II 安全・安心な暮らしの実現

第5分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶

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第1節 女性に対するあらゆる暴力の予防と根絶のための基盤づくり

1 女性に対する暴力の予防と根絶に向けて、「女性に対する暴力をなくす運動」(11月12日から同月25日の2週間)を全国的な運動として行った。令和4(2022)年度の運動においては、「性暴力を、なくそう」をテーマとし、小倉將信内閣府特命担当大臣(男女共同参画)によるメッセージ動画を公表し、全国の各層に協力を呼び掛けるとともに、ポスターやリーフレットの作成・配布、インターネット等を活用したキャンペーン、全国各地のランドマーク等におけるパープル・ライトアップの実施、シンボルマークであるパープルリボンの着用の推進等により、広報活動を実施した。また、被害者自身が被害と認識していない場合があることや、被害を受けていることを言い出しにくい現状があることも踏まえ、女性に対する暴力に関する認識の向上や、悪いのは被害者ではなく加害者であり、暴力を断じて許さないという社会規範の醸成を図った。【内閣府、法務省、関係府省】

2 様々な状況に置かれた被害者に情報が届くよう、官民が連携した広報啓発を実施するとともに、加害者や被害者を生まないため、予防啓発の拡充、教育・学習の充実を図った。【内閣府、文部科学省、厚生労働省、関係府省】

3 「多様な困難に直面する女性支援政策パッケージ」(令和元年12月26日多様な困難に直面する女性に対する支援等に関する関係府省連絡会議取りまとめ)に基づき、配偶者等からの暴力を始めとする複合的困難により、社会的に孤立し、生きづらさを抱える女性に対する支援を政府一体となって推進している。

内閣府では、DV相談プラスを実施して、配偶者等からの暴力の被害者の多様なニーズに対応できるよう、毎日24時間の電話相談、SNS・メール相談、10の外国語での相談の対応を行うとともに、各地域の民間支援団体とも連携し、相談員が必要と判断した場合には、関係機関等への同行支援なども行っている。令和3(2021)年度にDV相談プラスに寄せられた相談件数は、5万4,489件となっている。

また、最寄りの配偶者暴力相談支援センター等につながるDV相談ナビに、全国共通番号「♯8008(はれれば)」を導入して、相談窓口の更なる周知を図っている。令和3(2021)年度に全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数は、12万2,478件となっている。

さらに、交付金の交付により、官民連携の下で民間シェルター等による先進的な取組を推進する都道府県等への支援を行っている。令和4(2022)年度は、計30自治体に交付金を交付決定した。【内閣府、関係府省】

4 関係行政機関等において、相談窓口の所在等を広く周知するとともに、電話相談や窓口相談についてサービス向上を促進するため、電話相談の番号の周知や相談しやすくするための工夫、SNS等を活用した相談の実施、夜間・祝日における相談対応の実施等を推進している。

内閣府では、性犯罪・性暴力被害者支援のため、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(以下「ワンストップ支援センター」という。)の全国共通番号「#8891(はやくワンストップ)」の周知を図るとともに、若年層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、SNS相談「Cure time(キュアタイム)」を実施している。さらに、性犯罪・性暴力の夜間の相談や救急対応のため、夜間休日には対応していないワンストップ支援センターの運営時間外に、被害者からの相談を受け付け、ワンストップ支援センターと連携して支援する「性暴力被害者のための夜間休日コールセンター」を運営し、性犯罪・性暴力被害者支援の充実を図っている。令和4(2022)年度上半期にワンストップ支援センターに寄せられた相談件数は、3万2,367件となっている。

厚生労働省では、若年層を始めとした困難を抱えた女性が支援に円滑につながるよう、都道府県に対し、SNSを活用した相談窓口の開設準備、運用に関する支援を行っている。【内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省】

5 中長期にわたる被害者の心身の回復を支援するため、トラウマ・ケアの専門家を育成し、身近な場所で適切な相談・カウンセリングが経済的負担なく受けられる体制を構築していくとともに、ニーズに応じた対応が可能な民間団体や自助グループの活動の促進を図っている。

内閣府では、交付金の交付により、官民連携の下で民間シェルター等による先進的な取組を推進する都道府県等への支援を行っている。(再掲)

