男女共同参画白書(概要版) 平成28年版

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第2節 多様な働き方・暮らし方

(多様な分野での女性の活躍)

働きたい,あるいは働く能力があるにもかかわらず働いていない女性が少なからず存在する状況は,日本の社会の損失とも言えるが,従来力仕事等様々な理由により伝統的に女性が少なかった産業や職業であっても,女性の参画が進む動きも出てきている。例えば,保安職の女性割合は長期的には大きく増加しており,幅広い分野で女性の活躍が可能となる社会を作っていくことが重要である(I-特-16図)。

I-特-16図 女性の保安職の人数及び割合の推移

コラム

理工系分野へチャレンジする女性を応援!「リコチャレ」


科学技術立国を目指す日本では,理工系人材の多様性を高め,更なるイノベーションの創出を図るためにも,理工系分野で女性を増やしていくことが欠かせない。そこで,産学官が連携して,女子生徒等の理工系分野への進路選択を促進する取組「理工チャレンジ(リコチャレ)」が進められている。平成27年夏に開催された女子学生・保護者向けシンポジウムでは,航空機開発に携わる女性技術者が「技術系職種において正解は論理的に導かれるものなので,男女関係なく,正しいことを言えばみんなついてきてくれる。女性は活躍しやすい分野だと思う」と語り,他の登壇者とともに女子学生へエールを送った。

コラム

技術革新がもたらす支え手の拡大


力仕事が多い農作業の現場で,今期待されているのが「農業用アシストスーツ」だ。身体に装着することで動作を補助し,作業時に身体への負担を軽減する機能を持つ。普及が進めば,女性にとっても農業へ参入しやすくなる。平成28年度中の商品化を目指しており,他にも,介護や工事現場等,様々な用途でのアシストスーツの開発も民間で進んできている。

(多様な働き方・暮らし方に向けて求められる変革)

少子高齢化により1人の高齢者を支える現役世代の数が少なくなる中,現役世代が「仕事」か「家庭生活」かではなく,1人で何役も担うことができるようにしていくための鍵となるのは,長時間労働や,画一的な働き方を変革し,一人ひとりの事情に応じた職業生活を営むことができる社会を実現していくことである。

ICT(情報通信技術)の発達等により,時間や場所にとらわれない働き方が可能となる環境も生まれている。テレワークは,その例として活用が期待されているが,テレワークに対する労働者のニーズは高く,実際にテレワークを導入したメリットを感じている企業は多い(I-特-19図)。また,働き方に対する多様なニーズを認め合うこと等により,男女が安心して働ける環境を整えていくことも重要と考えられる。

I-特-19図 テレワークを導入した効果

コラム

100人いれば,100通りの人事制度


ソフトウェアメーカーのサイボウズ株式会社では,ここ10年ほど,徹底的な働き方の多様化を進めている。働く「時間」と「場所」を自由に選べるようにしたほか,残業の有無,短時間勤務,週の勤務日数等を選択できたり,育児休業は6年まで取得可能,退職しても最長6年間復帰可能な「育自分休暇」制度等,個人の希望に会社が最大限応えられる様々な仕組みがある。同社では,働き方の変革を進めた結果,離職率はピークの28%から3.8%まで低下,特に女性の離職率が減り,従業員の女性比率は4割まで上昇した。会社のダイバーシティや従業員の働きがいの向上にもつながっている。

長時間労働の削減を始めとする働き方改革は,様々な活動に当たって時間や場所に制約を受ける者であっても当たり前に働き,多様な暮らしが実現できる,男女とも暮らしやすい社会の実現に向けて極めて重要な課題である。多様な働き方・暮らし方の実現は,我が国社会が様々な変化への対応力を高め,力強く発展を続けるために必要であり,少子高齢化が進む中で我が国にとって必須の変革である。こうした変革を通じて,女性も男性も,さらには高齢者や若者も,障害や難病のある人も,誰もが暮らしやすく,また誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現に向け,関係する取組を力強く進めていく必要がある。