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第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援
ア 就業・生活の安定を通じた自立に向けた取組
男女の均等な機会及び待遇の確保の徹底、男女間の賃金差異の解消、女性の就業継続や再就職の支援、職場における各種ハラスメントの防止並びに政府の支援情報を一元的に提供する「女性応援ポータルサイト」の運営により、ワーク・ライフ・バランスの推進等に向けた取組を行っている。【内閣府、厚生労働省】
男性に比べ女性の方が雇用者に占める非正規雇用労働者の割合が高いことが女性が貧困に陥りやすい背景の一つとなっていることから、公正な待遇が図られた多様な働き方の普及、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消等を推進している。【厚生労働省】
令和6(2024)年10月に、短時間労働者への被用者保険の適用に係る企業規模要件を101人以上から51人以上に引き下げた。(再掲)【厚生労働省】
内閣府では、官民連携の下で民間シェルター等による先進的な取組を推進する都道府県等への支援を行っている。(再掲)【内閣府、法務省、厚生労働省、国土交通省、関係省庁】
生活困窮者の抱える課題は、経済的困窮を始めとして、就労、病気、住まいの不安定、家庭の課題、家計管理の課題、債務問題など多岐にわたり、かつこうした課題を複数抱えている場合もある。こうした生活困窮者のそれぞれの状況に応じて包括的な支援を行い、その自立を促進するため、生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)に基づく相談支援、就労支援、居住支援、家計改善支援等を行っている。【厚生労働省】
イ ひとり親家庭等の親子が安心して生活できる環境づくり
ひとり親家庭の実情に応じ、マザーズハローワーク、母子家庭等就業・自立支援センター等において、ひとり親を含む子育て女性等に対するきめ細かな就職支援を実施しているとともに、就職又は転職の準備段階から就職先の決定及び就職後のフォローアップまでの一体的な支援等を実施している。また、ひとり親家庭の親等の就労支援に資する職業訓練や各種雇用関係助成金の活用を推進している。さらに、就職に有利になる資格の取得や主体的な能力開発の取組を促進し、生活の安定を図るため、ひとり親家庭の親に対する給付金等により、ひとり親家庭の生活の安定に資する就業に向けた資格取得を促進している。加えて、企業に対して、ひとり親の優先的な雇用について協力を要請し、助成金を通じて企業の取組を支援するとともに、マザーズハローワーク等において、協力企業に関する情報を提供している。【こども家庭庁、厚生労働省】
ひとり親家庭等が安心して子育てをしながら生活できる環境を整備するため、以下の取組を含めた総合的な支援を展開している。【内閣府、こども家庭庁、厚生労働省、国土交通省】
- ひとり親世帯や住宅困窮度の高い子育て世帯に対し、公営住宅への優先入居、民間賃貸住宅を活用したセーフティネット登録住宅の推進、登録住宅の改修、入居者負担の軽減、居住支援等への支援を通じ、住まいの確保を支援している。
- ひとり親家庭等の子供に対し、放課後児童クラブ等の終了後に生活習慣の習得・学習支援等を行うことにより生活に困窮する家庭の子供の生活の向上を図っている。
- 児童扶養手当の支給、母子父子寡婦福祉資金貸付金の貸付けにより経済的な支援を実施するとともに、支給要件の周知等を図っている。
- デジタル化社会到来の中で、女性が経済的に自立できるよう、女性デジタル人材の育成など、多様な主体による連携体制の構築の下で地域の実情に応じて地方公共団体が行う取組を、地域女性活躍推進交付金により支援している。
ひとり親家庭を対象とした様々な支援情報を提供している。また、ひとり親家庭の相談窓口において、ひとり親家庭が直面する様々な課題や個別のニーズに対応するため、適切な支援メニューをワンストップで提供する体制を整備している。【こども家庭庁】
養育費の取決め等を促進するため、動画やパンフレット等による効果的な周知・啓発を行っている。養育費等相談支援センターや地方公共団体における養育費の相談支援について、身近な地域での伴走型の支援、専門的な相談を更に充実・強化するとともに、離婚前後親支援事業を拡充し、弁護士等による支援を含めた離婚前からの親支援の充実や、関係部署の連携強化を含めた地方公共団体の先駆的な取組への支援を実施している。また、養育費の支払確保の手続を利用しやすくするための支援の在り方について、専門的な法律知識を有しない離婚した父母が民事執行手続の申立てに必要な資料(養育費債権の合意文書等)を自ら作成できるようにするため、複数の自治体と協力し実証的な調査研究を行った。第三者から債務者の財産に関する情報を取得する手続を新設するなどした民事執行法(昭和54年法律第4号)の改正法による全ての手続が、令和3(2021)年5月から利用可能となったため、引き続き関係機関等への周知をしている。また、資力の乏しい者に対して無料法律相談や弁護士費用等の立替えを行う日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助制度について、ひとり親が養育費を請求するために利用した場合に償還等免除の要件を緩和するなどのひとり親支援の拡充策を実施するとともに、関係機関等に対する制度の周知に努めている。親子交流など幅広く子の養育に必要な事項について取り決める「子の養育計画」を作成するために必要な支援や情報提供の在り方について、複数の自治体と協力し実証的な調査研究を行った。子供の利益を図る観点から、養育費制度も含めて父母が離婚した後の子の養育の在り方を見直すことを内容とする民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)が第213回国会(令和6(2024)年)において成立した。関係府省庁等連絡会議の設置、改正法の周知広報用のパンフレットやポスター等の配布、改正法の解説動画の公開等、法律の円滑な施行に向けて準備を進めている。【こども家庭庁、法務省】
