記録 G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合

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令和5(2023)年1月から12月の1年間、我が国はG7の議長国を務めた。令和5(2023)年のG7では、ジェンダー主流化1の流れをより強固なものとするべく、5月19日(金)~21日(日)に広島県広島市で開催されたG7広島サミットはもとより、各閣僚会合でもジェンダーの視点を取り入れた議論が行われた。この取組の中核として、6月24日(土)、25日(日)に、我が国で初めてG7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合(英語名称:G7 Ministerial Meeting on Gender Equality and Women’s Empowerment in Nikko, Tochigi)が開催された。

G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合の概要

G7 Ministerial Meeting on Gender Equality and Women’s Empowerment in Nikko, Tochigi

●日程

令和5(2023)年6月24日(土)、25日(日)

●場所

栃木県日光市

●参加者2(議長国順)

  • 日本:小倉 將信 内閣府特命担当大臣(男女共同参画)・女性活躍担当大臣
  • イタリア:ユーゲニア ロチェッラ 家族・出生率及び機会均等担当大臣
  • カナダ:ジェナ サッズ 女性・ジェンダー平等・青少年大臣政務官
  • フランス:イザベル ローム 首相付 女男平等・多様性・機会均等担当大臣
  • 米国:カトリーナ フォトヴァット 国務省グローバル女性課題室シニア・オフィサー
  • 英国:ジュリア ロングボトム 駐日英国大使
  • ドイツ:リサ パウス 連邦家庭・高齢者・女性・青少年大臣
  • EU:エレナ ダッリ 欧州委員(平等担当)
  • W7(Women 7)3:斎藤 文栄 W7日本共同代表
  • ジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC:The Gender Equality Advisory Council)4:白波瀬 佐和子 2023年GEAC議長

●当日のプログラム

日時 プログラム
6月24日(土) 夕方 政府主催レセプション
6月25日(日) 午前 オープニングセッション
W7及びGEACとの対話
セッション1(コロナ禍での教訓を生かす)
午後 セッション2(女性の経済的自立)
クロージングセッション
議長記者会見
夕方 フォトセッション
地元主催レセプション

●その他

会合期間中、G7における男女共同参画・女性活躍に関する取組等に関して小倉大臣と各国代表団との意見交換(バイ会談)を実施。英国及びイタリアとのバイ会談については、かつて在日英国大使館、在日イタリア大使館の別荘として使われていた、英国大使館別荘記念公園及びイタリア大使館別荘記念公園において行われた。

1 ジェンダー主流化とは、各国政府が行うあらゆる取組において常にジェンダー平等とジェンダーの視点を確保し施策に反映していくことを指す。

2 本文中も含めて、参加者の肩書は大臣会合当時のものである。

3 Women 7(W7)は、G7の公式なエンゲージメントグループの1つで、G7プロセスの中でジェンダー平等と女性の権利に関する提案を促進するために集まった市民社会組織の集まりである。

4 GEACは、G7の首脳に対してジェンダー平等に関する提言を行う外部諮問機関。平成30(2018)年に、当時のG7議長国であるカナダが発足させ、以降、例年G7議長国が招集し、GEACからは、議長国首脳に対して、ジェンダー平等の実現と女性のエンパワーメントの促進に向けた有益な提言が提出されてきた。

1.写真で振り返るG7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合の様子

フォトセッション1(メイン会場にて)

フォトセッション1(メイン会場にて) 写真


セッションの様子1

セッションの様子1 写真


セッションの様子2

セッションの様子2 写真


共同声明の採択

共同声明の採択 写真


議長記者会見

議長記者会見 写真


フォトセッション2(世界文化遺産の前にて)

フォトセッション2(世界文化遺産の前にて) 写真


バイ会談(英国大使館別荘記念公園)

バイ会談(英国大使館別荘記念公園) 写真


バイ会談(イタリア大使館別荘記念公園)

