男女共同参画白書の刊行に当たって

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内閣府特命担当大臣(男女共同参画)

野田聖子

新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界中の人々、とりわけ女性の生活に大きな影響を及ぼしました。我が国では、女性の就業者数が大幅に減少し、雇用や生活面で大変厳しい状況にあります。また、DVの相談件数も、女性の自殺者数も増加しました。

このように、新型コロナウイルス感染症の拡大は、我が国のジェンダー平等の著しい遅れを改めて浮き彫りにし、またその重要性が、改めて強く意識されるようになりました。今ほど、ジェンダー平等の達成が求められる時代はありません。

ジェンダー平等は、日本国政府の重要かつ確固たる方針です。世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数(2021年)において、我が国は156か国中120位と先進国最下位、特に政治分野と経済分野における値が低くなっています。また、世論調査において、日本の社会全体として、「男女の地位は平等か」という問いに対して、「平等」と答えた人の割合は21%に過ぎません。諸外国もジェンダー平等に向かって走り続けている中、我が国も異次元のスピードで取組を進めていく必要があります。

この数十年間で、女性を取り巻く環境は急速に変わりました。人生100年時代を迎え、日本の女性の半分以上は90歳まで生きます。離婚件数は結婚件数の3分の1となりました。男性が働き、女性が家庭を守るというかつての家族像はもはや標準ではなく、女性の人生と家族の姿が多様化しています。そうした社会の変容も念頭に置きながら、迅速に対応する必要があります。政治、経済、社会などのあらゆる分野において、女性と男性が共に意思決定過程に参画をすること、また、多様性を受け入れる社会を作り、多くの国民が「この社会は平等だ」と感じられるような、社会の変革が必要です。

今回の白書では、このような問題意識の下、「人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」を特集テーマとしました。この中では、家族の姿の変化と人生の多様化、結婚と家族を取り巻く状況について、各種統計データ及び内閣府で実施した意識調査等を中心に整理した上で、実態と乖離した制度・慣行、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を含む固定的な性別役割分担意識等に基づく構造的な問題に起因する課題を明らかにしました。さらに、人生100年時代における男女共同参画の課題として、女性の経済的自立を可能とする環境の整備、女性の早期からのキャリア教育及び柔軟な働き方を浸透させることの重要性等を指摘しています。

この白書が、国民の皆様に広く参照され、我が国の男女共同参画の取組と理解を着実に進めるとともに、人生100年時代を見据えて、幅広い分野で既存の制度や慣行を点検し、見直していくための議論を深める材料になることを願っております。

令和4年6月