第1節 生涯にわたる男女の健康の包括的な支援

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第7章 生涯を通じた女性の健康支援

第1節 生涯にわたる男女の健康の包括的な支援

1 包括的な健康支援のための体制の構築

厚生労働省では,全国の女性関連施設等が行う女性就業促進支援事業が効果的かつ効率的に実施され,全国的な女性の健康保持増進のための支援施策の充実が図られるよう,相談対応や講師派遣等を実施している。

また,女性の生涯を通じた健康保持のため,「女性の健康週間」(毎年3月1日から同月8日まで)を実施し,国及び地方公共団体,関係団体等社会全体が一体となって各種の啓発事業及び行事等を展開している。

さらに,生涯を通じた女性の健康支援事業を実施し,保健所,市町村保健センター等において妊娠,避妊や性感染症を含めた女性の心身の健康に関する相談指導のほか,女性のライフステージに応じた健康教育等を実施している。

総務省では,人が生まれる前から老年期に至るまでの健康・医療・介護情報を本人が時系列的に収集し,様々なサービスに活用するPHR(PersonalHealth Record:個人健康記録)モデルの実証を行い,自らの状態に合わせた適切なサービスを受けられる環境の整備に向けた取組を推進している。

内閣府では,女性応援ポータルサイトを活用し,女性の健康に関する広報活動による普及啓発を行っている。

2 ライフステージ別の取組の推進

(1) 幼少期・思春期

文部科学省では,学校における性に関する指導について,学習指導要領にのっとり,児童生徒の発達段階を踏まえるとともに,保護者や地域の理解を得ながら学校全体で共通理解を図って行うよう,学校関係者等に対し周知徹底を図っている。また,平成19年度から,各学校において適切な性に関する指導が実施されるよう,各地域における指導者養成と普及を目的とした研修会等を開催している。

さらに,学校において,健康診断や体育・保健体育の教科を中心とした健康教育を実施するとともに,アレルギー疾患やメンタルヘルス等児童生徒の現代的健康課題に対応するため,地域の実情を踏まえた医療機関等との連携等,課題解決に向けた計画の策定や,それに基づく具体的な取組に対して支援を行う事業を実施している。

加えて,性感染症等の問題について総合的に解説した啓発教材を作成し,中学生・高校生に対し配布するなど,引き続き学校教育における性に関する指導等の充実を図っている。

(2) 活動期・出産期

厚生労働省では,女性のがん罹患率の第1位であり年々増加傾向にある乳がんや,20~40歳代の罹患の増加が指摘されている子宮頸がんについて,科学的根拠に基づくがん検診の推進を通じて早期発見や死亡率の減少に努めるとともに,子宮頸がん及び乳がん検診の初年度対象者に対し,検診クーポン券等を配布する「新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業」を実施し,女性特有のがん検診の更なる受診率向上に取り組んだ。

また,「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」(エイズ予防指針)(平成30年厚生労働省告示第9号)に基づき,効果的な普及啓発や検査・相談体制の充実・拡大,医療の提供等エイズ患者やHIV感染者の人権や社会的背景に配慮しつつ,国,地方公共団体,医療関係者,NGO等が連携して予防と医療に係る総合的施策を展開している。

また,HIV陽性者等で構成されるNGO等の予防啓発活動等を支援するとともに,早期にHIV感染を発見し,治療につなげることができるよう,利用者の利便性に配慮した検査・相談を実施している。

さらに,「性感染症に関する特定感染症予防指針」(平成12年厚生省告示第15号)に基づき,(ア)発生の予防・まん延の防止では,性感染症の予防方法等に関する情報提供を進め,社会の理解を後押ししていくことや,検査の推奨と検査機会の提供を推進していくこと,(イ)医療の提供では,学会等と連携した医療の質の向上や医療アクセスの向上に取り組んでいくこと及び(ウ)情報収集・調査研究では,発生動向の多面的な把握に努めることや性感染症のリスクに関する意識や行動に関する研究を実施することについて,更なる対策の推進を図っている。

(3) 更年期・老年期

厚生労働省では,第4次基本計画において,男女共に平成22年から32年までの間で健康寿命をそれぞれ1歳以上延伸することを成果目標としている。

これに関連し,特に女性については,骨折等の基礎疾患となり,高齢化の進展により今後増加が予想される骨粗しょう症について,早期に骨量減少者を発見し,予防することを目的として,市町村(特別区を含む。)において,当該市町村に居住する40歳,45歳,50歳,55歳,60歳,65歳及び70歳の女性に対して骨粗しょう症検診を実施している。

記憶障害等の症状が起こる認知症が,高齢化の進展により今後増加が見込まれることを踏まえ,厚生労働省では,複数の専門職が,認知症が疑われる人や認知症の人と,その家族を訪問し,認知症の専門医による鑑別診断等を踏まえて,観察・評価を行った上で,家族支援などの初期の支援を包括的・集中的に行い,自立支援のサポートをする「認知症初期集中支援チーム」を平成30年度に全ての市町村に配置するなど認知症施策を進めている。

