに書きましたけれども、一般的な所得の貧困と剥奪の違いです。あとは、動的なものです。1時点だけで見るものか、それをプロセスとして、貧困になっていく過程により着目したのが、社会的排除ですとか、貧困化という指標でございます。
 まず、最初の一次元から見た静的なということで、非常にいろいろな制約がある指標ではあるんですけれども、一番測りやすくて、一番国際比較がしやすいというやり方で見ていきたいと思います。
 この資料はあちこちで紹介されているので、私がいちいち言うことはないと思いますが、OECD諸国の中で日本の貧困率が、メキシコを除けば、アメリカの次の第2位である。アイルランドが入っていると2位とか3位とか、いろんな数字が出ているんですけれども、そういうものの数字です。日本で約15%になっています。
 ただ、この数字を一口に見るのはなかなか難しい。というのは、後で御紹介しますけれども、日本では圧倒的に貧困率が高いのは高齢者なんです。ですので、日本が高齢化していくにつれて、貧困率はそれだけで上がってしまいます。本当であれば、高齢者と現役世代と子どもは、政策的にも全く別の方法がとられると思いますので、別々に考えていかなければならない。そういう観点で65歳以上の貧困率を見ると、先ほどよりも大分順位が上がることがおわかりになるかと思います。日本のところは赤で示しています。
 これが勤労世代です。日本の中では、勤労世代は非常に高い数値になっています。一番高いのがメキシコなんですけれども、日本は2番目ぐらいの高さになっています。アメリカも高いですけれども、日本も高いということになっています。
 子どもは真ん中ぐらいになっています。国際比較的に見ていきますと、これはLISという、白波瀬先生などもよく使われるデータベースですけれども、統一的な定義でやってみたものです。日本は赤で示しているんですが、日本の貧困率が1980年代から徐々に上がっていくのがおわかりになるかと思います。ですので、一昔前はそれほどひどくは、ひどいという言い方は悪いですけれども、突出してという形ではなかったのが、徐々に上がってきている。ただ、日本が総平等だと、総中流説が主流、大手を振って歩いていた80年代、70年代でも、それほど貧困率が低かったというわけでもないんです。
 これが私がした試算です。80年代から2000年にかけての年齢別の貧困率です。ピンクが60歳以上、黄色が65歳以上になっています。太線が全個人で見ています。これは個人ベースの貧困率です。見ていただければわかりますように、やはり高齢者が非常に高い率を示している。先ほど橘木先生が公的年金が非常に重要な役割をしているということをおっしゃいましたし、確かに公的年金がなかったら、これはもっと高かったかもしれません。
 ただ、1つ私が指摘しておきたいのは、ほかの国々では、公的年金が成熟するにつれて高齢者の貧困率はどんどん下がっています。カナダなどはものすごい下のカーブになっているんです。日本はもう既に公的年金制度は成熟期を迎えている、これから縮小段階に入っている、この時期において、今でも高齢者の貧困率がこれほど高いというのは、やはり問題ではないかと思っています。特に国民年金を満額もらっていても貧困線に達しないで、実際には満額もらえていない高齢者がいっぱいいる中で、これから公的年金を縮小していこうということになると、この数字は、今、とりあえず横ばいになっていますけれども、これが上がっていくのは必須であるかと思います。
 ただ、80年代から見てみますと、上昇しているのはそれ以外の世代です。勤労世代と子ども世代になります。一番上昇率が高いのは子どもです。
 属性別貧困率を2002年で見てみました。後で御紹介あるかと思いますが、生活困難を抱える男女に関する検討会では、いろいろな属性別で貧困率を計算してみようというふうに提案されていますので、私としては、今ある手元の中でわかるところを同じような形で提示してみました。
 これで見てみますと、まず、高齢者は、高齢単身、高齢者のみ世帯というのは、65歳以上の人たちだけで構成される世帯です。その他世代は、3世代世帯もありますし、独身の54歳の息子と住んでいるお母さんも入ります。ですので、やはり高齢単身者というのが非常に高い。特に高齢単身の女性です。子どもは男女別にしていないんですけれども、それ以外は男女別にしています。非常に高い率で貧困があることがわかります。
 勤労世代では、先ほど橘木先生もおっしゃったように、母子世帯が非常に高くなります。ただ、ここでの母子世帯の定義というのは、独身の子どもと一緒に暮らしている母親というもので、必ずしもその子どもが20歳以下という定義をしていませんので、一般に定義される母子世帯、20歳以下の子どもを抱えている母親と子のみの世帯に比べれば、貧困率は低くなっております。これだと35%ぐらい。先ほど橘木先生もおっしゃっていましたように、もう少し定義を狭めて、その子どもを20歳以下に区切ってしまいますと、大体50~60%の貧困率という数字が出てきます。
 あと、着目したいのは、勤労世代でも単身者というのは非常に高い数値になっています。特に女性の単身者が、高齢者よりは低いですけれども、それでも全体の中で見ると非常に高い数値というのがおわかりになるかと思います。
 最後のところは子どもになります。子どもでも、一番高いのが母子世帯です。圧倒的な高さになっています。これは、先ほど言いましたように定義がかなり絞られてきますので、非常に高いものになるかと思います。夫婦と未婚の子のみという普通の2親世帯はそれほど高くありません。ですけれども、これもじりじりと上昇しているのが後ほどのスライドでわかるかと思います。
 これは、配偶関係別貧困率です。この検討会でも配偶関係を見ていこうというのがありましたので、出してみました。高齢者と勤労世代で見てみます。男女別で測ってみます。ほとんどが予測されることなんですけれども、高齢者でも、有配偶か、未婚か、死別か、離別かというのが非常に効いてくるというのが1つあります。
 もう一つが、例えば、未婚、死別、離別と男性の貧困はそれほど関係していると思われてこなかったんですけれども、やはりすごく関係しているようなんです。ですので、生涯的に余り高い所得を得てこられなくて、年金とかも余り得られていないような人たちは、未婚であったり、死別したり、離別している可能性が高いということが言えるかと思います。
 同様に、勤労世代もそうです。勤労世代も、女性で既婚の方がほかの人たちに比べて貧困率が低いというのは予測できたんですが、男性でも、未婚、死別というのは高い貧困率になっています。あと、離別で見てみると、特に女性の離別は、女性の死別に比べても圧倒的に高い貧困率ということがわかるかと思います。見逃せないのも未婚で、生涯未婚率がどんどん高まっていますので、この層は非常に懸念される層です。
 あと、雇用状況ベースで、この人が今、実際に働いているか否かだけで見てみました。どういう状況で働いているかということは勘案せず、パートタイムかもしれませんし、フルタイムかもしれませんし、どういう立場かというものを全く勘案していないんですけれども、とりあえず働いているか、働いていないかだけで見てみますと、ワーキングプアと言われる人が、とりあえず有職である、職があって貧困がある、これが、勤労世代から先に言いますと、女性12~13%、男性でも10%に近い数字となっています。
 ワーキングプアというのはよく使われるんですが、定義がはっきりしないのと、先ほど言ったような既婚女性で、実際は生活水準が低くないんではないかというのがいっぱいあるんですけれども、これは世帯の所得で見ていますので、夫の所得とかを全部勘案した上で、でも、ワーキングプアがこれだけの数字がいるというのがあります。勿論、無職だと高いんですけれども、職があってもこれぐらい高いというのは非常に懸念されることかと思いました。
 もう一つは、高齢者のワーキングプアは余り議題に上がらないんですけれども、実はすごく高い率なんです。高齢者で面白いのは、有職者に比べて無職者の方が貧困率が低いんです。つまり、無職の人は年金をもらっている人が多いんです。有職の人は、年金の額が少ないか、全くもらっていない状況なので働いているということも言える。少なくともそういう人たちがかなりの率で存在するんではないかということなのです。今まで日本の高齢者の高い雇用率というのは、日本人は働くのが好きなのだと言われていたのですけれども、必ずしもそうとは限らないと言えるかと思います。
