はじめに 令和2年度を振り返って

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第1部 令和2年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

はじめに 令和2年度を振り返って

1 すべての女性が輝く令和の社会へ

令和2(2020)年度は,新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の拡大1により人々の生活が変容し,特に女性への深刻な影響が浮き彫りになるとともに,他方でテレワークなど女性活躍の新たな可能性が見られる一年となった。また,第4次男女共同参画基本計画(平成27年12月閣議決定。以下「4次計画」という。)の最終年度に当たり,4次計画の成果目標の達成度評価を実施したところ,目標を達成したものが全体の約3割に留まったことから,女性活躍加速に向けた施策への取組は必ずしも十分とは言い難い状況にある。

令和2(2020)年12月25日には,男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)に基づき「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」(以下「5次計画」という。)が閣議決定された。5次計画は,「男女共同参画を推進していくことは,国民一人一人が個性と能力を十分に発揮できる,持続可能な活力ある社会にとって不可欠の前提」であり,また「今が,国民一人一人の幸福(well-being)を高めるとともに,我が国の経済社会の持続的発展を確保することができるか否かの分岐点」であるという問題意識の下,男女共同参画社会の実現に向けた取組を一段と加速させていくこととしている。

また,令和2(2020)年4月から,性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議を開催し,令和2(2020)年6月11日に「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を決定した。これに基づき,令和2(2020)年度から令和4(2022)年度までの3年間を,性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」として,刑事法の在り方の検討はもとより,被害者支援の充実,加害者対策,教育・啓発の強化等の実効性ある取組を速やかに進めていくこととしている。

1新型コロナウイルス感染症拡大に対する主な政府の取組は,特集第3節で整理している。

2 男女共同参画に関わりの深い制度改革の動き

男女とも子育て・介護をしながら働き続けることができる環境整備に関しては,令和2(2020)年9月より,労働政策審議会において,男性の育児休業取得促進策等について議論を行い,令和3(2021)年1月に建議が取りまとめられた。これを踏まえ,子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設,育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け等を内容とする「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案」を第204回国会(令和3(2021)年)に提出した。

社会保障制度については,被用者保険の適用拡大が進められており,令和2(2020)年5月に,年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和2年法律第40号)が成立し,短時間労働者に対する被用者保険の適用について,令和4(2022)年10月に100人超規模,令和6(2024)年10月に50人超規模の企業で働く短時間労働者まで適用範囲を拡大することとされた。また,民間企業における配偶者手当については,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について引き続き広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促している。

非正規雇用対策については,短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「パートタイム・有期雇用労働法」という。)及び改正労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)が,令和2(2020)年4月から施行された(パートタイム・有期雇用労働法の中小企業への適用は令和3(2021)年4月1日)。民間企業における配偶者手当については,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促している。

このほか,ポジティブ・アクションの推進等による男女間格差を是正する取組に関して,女性を含めた新人船員の定着を図るため,船員の働き方改革の推進を図るための「海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律案」を第204回国会(令和3(2021)年)に提出した。