第1節 男女共同参画の視点に立った各種制度等の見直し

本編 > 2 > 第2部 > III > 第9分野 > 第1節 男女共同参画の視点に立った各種制度等の見直し

III 男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備

第9分野 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

第1節 男女共同参画の視点に立った各種制度等の見直し

ア 働く意欲を阻害しない制度等の検討

1 働き方の多様化を踏まえつつ、働きたい女性が就業調整を意識しなくて済む仕組み等を構築する観点から、税制や社会保障制度等について、総合的な取組を進める。

  • 税制については、平成29(2017)年度税制改正において配偶者控除等の見直しが行われ、平成30(2018)年分の所得税から適用されており、引き続き制度の周知と円滑な運用に努める。なお、平成30(2018)年度税制改正において給与所得控除や公的年金等控除の一部を基礎控除に振り替える見直しが行われているところ、今後も、働き方の多様化や待遇面の格差を巡る状況の変化を注視しつつ、働き方の違いによって不利に扱われることのない、個人の選択に中立的な税制の実現に向け、所得再分配機能が適切に発揮されているかといった観点も踏まえながら、諸控除の更なる見直しを進める。
     また、働き方の違い等によって有利・不利が生じないような企業年金・個人年金等に関する税制上の取扱いや、働き方の多様化を踏まえた退職給付に係る税制について、企業年金・個人年金等は企業の退職給付の在り方や個人の生活設計にも密接に関係することなどを踏まえ、その検討を丁寧に行い、関係する税制の包括的な見直しを行う。【総務省、財務省】
  • 令和4(2022)年10月及び令和6(2024)年10月に予定されている短時間労働者への被用者保険の適用拡大に向けて、準備・周知・広報を行う。【厚生労働省】
  • 配偶者の収入要件があるいわゆる配偶者手当については、税制・社会保障制度とともに、就業調整の要因となっているとの指摘があることに鑑み、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう、労使に対しその在り方の検討を促すことが重要であり、引き続きそのための環境整備を図る。【厚生労働省】

イ 家族に関する法制の整備等

1 現在、身分証明書として使われるパスポート、マイナンバーカード、免許証、住民票、印鑑登録証明書なども旧姓併記が認められており、旧姓の通称使用の運用は拡充されつつあるが、国・地方一体となった行政のデジタル化・各府省間のシステムの統一的な運用などにより、婚姻により改姓した人が不便さや不利益を感じることのないよう、引き続き旧姓の通称使用の拡大やその周知に取り組む。【関係府省】

2 婚姻後も仕事を続ける女性が大半となっていることなどを背景に、婚姻前の氏を引き続き使えないことが婚姻後の生活の支障になっているとの声など国民の間に様々な意見がある。そのような状況も踏まえた上で、家族形態の変化及び生活様式の多様化、国民意識の動向等も考慮し、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史を踏まえ、また家族の一体感、子供への影響や子供の最善の利益を考える視点も十分に考慮し、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、更なる検討を進める。【法務省、関係府省】

3 夫婦の氏に関する理解を深めるため、内閣府男女共同参画局ホームページにおいて、婚姻した夫婦が夫の姓・妻の姓のどちらを選択したか等の夫婦の氏に関するデータを掲載し、情報提供を行う。【内閣府(男女共同参画局)】

4 女性の再婚禁止に係る制度の在り方等については、令和4(2022)年2月、法制審議会から、女性に係る再婚禁止期間の廃止等を内容とする民法改正の要綱が答申されたことを踏まえ、これを見直す法制上の措置について検討を進める。【法務省】

ウ 男女の多様な選択を可能とする育児・介護の支援基盤の整備

1 子ども・子育て支援新制度の実施による幼児期の学校教育、保育、地域の子ども・子育て支援の充実、幼児教育・保育の無償化、「新子育て安心プラン」を踏まえた保育の受け皿整備、「新・放課後子ども総合プラン」に基づく放課後児童クラブの受入児童数の拡大などにより、地域のニーズに応じた子育て支援の一層の充実を図る。【内閣府、文部科学省、厚生労働省】