 飛ばしてしまって申し訳ないのですけれども、では、なぜ貧困率が80年代からこんなに上がってきてしまっているのかというのを見てみたものです。これは、勤労世代の貧困率を1987年と2002年で見てみました。赤で囲ってあるところが実際に計算した可処分所得の貧困率です。ここで注目してほしいのが、無配偶男性、無配偶女性です。これの貧困率が、男性の場合は10.16~14.77%、女性の場合は15.54~19.75%と非常に高い割合で上がっていると思います。勿論、この間に勤労世代に占める無配偶者の割合も増えているわけで、これも11~17%、11~16%となっています。ここでは配偶関係で見ていますので、親と一緒に暮らしている場合は、勿論、その親の所得も含めて貧困率を計算しています。ですので、何が言えるかというと、親の所得を含めて貧困になってしまって、逆に言えば、息子がずっと家にいることによって、もしかしたら貧困でなかった親世代も貧困になっている可能性もあるということです。
 なぜ貧困率がこんなに下がったのかということですけれども、社会保障や税の効果ですとかを別々に測ったりしているんですけれども、市場所得、これは税、社会保障、保険料前、あらゆる手当て前の所得で測ってみると、その上昇がくっきりと出てくるんです。特に無配偶女性では18.99~24.90%と非常に高くなっているので、いわゆる市場所得自体が非常に下がってきているということがわかるかと思います。
 再分配前、再分配後という形にしていますけれども、政府移転の前と政府移転後で貧困率が下がっているのかを見てみると、日本の場合は黄色とオレンジで示しています。この差はわかっていただけるかなと思いますけれども、2~3%下がっていることは確かです。ただし、ほかの国を見てみると、例えば一番大きなフランスは、再分配前の貧困率は非常に高くて、25%近いものがあるんですけれども、再分配後は6%とかになっているわけです。これだけ政府の移転によって貧困率が下がっているんですけれども、日本ではこの機能が非常に弱いために、この下がり具合が少なくなっています。
 あと、先ほどちらっと申し上げました子どもの貧困率の上昇の要因も見てみました。欧米諸国では、子どもの貧困率の要因の第1が母子世帯の増加なんです。日本でも母子世帯が増加しています。構成比で見てみますと、2.3~4.3%ぐらいに増えています。ですけれども、これがそれほど効いているわけではないというのがこの分析の結果です。見ていただくと、母子世帯の貧困率は52.3~62.3%で、約10%も増えているのですが、母子世帯は、市場所得の貧困率で見ると66.6%と67.7%で、それほど変わっていないんです。ですので、この間、母子世帯に対する政府の移転の効果がすごく下がってきたことによって、母子世帯の貧困率が上がっていることがあります。ただ、その他世帯、そのほかの子どもも9.2~12.91%に上がっていて、数的に圧倒的なものがありますので、全体の貧困率を押し上げているのはこの世代になります。特に市場所得で見ても8.2~12.3%上がっているということで、子どもの世帯の貧困率を下げるためには、市場所得の貧困率を何とか元に戻さなければいけないということになります。
 子どもに対する再分配機能もあちこちで公表されているのですけれども、着目されるのは、日本では再分配後貧困率の方が再分配前に比べて高いのです。黄色の方がオレンジより高い率になっています。これは、子どもを持っているような世帯において、給付がマイナスになってしまっている。特に貧困世帯でマイナスになっているんです。ほかの国はこれだけ大きく削減しているのに、日本だけ逆転しているということで、大沢真理先生などは、逆機能とおっしゃっていました。
 高齢者は飛ばします。
 貧困率は女性と男性で異なるかというと、異なります。これは2002年ですけれども、たまたまなのですけれども、20代はほとんど同じ数値から始まりますけれども、男女格差はどんどん広がっていきます。年齢とともに上がっていって、特に大きくなるのが50代以降です。
 女性の貧困率は近年変化しているかということで、これも87年から見てみたものですけれども、若年層の貧困率の増加が顕著です。下の3本の層になります。高齢層は、余りはっきりとした傾向を見ることはできません。これは、男性でやっても、ほぼ同じような傾向を見ることができるかと思います。
 これまでがいわゆるコンベンショナルな所得に基づいたものなんですけれども、時間もありませんので、ここから先ははしょって説明させていただきます。
 RELATIVE DEPRIVATIONという考え方があります。所得というのはあくまでも目安であって、その人がどういう生活を送っているかということと所得というのは必ずしも関連するものではないわけです。すごい大金持ちが今年たまたま仕事をしなかった、貯蓄を取り崩しながら生きているみたいなことだったら、所得はゼロかもしれませんけれども、生活水準はすごく高いかもしれない。なので、ある程度誤差が生じるわけです。
 それでも相関は相当高いので、所得を使えるだろうということで使っているんですけれども、実際に生活水準をどうやって測るのかといったときに、70年代に一番最初できたんですけれども、TOWNSENDというイギリスの研究者がつくった方法でやっています。これは、人々が社会で通常手に入れることができる栄養ですとか、衣服ですとか、住居ですとか、そういうものを具体的にリストアップして、それらがどれぐらい満たされているかどうかを測る方法です。
 具体的には、12分野の60項目を選定して、その有無を一つひとつ調査していくわけです。それで、どれぐらい欠けている人がいるかということがあります。オリジナルな相対的分析の一番着目点は、下が所得階級なんですけれども、ある所得階級以下から、いわゆる剥奪の度合いが急激に上がるということで、TOWNSENDなどは、ここを政府の保障の1つの区切りにするべきではないかと訴えたわけです。それは結局、実現に至らなかったんです。この閾値というのは、ほかのいろんな国でも確認されています。これを日本で確認できるかどうかというのが私のやった研究の1つです。
 実際に、それほど大きな調査はできなかったので、16項目しか使えなかったんですが、中身は、いわゆる電子レンジですとか、冷暖房だとか、湯沸器だというような家電もありますし、お医者さんにかかるとか、歯医者さんにかかるとか、老後に備えるための年金保険料とか、毎日少しずつ貯蓄ができるとか、トイレですとか、浴室だとかいうものです。これらはすべて日本の一般市民の少なくとも過半数が、日本で最低限の生活をするためには絶対に必要であるとして選ばれたものなのです。選ばれていないものもすごくいっぱいあったのですけれども、それらは除きました。
 これで見ると、一番高くないのが「毎日少しずつでも貯金ができること」で、25%がこれを満たしていません。でも、そのほかにも少しずつあるのがわかります。これがどのような世帯に集中しているのかを調べてみたものが次からになります。
 そうすると、16項目のうち、1つもこの中に欠けているものがないという世帯も65%あるのです。35%は幾つかは欠けている。例えば、1つ欠けているのは20%、2つは5%です。ですので、特に弱者ということを考えれば、例えば、2項目以上の世帯だけにすれば、85%ぐらい、残りの15%の世帯に集中して見ていくことができると思います。
 剥奪の状況を見てみて、赤く囲ったところが特に高いと思われるところです。やはり低所得であるというのが1つのメルクマールであることがわかります。あとは、世帯主の年齢では20歳代が高くなります。70歳以上も高くなるし、U型カーブを描いているんですが、特に若年層で高くなるというのがわかるかと思います。あと、配偶者なしというのも高くなります。特に女性の配偶者なしだと49%、男性の配偶者なしでも49%、高目の率が出ます。
 そのほかは、詳しく見ているんですけれども、単身であることも確率が上がりますし、世帯内に傷病者があったり、高齢者世帯である。高齢者世帯であるだけでは一般の世帯とそれほど変わりはありません。☆マークがついていないということは、統計的に有意な差がないということなんですけれども、ただ、単身になると、やはり差があります。
 これが、先ほどのTOWNSENDの表を日本のデータでつくり直してみたものです。イギリスや、そのほかの国で見たのと全く同じような図が描けるわけです。閾値というのが世帯所得の400~500万で、通常考えられている貧困層よりも大分高いものなんですけれども、ここら辺から剥奪のリスクが高まるということになります。
 高齢者と現役を比べると、当たり前なんですが、同じ世帯所得のカテゴリーでも、高齢者の方が剥奪の度合いが低くなります。これは、それまでにいろんな生活水準の蓄積があるということが言えるのかと思います。
 この辺は飛ばします。
