第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

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第10章 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

1 働きたい人が働きやすい中立的な税制・社会保障制度・慣行,家族に関する法制等の検討

社会保障制度については,被用者保険の適用拡大を進めることとしており,大企業で働く短時間労働者を対象とした被用者保険の適用拡大に加えて,平成29(2017)年4月からは,中小企業等で働く短時間労働者についても,労使合意を前提に企業単位で適用拡大の途を開いた。また,更なる適用拡大について,令和元(2019)年財政検証結果を踏まえ,全世代型社会保障検討会議等で議論を行い,短時間労働者に対する被用者保険の適用について,令和6(2024)年10月に50人超規模の企業まで適用範囲を拡大することを盛り込んだ「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」を第201回通常国会に提出した(令和2(2020)年5月成立)。

国家公務員の配偶者に係る扶養手当については,平成28(2016)年11月に一般職の職員の給与に関する法律が改正され,平成29(2017)年4月から,段階的に配偶者に係る手当額を他の扶養親族と同額まで減額するなどの見直しが行われている。地方公務員の配偶者に係る扶養手当についても,国家公務員に準じて同様の見直しを進めている。民間企業における配偶者手当については,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促した(第2章第5節参照)。

総務省では,希望する者に係る住民票やマイナンバーカード等への旧姓併記が可能となるよう,関係法令を改正した(令和元(2019)年11月5日施行)ことを踏まえ,制度が認知され,活用されるよう,広報啓発活動を実施した。

警察では,「運転免許証への旧姓記載等の運用について(通達)」により,令和元(2019)年12月1日より,運転免許証への旧姓併記を可能にした。

内閣府では,住民票やマイナンバーカード等への旧姓併記の運用開始や世論調査(令和元年9月実施)における旧姓使用に係る意識結果等を踏まえ,旧姓による銀行口座の開設等が行えるよう,関係団体に対して協力要請を行った。

法務省では,平成8(1996)年2月の法制審議会の答申(民法の一部を改正する法律案要綱)を踏まえた選択的夫婦別氏制度の導入等を内容とする民法改正については,引き続き慎重な検討が必要であるとの認識の下,ウェブサイトを通じた国民への情報提供等に努めている。

また,婚姻年齢の男女統一については,民法の定める成年年齢を20歳から18歳に引き下げるとともに,女性の婚姻開始年齢を16歳から18歳に引き上げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立した(令和4(2022)年4月1日施行)。

2 男女の多様な選択を可能とする育児・介護の支援基盤の整備

政府は,「少子化社会対策大綱」(平成27年3月閣議決定)に基づき,子育て支援策を一層充実させた。

内閣府は,地域少子化対策重点推進交付金を活用し,地方公共団体が行う地域の実情に応じた先駆的な少子化対策の取組や,これまでの取組から発掘された優良事例の横展開を支援した。

また,新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度として平成27(2015)年4月から本格施行された子ども・子育て支援新制度では,「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に,(ア)認定こども園,幼稚園,保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設,(イ)認定こども園制度の改善及び(ウ)地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実により,幼児期の学校教育・保育,地域の子ども・子育て支援を総合的に推進している。

さらに,子ども・子育て支援の提供体制の充実を図るため,事業所内保育業務を目的とする施設の設置者に対する助成及び援助を行う事業等を創設するとともに,一般事業主から徴収する拠出金の率の上限を引き上げる等の措置を講ずるため,平成28(2016)年3月に子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)の一部が改正された。これにより創設された企業主導型保育事業によって,平成30(2018)年度末までに約9万人の受け皿を確保し,多様な働き方に対応した受け皿整備を進めている。

加えて,地方公共団体は,次世代法に基づき,地域における子育て支援や母性,乳幼児の健康の確保・増進のほか,子供の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備等を内容とする市町村行動計画等を策定することができることとされており,子ども・子育て支援事業計画と併せて,これに基づく取組が進められている。

保育士等の処遇改善については,平成29(2017)年度から「ニッポン一億総活躍プラン」等に基づく,更なる「質の向上」の一環としての2%相当の処遇改善及び技能・経験を積んだ職員についての4万円等の追加的な処遇改善(平成29(2017)年度予算)を実施している。また,「新しい経済政策パッケージ」に基づき,平成31(2019)年4月から更に1%の処遇改善を行った。さらに,令和元(2019)年度補正予算により人事院勧告に準拠した1.0%の処遇改善を実施した。

待機児童の解消については,平成29(2017)年6月に公表した「子育て安心プラン」に基づき,令和2(2020)年度末までの3年間で女性就業率80%に対応できる32万人分の保育の受け皿を確保し,待機児童を解消することとしている。平成31(2019)年4月1日時点の待機児童数は16,722人で前年度と比較して約3,000人の減少となり,待機児童数調査開始以来最少の調査結果となった。