  • 幼稚園・保育所・認定こども園を通じた共通の給付や小規模保育への給付、地域の事情に応じた認定こども園の普及、地域子育て支援拠点や放課後児童クラブ等地域のニーズに応じた多様な子育て支援策を着実に実施する。
  • 待機児童の解消に向け、保育所等の整備を推進するとともに、それに伴い必要となる保育人材の確保、子育て支援員の活用等を推進する。
     保育士等・幼稚園教諭を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置を、令和4(2022)年10月以降においても引き続き実施する。
  • 多様な保育ニーズに対応するため、延長保育、休日保育、夜間保育、病児・病後児保育、複数企業間での共同設置を含む事業所内保育等の多様な保育サービスの拡大を図る。
  • 就業の有無にかかわらず、一時預かり、幼稚園等における預かり保育等により、地域における子育て支援の拠点やネットワークを充実する。
  • 幼児教育・保育の無償化の着実な実施や保育サービス利用にかかる支援等により、保護者の経済的負担の軽減等を図る。
  • 国や地方公共団体が行うベビーシッター等に関する利用者の負担軽減について措置を講ずることを検討する。
  • 放課後等デイサービス等の通所支援や保育所等における障害のある子供の受入れを実施するとともに、マザーズハローワーク等を通じ、きめ細かな就職支援等を行うことにより、そうした子供を育てる保護者を社会的に支援する。

2 子供の事故防止に関連する関係府省の連携を図り、保護者や教育・保育施設等の関係者の事故防止の意識を高めるための啓発活動や、安全に配慮された製品の普及等に関する取組を推進し、男女が安心して子育てができる環境を整備する。【消費者庁】

3 子供の安全な通行を確保するため、子供が日常的に集団で移動する経路等の交通安全環境の整備や、地域ぐるみで子供を見守るための対策等を推進する。

「通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策」(令和3年8月交通安全対策に関する関係閣僚会議決定)に基づき、令和3(2021)年に実施した通学路における合同点検の結果を踏まえ、学校、教育委員会、道路管理者、警察等が連携して、地域の実情に対応した、効果的な対策を検討し、可能なものから速やかに実施する。また、放課後児童クラブについても、令和3(2021)年に実施した来所・帰宅経路における安全点検の結果を踏まえ、市区町村に対し、主たる来所・帰宅経路の設定を行うなど、来所・帰宅経路の安全の確保に向けた取組の実施を促していく。加えて、未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路についても、令和元(2019)年に実施した緊急安全点検の結果を踏まえ、必要な対策を順次行う。【警察庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省】

4 安心して育児・介護ができる環境を確保する観点から、住宅及び医療・福祉・商業施設等が近接するコンパクトシティの形成や、住宅団地における子育て施設や高齢者・障害者施設の整備、各種施設や公共交通機関等のバリアフリー化、全国の「道の駅」における子育て応援施設の整備等を推進する。【国土交通省】

5 医療・介護保険制度については、多様な人材によるチームケアの実践等による効率化・重点化に取り組みながら質の高いサービスの充実を図る。その際、医療・介護分野における多様な人材の育成・確保や、雇用管理の改善を図る。その際、特に介護分野における人材確保のため、介護の理解促進や介護の魅力発信のためのイベントの開催、多様な働き方や柔軟な勤務形態を介護事業所にモデル的に導入することを通じて、効率的・効果的な事業運営の方法についての実践的な研究を行うモデル事業の実施、介護に関する入門的研修の実施と併せて受講者の介護事業所へのマッチングまでを一体的に行う事業を実施するなど、総合的に介護人材確保の取組を推進する。また、介護現場の生産性向上に関する取組を全国に普及するため、生産性向上に資するガイドラインの取組内容に関するセミナーを、介護現場の経営者層・介護従事者層それぞれの職種の役割に応じて開催する。【厚生労働省】

6 医療・介護の連携の推進や、認知症施策の充実等により、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築に向けた取組を着実に進め、家族の介護負担の軽減を図る。【厚生労働省】

7 男女とも子育て・介護をしながら働き続けることができる環境の整備に向けて、育児・介護休業法の履行確保を図る。

また、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)の周知を行うとともに、仕事と子育ての両立を推進する企業を対象とした認定及び特例認定の取得を促進する。【厚生労働省】