 あと、社会的排除というのも、最後に御紹介したいと思います。社会的排除指標をつくろうというのはEUとかでもいろいろやられている試みなんですが、日本では社会的排除という形で調査をしたものが余りないので、ちょっとやってみたというのがこの調査です。
 先ほどのDEPRIVATIONに似たものなんですけれども、ここでは特に制度からの排除という点で、選挙に行くかどうか。これも、故意に自分が欲して行かない、行きたくないという人は除いています。ただ、何らかの理由で行くことができないという人がどれぐらいいるか。
 何らかの理由で自治体サービスを受けることができないという人がいるかどうか。
 そのほか、社会保障制度で、社会保険、年金の保険料を払うことができないですとか、そういうものが入っています。
 あと、社会生活からの排除で、町内会やPTAなどに参加することができるかどうか。それから、人と交流を持つ場に出ることができるかどうか、ときどき友達と会うことができるかどうかというものです。
 あと、社会関係からの排除。週に何回人と話しますかですとか、病気のときに頼れる人がいますかとか、寂しいときに話し相手がいますかとかいうような項目を聞いています。
 これらがどういう人たちに統計的に有意に出ているか、これはOLS分析なんですが、黄色いところが有意なところです。見てみますと、いわゆる生活水準そのものの貧困とは違う傾向が出ているというのが1つあります。
 例えば、高齢者というのは意外と社会的排除状況にないんです。単身高齢者であっても、それほどない。あと、女性が余りマイナスには効かないんです。特に社会活動ですとかは効いてきません。
 これは性別は男性を1としていますので、逆に男性だと社会関係が薄かったりというのが有意だったりして、通常の貧困感とはちょっと違う形のものが出ています。
 男性の50代、60代とかもやはり社会関係とかで出てきて、例えば、主観的貧困というところも出てきたりします。自殺が50代に多いというのは、ここら辺の理由があるのかなと思ったりもします。
 あと、非常に示唆が得られると思ったのは、離婚経験があるとか、解雇経験があるとか、15歳のときにどれぐらい生活の困難があったかということが、今の所得をコントロールした上でもやはり効いてくるというのは、何らかの形の不利というのが、所得だけではない、ほかのところでも出てきているんではないかというのが見られる結果で、これは興味深い点かと思いました。済みません。非常に駆け足だったんですけれども、わかりづらかったら質問してください。ありがとうございました。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 大変中身の濃い分析をしていただいたと思いますが、質問などがありましたら、どうぞ。
畠中委員
大変詳細な分析で、目が開かれる思いですけれども、私の常識と異なるところがあって、勉強不足で申し訳ないんですけれども、例えば、国際比較から見た日本の貧困率というのは、今の御説明では、日本は意外と高いんですね。世界第2位の経済大国でこんなに高いのかということで、私の常識とは違って驚いたんです。所得とおっしゃいましたけれども、貧困の基準が日本は高いのかなという感じもしたんですけれども、それを御説明いただきたい。
 あと、高齢単身者と若者の貧困率が高いというのも、ちょっと常識に合わないなという感じがして、私の常識が間違っているんだと思いますけれども、例えば、日曜日、朝早く電車に乗ると、元気なお年寄りがいっぱいですし、若者も、私の大学なども、特に男性などは汚い服装をしていますけれども、あれはおしゃれなんで、とても貧困だという感じは受けないんです。母子家庭とかハンディキャップの人の貧困率が高いというのはわかります。
 お聞きしたいのは、先ほど言いましたように、貧困のレベルは国ごとに違っているのかどうかということをお聞きしたいんです。
阿部委員
OECDですとか、ほとんどの国際機関で今、使われているのは、相対的貧困基準と言われるもので、国ごとに違います。所得分布の中央値の50%を使っております。
 ちなみに、日本でよく使われる生活保護基準を計算してみますと、大して違いはありません。例えば、1人世帯でいきますと、所得が120~140万ぐらいが貧困線となります。ですので、相対的貧困基準を使われるというのは、勿論、発展途上国等を考えた場合はまた違う数字が出てくるので、絶対的貧困基準というのを使うかと思いますけれども、その社会で暮らすためには、やはりそれ相応の、物価もそうですし、アフリカの村に住んでいたら電車に乗ることは必要ないかもしれないけれども、日本だったら必要であるとか、日本だったら靴をはいているのが世間に普通の人として認められるための必要条件であるということを考えますと、やはり社会全体のレベルから考えてみなければいけないというのが、今の先進諸国の中で考える貧困の主流的な考え方になってきているんです。ですので、相対的貧困基準というのが使われています。これについてはいろいろな議論もあるんですけれども、国際比較をするためには、これが一番有効な手だてかと思います。
 先ほどの高齢者と若者というのも、イメージと非常に違うというのは日本人のほとんどの方が感じていることかと思います。ただ、高齢者というのは格差が一番大きい世代でもあります。ですので、すごくリッチで裕福な高齢者もいますけれども、そうでない高齢者の方々もいっぱいいる。
 若者に関して言えば、大卒、非大卒というところで社会の中で大きな格差ができてしまっているというのがよく言われています。これは大沢真知子先生なども研究なさっているかと思いますけれども、大学に行けない若者がどういうような職に就いているか。今は高校進学率が97%ですけれども、高校に進学できない人も存在しまして、あと、高校からの退学者とかは非常に厳しい状況にあるということが言われています。
畠中委員
どうもありがとうございました。
鹿嶋会長
どうぞ。
袖井委員
定義の問題でわからないことがあって教えていただきたいんですが、1つは、10ページ目のスライドで、層別貧困率のところですが、母子世帯、父子世帯とあるのに、どうして男性と女性というのが出てきているのか。*の説明で「成人した子と母・父親も含む」と書いてあるので、母子家庭の中に暮らしているおじいちゃんが貧困なのかなと思いますが、この辺のところを説明してください。
 もう一つは、子どもの貧困というのが出てきていますが、子どもの定義です。何歳とか、それは各国全部共通なのかということを教えていただきたいと思います。
 それから、最後のところで、これも大変興味深い分析だったんですが、主観的貧困というのはどういう指標でつくったのか。その3点お願いします。
阿部委員
最初の母子世帯のところですけれども、勤労世帯に関して言えば、成人した子どもと母親の世帯も含みます。これはたまたま国民生活基礎調査で定義の1つとして使っているんですけれども、例えば、65歳の母親と35歳の息子が住んでいる場合です。母親が単身者の場合は、母子世帯とカウントされます。息子さんの方は男性としてカウントされるので、ここに入っています。ですので、母子世帯の男性ですとか、父子世帯の女性というのは余りリライアブルな数字でないとお考えください。逆に子どもの方で見てみますと、子どもの定義を20歳以下としていますので、少なくとも子どもの1人が20歳以下の世帯だけに限っています。
袖井委員
少なくとも1人ですか。
阿部委員
はい、少なくとも1人です。子どもベースの数で見ていますので、母子世帯の中に属する子どもの中で何%が貧困であるかという数値になります。ちょっとややこしくて済みません。
 あと、子どもの貧困率の国際比較のところは、OECDのデータは18歳未満の定義を使っています。私のはすべて20歳未満です。
 あと、主観的な貧困感のところは「あなたの現在の暮らしをどう思っていますか」というのを5段階ぐらいで聞いていたり「あなたは今の生活に満足していますか」とか「今の暮らし向きは苦しいですか」とか、そういうような設問で拾った数字です。
袖井委員
ありがとうございました。
鹿嶋会長
最後のページの15歳時の生活苦というのはどういうのをイメージしているんですか。
阿部委員
これも主観的なものです。本当に15歳時のときの生活がどうであったかというのはデータでは取ることができませんでしたので、「あなたの15歳時のときの暮らし向きはほかの人に比べてどうでしたか」と聞いて、「大変裕福であった」から「大変貧しかった」までの5段階で「大変貧しかった」と答えた人たちを15歳時のときの生活苦があったとしています。
鹿嶋会長
どうぞ。
横田委員