バイ会談(イタリア大使館別荘記念公園) 写真

2.会合の成果

(1) 会合での議論

G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合は、新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」という。)感染拡大から3年が経過し、ようやく世界の感染状況が収束に向かいつつあるタイミングで開催された。コロナ感染拡大下では、もともと社会に存在していた男女共同参画の課題が、女性への不均衡な影響という形で露呈し、特に、女性の置かれてきた社会・経済的な脆弱さが、外的ショックによる危機に直結した。同時に、生活様式の変化は、家族や仕事の在り方への再考を迫り、男女共同参画の課題の顕在化は、社会において男女共同参画への関心が一層高まる契機ともなった。

ポストコロナにおける男女共同参画・女性活躍の取組は、これらの教訓を生かし、構造的課題に対して正面から取り組むことが必要である。こうした問題意識から、会合のセッション・テーマとして、「コロナ禍での教訓を生かす」及び「女性の経済的自立」の2点を設定した。

会合では、小倉將信内閣府特命担当大臣(男女共同参画)・女性活躍担当大臣が議長を務め、令和5(2023)年6月に策定した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」を始めとした日本の取組を紹介し、また、各国からもそれぞれの経験を共有しながら、W7及びGEACの代表も交えて、分野横断的に議論が行われた。

セッション1では、「コロナ禍での教訓を生かす」という議題の下、感染拡大時の経験を踏まえて、社会を単にコロナ前の状態に戻すのではなく、そこで顕在化した男女共同参画の課題にどのように取り組み、また、どのようにすれば感染拡大下において生じた新しい流れを更に推し進めていけるかについて議論を行った。

感染拡大下においては、女性が雇用の調整弁となるなど、経済・雇用分野でのジェンダー不均衡が喫緊の課題として浮き彫りになったことを踏まえ、セッション2では、「女性の経済的自立」に焦点を当てた。過去数十年間で女性の経済分野への参画が進んだと言われてきたものの、その基盤が実は脆弱であったことが明らかになった中、真のジェンダー平等に向け、女性の経済的自立をどのように確立・強化していくことができるかについて議論を行った。

(2) 成果文書の取りまとめ

G7ジェンダー平等大臣共同声明

これらの議論の成果は、共同声明「G7ジェンダー平等大臣共同声明(日光声明)」(以下「日光声明」という。)5としてまとめられた。「日光声明」では、コロナが女性・女児に及ぼした不均衡な悪影響を、包括的に検討・分析した上で、女性の経済的自立や女性に対する暴力等の課題に関して、今後の取組方針を分野横断的に整理している(「日光声明」のポイントについては後述。)。

(3) G7における監視及び説明責任メカニズムの進捗

英国が議長国であった令和3(2021)年以降、G7全体でのジェンダー主流化へのコミットメントやジェンダー平等の達成に向けた進捗を継続的に監視し、説明責任の枠組みを強化するためのメカニズムを導入することについて議論が進められてきている。こうした議論の結果、令和4(2022)年のドイツ議長下において、幅広い政策領域にわたる主要な指標を網羅するデータ集である「ジェンダー・ギャップに関するG7ダッシュボード」(以下「ダッシュボード」という。)が初めて公表された。

我が国の議長下においても、G7各国及び経済協力開発機構(OECD)と協力し、会合の開催に先立ち、ダッシュボードに新たな指標を追加した上で更新、公表した。ダッシュボードの公表により、ジェンダー平等の進捗状況や課題がデータでも可視化されたことで、会合におけるより深い議論につながった。また、OECDと協力の下、過去のG7のジェンダー平等に関するコミットメントの進捗状況を説明することを目的とした「G7ジェンダー平等に関する実施報告書」(以下「実施報告書」という。)を初めて作成し、令和5(2023)年12月に公表した。

5 「日光声明」の全文は、内閣府男女共同参画局ホームページを参照。
https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_g7g8/g7_202306.html

