第3節 健康を脅かす問題についての対策の推進

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第3節 健康を脅かす問題についての対策の推進

1 HIV/エイズや,子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を始めとする性感染症の予防から治療までの総合的な対策の推進

(1)予防から治療までの総合的な対策の推進

厚生労働省では,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)に基づく「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」(エイズ予防指針)(平成24年厚生労働省告示第21号)に基づき,施策の重点化を図るべき3分野(普及啓発及び教育,検査・相談体制の充実,医療の提供)を中心として,エイズ患者やHIV感染者の人権や社会的背景に配慮しつつ,国,地方公共団体,医療従事者,NGO等が連携して予防と医療に係る総合的施策を展開している。

また,「性感染症に関する特定感染症予防指針」(平成24年厚生労働省告示第19号)に基づき,(ア)発生の予防・まん延の防止では,性感染症の予防方法等に関する情報提供を進めることや,より精度の高い検査方法を推進していくこと,(イ)医療の提供では,学会等と連携した医療の質の向上や医療アクセスの向上に取り組んでいくこと及び(ウ)情報収集・調査研究では,発生動向の的確な把握に努めることや性感染症のリスクに関する意識や行動に関する研究を実施することについて,更なる対策の推進を図っている。

(2)学校におけるHIV/エイズ,性感染症に関する教育の推進

文部科学省では,性感染症等の問題について総合的に解説した啓発教材を作成し,中学生・高校生に対し配布するなど,引き続き学校教育におけるエイズ教育の充実を図っている。

2 薬物乱用,喫煙・飲酒対策の推進

(1)薬物の供給の遮断と乱用者の取締り等需要の根絶

厚生労働省では,地方厚生局麻薬取締部による薬物密輸・密売組織等の薬物供給者や,末端乱用者に対する徹底した取締りを実施している。

(2)薬物乱用防止に関する教育・啓発の充実

政府では,「第四次薬物乱用防止五か年戦略」(平成25年8月薬物乱用対策推進会議決定)及び「危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策」(平成26年7月薬物乱用対策推進会議決定)に基づき,関係省庁が連携を密にして,薬物乱用の根絶を図る取組の一層の推進を図っている。

警察では,危険ドラッグを含む最近の薬物犯罪情勢や政府全体における薬物対策の取組の強化等を踏まえ,関係機関との連携による水際対策の強化,薬物密輸・密売組織の実態解明及びその壊滅に向けた取締り等により供給の遮断を図るとともに,規制薬物等の乱用者の徹底検挙,薬物の危険性・有害性に関する広報啓発活動等により需要の根絶を図るなど,総合的な薬物対策を推進している。

また,薬物を乱用している少年の早期発見,補導及び検挙に努めているほか,薬物乱用防止教室の開催や薬物の危険性・有害性に関する広報啓発活動の実施等,少年の薬物乱用防止対策を推進している。

文部科学省では,大学生等を対象にしたパンフレットの作成・配布を行うとともに,薬物乱用防止教室の指導者に対する講習会やシンポジウムの開催,薬物乱用の問題について総合的に解説した啓発教材(小・中・高校生用)の作成・配布等を行っている(第4章第2節2参照)。

厚生労働省では,薬物乱用防止対策として,危険ドラッグを含めた薬物乱用の恐ろしさを伝える「ダメ。ゼッタイ。」普及運動等の実施を通じて,危険ドラッグ・覚醒剤・大麻の害毒に関する正確な知識を普及させるとともに,再乱用防止の取組を推進するための講習会等を実施している。

また,危険ドラッグを使用した者が二次的犯罪や健康被害を起こす事例が多発していることから,指定薬物,麻薬に指定される際など,機会を捉えて危険ドラッグに関するポスターの作成・配布・ホームページへの掲載を実施,麻薬・覚醒剤乱用防止運動などにおける啓発実施の徹底,関係機関などとも連携した広報・啓発の実施,危険ドラッグを含む指定薬物に関する情報を一元的に収集・提供するための「あやしいヤクブツ連絡ネット」を運用している。

(3)喫煙,飲酒に関する正確な情報提供

文部科学省では,学校教育において,未成年の段階から喫煙・飲酒をしないという態度等を育てることを目的として,体育科,保健体育科,特別活動等,学校教育全体を通じて指導の充実を図っている。また,小・中・高校生に対し,喫煙や飲酒の問題について総合的に解説した啓発教材の作成・配布を行っている。

(4)受動喫煙の防止

厚生労働省では,未成年者や子供の喫煙防止・受動喫煙防止対策を推進するため各都道府県が行う講習会等への補助事業(健康的な生活習慣づくり重点化事業(たばこ対策促進事業))を実施している。

また,事業場における受動喫煙防止対策の取組を一層推進するため,職場における受動喫煙防止の重要性等について周知啓発を図るとともに,受動喫煙防止対策助成金制度等の事業者に対する支援を行った。加えて,平成26年6月に公布された改正労働安全衛生法において,受動喫煙防止のため,事業者及び事業場の実情に応じた適切な措置を講ずることを事業者の努力義務としたところであり,27年6月1日から施行されている。

さらに,受動喫煙防止に関する目標として,「がん対策推進基本計画」や「健康日本21(第二次)」において,平成34年度までに,行政機関・医療機関については受動喫煙の機会を有する者が0%,家庭・飲食店については受動喫煙の機会を有する者が半減(すなわち,家庭3%,飲食店15%),職場については32年までに「受動喫煙の無い職場の実現」,また,妊娠中の女性や未成年者の喫煙をなくすことを目指している。