女子差別撤廃条約実施状況第4回報告(仮訳)

9. 第10条

(1)男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実
1)初等中等教育の充実

学校教育全体を通じて、人権の尊重、男女の平等、相互協力・理解についての指導の充実、教科書や教材における配慮、教員の養成・研修面での充実等を推進するよう、文部省から都道府県の教育委員会等に対して情報提供、指導、援助を行っている。

第3回報告に既述のとおり、現行学習指導要領(1989年改訂)において、家庭科教育は、男女とも必修とされ、男女同一の教育課程となり、中学校については1993年度から、高等学校については1994年度から適用されているところであり、教育課程の改善方法や研究成果の発表などの様々な研修等を通じて、その趣旨の徹底を図っており、現在,中学校・高等学校のそれぞれにおいて円滑に実施されている。

なお、一部の社会科教科書には女子差別撤廃条約に関する記述がなされているものがあり、また、家庭科の教科書を中心に多様な家族像や男女の平等、相互理解・協力の重要性を踏まえた記述が見られる。

2)高等教育機関における男女平等の推進

高等教育機関においては、女性の視点から従来の学問体系を再構築しようとする女性学について、男性研究者の育成も視野に入れつつ、教育・研究をさらに振興するとともに、教育・研究活動において、ジェンダーに敏感な視点が組み込まれるよう努めている。

最近、女性学に関する研究機関が大学等に設けられつつある。国立では、1996年5月に、お茶の水女子大学にジェンダー研究センターが設けられた。このジェンダー研究センターは、ジェンダーに関する学術研究及び調査、教育研修、情報の提供などを主要な目的として設立されたもので、女性学やジェンダー研究に関する多彩な研究プロジェクトや研究生や学部・大学院生の研究指導も行っているほか、自由参加の月例研究会や公開シンポジウムを開催する一方、研究の推進を意図して「ジェンダー研究センター年報」を刊行している。

このほか、例えば、公立では大阪府立女子大学に、私立では愛知淑徳大学に女性学あるいはジェンダー研究所が設置されるなど研究が徐々に広まりつつある。

3)社会教育の推進
(i)家庭教育に関する学習機会の充実

子どものいる親等を対象とした家庭教育学級、親になる前の新婚期、妊娠期の男女を対象とした学級等において、男女が相互の人格を尊重し、相手の立場を尊重し助け合うような人間形成に関する内容をテーマに取り上げたり、婦人学級等の学級・講座においても家庭生活における男女共同参画に関するテーマを取り上げるなどの学習が行われている。文部省では、市町村が行うこれらの学級・講座等のうち、先導的・モデル的な事業に対して助成している。

(ii)青少年男女の相互理解・協力等の促進

青少年の男女が、男女平等、男女相互の理解・協力、家庭・地域・職場への共同参画促進について学習する機会として、教育委員会、公民館等の社会教育施設、婦人団体、PTA等が実施する学級・講座等がある。市町村が行うこれら学級・講座のうちモデル的な事業に対して助成している。 また、1996年度より、青年を対象とした「男女共同参画セミナー」を委嘱事業として実施している。これは、高等教育機関等を拠点として青年が男女共同参画について学習する機会を提供するものであり、1997年度は16の事業を実施した。

4)生涯学習の推進

我が国では、人々が生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される生涯学習社会の構築を目指して施策を推進している。このことは、女性が男性と同様に社会のあらゆる分野に参画するためにも重要な意義を持つ。

(i)地域における生涯学習推進体制の整備

生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律に基づき、「地域生涯学習振興基本構想」制度の活用を推進するとともに、地方公共団体において、生涯学習審議会など行政組織の整備、生涯学習振興計画の策定、生涯学習推進センターの整備などが促進されるよう奨励している。

(ii)リカレント教育の推進

近年の科学技術の急速な進展や産業構造等の変化などに対応するため、社会人・職業人を再教育するリカレント教育の重要性はますます高まってきており、大学・専修学校等における編入学の受け入れ、社会人特別選抜の実施、昼夜開講制の推進、夜間大学院の設置、公開講座の実施等に努め、大学や専修学校等の生涯学習機能の拡充を図るとともに、専修学校における開放講座の充実を図っている。