3.成果文書「G7ジェンダー平等大臣共同声明(日光声明)」のポイント6

(1) 冒頭

G7ジェンダー平等大臣共同声明

ジェンダー平等は人権の基本であり、平和で豊かで持続可能な世界のために必要な基盤である。しかし、令和5(2023)年現在、完全なジェンダー平等を実現した国はない。さらに、戦争や紛争、気候変動や生物多様性の喪失、民主主義制度の弱体化、世界的な不平等の拡大、コロナの長期的な健康・経済・社会面での影響などにより、ジェンダー平等の実現に向けた課題はより一層困難さを増している。

このような中、議長国の日本は、令和5(2023)年のG7の議題において、ジェンダー平等を高く位置付けた。男女共同参画・女性活躍担当大臣会合は、G7のジェンダー主流化の取組の中核として位置付けられるものであり、会合において、完全なジェンダー平等の実現と全ての女性と女児の更なるエンパワーメントに向けた取組を加速させることを再確認した。

(2) コロナパンデミックからの教訓

コロナの感染拡大は女性の雇用と仕事に大きな影響を与えた。特に、サービス業、ケア・健康などの分野の女性が深刻な影響を受けた。学校や保育施設、介護サービスの運営に支障を来し、通常、無償の育児・介護・家事労働の主な責任を担っている多くの女性が、子供や他の家族の世話をするために、労働市場から退出したり、労働時間を短縮したりすることになった。

また、感染拡大下では、様々な種類や形態のジェンダーに基づく暴力が深刻化すると同時に、女性の経済的安定が脅かされたことや外出制限などの障壁により、被害者が暴力を報告することがより難しくなった。また、オンライン上のジェンダーに基づく暴力やヘイトスピーチは世界的に悪化するだけでなく、女性と女児の良質、安全かつ包括的な教育と健康サービスへのアクセスが制限された。

しかし、コロナはいくつかの分野で進歩をもたらした。例えば、感染拡大下で普及したテレワークは、通勤時間の短縮や男性の無償の育児・介護・家事労働への参画拡大を通して、仕事と生活の調和(以下「ワーク・ライフ・バランス」という。)の実現に寄与する可能性を持っている。また、情報通信技術を利用して遠隔地から医療サービスを提供する「遠隔医療(テレヘルス)」は、アクセスが限られた人々の医療へのアクセスを拡大する可能性を持っている。

コロナの経験から、役員や管理職の男女比率を含め、多様な人材が働く組織は危機に対してより強じんであり、人材の多様性は企業の成長にとって重要な要素であることが明らかになった。同様に、多様な背景を持つ人々の視点を、政策立案プロセス等に取り入れることの重要性を認識した。

様々な課題への対応策としては、性別や年齢、障害などの交差する様々な特性が複合的に絡み合って、ジェンダー平等を阻む課題が深刻化するという「交差性」を十分に踏まえた取組が効果的である。多様なニーズに対応した施策を発展させるために、性別データの収集を強化していく。

コロナによって社会は大きな打撃を受け、皆が多大な犠牲を被った。だからこそ、ポストコロナにおける男女共同参画・女性活躍の取組において、コロナの教訓を生かす必要がある。

(3) ジェンダー平等と女性と女児のエンパワーメントの推進

1 経済的エンパワーメントの推進

感染拡大下では、女性の経済的自立の確保の難しさとともに、女性の経済的安定とジェンダーに基づく暴力の関連性が明らかになった。しかし、女性の経済的自立には多くの構造的障壁が残っている。長年にわたる男女間賃金格差は、構造的要因の複合的な産物であり、是正には包括的な取組が必要である。

指導的役割に就く女性を増やす必要があり、指導的役割の女性のパイプラインを確立するとともに、企業に対し女性参画拡大を奨励する措置を講じるべきである。柔軟な働き方や短時間労働でも指導的役割として働く選択肢の促進も重要である。また、同一労働同一賃金の徹底のためには、給与の公平性と透明性の確保に関する政策が有効な解決策となり得る。

