第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

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第10章 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

1 働きたい人が働きやすい中立的な税制・社会保障制度・慣行,家族に関する法制等の検討

税制に関しては,平成29年度税制改正において,女性を含め,働きたい人が就業調整を意識せずに働くことができる仕組みを構築する観点から,配偶者控除等について,配偶者の収入制限を103万円から150万円に引き上げるなどの見直しを行い,平成30年分の所得税から適用されている。

社会保障制度については,被用者保険の適用拡大を進めることとしており,大企業で働く短時間労働者を対象とした被用者保険の適用拡大に加えて,平成29年4月からは,中小企業等で働く短時間労働者についても,労使合意を前提に企業単位で適用拡大の途を開いた。

国家公務員の配偶者に係る扶養手当については,平成28年8月の人事院勧告を実施するため,同年11月に一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)が改正され,29年4月から,段階的に配偶者に係る手当額を他の扶養親族と同額まで減額するなどの見直しが行われている。地方公務員の配偶者に係る扶養手当についても,ほとんどの地方公共団体で見直しが行われた。

民間企業における配偶者手当については,平成30年1月に改訂されたモデル就業規則を活用しながら,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促した(第2章第5節参照)。

法務省では,平成8年2月の法制審議会の答申(「民法の一部を改正する法律案要綱」)を踏まえた選択的夫婦別氏制度の導入等を内容とする民法改正については,引き続き慎重な検討が必要であるとの認識の下,ウェブサイトを通じた国民への情報提供等に努めている。

内閣府では,銀行口座,職場等において旧姓使用が可能となるよう,関係団体に対し協力要請を行った。

また,国家公務員の旧姓使用について,対外的な法令上の行為を含め,原則として旧姓使用を認めることとする各府省庁間の申合せを行った。

2 男女の多様な選択を可能とする育児・介護の支援基盤の整備

政府は,「少子化社会対策大綱」(平成27年3月閣議決定)に基づき,子育て支援策を一層充実させている。

内閣府は,地域少子化対策重点推進交付金を活用し,地方公共団体が行う地域の実情に応じた先駆的な少子化対策の取組や,これまでの取組から発掘された優良事例の横展開を支援した。

また,新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度として平成27年4月から本格施行された子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」という。)では,「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に,(ア)認定こども園,幼稚園,保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設,(イ)認定こども園制度の改善及び(ウ)地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実により,幼児期の学校教育・保育,地域の子ども・子育て支援を総合的に推進している。

さらに,子ども・子育て支援の提供体制の充実を図るため,事業所内保育業務を目的とする施設の設置者に対する助成及び援助を行う事業等を創設するとともに,一般事業主から徴収する拠出金の率の上限を引き上げる等の措置を講ずるため,平成28年3月,子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)の一部が改正された。同法改正により創設された企業主導型保育事業により,29年度末までに約7万人の受け皿を確保し,多様な働き方に対応した受け皿整備を進めている。

加えて,地方公共団体は,次世代法に基づき,地域における子育て支援や母性,乳幼児の健康の確保・増進のほか,子供の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備等を内容とする市町村行動計画等を策定することができることとされており,子ども・子育て支援事業計画と併せて,これに基づく取組が進められている。

保育士等の処遇改善については,平成29年度予算において,「ニッポン一億総活躍プラン」等に基づき,更なる「質の向上」の一環として,2%相当の処遇改善を行うとともに,技能・経験を積んだ職員について,4万円等の追加的な処遇改善を実施している。さらに,29年度補正予算により人事院勧告に準拠した1.1%の処遇改善を実施した。

平成29年4月1日時点の待機児童数は,26,081人で前年度と比較して増加しており,保育の受け皿拡大は喫緊の課題となっている。政府においては,25年度より待機児童の解消を目指し,「待機児童解消加速化プラン」に基づき取組を進めており,28年度から実施している企業主導型保育事業による7万人分と合わせて29年度末までの5年間で60万人分近い保育の受け皿が確保できる見通しとなっている。一方,女性就業率は年々上昇し,それに伴い,保育の利用申込者数も急激に増加していることから,29年6月に「子育て安心プラン」を策定したが,今般,これを前倒しし,2020年度末までに32万人分の保育の受け皿を確保し,待機児童を解消することとしている(うち6万人は,29年度に前倒して整備を実施)。

