男女共同参画白書(概要版) 平成29年版

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第1節 働く女性の活躍の現状と課題

(高まる女性の就業率)

生産年齢人口は減少しているが,平成24~28年の4年間に全年齢総数の就業者数は170万人増加し,このうち女性が147万人,男性が23万人増加し,女性の就業が拡大した。女性の就業率(15~64歳)は,昭和61~平成28年の30年間に53.1%から66.0%と12.9%ポイント上昇している。この上昇幅の過半は最近10年間の上昇によるもので,特に最近4年間を見ると,5.3%ポイント上昇している(Ⅰ-特-1図)。

I-特-1図 就業率の推移

女性の就業率を年齢階級別にみると,いわゆるМ字カーブになっているが,最近30年間にМ字カーブの底は大幅に上昇し,窪みが浅くなるとともに,全体的に大きく上方にシフトしている(Ⅰ-特-2図(b))。就業率の上昇が高まった最近10年間の女性の年齢階級別の就業率の変化について,女性の就業率は全ての年齢階級で上昇し,なかでも,「30~34歳」,「55~59歳」,「60~64歳」は10%ポイント超の上昇になった(Ⅰ-特-2図(a))。

I-特-2図 女性の年齢階級別就業率の変化及び推移

(全ての都道府県で上昇する女性の就業率)

平成17~27年の10年間に,女性の就業率(15~64歳)は,全ての都道府県で上昇し,35の都道府県では後半5年間の上昇幅が前半5年間の上昇幅を上回っているが,その水準については,地域差が依然大きい(Ⅰ-特-3図)。

II-特-3図 都道府県別 女性の就業率(15~64歳)の推移

いわゆるM字カーブの窪みがないとされる欧州諸国と,女性の就業率が国内で最も高い福井県とこれに次ぐ富山県を比べると,福井県の20代から40代前半にかけての就業率は既にスウェーデンを上回り,両県ともに,全ての年齢階級でドイツ・フランスを上回る(Ⅰ-特-5図)。

I-特-5図 欧州各国と福井県・富山県との女性の年齢階級別就業率の比較(平成27年)

(主要産業や多くの地域において依然少ない女性管理職)

我が国において,女性の就業が拡大し,就業者に占める女性の割合は43.5%と欧米諸国とほぼ同水準である。他方,管理的職業従事者1における女性の割合は近年逓増傾向にあるものの,13.0%(平成28年)と低い水準にとどまり,欧米諸国のほか,シンガポールやフィリピンといったアジア諸国と比べてもかなり低い。

1管理的職業従事者とは,就業者のうち,会社役員,企業の課長相当職以上,管理的公務員等をさす。

管理的職業従事者に占める女性の割合を都道府県別に見ると,20%を上回る県がある一方,8%台の低い状況の県もある。女性の就業率(平成27年)の上位5県(福井県,富山県,島根県,鳥取県,石川県)では,女性の就業は拡大したが,いずれの県も管理的職業従事者に占める女性の割合では全国平均を下回る(I-特-8図)。

管理的職業従事者に占める女性の割合に都道府県間で大きな違いがあるのは,地域の大きな特性のひとつである産業構造によるところがあると考えられる。都道府県別に,全産業の従業者数に占める製造業従業者の割合と管理的職業従事者に占める女性の割合との関連性をみると,製造業従業者の割合が高い地域では,相対的に管理的職業従事者に占める女性の割合が低い一方,製造業従業者の割合が低い地域では,管理的職業従事者に占める女性の割合が高いという両変数の間に負の相関関係がうかがえる。

I-特-8図 有業者と管理的職業従事者に占める女性の割合(都道府県別)

(多様で柔軟な働き方の推進)

この10年間の雇用者数について,男性は平成20年から22年,24年に減少したが,女性は増加が続くとともに,25年に大きく増加し,27,28年と,2年連続で正規雇用の増加が非正規雇用の増加を上回った(I-特-10図)。

Ⅰ-特-10図 正規職員・非正規職員の推移(男女別,対前年増減数)

非正規雇用のうち,不本意ながら非正規の雇用形態を選択する者の割合については,女性は男性を大きく下回るが,実数では,女性149万人,男性147万人と女性がやや多い。

我が国では,女性は出産・育児等による離職後の再就職にあたって非正規雇用者となることが多いが,派遣社員やパートなどの非正規雇用から正規雇用に移行したいと考える女性が少なくない。また,男女間の賃金格差は,縮小傾向にあるものの,男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性一般労働者の給与水準は73.0と格差がある(平成28年)。女性の多様で柔軟な働き方の選択肢を広げるとともに,女性の能力を十分に発揮できる働き方を実現させるには,非正規雇用の女性の正社員転換・待遇改善が重要である。