(iii)放送大学等の整備

テレビ・ラジオを利用して高等教育の機会を提供する放送大学の放送エリアを、1998年1月から衛星放送により全国に拡大した。また、単位制高等学校や専修学校の整備を推進し、多様な学習歴や生活環境を持つ学習者に対する学習機会の提供を促進している。

(2)女性の多様化・高度化した学習需要に対応した教育・学習機会の充実
1)女性の社会参加、生涯学習の促進

国立婦人教育会館は、日本における唯一の国立の婦人教育施設であり、婦人教育及び家庭教育のナショナルセンターとして、全国の婦人教育施設、女性センター等に対して指導的・先導的な役割を果たしている。

国立婦人教育会館では、1996年度から、情報機能の充実の一環として、インターネット上のホームページの開設や、ジェンダーにとらわれない教育・学習リーダー研修のアドバンストコースを開設しているほか、家庭教育に関するマルチメディアデーターベースの構築や家庭・地域の教育機能についての調査研究を行っている。

また、1996年から「女性学・ジェンダー研究フォーラム」を開催し、男女共同参画社会の形成に向け、全国各地の女性学・ジェンダー研究について研究・教育・実践活動を行っている団体・グループ・個人の日頃の活動の成果の発表や交流、ネットワークづくりの場を提供している。さらに、社会教育における女性学教育に関する内容と方法に関する調査研究の成果をとりまとめている。

さらに、1997年度からは、女性の生涯学習推進を図るため、各地域の教育委員会・女性の生涯教育に関連のある施設と連携して「女性の生涯学習のための地域セミナー」を開催している。

1997年11月には、開館20周年を迎え、「女性の交流フェスティバル」及び記念式典を行うとともに、「21世紀に向けての女性ネットワーク」をテーマとした「女性と生涯学習国際フォーラム」を開催した。さらに、20周年を記念して、ジェンダーの視点に立った生涯学習に関わる国際的、学際的研究ならびに実践的研究に寄与する論文、投稿、事例研究等から構成される「国立婦人教育会館研究紀要」を創刊した。

(3)進路・就職指導の充実について

女性の就業分野や大学における専攻分野をみると、男性と比較して事務職や、人文科学専攻に集中する傾向がみられることから、学校における進路指導については、男子向き女子向きといった固定的な考え方にとらわれず、生徒一人一人が主体的に進路を選択する能力・態度を身に付けることができるよう指導の一層の改善・充実に努めており、このための各種施策を推進している。

就職指導については、各大学において学生に対するキャリア・ガイダンスの開催等を推進するとともに、1995年度から、大学等の就職担当者及び企業の採用担当者の参加を得て情報交換・協議等を行う全国就職指導ガイダンスを実施している。また、就職関連情報を学生に迅速に提供するほか、大学への就職指導担当専門員の配置等を通じ、女子学生への就職指導の充実を図っているとともに、各経済団体等に対し、女子学生の均等な就職機会の確保等について協力要請を行っている。

更に女性が固定的な考え方にとらわれない進路決定を行うよう、労働省では、高等学校の女子生徒やその親、学校の進路指導担当者に対する意識啓発セミナーを1995年度より実施している。

(4)教育改革プログラム

1997年1月、日本政府が掲げる6つの改革の一つである教育改革に具体的かつ積極的に取り組むため、 文部省において「教育改革プログラム」を策定した。

この「教育改革プログラム」では、その一項目として,男女平等の意識を高める 教育の充実を掲げており、男女共同参画社会の実現に向けて、男女の固定的な性別役割分担意識を是正し、人権意識に基づいた男女平等観の形成を促進するため、 教育関係者の研修の充実や教材の開発などを通じ、学校教育及び社会教育において、男女平等を推進する教育・学習の充実を図ることとしている。

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