家庭の経済状況等によって子供の進学機会や学力・意欲の差が生じないように、以下の取組を推進している。【こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省】
- 生活困窮者自立支援制度の子どもの学習・生活支援事業において、生活保護世帯を含む生活困窮世帯の子供とその保護者を対象に、学習支援や生活習慣・育成環境の改善に関する助言、進学や就労といった進路選択に関する情報提供・助言、関係機関との連絡調整など、世帯全体へのきめ細かで包括的な支援
- 学校におけるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の配置の充実を図るとともに、地域全体で子供の成長を支える地域学校協働活動を推進
- 高校中退を防止するため高等学校における指導・相談体制の充実を図るとともに、高校中退者等を対象とした学習相談及び学習支援を実施する地方公共団体等の取組の支援等
- 教育費に係る経済的負担の軽減
文部科学省では、家庭の経済事情にかかわらず、子供たちの誰もが、希望する質の高い教育を受けることができるよう、教育費の負担軽減に向けた取組を行っている。
例えば、初等中等教育段階における取組としては、3歳から5歳までの全ての子供を対象に、幼稚園、保育所、認定こども園等の利用料を無償化しているほか、経済的理由による就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して、各市町村において行われる学用品費の支給等の就学援助事業のうち一部に対する補助を行い、予算単価の増額など制度の充実を図っている。
後期中等教育段階における取組として、授業料を支援する「高等学校等就学支援金」を支給しており、令和6(2024)年度においては、令和2(2020)年度に私立高校等に通う年収約590万円未満世帯の生徒等を対象に支給額を大幅に引き上げた措置及び令和5(2023)年度に制度改正によって新たに創設した家計急変世帯への支援を引き続き着実に実施した。
また、低所得世帯(生活保護受給世帯・住民税非課税世帯)を対象に授業料以外の教育費を支援する「高校生等奨学給付金」については、給付額の増額を行った。
さらに、高等教育段階における取組として、低所得世帯に対して、授業料等の減免措置と給付型奨学金の支給を併せて行う「高等教育の修学支援新制度」を実施しており、令和6(2024)年度においては多子世帯や私立理工農系の学部等に通う学生等の中間層(世帯年収600万円程度)へ対象を拡大した。あわせて、日本学生支援機構の貸与型奨学金については、返還期間を延長することにより月々の返還額を減額する制度の見直しを行い、利用可能な年収上限を325万円から400万円等に引き上げるとともに、月々の返還額を最大で4分の1まで減額できるようにした。
- 進学に向けたチャレンジを後押しするため、ひとり親家庭等の子供に対し、学校や放課後児童クラブ等の終了後に生活習慣の習得支援、大学等受験料の支援を含む学習支援等
「こどもの未来応援基金」を通じた子供に寄り添った活動を実施する民間団体への支援、支援を実施したい民間企業と支援を必要とする民間団体のマッチング等、官公民の連携・協働プロジェクトである「こどもの未来応援国民運動」を推進している。【こども家庭庁】
ウ 子供・若者の自立に向けた力を高める取組
社会人・職業人として自立できる人材を育成するため、キャリア教育・職業教育を体系的に充実させている。進路や就職に関する指導も含め、男女ともに経済的に自立していくことの重要性について伝えるとともに、自らの学びのプロセスを記述し振り返ることができる教材「キャリア・パスポート」の効果的な活用等を通じて、長期的な視点に立って人生を展望し、働くことを位置付け、準備できるような教育を推進している。また、大学等におけるキャリア形成支援活動の理解増進や好事例の普及を目的としたイベントを実施した。【文部科学省】
若者が充実した職業人生を歩んでいけるよう、就業等の実態を男女別等きめ細かく把握し、新規学校卒業者への支援、中途退学者や未就職卒業者への対応、正社員就職を希望する、安定した就労の経験が少ない若者への支援等を行っている。【文部科学省、厚生労働省】
ニート、ひきこもり等、困難を有する子供・若者が、社会生活を円滑に営むことができるよう、子ども・若者総合相談センター、地域若者サポートステーション、ひきこもり地域支援センター等において、多様な主体間の連携により、複数の支援を組み合わせて行うなど、地域の実情に合った切れ目のない支援を行っている。
文部科学省では、高校中退者等を対象に高校や地域若者サポートステーション、ハローワーク等の地域資源を活用しながら学習相談及び学習支援を実施する地方公共団体の取組を支援している。【こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省、関係府省】
ヤングケアラーへの支援を強化するため、地方公共団体が行う実態調査や関係機関・団体等職員への研修、コーディネーターの配置やピアサポート等の取組について必要な経費の支援に加え、令和6(2024)年6月に子ども・若者育成支援推進法(平成21年法律第71号)が改正され、国・地方公共団体等が支援に努めるべき対象としてヤングケアラーを明記した。また、令和4(2022)年度から令和6(2024)年度までの3年間をヤングケアラー認知度向上の「集中取組期間」として集中的な広報・啓発活動などを行った。【こども家庭庁】