女性が多く、かつ過小評価されている職業を正当に評価し、公平に処遇することに加え、成長分野や報酬の高い分野への女性の労働移動の促進が重要であり、そのためのスキル習得・向上の機会を増やす必要がある。また、デジタル政策や新技術の設計・開発・導入プロセスにおいてジェンダーの視点を取り入れるとともに、デジタル技術の管理や意思決定に女性が参加することを通した、デジタル・ジェンダー格差を是正するための努力が必要である。さらに、女性がSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics:理工系)分野での職業に就くことを検討できるよう、固定観念や偏見を取り除き、STEM 分野における職業への理解を促進していく。

「女性の起業家精神に関するG7原則」を再確認し、女性の起業を支援するために知識、教育、訓練、ネットワーク、資本へのアクセスを改善することが必要である。

また、職場におけるジェンダーに基づく暴力やハラスメントの防止策・対応策を推進する。

2 無報酬の育児・介護・家事労働の認識・削減・再分配とケアワーカーの支援

無償の育児・介護・家事労働の女性への偏りは、女性の社会参画への大きな障害であり、無償の育児・介護・家事労働の認識・削減・再分配は、社会全体で取り組むべき課題である。そのために、良質かつ安価なケアサービスの提供により公的支援を強化するとともに、従業員のワーク・ライフ・バランスを確保するための勤務制度の導入・改善を企業に促す必要がある。

低賃金で厳しい労働条件、かつ女性の割合が大きいケアワーカーへの公平な報酬の確保が必要であり、また、ケアワーカーが社会的対話や団体交渉に代表者として含まれることが必要である。

テレワークなど、テクノロジーの活用は労働生産性を高め、労働量を軽減する可能性がある一方で、ジェンダー不平等を助長するために使われることも懸念される。テクノロジーの適切な使用と発展に十分な注意を払うとともに、テクノロジーによってジェンダーに基づく暴力が助長されるリスクを最小限に抑えるよう努力する必要がある。

無償の育児・介護・家事労働の認識・削減・再分配のためには、男性と男児を含めた全ての人の関与が必要である。男性と男児が育児・介護・家事労働に更に参加できるよう、柔軟な労働時間・休暇制度の利用促進に加え、性別役割分担・固定観念・偏見を打破するための施策が必要である。

3 性的・ジェンダーに基づく暴力への対応

ジェンダーに基づく暴力は、個人の安全・安心を脅かし、尊厳を傷つけ、自由と自己決定権を奪うものであり、いかなる形態の性的・ジェンダーに基づく暴力も容認してはならない。

あらゆる形態のジェンダーに基づく暴力を無くすため、暴力の予防、被害者の支援・保護及び司法へのアクセスと加害者の責任の確保に焦点を当てた、切れ目がなく、分野横断的なシステムの確立が必要である。

オンライン上の暴力、ハラスメント、偽情報、女性差別者によるヘイトスピーチが、近年激化しており、被害は重大かつ深刻なものになっている。公的立場を持つ女性と女児や、思春期の世代や若者は、人工知能などの情報通信技術(ICT)やデジタル機器の使用によって助長されるジェンダーに基づく暴力である、「テクノロジーに助長されるジェンダーに基づく暴力」を経験するリスクが高まっている。オンライン上のジェンダーに基づく暴力に対処するための対策を講じる必要がある。

4 性と生殖に関する健康と権利の推進

安全かつ合法的な中絶及び中絶後のケアに取り組むことを含め、全ての人のための包括的な性と生殖に関する健康と権利の実現に向けた意志を再確認する。また、妊産婦と子供の死亡を減らすこと、有害な慣行を無くすことへの意志を強調する。

5 意思決定における女性の代表性を高める

より公平、包括的かつ強じんな社会を構築するために、社会のあらゆる分野における女性の参加とリーダーシップを高める必要性がある。

平和、安全保障、防災の達成へ寄与する「女性・平和・安全保障(WPS)」アジェンダ7への貢献を改めて表明。引き続き、女性の危機管理、紛争予防及び解決並びに平和構築における参加及びリーダーシップを促進する。