厚生労働省では、暴力被害者等の心のケア対策として、婦人相談所一時保護所や婦人保護施設に心理療法担当職員を配置し、カウンセリング等による心理的回復の充実を図っている。【内閣府、警察庁、厚生労働省】

6 内閣府では、男性被害者等に対する必要な配慮が図られるよう、担当行政職員及びワンストップ支援センターのセンター長及びコーディネーター等を対象とした研修を実施している。【内閣府、関係府省】

7 被害者と直接接することになる警察官、検察職員、更生保護官署職員、地方出入国在留管理局職員、婦人相談所職員、児童相談所職員、民間団体等について、男女共同参画の視点から被害者の置かれた立場を十分に理解し、適切な対応をとることができるよう、より一層の研修機会の拡大等に努めるとともに、関係機関間や職員間の連携を促進している。

内閣府では、性犯罪・性暴力被害者等が安心して必要な相談・支援を受けられる環境を整備するために、ワンストップ支援センターの相談員等を対象としたオンライン研修教材を作成し、提供するとともに、研修を実施した。

また、配偶者暴力相談支援センター長、地方公共団体の支援センター主管課等の行政職員及び地方公共団体の支援センター、児童相談所並びに民間シェルター等において相談支援業務に携わる官民の相談員等の関係者を対象として、相談対応の質の向上及び被害者や被害親子に対する支援における官官・官民連携強化のために必要な知識の習得機会を提供するため、オンライン研修教材を作成し提供している。

厚生労働省では、婦人保護事業の担い手となる婦人相談員の人材確保に努めるとともに、各種研修受講等を推進することで、専門性の向上を図っている。【内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省、関係府省】

8 ケーススタディの手法やオンライン研修教材の活用等により、SNS等を活用した相談を含む、現場における対応に重点を置いた各職務関係者に対する研修を充実させ、支援に携わる人材育成を図った。【内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省】

9 女性に対する暴力に関する認識を深め、被害者の置かれた状況に十分配慮できるよう、検察官に対し、経験年数に応じて実施する研修において、女性被害者に関する理解・配慮に資する講義を実施した。【法務省】

10 法曹養成課程において、女性に対する暴力に関する法律及び女性に対する暴力の被害者に対する理解の向上を含め、国民の期待と信頼に応える法曹の育成に努めている。【法務省、文部科学省】

11 女性に対する暴力に関する被害者支援の充実を図るため、民間シェルター等と警察や福祉などとの協働が円滑に行われるよう、官民双方向の連携の仕組みを構築するとともに、民間団体の活用による支援の充実に努めている。

厚生労働省では、多様な相談対応や自立に向けた支援を展開するNPO法人等を育成し、官・民の協働による困難な問題を抱える女性への支援を推進している。【内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省、関係府省】

12 被害者に対しては、暴力の形態や被害者の属性等に応じて、相談、保護、生活・就業等の支援、情報提供等をきめ細かく実施している。また、官民・官官・広域連携の促進を通じて、中長期的見守りなど切れ目のない被害者支援を実施している。【内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省、関係府省】

13 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(令和4年法律第52号。以下「困難女性支援法」という。)の成立に伴い、これまでの婦人保護事業を見直し、被害者が実態に即した支援を受けることができるよう、先駆的な女性支援を実践する「民間団体との協働」といった視点も取り入れた新たな支援の枠組みの構築について、令和6(2024)年4月の法律施行に向けて検討を進めている。【厚生労働省】

14 重大事件等の暴力被害に関する必要な検証を行い、重大な被害につながりやすい要因を分析し、今後の対応に活用している。【警察庁、関係府省】

15 内閣府では、男女間の取り巻く環境の変化に応じた被害傾向の変化等に対応する施策の検討に必要な基礎資料を得ることを目的に平成11(1999)年度から実施している「男女間における暴力に関する調査」について、令和5(2023)年度に行う次回の調査に向けて、必要な準備等を行った。【内閣府、関係府省】

16 法務省の人権擁護機関では、専用相談電話「女性の人権ホットライン」を設置するなどして、夫・パートナーからの暴力やセクシュアルハラスメント等女性の人権問題に関する相談体制のより一層の充実を図っている。令和4(2022)年における「女性の人権ホットライン」で相談に応じた件数は約1万3,000件である。【法務省】