第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

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第9章 貧困,高齢,障害等により困難を抱えた女性等が安心して暮らせる環境の整備

第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

(就業・生活の安定を通じた自立に向けた取組)

厚生労働省では,年金機能強化法に基づき,短時間労働者への社会保険の適用拡大に向けた準備や周知に取り組むほか,更なる適用拡大に向けて必要な取組を進めていく(第2章第5節参照)。また,複合的な課題を抱える生活困窮者のそれぞれの状況に応じ,包括的な支援を行いその自立を促進するため,平成27年4月より新たな仕組みとして施行された生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)に基づく相談支援,就労支援,多様な就労機会の提供,居住確保支援,家計相談支援等を引き続き着実に実施していく。

(ひとり親家庭等の親子が安心して生活できる環境づくり)

内閣府では,ひとり親家庭等の自立を社会全体で応援すべく,官公民の連携・協働プロジェクトである「子供の未来応援国民運動」を推進する。具体的には,各種支援情報を一元的に集約した上で,地域別,属性等別,支援の種類別に検索できる総合的な支援情報ポータルサイトの整備や,民間資金による基金を活用し,草の根で支援を行うNPO等に対して支援を行うなど,国民運動事業の更なる展開,充実を図る。

ひとり親家庭等に対する支援として,厚生労働省では,母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)等に基づき,ひとり親家庭等の実情に応じた自立支援策を総合的に展開していく。また,平成25年3月に施行した母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法(平成24年法律第92号)等に基づき,施策の充実や民間事業者に対する協力の要請等を行う。さらに,27年12月に決定された「ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト」に基づき,就業による自立に向けた支援を基本にしつつ,子育て・生活支援,学習支援等の総合的な支援を実施する。

また,支援を必要とするひとり親が行政の相談窓口に確実につながるよう,相談窓口に関する分かりやすい情報提供やスマートフォンで検索できる支援情報ポータルサイトの活用等による相談窓口への誘導の強化を行いつつ,ひとり親家庭の相談窓口において,子育て・教育・生活に関する内容から就業に関する内容まで,ワンストップで寄り添い型支援を行うことができる体制を整備し,必要に応じて,他の機関につなげることにより,総合的・包括的な支援を行う体制を整える。さらに,ひとり親家庭の子供の生活習慣の習得・学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくりの実施,ひとり親家庭等日常生活支援事業の利用条件の緩和,より良い条件での就職や転職に向けた可能性を広げ,正規雇用を中心とした就業につなげていくため,高等学校卒業程度認定試験合格支援事業の支給対象にひとり親家庭の子供を追加するほか,就業に結び付きやすい資格取得のため養成機関に通う際の生活費の負担軽減を図る高等職業訓練促進給付金の支給期間の延長等の拡充や地方公共団体が指定した教育訓練講座を受講し,修了した場合にその経費の一部を支給する自立支援教育訓練給付金の支給額の引き上げ等の充実策を実施する。そのほか,マザーズハローワーク等を通じた就業支援,地域の実情に応じた就業支援・生活支援の着実な推進,児童扶養手当の機能の拡充や母子父子寡婦福祉資金貸付金による経済的支援の実施等の総合的な自立支援策を展開する。また,母子家庭の母等を一定期間試行雇用し,その後常用雇用への移行を図る事業主に対して支給するトライアル雇用制度について積極的な活用を図るとともに,生活保護の母子加算について引き続き支給する。

文部科学省では,生まれた家庭の経済状況等にかかわらず,全ての意欲と能力ある子供達が希望する教育を受けられるよう,教育費の負担を軽減するための取組を行う。例えば,初等中等教育段階における取組として,幼稚園の入園料や保育料に係る保護者負担の軽減等を図る「幼稚園就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対し,引き続き幼稚園就園奨励費補助金により所要経費の一部を補助するとともに,経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して,各市町村において行われる学用品費の支給等の就学援助事業に対する助成を行う。高等学校段階における取組としては,授業料を支援する「高等学校等就学支援金」や授業料以外の教育費を支援する「高校生等奨学給付金」等を学年進行で着実に実施するとともに,「高校生等奨学給付金」については,給付額の増額により更なる制度の充実を図る。

また,高等教育段階における取組として,意欲と能力のある学生等が経済的理由により進学等を断念することがないよう,独立行政法人日本学生支援機構の実施する大学等奨学金事業について,無利子奨学金の貸与人員を増員するとともに,貸与基準を満たす年収300万円以下の世帯の学生等全員への貸与の実現やより柔軟な「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けた詳細な制度設計や,システム開発等の対応の加速等,充実を図る。

大学院生に対しては,給与型の経済的支援として,ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)の業務に対する給与を各大学が自主的に支給する。

また,経済的な理由や家族の事情により,家庭での学習が困難であったり,学習習慣が十分に身についていない中学生等への地域住民の協力やICT等の活用による原則無料の学習支援(地域未来塾)を拡充する。

このほか,子育てに困難を抱えて孤立しがちな保護者等を対象として,学校や地域と連携した家庭教育支援チーム等による訪問型の家庭教育支援体制の構築に向けた取組を推進する。

法務省では,養育費に関する法的な知識をわかりやすく解説したパンフレットや合意書ひな形を作成し,離婚届書交付時に同時に交付するなどの取組を行うとともに,養育費の履行を確保するため,財産開示制度等に係る所要の民事執行法の改正を検討する。

(子供・若者の自立に向けた力を高める取組)

内閣府では,社会生活を円滑に営む上での困難に直面する子供・若者に対し,教育,福祉,保健,医療,矯正,更生保護,雇用等様々な機関がネットワークを形成し,それぞれの専門性をいかした発達段階に応じた重層的な支援を提供するための「子ども・若者支援地域協議会」について,都道府県を通じ,管下市区町村における設置を促進する。また,アウトリーチ(訪問支援)研修を始めとする各種研修を引き続き実施する。

文部科学省では,生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を培うキャリア教育及び後期中等教育以降における実践的な職業教育を推進する。

また,困難な状況に置かれた児童生徒の相談等に適切に対応できるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を推進するなど,学校における相談体制の充実を支援する。

厚生労働省では,若者が充実した職業人生を歩んでいけるよう,「新卒応援ハローワーク」等を拠点に,新規学校卒業者や中途退学者,未就職卒業者に対する正社員就職の支援を実施するとともに,フリーター等の非正規雇用で働く若者に対しては,「わかものハローワーク」等を拠点に正社員就職に向けた支援を引き続き実施する。

また,「地域若者サポートステーション事業」について,高校中退者等の支援を更に充実させるため,学校等関係機関と連携し,切れ目のない支援を強化する。

また,各都道府県・指定都市に,ひきこもりに特化した第一次相談窓口としての機能を有する「ひきこもり地域支援センター」による支援を引き続き推進する。