6 社会の意識を変える

女性と女児の安全と平等かつ意義ある社会参加の促進のためには、社会規範を変え、差別的な社会慣習を無くすよう努めなければならない。ジェンダー不平等を永続させる有害な固定観念や偏見を無くすためには、全ての人の関与が求められる。全ての男性・男児をジェンダー平等の推進に向けた味方、変革の担い手、共同受益者として関与させる努力を行う。

(4) G7のジェンダー平等へのコミットメントを促進する

G7におけるジェンダー平等に関する取組を一層進めるため、男女共同参画・女性活躍担当大臣会合、W7及びGEAC、ジェンダー・ギャップに関するG7ダッシュボードや実施報告書が果たす役割を整理した。

重点的な対策を開発し、女性と女児の多様なニーズを支援するために必要な性別及びその他の交差する特性によって細分化されたデータ収集を強化することを通じて、ジェンダー平等に関する取組をより一層進めていく。また、関連するステークホルダーや市民社会との協力を更に発展させていく。

(5) 進むべき道

G7男女共同参画・女性活躍担当大臣は、危機的状況下にある女性と女児の権利の後退に強い懸念を表明するとともに、世界中の女性と女児の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難する。紛争状況における性的暴力の使用を非難し、これを容認しないという意思を表明する。ロシアのウクライナに対する侵略戦争を最も強い言葉で非難し、ロシアのウクライナの領土からの撤退を強く求める。なお、ウクライナの復興においては、ジェンダーに対応した復興計画が必要である。

完全なジェンダー平等を達成するために努力するとともに、あらゆる多様性を持つ女性と女児を更にエンパワーし、全ての人の人権と尊厳が完全に尊重され、促進され、保護される社会の実現に向けた努力を継続する。

6 「日光声明」の原文は英文であり、本ポイントは内閣府が便宜上作成したものである。

7 国連安保理決議第1325号(女性と平和・安全保障の問題を明確に関連付けた初の安保理決議)及び関連決議。

4.今後に向けて

男女共同参画の取組状況は国により様々であるが、我が国において解決に向けて取り組んでいる諸課題は、G7各国で共通の課題であり、いずれの国もその解決に向け、強い意志を持ち、様々な施策を推進していることが、会合において共有された。

我が国の男女共同参画・女性活躍施策は、これまでも、海外における取組も参考にしながら、国際的な協調の下に進められてきた。しかし、男女共同参画に関する国際的な枠組みの下での閣僚レベルの国際会議の開催は、我が国として初めての取組であり、また、ジェンダー平等に関して、国際社会に対する我が国からの発信も、今回ほど強く行われたことはなかった。特に、我が国のリーダーシップにより、ジェンダー平等を取り巻く現状と課題を包括的に踏まえた内容で「日光声明」を取りまとめることができたことは大きな成果であった。

なお、栃木県にとっても、政府等が開催する国際会議の開催地となるのは初めてであった。栃木県では、会合開催を契機として、県民のふるさとへの愛着や誇りを更に醸成し、未来を担う子供たちがグローバルな視野で考え行動するために必要な資質・能力を育み、国際社会に貢献できる人材を育成することを目的に、会合に先立ち、男女共同参画・女性活躍推進に対する理解の促進や機運醸成に向けた様々な取組が行われた。

開催地の日光市は、日本初の国立公園の一つである日光国立公園やラムサール条約登録湿地である奥日光を始めとする美しい自然を有しているほか、鬼怒川温泉や湯西川温泉などの関東有数の温泉地が多数分布し、世界遺産の「日光の社寺」や「日光杉並木街道」、「足尾銅山坑内施設」など多くの歴史的・文化的遺産を有している国際観光都市である。このような地域特性から、かつてから宿泊・飲食業を中心に女性の進出が盛んであった一方、コロナの影響も深刻であり、女性への影響も大きかった。コロナの影響が大きかった日光市で「コロナ禍の教訓を生かす」というテーマに関連して議論を行い、女性活躍に向けたメッセージを国際社会に対して発信することは、我が国の観光地がコロナから回復していることを国際的に示すという観点からも、大きな意味があったと考えられる。