数字を基礎とする実証的なご報告で実際の状況がよくわかり参考になりました。伺いたいのは、ホームレスの人たちをどういうふうに考慮しているのか、していないのかということです。ホームレスの人たちは住民票を持っていなかったり、住民票のあるところに住んでいませんから、生活保護とか、保険から一切排除されてしまうわけです。ですから、その人たちはまさに絶対的貧困で、ベーシック・ヒューマン・ニーズも満たされていない生活を余儀なくされている状況にいる人だと思うのです。
 これは日本だけではなくて、ヨーロッパを旅行しても、フランスでもスペインでもどこでも、ホームレスの人は教会の近くなどには必ずと言ってよいほどいるのです。それについては、OECD諸国も含めて、貧困問題としてとらえていると思うのですが、日本の場合のデータというのは一体どういうふうに取って、国際比較に耐えるものになっているのかどうか、それを伺いたいのです。先ほどの主観的な貧困について、アンケート調査をしたような感じに受け止めたのですが、そうすると、それはサンプリングでやられたのだろうと思うのです。ほかのデータは、例えば、国が持っているいろいろな指標の中から拾い出して、全国民を対象とするものと思われますが、そうするとホームレスは排除されてしまうのですが、その辺を少し詳しく教えていただけますか。
阿部委員
まず、データの問題から先にお答えいたしますと、所得の計算のところはすべて厚生労働省の国民生活基礎調査を使っています。大調査年のものをなるべく多く使うようにしています。サンプル的に大分大きくなりますので、より無作為性が高くなるかと考えて使っています。
 最後の社会的排除のものとDEPRIVATION、相対的剥奪は私自身が行った調査ですので、サンプル数が、相対的剥奪の方は1,500程度、それは全国ベースです。社会的排除の方はちょっと少なくて600程度になります。これは、東京近郊のある1地域を対象として行っています。ですので、そういうところでサンプルの恣意性とかバイアスとかが入ってきている可能性はあります。
 あと、ホームレスに関して言えば、私も厚生労働省のホームレスの2007年の調査の委員をやっていたんですけれども、日本では、いわゆるストリートホームレスと言われる調査がありますけれども、外国ではそのような調査を取っているところが少ないというのはあるかと思います。
 ただ、これは日本では非常に特異かと思います。御存じかと思いますけれども、ホームレスの定義自体が日本の場合は非常に狭いです。つまり、路上で寝ている人としか数えていない。ですけれども、欧米では、友人の家に仮住まいしなければいけないですとか、もう少しで追い出される可能性がある人ですとか、そういう人々も、いわゆる住居弱者をすべて含んでホームレスというような形で、EUレベルでは数の比較をやっていたと記憶しています。日本では、いわゆる住所弱者の状況は余りわかっていないので、本当の路上に寝ている人たちのカウントという形になってしまっているので、それだけを取り出してホームレスがどうのこうのという国際比較は非常に難しいかと思います。
 おっしゃるとおりに、ホームレスの人たちもそうですけれども、あと、施設に入っている人もそうですし、岩田正美先生などがよくおっしゃる本当の貧困者というのはなかなか調査に乗ってこないというのがあります。ですので、私が言えることは、一見してぱっとわかるような人たちだけでなくても、あなたの隣に住んでいるような人たちの中でもこれだけ貧困の方がいらっしゃいますよということを言いたかったという点でこのような調査をしています。
横田委員
そうしますと、確認ですけれども、このデータには実はホームレスは入っていないと考えていいですね。
阿部委員
ホームレスは入っていません。
横田委員
日本の場合、それほど数は多くないかもしれませんが、厚労省の調べで1万数千人というような数字が出ていましたけれども、ヨーロッパなどでは御存じのとおり、余りはっきり調査はしていないようです。調査自体が非常に難しい。といいますのは、プライバシーにかかわってはいけないという自己規制が働いて、見えていても触れられない問題だという感じがあって難しいのです。しかし、それが政府が何もしない理由にも使われているという問題もあって、結局、ボランティア活動とか、教会とか、そういうところが対応しているだけに終わっているようです。国際比較の場合にはホームレスは入っていないだろうと考えてよろしいんですね。
阿部委員
ほかの国ではホームレスは入っていないです。いわゆる路上ホームレスは入っていないです。
横山委員
わかりました。どうもありがとうございました。
鹿嶋会長
路上ホームレスというと、例えば、ネットカフェ難民とか、さっき話題になった大阪のビデオ屋さんで亡くなった人たちは、日本ではホームレスの定義には入らないわけですか。
阿部委員
一応、日本の正式なホームレスの定義は、ホームレス自立支援法で定められたものだけだと思います。私は厚生労働省として公式な見解を言う立場ではないと思うんですが、ネットカフェ難民の方々は入っていません。実際に路上で寝ている方しか入っていないと思います。ネットカフェ難民の方はまた別の調査をしていますので、そのような定義でとらえています。
鹿嶋会長
どうぞ。
大沢委員
先進国の中で、日本の貧困の特徴が高齢、単身者、若者に多いということだったと思うんです。1つはその確認で、日本的特徴を挙げるとしたら、どういうものなのか。私の感覚的なもので言うと、時代の変化と制度との間に何かギャップがあって、例えば、日本の年金制度が伝統的な家族、標準的な家族、あるいは、いずれ私たちは皆結婚するとか、そういった前提の基に考えられていた家族そのものが変化したことと、経済そのものが二極化するような経済構造になってきたという中で、制度の不備によって生み出される貧困問題というのもあるのかどうか、教えていただきたいと思います。
阿部委員
日本の特徴というところでは、先ほどおっしゃった高齢者ですとか、若者は日本の特徴ではないかもしれません。ほかの国もあるかと思います。新しく出てきた、どちらかというと日本ではエマージングプアと言えるかと思います。
 あと、もう一つ、私があちこちで言っているのが、ワーキングプアが非常に多いということです。特にヨーロッパ諸国では、失業中であるというのもあると思いますが、それでも何らかの給付をもらっている、または本当に失業中であるという数字が高いのかもしれませんけれども、貧困者の中では働かない層がかなり大きなものを占めているんです。ですので、WELFARE TO WORKですとか、ああいうような政策が出されてくるわけです。ただ、日本ではワーキングプアが圧倒的に多い。
大沢委員
そうですね。先ほどの橘木先生のお話でも、最低賃金のことが述べられていましたけれども、例えば、アメリカなどでも、就業を支援することで母子世帯の貧困を解決するということになると、日本の場合だと、例え就業を支援したとしても、こういう状況が残る限りは、ワーキングプアがあるから、貧困の問題の解決にはならないということでしょうか。
阿部委員
そうですね。日本の母子世帯の就労率は世界では1~2位ですので、就労していても60%の貧困率なんです。ですので、やはりそこのところが問題であるということかと思います。
 あと、子どもの貧困のところを私はこのごろ着目しているんですけれども、欧米諸国では、世帯の中で親が1人働いているのと2人働いているのとでは貧困率が全然下がるんです。ですので、母親の就労を促すというのが子どもの貧困対策の1つの案となり得る。ただ、日本ではそれが下がらないんです。つまり、2人目が働きに出ても、貧困から抜け出るくらいまでの所得を得ることができていないということなんです。やはり女性の雇用問題が非常に大きなところかと思います。
 あと、政策のところで、このごろ勤労世帯に貧困の議論が集中しているんですけれども、やはり公的年金が最低保障年金となっていないというところです。厚労省は、聞くところによると、基礎年金だけで老後の生活に十分であるということは言ったことがないそうなんです。なので、基礎年金のレベル自体が、それだけで生活できるというふうにもともと設計されていないというところがあって、新聞レベルではときどき、最低保障年金が必要ではないかみたいなことを言い出しているところもありますけれども、そこのところがないので、先ほど大沢先生おっしゃったように、高齢者でも、夫が一緒に住んでいて、一緒に生活していて、2人の年金を合わせれば何とかなるよというようなことが前提としてあるということだと思います。
鹿嶋会長
どうぞ。
板東局長
ちょっと御質問させていただきたいんですが、16ページの子どものある世帯に対する再分配機能のところで、日本は逆転しているということで、先ほどちょっと要因についても触れられておりますけれども、もう少し詳しく、どういう要因が効いてこういうふうになっているのかということをお聞かせいただければありがたいです。