さらに,「新しい経済政策パッケージ」に基づき,「子育て安心プラン」の実現に必要な企業主導型保育事業と保育の運営費については,事業主拠出金の法定上限の引き上げ(0.25%→0.45%)による3,000億円を充てることとし,そのために必要な措置を講ずるため,平成30(2018)年3月,子ども・子育て支援法の一部が改正され,平成30(2018)年4月に施行された。

また,内閣府・文部科学省・厚生労働省では,幼児教育・保育に係る保護者負担の軽減を段階的に推進してきたところだが,これまで段階的に推進してきた取組を一気に加速し,第198回通常国会において子ども・子育て支援法の改正を行い,令和元(2019)年10月から,3歳から5歳までの子供及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供についての幼稚園,保育園,認定こども園等の費用を無償化した。

共働き家庭等の「小1の壁」・「待機児童」を解消するとともに,次代を担う人材を育成するため,全ての児童が放課後を安全・安心に過ごし,多様な体験・活動を行うことができるよう,平成30(2018)年9月に令和元(2019)年度から5年間を対象とする「新・放課後子ども総合プラン」を文部科学省と厚生労働省が共同で策定した。同プランでは,放課後児童クラブについて,令和5(2023)年度末までに約30万人分(約122万人から約152万人)の受け皿整備を行うとともに,全ての小学校区で放課後児童クラブと放課後子供教室の両事業を一体的に又は連携して実施し,うち小学校内で一体型として1万か所以上で実施することを目指している。

また,新たに放課後児童クラブ又は放課後子供教室を整備等する場合には,学校施設を徹底的に活用することとし,新たに開設する放課後児童クラブの約80%を小学校内で実施することを目指している。

さらに,子供の主体性を尊重し,子供の健全な育成を図る放課後児童クラブの役割を徹底し,子供の自主性,社会性等の向上を図ることとしている。

令和元(2019)年度においては,文部科学省の「放課後子供教室」は全国1 万9,260か所(令和元(2019)年11月現在)で,厚生労働省の「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」は全国2万5,881か所(令和元(2019)年5月現在)でそれぞれ実施している。また,一体型は,令和元(2019)年5月現在,5,361か所で実施している。

厚生労働省では,「新・放課後子ども総合プラン」の目標達成に向けた「量的拡充」のための支援策の強化を図るため,施設整備費の国の補助率について1/3から2/3へ引上げを行った。また,待機児童が存在する地域等において,学校敷地外の民家・アパート等から,より広い場所に放課後児童クラブを移転して受入児童数を増やすことができるよう,その移転に係る経費の補助や,学校敷地外の土地を活用して放課後児童クラブを設置する際に必要な土地借料の補助を行うなど放課後児童クラブの量的拡充を図っている。

また,身近な場所に子育て中の親子が気軽に集まって,相談や交流を行う「地域子育て支援拠点」の設置や,子育て家庭や妊産婦が,教育・保育施設や地域子ども・子育て支援事業,保健・医療・福祉等の関係機関を円滑に利用できるよう,身近な場所での相談や情報提供,助言等必要な支援をするとともに,関係機関との連絡調整,連携・協働の体制づくり等を行う「利用者支援事業」の推進,保護者の通院や社会参加活動,又は育児に伴う心理的・身体的負担の軽減のために児童を一時的に預かる「一時預かり事業」を推進している。

さらに,乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として,子供の送迎や預かり等の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進している。

厚生労働省では,仕事と育児・介護との両立が図られるよう,育児・介護休業法の履行確保を図っているほか,高齢者が介護サービスを適切に選択し,利用できるよう,介護サービス事業者の運営基準の適切な運用を図るとともに,平成18(2006)年4月から「介護サービス情報の公表」制度により,都道府県が行う事業所調査,情報の公表等の総合的な支援を行っている。また,介護サービス事業者の参入促進,福祉用具の開発・普及等の施策を推進している。

また,介護福祉士,介護支援専門員及び訪問介護職員について,養成研修や資質の向上のための研修等を推進するとともに,その内容の充実等を図っている。さらに,全国の主要なハローワークに設置された「人材確保対策コーナー」等において,福祉分野等のきめ細かな職業相談・職業紹介,求人者への助言,指導等を実施している。

介護人材の確保のため,介護に関する入門的研修受講者等に対する職場体験や,介護施設,介護事業所への出前研修の実施に対する支援等を地域医療介護総合確保基金に新たに位置付けたほか,介護職の魅力や社会的評価の向上を図り,介護分野への参入を促進するため,介護を知るための体験型イベントの開催や,機能分化による介護の提供体制,地域の事業者間・他職種連携による介護業務効率等について,先駆的に実施される取組を支援し,その全国展開を図る等,多様な人材の確保等に向けた取組を推進した。