これらの取組を一過性のものとすることなく、今後、「日光声明」を最大限に活用しながら、我が国の男女共同参画や女性活躍に関する取組の一層の推進、国際社会に対する我が国の取組の発信に取り組むとともに、国際社会における男女共同参画や女性活躍に関する取組に一層貢献していく必要がある。

サイドイベント1 男女共同参画社会づくりに向けての全国会議

令和5(2023)年6月24日(土)に、栃木県宇都宮市で、「令和5年度男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」が開催された。「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」は、男女共同参画週間の中央行事として、平成5(1993)年以降、東日本大震災のあった平成23(2011)年を除き、毎年開催されているが、東京以外の地で同会議を開催するのは、初めての取組であった。

会議では、男女共同参画週間キャッチフレーズ表彰及び女性のチャレンジ賞表彰を行い、受賞者に表彰状等を授与したほか、「G7栃木県・日光こども未来サミット」で発表した宣言文を取りまとめた「G7栃木県・日光こども未来サミット宣言書2023」を、栃木県の中高生から小倉大臣に手渡し、意見交換を行った。

また、令和5(2023)年ジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC)議長の白波瀬佐和子氏が「未来に向けたジェンダー平等:英断と継続」をテーマに記念講演を行った。

「令和5年度男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」の概要

小倉 將信 内閣府特命担当大臣(男女共同参画)、女性活躍担当大臣

●日程

令和5(2023)年6月24日(土)

●場所

栃木県宇都宮市

●当日のプログラム

  • 主催者挨拶
    小倉 將信 内閣府特命担当大臣(男女共同参画)、女性活躍担当大臣
  • 男女共同参画週間キャッチフレーズ表彰
  • 女性のチャレンジ賞表彰
  • こども未来サミット宣言文の手交・意見交換
  • 記念講演「未来に向けたジェンダー平等:英断と継続」
    白波瀬 佐和子 東京大学大学院人文社会系研究科教授、2023年ジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC)議長

サイドイベント2 G7ジェンダー平等担当大臣と市民社会の対話

令和5(2023)年6月26日(月)に、都内の駐日欧州連合代表部(ヨーロッパ・ハウス)で、「G7ジェンダー平等担当大臣と市民社会の対話」が開催された。G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合のフォローアップ及び将来のG7プロセスにつなげるため、駐日欧州連合代表部とWomen 7ジャパンの共催によって開催された。

会議には、大臣会合に出席した各国の大臣等が全員参加し、市民社会との対話を行った。日本からは小倉大臣が参加して、議長を務めた大臣会合での議論を紹介するとともに、ケアエコノミーやデジタル技術と女性について発言を行った。

「G7ジェンダー平等担当大臣と市民社会の対話」の概要

G7ジェンダー平等担当大臣と市民社会の対話

●日程

令和5(2023)年6月26日(月)

●場所

駐日欧州連合代表部(ヨーロッパ・ハウス)

●当日のプログラム

  • 開会挨拶
  • 導入セッション(大臣会合振り返り、GEAC、W7からの発言)
  • G7大臣と市民社会によるテーマ別対話
    セッション1:ダイバーシティ、暴力の撲滅及び身体の自律性
    セッション2:経済的正義、デジタル技術と女性
    セッション3:アカウンタビリティ・メカニズム及び財源、意思決定における女性のリーダーシップと参加
  • セッションに対するコメント及びレスポンス
  • 未来にむけた展望

開催地(栃木県・日光市)における取組1 G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合推進協議会の設立

G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合の成功に向け、令和4(2022)年11月に「G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合推進協議会」(以下「推進協議会」という。)が設立された。

会合前には、各国在京大使館ツアー及び開催機運醸成のための100日前イベントを始めとして、県内で様々なイベントを開催した。

また、会合期間中には、エクスカーションや地元歓迎レセプションを実施し、会合参加者に、日光市を始めとする栃木県の魅力を発信した。

G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合推進協議会の概要

栃木県提供
(地元歓迎レセプションの様子)