阿部委員
まず最初に、この場ですので、データの不備を1つ申し上げなければいけないのは、OECDですので、これは消費税が入っていないんです。ですので、消費税の負担まで含めたら、日本以外にも逆転する国があるかもしれません。でも、これはかなり大きなIFだと思います。
 それを横に置いておきまして、それでもこの数字というのは非常にディスタービーなものがありまして、理由としては、日本では、低所得者層、特に子どもがある低所得者層に対する税と社会保険料が高くて、給付が少ないのです。給付の方は、増やした増やしたと言っていても、この世帯は児童手当ぐらいしかいかないんです。児童手当は確かに財源的には相当大きなものに拡充されていますけれども、それは対象者を増やしたのであって、手厚くしたわけではないわけです。3歳未満はこのごろちょっと手厚くなりました。ですので、どう考えても、社会保険料や税金を払ったら、政府からもらうお金より政府に払うお金の方が多くなるというのはしようがない。
 勿論、勤労世代であればそれはみんなそうなんですが、ほかの国では、低所得者の子どもがある世帯に対しては、もうちょっと手厚い給付になるように配慮されているんです。税額控除みたいな形で返す国もあるし、児童手当が非常に手厚い国もあるし、または社会保険料がない国もあるだろうし、いろんなやり方があろうかと思うんですけれども、貧困世帯で子どもを育てているんだという観点がないと、日本の社会保障の財政構造上、どうしても現役世代にもっと負担を、もっと負担をという形になってしまって、給付する方はそれほどないよという形になってしまうんです。もともと貧困の観点が少なかったというところかと思います。
鹿嶋会長
どうぞ。
袖井委員
ちょっと教えていただきたいんですが、最後の35ページの社会的排除の結果はすごく面白いんですが、特に主観的貧困のところですけれども、性別というのは、男の方が感じているわけですね。
阿部委員
そうです。
袖井委員
もう一つ、高齢単身者のところが不思議なんです。今までのお話を聞いていると、高齢単身者はずっと貧困なんです。だけれども、ここのところは余り効いていないようなので、これはどういうふうに解釈したらいいんでしょうか。
阿部委員
高齢者の方は、所得で見るよりも、本人が感じる貧困感もそれほどないし、生活レベルもそれほど厳しいものがないのかもしれません。お年寄りは、所得が少なくても、私はこれで十分というようなマインドを持っていらっしゃるのかどうか、なぜかというところまでは私は言及できないんですけれども、DEPRIVATIONで見ても、高齢者は所得で見るよりかは貧困度が少ないという気はします。
袖井委員
期待水準が低いんでしょうか。
阿部委員
そういうのもあるかもしれません。期待水準が低いし、自分自身、もっと厳しい状況の経験を持っていらっしゃるので、これぐらいでもいいかと思うのか、またはもっと現実的な話として、例えば、自給自足のような形で暮らしていらっしゃる高齢者の方が多いとか、いろいろあるかと思うんです。ただ、これは東京近郊なので、自給自足がどれぐらいできるかはわからないんですが、全体的に見れば、そういうような傾向があるのかもしれません。ここのところはもうちょっと詳しく見ていかなければいけないと思います。ただ、所得で見ると非常に低いので、だから高齢者の貧困問題がないよとはとても言えない状況だと思います。
袖井委員
どうもありがとうございました。
鹿嶋会長
ほかにはよろしいですか。どうぞ。
白波瀬委員
基本的なところなんですけれども、25のシートの表1という相対的剥奪の表なんですけれども、ここの普及率というのは、この質問項目で「欲しくない場合は分母から除く」というふうに書かれておりますので、必要であると答えた人の割合ですか。
阿部委員
欲しくないという選択をしない、つまり、欲しいという中で持っている人たちの数を普及率と言っています。
白波瀬委員
欲しいと言った人の中で、実際に。
阿部委員
それを持っていると答えた人。
白波瀬委員
1というのは、何を基準に。
阿部委員
1-普及率です。
白波瀬委員
その差というのは、意味としては、つまり、相対的とおっしゃっているところの相対的の意味がいまひとつ私には理解できない。
阿部委員
相対的剥奪の相対的の意味合いは、このリストの項目の選定に係るところだと思うんです。つまり、アフリカの農村であれば、電子レンジを持っている、持っていないで貧困は決まらないと思うんです。だけれども、ここで選ばれたリストというのは、日本の社会の中で暮らすには必要なものという意味での相対的という名前づけをTOWNSENDはしたんだと思うんです。TOWNSENDがよく使われた例がお茶だったんです。お茶というのは栄養的価値もないし、何もないけれども、イギリスの人の普通の生活の中でお茶を飲めないというのは非常にDEPRIVATIONというものを示すんではないかということです。ですので、お茶が項目に含まれるかどうかということが相対的という言葉を使ったんではないか。これを出したときに、これは絶対的貧困だよという方もいらっしゃるんです。
白波瀬委員
何かの具体的な項目をもって、それがないことが貧困であるというふうに定義づける項目という意味ですね。
阿部委員
そうですね。
袖井委員
そうすると、欲しくても得られないということですね。
阿部委員
この中では、例えば、電子レンジでも、私は要らないという人もいるわけです。ほとんどの人が欲しいと思う物でも、要らない人もいるわけです。そういう人は除いています。欲しいけれども、金銭的な理由で持つことができませんと答えた人の率を剥奪率としています。
白波瀬委員
わかりました。ありがとうございました。
鹿嶋会長
それでは、阿部委員、どうもありがとうございました。
 続きまして、これまでに出された意見と作業について、事務局から説明をお願いします。資料3ですか。
山岡分析官
資料の3と4を使って御説明させていただきたいと思います。
 資料3でございますが、これまで、7月17日の専門調査会、9月9日の検討会と、調査の視点ですとか、進め方について、いろいろ御意見をいただきました。それにつきまして要旨としてとりまとめております。本日はこれを皆様で御共有いただきまして、また阿部先生、橘木先生からのお話もありましたので、そういうことも踏まえて、更に肉付けすべき点などがございましたら、御意見をいただきたいと思っております。
 併せて資料4で、今後の作業方針、スケジュールを御説明させていただきます。
 まず、資料3でございますが、御意見の要旨ということで、まず、生活困難のとらえ方について。こちらにつきましては、事務局から、まずは経済的な困難に着目したいということで御提案させていただいたんですが、これに加えて「社会的自立」とでも言うような、社会的、あるいは人間関係的な困難というものを視野に入れるということも必要ではないかということで御意見をいただいております。これについては、子育ての孤立というところまでは入らないんではないかというところが前回の専門調査会でも御議論がありましたが、先ほど阿部先生の方から御発表ありました相対的な剥奪といったこととも関係してくるような考え方も含めて問題をとらえていってはどうかということになるかと思っております。
 それから、人間関係的な困難も含めてということに関しては、どうやって測るのかが難しいのではないかという御意見がありました。
 また、貧困感、主観としての貧困の問題を考える必要があるんではないかという御意見もございました。生活困難のとらえ方にも地域差がある。同じような所得であっても、ある地域では厳しい状況にあるととらえる人が多いのに対して、そうでない地域もあるのではないかといった御意見でございます。
 2点目、生活困難を把握する指標について。こちらに関しては、ほとんどの国では公式に貧困ラインを設定しているが、日本に公的なものは現在のところは存在しない。生活保護基準というのが1つ、それに準ずるような位置づけではありますが、正式な公的貧困線というものは存在しない。例えば、所得が200万円以下の層ということで、前回、資料をお出ししていましたけれども、そういう層で分析しても、それが本当に貧困とは限らない。こういう問題があるので、どこからを貧困、あるいは生活困難ということで見ていくのか、ここの部分について、扱いを考えていく必要があるだろうという御意見でございます。
 それから、経済的困難は既存研究でわかっている部分が大きいので、経済面以外の困難の把握ができれば、新しい視点になるのではないかということでございました。先ほど阿部先生からも、貧困率に関しては、いろんな既存研究があるということで御発表がありましたので、そこは勿論、基本線として押さえながらも、それ以外の部分に広げていく。例えば、医療を受けられないとか、病気の際、介護者がいない、週に1度も人と会話をしない等の孤立の状況、こういったところを押さえていってはどうかという御意見でございます。