さらに,平成29年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」に基づき,「子育て安心プラン」の実現に必要な企業主導型保育事業と保育の運営費については,事業主拠出金の法定上限の引き上げ(0.25%→0.45%)による3,000億円を充てることとし,そのために必要な措置を講ずるため,30年3月,子ども・子育て支援法の一部が改正された。

共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに,次代を担う人材を育成するため,平成26年7月に厚生労働省と文部科学省が共同で策定した「放課後子ども総合プラン」では,一体型を中心とした放課後児童クラブ及び放課後子供教室の計画的な整備等を進めることとしている。

平成29年度においては,文部科学省の「放課後子供教室」は全国1万7,615か所(平成29年9月現在)で,厚生労働省の「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」は全国2万4,573か所(平成29年5月現在)でそれぞれ実施している。

厚生労働省では,「放課後子ども総合プラン」の目標達成に向けた「量的拡充」のための支援策の強化を図るため,施設整備費の国の補助率を1/3から2/3への引上げや放課後児童クラブを設置する際の既存施設の改修,設備の整備・修繕及び備品の購入を行う事業の補助基準額の引上げを行った。待機児童が存在する地域等において,学校敷地外の民家・アパート等から,より広い場所に放課後児童クラブを移転して受入児童数を増やすことができるよう,その移転に係る経費の補助や,学校敷地外の土地を活用して放課後児童クラブを設置する際に必要な土地借料の補助を行うなど放課後児童クラブの量的拡充を図った。

また,身近な場所に子育て中の親子が気軽に集まって,相談や交流を行う「地域子育て支援拠点」の設置や,子育て家庭や妊産婦が,教育・保育施設や地域子ども・子育て支援事業,保健・医療・福祉等の関係機関を円滑に利用できるよう,身近な場所での相談や情報提供,助言等必要な支援をするとともに,関係機関との連絡調整,連携・協働の体制づくり等を行う「利用者支援事業」の推進,保護者の通院や社会参加活動,又は育児に伴う心理的・身体的負担の軽減のために児童を一時的に預かる「一時預かり事業」を推進している。

さらに,乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として,子供の送迎や預かり等の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進している。

厚生労働省では,高齢者が介護サービスを適切に選択し,利用できるよう,介護サービス事業者の運営基準の適切な運用を図るとともに,平成18年4月から「介護サービス情報の公表」制度により,都道府県が行う事業所調査,情報の公表等の総合的な支援を行っている。また,介護サービス事業者の参入促進,福祉用具の開発・普及等の施策を推進している。

また,介護福祉士,介護支援専門員及び訪問介護職員について,養成研修や資質の向上のための研修等を推進するとともに,その内容の充実等を図っている。さらに,全国の主要なハローワークに設置された「福祉人材コーナー」等において,福祉分野のきめ細かな職業相談・職業紹介,求人者への助言,指導等を実施している。

各都道府県に設置されている福祉人材センターにおいて,離職した介護福祉士等からの届出情報をもとに,求職者になる前の段階からニーズに沿った求人情報の提供等の支援を推進するとともに,当該センターに配置された専門員が求人事務所と求職者双方のニーズを的確に把握した上で,マッチングによる円滑な人材参入・定着促進,職業相談,職業紹介等を推進している。