3 健康を脅かす問題についての対策の推進

(1) 薬物の供給の遮断と乱用者の取締り等需要の根絶

厚生労働省では,地方厚生局麻薬取締部による薬物密輸・密売組織等の薬物供給者や,末端乱用者に対する徹底した取締りを実施している。

警察では,最近の薬物犯罪情勢や政府全体における薬物対策の取組の強化等を踏まえ,関係機関との連携による水際対策の強化,薬物密輸・密売組織の実態解明及びその壊滅に向けた取締り等により薬物の供給の遮断を図るとともに,規制薬物等の乱用者の徹底検挙や広報啓発活動等を通じて需要の根絶を図っている。

(2) 薬物乱用防止に関する教育・啓発の充実

政府では,「第四次薬物乱用防止五か年戦略」(平成25年8月薬物乱用対策推進会議決定)及び「危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策」(平成26年7月薬物乱用対策推進会議決定)に基づき,関係省庁が連携を密にして,薬物乱用の根絶を図る取組の一層の推進を図っている。

警察では,薬物を乱用している少年の早期発見,補導及び検挙に努めているほか,関係機関・団体,ボランティア等と協力しながら薬物乱用防止教室等を開催するとともに,あらゆる広報媒体を活用した薬物の危険性・有害性に関する広報啓発活動の実施等,少年の薬物乱用防止対策を推進している。

文部科学省では,大学生等を対象にしたパンフレットの作成・配布を行うとともに,薬物乱用防止教室の指導者に対する講習会やシンポジウムの開催,薬物乱用の問題について総合的に解説した啓発教材(小・中・高校生用)の作成・配布等を行っている。

厚生労働省では,「ダメ。ゼッタイ。」普及運動や「麻薬・覚醒剤乱用防止運動」等において,関係機関・団体と連携し,薬物の危険性・有害性に関する正しい知識の周知徹底,訴求対象に応じた広報啓発活動を実施するとともに,近年若年層における薬物乱用が問題となっていることから,高校卒業予定者,有職・無職の青少年等の若年層に対する薬物乱用防止啓発読本を作成し,配布している。また,要請に応じて教育機関やイベント会場等に薬物乱用防止の専門家を派遣するとともに,危険ドラッグを含む指定薬物に関する情報を一元的に収集・提供するための「あやしいヤクブツ連絡ネット」の運用を行っている。

また,再乱用防止の取組を推進するための講習会等を実施している。

(3) 喫煙,飲酒に関する正確な情報提供

文部科学省では,学校教育において,未成年の段階から喫煙・飲酒をしないという態度等を育てることを目的として,体育科,保健体育科,特別活動等,学校教育全体を通じて指導の充実を図っている。また,小・中・高校生に対し,喫煙や飲酒の問題について総合的に解説した啓発教材の作成・配布を行っている。

厚生労働省では,「21世紀における第2次国民健康づくり運動」(平成24年厚生労働省告示第430号。以下「健康日本21(第二次)」という。)において,未成年者の飲酒と喫煙を平成34年度までになくすという数値目標を設定している。

また,「アルコール健康障害対策推進基本計画」(平成28年5月閣議決定)において,「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合を,男性13.0%,女性6.4%まで減少させること」,「未成年者の飲酒をなくすこと」,「妊娠中の飲酒をなくすこと」を目標として設定している。

(4) 受動喫煙の防止

厚生労働省では,未成年者や子供の喫煙防止・受動喫煙防止対策を推進するため各都道府県が行う講習会等への補助事業(健康的な生活習慣づくり重点化事業(たばこ対策促進事業))を実施している。

また,職場における受動喫煙防止については,平成27年6月から施行されている改正労働安全衛生法において,労働者の受動喫煙防止のため,事業者及び事業場の実情に応じた適切な措置を講ずることが事業者の努力義務とされたところであり,周知啓発を図るとともに,受動喫煙防止対策助成金等により事業者に対する支援を行っている。

受動喫煙防止に関する目標として,「健康日本21(第二次)」において,平成34年度までに,行政機関・医療機関については受動喫煙の機会を有する者が0%,家庭・飲食店については受動喫煙の機会を有する者が家庭3%,飲食店15%,職場については32年までに「受動喫煙の無い職場の実現」を目指している。

また,2020(平成32)年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて,「望まない受動喫煙」を防ぐためにはどのような対策が必要か,これまでの議論の積み重ねを踏まえつつ,様々な関係者の御意見を伺いながら,多面的に検討を進めてきた。平成30年1月に,厚生労働省として「『望まない受動喫煙』対策の基本的考え方」を公表し,同年3月に「健康増進法の一部を改正する法律案」を第196回通常国会に提出した。

これを踏まえ,第3期のがん基本計画において,「望まない受動喫煙のない社会をできるだけ早期に実現すること」を目標に掲げた。