 3点目は、定義とはまた別に、現状の問題というところで御意見をいただきまして、就業をめぐって男女の状況の違いがあるんではないかという御意見でございました。ここは主に若年層の問題になりますが、高校中退者は数としては男性が多いんですけれども、高校中退者の中でのフリーター率というものは女性の方が高い。また、高卒者の正社員の就職口が製造業に集中するという中で、高卒の女性が正社員という形では就職しにくいということで、女性については、学歴が高卒、あるいは高校中退が、まずは初職の就きにくさに影響しているのではないかという御意見でございます。
 それから、女性のフリーターは家事手伝いとされて、結婚すれば落ち着けるところがあるだろうということで、これまで余り問題視されてこなかったのではないか。男は働くべきもの、女は結婚すればよいという考え方が背景にある。この問題をどう考えていくか。これについては、これからはなかなか成り立たない状況があるんではないかというところも踏まえて問題提起をしていくべきではないかという御意見でございます。
 次に、長期的な生活困難や世代間の連鎖をめぐる状況ということで、これは前回検討会で御意見があったんですが、一時的な貧困と長期的な貧困を分けて考える必要があるだろうということでございます。親の収入格差があるということで学歴格差が生まれて、そのことがまた就業機会の制限につながるといったような、長期に生活困難な状況にある人、あるいは世代を通じても貧困が継続される、そうした長期的な貧困の問題に焦点を当てていくべきではないかという御意見です。
 それとも関連しますが、親の教育水準、経済水準等がどのように子どもの困難に影響するのかという問題。
 裏面に行きまして、数こそ少ないけれども、中卒・高校中退層において貧困層が再生産されやすいという問題をどう考えるかという問題提起もいただいております。
 その次は、全体としての提言の方向性なんですが、女性のライフコースを通じたエンパワメントというような視点でこの問題を考えて提言していくべきではないかということでございます。男女共同参画の視点から、女性の経済的自立、エンパワメントを図るという視点が大切である。
 あと、各省の各施策の対策ではなく、分断してとらえるものではなくて、ライフコースを貫く観点からこの問題をとらえていくことが必要ではないかということで御意見をいただいています。
 関連施策との関係につきましては、議論としてはちょっと先になるんですが、念頭に置いてということになりますけれども、困難層に対する直接的な施策、例えば、どういう給付をするかとか、そういう施策に加えて、キャリア教育など、困難に陥ることを防止するための、時間を置いて効果を持つような施策も重要ではないかという御意見でございます。
 それから、母子世帯への施策に関しては、その有効性ですとか、子どもへの視点が十分なのか、そういった点から点検が必要ではないか。
 それから、教育、労働、福祉の連携。政策間の連携というのを当事者の視点から組み立てていく必要がある。
 それから、社会保障の機能状況ですとか、最低賃金制度がきっちり効果的に働いているかという点についても分析する視点も必要なのではないかという御意見をいただいています。
 それから、ジェンダーの視点で施策に口出しするだけではなくて、国の女性関係予算を分析し、整理していくという大きな視点も必要ではないかということでいただいております。
 最後に、調査分析の具体的な方法といたしまして、具体的にどう進めていくのかがなかなか難しいというところで、いろいろと御意見をいただきましたが、定量評価するという場合も、生活困難の概念というものが精緻に組み立てにくいというところがあるので、あいまいな概念で始めて、だんだん精緻にしていくということでどうだろうかということ。
 あと、具体的な分析の方法としては、経済面を見るにしても、収入だけではなくて、支出のパターンを見てもいいんではないか。
 それから、債務の問題も含めて見るべきではないか。
 それから、特別集計としては、就業構造基本調査や国民生活基礎調査というものがいいんではないか。
 最後に、生活困難者当事者の情報をどう引き出してくるかということに関して、直接のヒアリングというのはなかなか口が重くて難しいんではないかということ、これは前回検討会で御意見いただいていまして、支援団体へのヒアリングという方法をまずは考えていくというのがよい方法ということで御意見をいただいております。
 意見の要旨は以上でございますが、資料4に移りまして、そういうことも踏まえながら、今後、具体的な作業を進めていきたいと思っております。当面の作業方針ということで、4点ほど整理させていただいています。
 まずは、既存の統計データや調査・研究の収集・整理ということで、文献調査を行いまして知見を整理していくということをやっていきたいということで、ある段階で整理をして、お示ししたいと思っております。
 2点目といたしまして、特別集計の実施準備。既存の統計ではなかなか把握できない状況を分析するために、必要に応じて特別集計を実施するということで、こちらは申請に半年ほどかかるものですので、早急に実施の準備をしていく予定でございます。
 具体的には、先ほど阿部先生が発表されていたような貧困率ですとか、ああいうところも特別集計しないと出てこないような数字がありまして、そういうところを念頭に置いております。
 3点目、有識者ヒアリングは、本日がその1回になりますけれども、まず、検討会の先生方がいろいろと御私見をお持ちですので、そこをいただいたり、あと、外部の有識者の方をお招きするという形で、原則として専門調査会と検討会の合同開催で進めていきたいと思います。
 4点目、支援機関・団体等に対するヒアリング調査。こちらは、以下のような調査対象機関を対象にしまして始めていきたいということで考えております。
 ※で書いておりますが、施策の部分につきましては、ある程度、実態把握が進んだ後に、関係府省ヒアリング等により実施を予定していきたいということで考えております。
 裏面に大まかなスケジュールを予定ということで挙げさせていただいております。20年度内、3月ごろに一旦とりまとめに向けた論点整理をしていきたいという方向で考えております。その後、来年度に入りましてから施策の部分を中心に御議論いただきまして、報告書のとりまとめを夏ごろに向けてやっていくという予定で考えております。
 以上でございます。
鹿嶋会長
この意見について、今から議論をしたいんですが、今日の橘木、阿部委員のお2人の話を聞いていて、例えば、母子世帯は就労していても貧困層が6割いるとか、公的年金制度が生活の最低保障に到達していないとか、更には社会的排除の影響の中で、15歳の生活とか、いろいろあるわけです。そういう問題も加味しながら議論したいんですが、是非前提として頭に置いていただきたいのは、論点整理とか報告書のまとめの中で、男女共同参画という視点の中でこの分析をしないと、ほかの類似のものと大差なくなってしまうような結論になりかねませんので、男女共同参画というのを常に頭に置きながら議論をしていただきたいと思っております。
 まず、阿部委員の方で、7月に開いた専門調査会、更には阿部委員も参加している9月の検討会等で出された意見が資料3にあるわけですけれども、それ以外に、今日、お2人に意見を発表していただきましたか、生活困難のとらえ方とか、そういう問題を含めて、何かこの辺りで補足的に言っていただける点はありますか。
阿部委員
私も随分しゃべって、言うこともなくなってきたんですけれども、今まで、貧困という観点から見るとき、先ほどおっしゃったように、女性の貧困というのは欧米では結構大きなテーマであるにもかかわらず、余り言われてこなかったところがあると思うんです。ですので、この会としては、そこのところを第1面に出していただきたいと思います。それに付随して、女性に対する政策がいかに不十分かということが出てくるかと思います。例えば、母子世帯に対する施策に対しても、母子家庭のお母さんにはワーク・ライフ・バランスが適用されないのかですとか、そういうところをばしばし突いていっていただければいいなと思いました。感想です。
鹿嶋会長
あとはもう自由に議論をしたいと思っていますので、御意見のある方はどうぞ。
山口委員