●設立日

令和4(2022)年11月15日

●会長

福田 富一 栃木県知事

●副会長

粉川 昭一 日光市長

●組織体制

38名

●主な取組

会議支援、魅力発信、機運醸成等

●事務局

栃木県総合政策部

開催地(栃木県・日光市)における取組2 日光市の取組

開催地である日光市では、大臣会合の開催の前に、シンボルマークとなるモニュメントの設置やフラッグによる市内のドレスアップ、市内小中学校の給食でG7各国の料理を提供するなど、市を挙げた取組を実施した。

会合期間中は、推進協議会主催のエクスカーションの参加者が県立日光自然博物館に到着すると、市内の小中学生が出迎え、歓迎の意を表した。

また、同市では、会合を契機に男女共同参画・女性活躍を更に推進するべく、女性のデジタルワーカー育成による新たな産業の創出や、女性が健康で安心して働ける優良な市内企業を拡充する事業など、新たな施策を展開する予定としている。

日光市提供
日光市の取組

日光市提供
日光市の取組

開催地(栃木県・日光市)における取組3 「G7栃木県・日光こども未来サミット」の開催

令和5(2023)年5月27日(土)には、開催30日前イベントとして「G7栃木県・日光こども未来サミット」が開催された。当日は、G7各国にゆかりのある県内中高生が集い、男女が共に輝く社会を創るために、今、自分たちができることについて話し合い、「家庭・家族」「仕事・職場」「社会・政治」の場面においての行動について、世界に向けた宣言文としてまとめ、発表した。

宣言文には、思い込みにとらわれず、広い視野で考え、宣言実現に向け、身近なことから行動するという、次代を担う子供たちの、男女共同参画社会の実現に向けた力強い決意が込められた。

G7栃木県・日光こども未来サミットの概要

栃木県提供
G7栃木県・日光こども未来サミットの概要

●日程

令和5(2023)年5月27日(土)

●場所

栃木県日光市

●主催

G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合推進協議会

●参加者

留学経験者などG7各国にゆかりのある県内中高生12名

G7におけるジェンダー主流化の取組について

国際社会において、ジェンダー平等の観点をあらゆる政策や制度に反映する「ジェンダー主流化」の重要性が共有される中、我が国が議長国を務めた令和5(2023)年のG7広島サミット及び各閣僚会合においても、以下のとおりジェンダーの視点を取り入れた議論が進められた8

●G7広島サミット(5月19日~21日)

我が国から、防災を含む女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダの促進、女性の経済的自立等の取組を有機的に連携させることの重要性を強調し、参加国・機関との間で共有した。首脳コミュニケでは、ジェンダー平等についての独立したパラグラフに加え、前文にもジェンダーについての言及が盛り込まれ、文書全体として、様々なジェンダー課題への対処の重要性が網羅的に記載された。また、一体的なアプローチを通じたジェンダー主流化の一層の促進については、好事例等をまとめたファクトシートも併せて発出した。

●G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合(4月15日~16日)

気候・エネルギー・環境大臣コミュニケにおいて、気候変動、生物多様性の損失、汚染という三つの危機への取組とクリーンエネルギーへの移行を加速するプロセスの中心に、ジェンダーの公正を据え、気候・エネルギー・環境問題に関連する行動等における、完全かつ平等で意義ある参加とリーダーシップの重要性を共有した。

●G7長野県軽井沢外相会合(4月16日~18日)

外相コミュニケにおいて、ジェンダーに基づく性的暴力の終焉、女性の完全、平等かつ意義ある参画、気候、デジタル、ケア経済、教育等の幅広い分野におけるジェンダー分野に関する諸課題とその解決に向けた明確なメッセージを発出した。さらに、女性・平和・安全保障アジェンダの実施に係るコミットメントが再確認された。

●G7倉敷労働雇用大臣会合(4月22日~23日)

意思決定プロセスへの女性の参加促進、無意識の偏見や差別の解消、多様で柔軟な働き方を可能とする共働き・共育てモデルの構築等、ジェンダー平等に向けた取組の重要性を確認する等の内容を盛り込んだ大臣宣言を採択した。