介護労働者の雇用管理改善を促進する「介護雇用管理改善等計画」(平成27年厚生労働省告示第267号)に基づき,介護労働者の身体的負担の軽減に資する介護福祉機器や賃金制度の整備をはじめとした雇用管理制度を導入する事業主への助成,介護労働安定センターによる雇用管理改善のための相談援助や実践力を備えた介護人材の育成を図るための介護労働講習を行っている。また,介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習に加え,先進的な取組を行う事業所の雇用管理改善の好事例把握やコンサルティング等を行う事業を実施した。また,介護保険制度については,高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう,医療,介護,介護予防,住まい,生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」を構築するため,地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)が平成26年6月から施行されている。

文部科学省では,「幼稚園教育要領」に基づき,幼稚園の標準の教育時間(4時間)の前後や長期休業期間中等に行われる,いわゆる「預かり保育」や,子育て相談や子育てに関する情報提供,保護者同士の交流の機会の提供等,幼稚園における子育て支援活動を推進している。

預かり保育や子育て支援活動については,私立幼稚園については私学助成により支援するとともに,公立幼稚園については,地方財政措置が講じられている。また,子ども・子育て支援新制度においてもこれらの取組について支援の充実を図っている。

また,幼児教育の振興を図る観点から,保護者の所得状況や子供の数に応じた経済的負担の軽減等を図る「幼稚園就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,その所要経費の一部を幼稚園就園奨励費補助金により補助している。平成29年度は,年収約270万円未満相当世帯(市町村民税非課税世帯)第2子を無償にするとともに,年収約270万円から約360万円未満相当(市町村民税所得割課税額77,100円以下)について,更なる負担軽減を図った。

就学前の教育・保育への多様なニーズに対応するため,平成18年10月から開始した認定こども園制度については,新制度で認可・指導監督権限や財政支援を一本化するなどにより,更なる普及促進を図っている。

さらに,幼児期から高等教育まで切れ目のない教育費負担の軽減のための取組を行っている。

国土交通省では,子育てに適したゆとりある住宅・居住環境を確保するため,良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進するとともに,住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを利用した融資等により,良質な持家の取得を支援している。

また,公的賃貸住宅における保育所等の子育て支援施設の一体的整備や,子育て世帯の居住の安定確保を図る民間事業者等による先導的な取組を支援したほか,地方公共団体においても,地域の実情を踏まえ,子育て世帯に対し当選倍率を優遇するなどの対応を行っている。さらに,職住近接で子育てしやすい都心居住,街なか居住を実現するため,良質な住宅供給や良好な住宅市街地等の環境整備を行っている。

加えて,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備,無電柱化,交通安全施設等の整備を実施しているほか,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS)の普及を推進している。また,バリアフリー法に基づく取組及び,公共交通施設等に対する「移動等円滑化基準」の改正,公共交通機関や公共施設等におけるベビーカー利用がしやすい環境づくりに向けた検討を行い,ベビーカー利用に関する統一的なマーク(ベビーカーマーク)の掲出を行い,ベビーカー利用に当たっての「お願い」の周知や,普及・啓発を図るキャンペーン等を実施した。

このほか,文部科学省,国土交通省及び警察庁では,通学路における交通安全の確保に向け,学校,教育委員会,道路管理者,警察等の関係機関が連携して交通安全対策を実施するとともに,地域における定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等による継続的な取組を支援している。

また,消費者庁では,「不慮の事故」が子供の死因の上位を占めている現状を踏まえ,関係府省庁と連携し,「子どもを事故から守る!プロジェクト」を推進し,子供の事故防止に取組んだ。平成28年6月に設置した「子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議」において,子供の事故の実態及び事故防止に向けた各種取組等について情報交換し,連携した効果的な啓発活動の実施等についての検討を進めている。

平成29年5月には,関係府省庁連絡会議の取組として「子どもの事故防止週間」を新たに定め,集中的な広報活動を関係府省庁が連携して実施した。また,事故予防の注意点などを「子ども安全メールfrom消費者庁」や「消費者庁 子どもを事故から守る!公式ツイッター」で発信している。そのほか,シンボルキャラクター「アブナイカモ」が各地の子供関連イベントに参加するなど,子供の不慮の事故予防に関する啓発活動を行っている。