非常に重要な調査をされてきたと思います。これが政策になり、効果を挙げていくということまで考えますと、日本全体を、北海道と沖縄は違うだろうし、地域別の問題もあるだろうと思うんです。もう一つは、分野、農林漁業、サラリーマン世帯、その辺のことを考えて、将来ともにこの調査が生きるように、大都会、中小都市、いろんなところがありますから、地域別に、そのような特色をつかむことは、より効果が上がるんではないか。とりあえず、今、会長がおっしゃられたように、ジェンダーの視点でということになると、全くどうにもならない地域もあります。これは難しいことではないと思いますので、要望として申し上げます。
鹿嶋会長
どうぞ。
袖井委員
2点ばかり申し上げたいんですが、1つは、データとして、資産に関するデータが得られないかということです。女性の資産形成についてやっている人は余りなくて、お茶の水女子大学の御船先生がやっていらっしゃるんですが、資産という面で言うと、確かに高齢者はかなり資産を持っているんです。ですから、さっきの主観的な貧困感が低いというのは、多分、家があるとか、そういう問題かなとも思うんですが、女性については非常に資産が少ないです。家の名義もほとんど男なんで、資産についてのデータがない。つまり、今日、お話になったのはほとんどフローで測っているので、特に高齢者などになると、フローだけでは測れないということです。できれば、そういうデータも欲しいと思います。
 それから、やはりこれは男女ということになっているので、父子世帯のことも何かヒアリングできないか。父子世帯については余りデータがないんです。ですから、できれば、そういう人たちの話、あるいはそういう人たちの支援グループのヒアリングもしていただきたいと思います。
鹿嶋会長
資産も盛り込んだデータ、そして、そこから貧困を論じられるデータはありますか。
阿部委員
国民生活基礎調査には一応、貯蓄データがあります。ですので、それを勘案して、貧困層の中の何%がどれぐらいの資産を持っているかですとか、そういうことを見ることは可能かと思いますので、袖井先生のおっしゃるようなことはできるかと思います。父子世帯も、大調査年であれば取ることができるので、母子世帯ほど貧困率は高くないですけれども、2親世帯に比べれば高い傾向になっているというのがあるかと思います。
鹿嶋会長
父子世帯のヒアリングは予定していましたか。
山岡分析官
具体的には予定しておりませんが、勿論、視野には入れて、これからヒアリング先のリストアップを具体的にしていく際に検討していきたいと思います。
山口委員
これは記録に取らなくていいんですが、文京女子大学大学院をもう辞められたんですけれども、林千代さんが、母子世帯ばかりではなくて父子世帯をやらなければいけないということを前からおっしゃっているので、1人の候補としてお考えください。
鹿嶋会長
ほかに御意見ありますか。
勝又委員
貧困に陥るいろいろな原因はあると思うんですが、例えば、就労の問題がここには出ているんですけれども、もう一つ、健康を害したとか、けがをしてというような、障害にかかわるところなんですけれども、国民生活基礎調査の中には、ある程度長期間に体の不調を訴えているとか、そういうものを調べていると私は記憶しているんです。先日発表になったところにもあるので、今、結局、障害者の問題というと、障害何級だとか、身体障害だとか、知的障害だとかというような形でのとらえ方しかないのですけれども、そうではなくて、体調が悪くて6か月以上療養しているとか、EUのハウスホールドサーベイか何かにはそういうのがあると思いますけれども、そういう視点も入れると、貧困に陥る原因が、例えば、就労がなくなる前に、ある意味で非常に労働強化があって体調を崩して、就労がなくなって、そして貧困に陥るとか、そういう層については、比較的ターゲットを絞って、そこを手厚くして就労に戻れるとか、政策的にはそういうことが可能ではないか。
 女性に視点を絞るとすれば、産前産後とか、そういう部分において、女性がどのくらい身体的なもので保護されているのかということも視点にあってもいいかなと思います。
鹿嶋会長
どうぞ。
大沢委員
もう既に述べられているところなんですが、関連施策との関係で、社会保障の機能の状況や最低賃金制度について分析するという中、特に雇用保険制度について、今、正社員及び要件を満たす人のみの、正社員が中心になった雇用保険になっていて、失業保険から排除というか、適用されない人がかなり増えているという問題も指摘されておりますし、経済財政諮問会議の専門調査会でも、生活保護と雇用保険との整合性が取れていないという問題が指摘されています。セーフティーネットの問題にかかわるのかもしれませんが、これは非常に重要な問題だと思いますので、是非この調査会で深めたらいいのではないかと思います。
 もう一つは、資産のことが出ましたが、男女共同参画に間接的にかかわるとは思うのですが、外れるかもしれない問題です。今は、親の世代から子ども世代に経済的な援助がされている。所得移転が行われているのは、国際比較で日本大学の小川先生がやられた調査では、韓国と日本だけなんだそうですが、親の世代は何とかなったけれども、子どもの世代が今、親の援助を受けている。
 もう一つ、そこで聞いたところ、子ども世代の方は所得格差が拡大していて、親の方はそれほどでもない。どういうメカニズムがそこに働いて、どういう世代で親に経済的に依存しているのか、まだ全くわかっていない状況ですが、そういった研究が今、出ていますので、ここら辺も深めていくと、潜在的経済困窮者というのは多分、日本にいて、制度の維持を今後困難にしていくという問題が出てくるように思います。
鹿嶋会長
どうぞ。
横田委員
ほかの方もおっしゃっていましたが、鹿嶋会長が最初におっしゃられた男女共同参画の視点をきちっと出さないと、この報告書を今更出しても意味がなくなってしまう。その場合に、貧困で苦しんでいる女性が男性に比べて全体的に多いということがあるのです。それは大事なことで、それもやらなくてはいけないのですが、その問題だけではなくて、御存じのように、途上国になるともっとそれがはっきりしているのですが、女性が差別され、いろんな形で社会的状況から排除されている結果として、女性だけではなくて、女性を含む家族が貧困の状態にあるという問題があります。
 御存じのとおり、バングラデシュのグラミン銀行のような形の試みが成功しました。実は、バングラデシュでは、女性は銀行からお金を借りられなかったわけです。財産も持てない。なぜ女性に貸さないかというと、返せないから、とこう言ったのですが、そうではなくて、実際にやってみたら、ほとんど99.9%、利息をつけて返した。そういう実績で、今、グラミン銀行の試みはいろんなところに広がっているのです。
 日本の場合には、そういう本当に貧しい国と同じ状況にはないのですが、似たような状況はあると思います。制度的には日本は男女平等となっていますが、銀行などからどれだけお金を借りられるかというと、銀行自身は、はっきり言いませんが、実際は差別していると思うのです。こういうところをきちっととらえ出さないといけないような気がします。
 女性が差別されている結果として、母子家庭だけではなくて、例えば、夫婦でいても、夫が働けない事情にあるとか、病気とかいうことになると、形の上では母子家庭とか、女性1人ということでなくても、実は家族全体が貧困に陥るということになるわけです。ですから、そういう問題をきちっと押さえるような形のデータも出していただいて研究したいというのが私の関心なのです。
 これは女性のエンパワメントという後の方に出てくることに関係することで、エンパワメントは、教育とか、そういうことがまずありますが、それだけではなくて、社会的に力を発揮できない制約がたくさんあるわけですから、それをどう克服するかというところを考えないといけない。
 例えば、介護の問題もちらっと出てきていますが、今は圧倒的に障害者と高齢者、病気の人の介護は、どのくらいか数字は知りませんが、私の知る限り、ほとんど女性に依存しています。そうすると、その負担がある分だけ、当然働けないし、高収入の仕事ができなくなるわけです。こういう状況は的確につかまえた方がいいかなという気がしまして、その辺をデータ的にも得たいと思いますし、また、その点、議論して、提言の方に結びつけていただけたらと思います。
 表現上のことなんですが、資料3の1ページの下のところなのですが、これはどなたかの意見を書かれたので、別にこれ自身、間違いでも何でもないのでしょうが、第2センテンス「男は働くべきもの、女は結婚すればよい、という考え方が背景にあることをどう考えるか」となっているのです。勿論、こういう考え方は日本だけではなくて、いろいろありますが、日本にもまだ強く残っていて、これが影響を与えていることは間違いないのですが、この文章の書き方として、意見としてはこうなっていたかもしれませんが、私たちの取組みとしては、男は働くべきもの、女は結婚して家事、育児をすればよいという考え方は基本的におかしいというところから始めないと、どう考えるかという問いは、今の時点ではちょっと時代遅れの問題提起になってしまうものですから、是非その点をはっきりさせてほしいと思っています。