●G7宮崎農業大臣会合(4月22日~23日)

強じんで持続可能な農業・食料システムへの変革における女性の役割の重要性について盛り込まれた大臣声明を採択した。会場では、女性農業者が民間企業と協働して多様な取組を行う「農業女子プロジェクト」のブースを出展し、女性農業者が持続可能な農業により生産した農産物等の提供を行い、我が国の女性農業者の活躍を世界に発信した。

●G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合(4月29日~30日)

G7デジタル・技術大臣会合のワーキングランチにW7が参加し、ジェンダーの観点を踏まえたデジタル化の取組について各国、招待機関に発信を行った。

●G7新潟財務大臣・中央銀行総裁会議(5月11日~13日)

中長期のマクロ経済政策において、G7経済に共通する構造的課題を乗り越える上での、女性の役割を強調した。また、各国と「多様な価値を追求するための経済政策」について意見交換を実施し、経済政策にて追求すべき重要な価値の一つとして、ジェンダーを含む多様性についても取り上げた。

●G7仙台科学技術大臣会合(5月12日~14日)

G7科学技術大臣は、共同声明において、研究開発(R&D)におけるジェンダー平等を含む多様性、公平性、包摂性及びアクセス可能性の重要性を確認するとともに、固定観念にとらわれない科学や研究活動を歓迎する環境を創出するために、多様性及び包摂性に関する我々の共通価値を促進してきたG7ジェンダー平等アドバイザリー評議会を支援することにコミットした。

●G7富山・金沢教育大臣会合(5月12日~15日)

ジェンダーなどの面で不利な立場にある子供たちも含め、全ての子供たちの可能性を引き出す教育の実現について議論を行い、成果文書である「富山・金沢宣言」においても、その点について盛り込んだ。

●G7長崎保健大臣会合(5月13日~14日)

特に女性や子供といった脆弱な立場の方々の健康を支えることができるよう、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成への更なる貢献について、G7としての共通の方向性が示された。

●G7三重・伊勢志摩交通大臣会合(6月16日~18日)

アクセシビリティをテーマの一つに掲げ、女性を始め様々な背景を持つ人々が、公平、平等かつ手頃な価格で交通を利用できるようにすることや、交通分野における女性の活躍推進の重要性等について議論を行った。

●G7司法大臣会合(7月7日)

司法外交閣僚フォーラムとして開催したG7司法大臣会合において、ジェンダー平等や法務・司法分野でのジェンダーの視点等を盛り込んだ成果文書である「東京宣言」を採択した。

●G7香川・高松都市大臣会合(7月7日~9日)

インクルーシブをテーマの一つに掲げ、議論を行い、成果文書において、女性や子供を始めとする脆弱な立場にある人々等に常に配慮し、インクルーシブを促進する社会空間的アプローチの重要性が強調されるとともに、都市インフラ、施設、アメニティの提供や配置は、女性と女児のニーズや関心を考慮すべきであるとされた。

●G7大阪・堺貿易大臣会合(4月4日(オンライン)、10月28日~29日(対面))

4月及び10月のG7貿易大臣会合において、女性を含む適切に代表されていない集団が直面する課題を認識した上での包摂的で持続可能な貿易促進の重要性を議論し、その点も踏まえた貿易大臣声明をそれぞれ採択。今後も議論を継続することを確認した。

●G7茨城水戸内務・安全担当大臣会合(12月8日~10日)

G7内務・安全担当大臣会合では、世界の治安状況が厳しさを増す中、ジェンダー平等を含む共通の原則及び価値を指針として、直面する現在の課題に対処するための更なる結束を確認するとともに、オフライン及びオンラインでの児童の性的搾取及び虐待並びにこれらに関する人身取引への対策、ロシアによるウクライナ侵略の文脈における性的暴力を含む戦争犯罪に対する責任の追及等について議論を行った。

8 G7広島サミット及び各閣僚会合の成果文書は、広島サミットのホームページを参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/hiroshima23/documents/