介護労働者の雇用管理改善を促進する「介護雇用管理改善等計画」(平成27年厚生労働省告示第267号)に基づき,介護労働者の身体的負担の軽減に資する介護福祉機器を導入した事業主や,賃金制度の整備等を行った事業主への助成,介護労働安定センターによる雇用管理改善のための相談援助や実践力を備えた介護人材の育成を図るための介護労働講習を行っている。また,介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習に加え,介護事業所の雇用管理改善の好事例把握やコンサルティング等を行う事業を実施した。また,介護保険制度については,高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう,医療,介護,介護予防,住まい,生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」を構築するため,地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)が平成26(2014)年6月から施行されている。

文部科学省では,「幼稚園教育要領」に基づき,幼稚園の標準の教育時間(4時間)の前後や長期休業期間中等に行われる,いわゆる「預かり保育」や,子育て相談や子育てに関する情報提供,保護者同士の交流の機会の提供等,幼稚園における子育て支援活動を推進している。

預かり保育や子育て支援活動については,私立幼稚園については私学助成により支援するとともに,公立幼稚園については,地方財政措置が講じられている。また,子ども・子育て支援新制度においてもこれらの取組について支援の充実を図っている。

また,幼児教育の振興を図る観点から,保護者の所得状況や子供の数に応じた経済的負担の軽減等を図る「幼稚園就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,その所要経費の一部を幼稚園就園奨励費補助金により補助していたが,幼児教育・保育の無償化が令和元(2019)年10月から施行したことに伴い,同補助事業は令和元(2019)年9月末をもって発展的に解消し,国立の幼稚園や特別支援学校幼稚部を含めた内閣府所管の新たな給付制度に一元化された。

就学前の教育・保育への多様なニーズに対応するため,平成18(2006)年10月から開始した認定こども園制度については,平成27(2015)年4月から開始した子ども・子育て支援新制度において,財政支援の仕組みを統一するとともに,幼保連携型認定こども園についての認可・指導監督を一本化するなどにより,更なる普及促進を図っている。

さらに,幼児期から高等教育まで切れ目のない教育費負担の軽減のための取組を行っている。

国土交通省では,子育てに適したゆとりある住宅・居住環境を確保するため,良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進するとともに,住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを利用した融資等により,良質な持家の取得を支援している。

また,公的賃貸住宅における保育所等の子育て支援施設の一体的整備や,子育て世帯の居住の安定確保を図る民間事業者等による先導的な取組を支援したほか,平成30(2018)年度から,既存の公営住宅や改良住宅の大規模な改修と併せて子育て支援施設等の生活支援施設の導入を図る取組に対して支援を行っており,地方公共団体においても,地域の実情を踏まえ,子育て世帯に対し当選倍率を優遇するなどの対応を行っている。さらに,職住近接で子育てしやすい都心居住,街なか居住を実現するため,良質な住宅供給や良好な住宅市街地等の環境整備を行っている。

加えて,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備,無電柱化,交通安全施設等の整備を実施しているほか,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS)の普及を推進している。

また,バリアフリー法に基づく取組及び公共交通機関や公共施設等におけるベビーカー利用がしやすい環境づくりに向けた検討を行い,ベビーカー利用に関する統一的なマーク(ベビーカーマーク)の掲出を行い,「ベビーカー利用に当たってのお願い」の周知や,普及・啓発を図るキャンペーン等を実施した。

さらに,全国の高速道路のサービスエリア及び国が整備した「道の駅」において,令和3(2021)年度を目途に,24時間利用可能なベビーコーナーの設置,屋根付きの優先駐車スペースの確保等を完了させるなど,高速道路のサービスエリアや「道の駅」における子育て応援の取組みを推進している。

このほか,文部科学省,国土交通省及び警察庁では,通学路における交通安全の確保に向け,学校,教育委員会,道路管理者,警察等の関係機関が連携して交通安全対策を実施するとともに,地域における定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等による継続的な取組を支援している。

加えて,子供が犠牲となる事故等が発生し,令和元(2019)年6月,「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議」において,「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」が決定されたことを受け,幼稚園,保育所,認定こども園等のほか,その所管機関や道路管理者,警察等が連携し,未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路の緊急安全点検を実施するとともに,この結果を踏まえ,必要な対策を推進している。

また,消費者庁では,「不慮の事故」が子供の死因の上位を占めている現状を踏まえ,「子どもを事故から守る!プロジェクト」を推進し,子供の事故防止に取り組んでいる。具体的には,保護者等に向けた注意喚起を行うとともに,事故予防の注意点などを「子ども安全メールfrom消費者庁」や「消費者庁 子どもを事故から守る!公式ツイッター」で発信しているほか,各地の子供関連イベントに積極的に参加するなど,子供の不慮の事故予防に関する啓発活動を行っている。

さらに,平成28(2016)年からは「子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議」において,関係府省庁が子供の事故の実態及び事故防止に向けた各種取組や効果的な啓発活動の実施等について情報交換し,「子どもの事故防止週間」を設けて連携し,集中的な広報活動を実施している。