 また、先ほども出ましたし、ここで何度も出てきましたけれども、同一価値労働同一賃金という考え方が、どういうわけか知りませんけれども、法律の中に書けないという、これはおかしいのです。私の出ているILOの専門家委員会でも何度も指摘されていますし、女子差別撤廃委員会でも指摘されています。また、5月に行われた国連の人権理事会での日本に対する人権状況審査でも指摘されています。これは国際的に日本について指摘される共通の問題点になっているのです。日本で、そのことを法令に入れることができないというのは、どこかおかしい。そういうことも含めて、女性のエンパワメントを少し広く、法律的な制約も含めて、いろんな制約を乗り越える、そういう方向で議論して提言に結びつけられるといいなというのが私の考えです。
鹿嶋会長
多分、今までの専門調査会でやってきたテーマよりも、今回のテーマというのは、ぶら下がっている要素が相当幅広く多岐にわたっていると思います。男女共同参画の視点で全部やるのは技術的には無理だと思います。だから、それを除いたコアの部分があるはずで、周辺の方に男女共同参画の視点があると思います。今、生活困難とか精神困難以外に、横田先生おっしゃったように、銀行で貸さないという制度的な問題もあるし、生物役割分業の意識もあるということなので、論点整理に向けるためには、ある程度概念図みたいなものを、難しいけれども、書いていただいて、議論をしやすくした方がいいかもしれませんね。単発的にいろんな要素で有識者ヒアリングをやっても、まとまりが、収拾がつかなくなる可能性があるので、そういう作業を事務局でやってくれますか。
山岡分析官
わかりました。
鹿嶋会長
どうぞ。
植本委員
最初のときから随分イメージが整理をされてきて、わかりやすくなってきたと思うのですけれども、生活困難の定義、1ページのところでも、これをどういうふうにしていくのかというところで示していただいていますが、もう少しクリアに考えるということで、テーマそのものを貧困に直面をするという形で、最終的な議論集約として、視点はそこにあって、そこから見て、その貧困が起こってくる生活困難の要素というアプローチの方が、調査の流れとか、見る見方がわかりやすいのではないか。まず生活困難といったときには、それは何なのというところから入っていくということのわかりにくさを少し心配をするので、アプローチの仕方のものとして、そういう筋道の立て方を検討いただけないかということが1つ。
 それから、大沢先生もおっしゃいましたけれども、各省の施策との関連というところも、こういうことが導き出された経過の中に、基本法が指摘しているようなさまざまな社会保障政策についての性に中立的なところがまだまだ不十分だという、そこのところも大きな要因だということが分析の内容として出てくるような、そういう視点での調査の観点をお願いをしたい。
 それから、母子家庭などに特にヒアリングをという観点のところで言えば、母子家庭が多く出てきている原因としての家庭内暴力の問題とか、それぞれの要因分析みたいなものにも言及をして、母子家庭と父子家庭で生存権の侵され方の違いといったらおかしいですけれども、逆に自立が損なわれている内容、それから、家庭内暴力が連鎖のように繰り返されていっている、そういう状況なども貧困の連鎖と深く結びついていくのではないか。
 鹿嶋先生おっしゃったように、言い出したら切りがないことになるかもしれませんけれども、せっかくですから、できるだけ多角的、多面的に、勿論、視点としての男女共同参画や、とりわけ社会を支える労働という側面のところで、横田先生のおっしゃった、しっかりとした労働についての視点ということでの、同一価値労働同一賃金をいわば阻んでいる要素は何なのかということにある程度言及できる、だから必要なんだという、そういうところに結びついていけたら、とてもいいなと思います。
鹿嶋会長
女性を取り巻く貧困の因果関係を全部分析するとなると、これは相当な幅広いテーマになるんですが、議論しながら少し集約するという形でまとめていきたいと思うんですが、ほかに御意見のある方、どうでしょうか。
山口委員
幅広くなってしまって怒られるけれども、今日はいろいろ言えとおっしゃるから。貧しさからきていることと、ライフスタイルからきていることとで、女性の犯罪が多い。かつては貧困とものすごく関係があったけれども、今、依然としてある。その現象は子殺しです。あれは、貧しさがある。もう一個は、多様な生き方だから、そこも関連している。これはデータのあることだから、それに触れたらいいかなと思うんです。
 それから、今、おれおれ電話があります。それにどうしてあんなに引っかかるのか。女性が多いではないですか。それは、息子が何かやられたということで、娘がというのは出てこないんです。そうすると、母親は自分のお金を入れてしまうということで、あれは1つの長男主義、男は所得を持っている、母親はどうしているかというと、銀行は担保がなかったら貸してくれません。多分、たんす貯金だと思うんです。別にこれを今回のこれに入れろとは言わないけれども、ああいう現象の中で、整理して言えば、その辺が子殺し等、犯罪との関係も統計がないかなと思います。これは無理かもしれませんけれども、とにかく会長が言えとおっしゃるから申しました。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 今日はいろんな意見を出していただきたいと思いますが、ほかにどうでしょうか。
大沢委員
私もあえてということで、家族の多様化が、阿部さんの発表の中で出てきたと思いますし、橘木先生のお話の中でも、ここがかぎ、わかりませんが、私が今日お話を伺った限りで思ったのは、家族の形が非常に変わってきている、多様化しているということが、まだ社会全体の中で、確かにデータを見れば、単身者が増えているということは言えるんですが、余りマスメディアでも取り上げられていない。その家族の多様化が、制度がそういうふうになっていなくて、そこの標準的なものから外れた人たちが貧困になっていると思いました。例えば、仕事を頻繁に変わる人たちは、雇用保険から外れるわけです。そうすると、失業手当が受けられない。それから、非正社員も、なぜ賃金がこれほど低いのかというと、夫に養われている。皆が結婚しているから、いずれ女性は保障が得られるという、そういう保障がなくなってきているということだと思います。その制度が雇用の流動化の問題になっていくわけだから、根が深い問題なんですが、その背後にある私たちの制度を律している家族の形の変化ということを、この専門調査会では、1つ、大きなテーマとして議論されたらどうかと思います。
 それと、先ほど、地方と都市の格差ということで、大きいのは、家族の役割ということなんだと思います。『反貧困』を書いた湯浅さんは、貧困に陥る人は「溜めがない」という表現をされていますけれども、その「溜め」というのは、家族がいたり、周辺にだれか支えてくれる人がいて、そういう人の助言を得ながら自立していくというネットワークで、今、家族が変わったとすると、それに変わるネットワークが必要になってきて、そういうネットワークが得られない人がどんどん下に落ちていくということを考えると、やはり貧困問題というのは、社会がどう連帯して支えていくのか、その支え方を考える必要があるのかなと思いました。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 あとはよろしいですか。それでは、本日の審議はここまでとさせていただきます。今後は、本日の方針に沿って検討会を中心として具体的な作業を進めながら、専門調査会、検討会合同での有識者ヒアリング等を進めていきたいと思います。
 最後に事務局から連絡事項があればお願いします。
山岡分析官
本日はありがとうございました。今後の会議の日程につきましては、後ほど事務局から日程調整をさせていただきまして、改めて御連絡をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の資料の扱いでございますが、参考資料2と3につきましては、検討会の資料ということで、こちらは非公開の扱いにさせていただいておりますので、取扱いに御注意くださいますようお願いいたします。
 以上でございます。
鹿嶋会長
それでは、これで「監視・影響調査専門調査会」の第31回の会合と「第2回生活困難を抱える男女に関する検討会」を終わります。長時間どうもありがとうございました。

(以上)