第2節 多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実

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第2節 多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実

1 生涯学習・能力開発の推進

(1) 総合的なキャリア教育の推進

子どもたちが,社会の一員としての役割を果たすとともに,それぞれの個性,持ち味を最大限発揮しながら,自立して生きていくことができるよう,後期中等教育修了までに,生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を培うキャリア教育の推進が求められている。

中央教育審議会においては,平成23年1月,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」が答申された。同答申では,人々の生涯にわたるキャリア形成を支援する観点から,(ア)幼児期の教育から高等教育に至るまでの体系的なキャリア教育の推進,(イ)実践的な職業教育の重視と職業教育の意義の再評価,(ウ)生涯学習の観点に立ったキャリア形成支援(生涯学習機会の充実,中途退学者等の支援)の3つの基本的方向性に沿った具体的な方策が提言されている14

14今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)(平成23年1月31日中央教育審議会) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1301877.htm


文部科学省では,このようなキャリア教育を推進するため,全国で,高等学校関係者を対象にキャリア教育の意義や重要性について理解を深めるための「キャリア教育推進アシストキャラバン」を開催した。

また,「学校側が望む支援」と「地域・社会や産業界等が提供できる支援」をそれぞれ書き込むことができ,それをマッチングさせる機能を持つポータルサイト15を設置した。

15文部科学省 子どもと社会の懸け橋となるポータルサイト http://kakehashi.mext.go.jp/


経済産業省では,平成20年度から22年度にかけてキャリア教育をコーディネートする人材を育成する「キャリア教育民間コーディネーター育成・評価システム開発事業」を実施した。また,キャリア教育コーディネーターの自立化・更なる普及のため,22年度には一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会が設立され,同協議会がコーディネーターの育成・研修事業や認定事業等を行っている。

また,平成22年度から,先進的な教育支援活動を行っている企業・団体を表彰する「キャリア教育アワード」を,23年度からは文部科学省と共同で教育関係者と地域・社会や産業界等の関係者の連携・協働によるキャリア教育に関するベストプラクティスを表彰する「キャリア教育推進連携表彰」を実施することで,キャリア教育の普及・推進を図っている16

16第2回キャリア教育推進連携表彰受賞者のプレスリリース http://www.meti.go.jp/press/2012/01/20130131001/20130131001.html
第3回キャリア教育アワード受賞者決定のプレスリリース http://www.meti.go.jp/press/2012/02/20130220004/20130220004.html


さらに,社会全体でキャリア教育を推進していこうとする気運を高め,キャリア教育の意義の普及・啓発と推進に資することを目的として,文部科学省,厚生労働省,経済産業省は合同で,「キャリア教育推進連携シンポジウム」の開催も行った。


(2) ライフプランニング支援の促進

文部科学省では,女性が長期的な視点で自らの人生設計(ライフプランニング)を行い,能力を発揮しつつ,主体的に生き方を選択することを支援するため,文部科学省のホームページ17で情報提供を行っている。

17文部科学省 男女共同参画社会の推進のために http://danjogaku.mext.go.jp/index.html


(3) 現代的課題に関する学習機会の充実

文部科学省では,行政だけではなく,市民やNPO等の民間が主体となって課題解決に取り組むことが期待されるテーマを具体的に指定して,地域の課題解決に役立つ仕組みづくりのための実証的共同研究等を行い,地域が課題を解決する力の強化を図る「社会教育による地域の教育力強化プロジェクト」を実施している。

また,高齢者の社会参加による生きがいづくりを促進するため,平成24年10月に東京都,同年12月に鳥取県において,高齢者の生涯学習に関する研究成果や各地域の先進的な取組事例等を活用した研究協議を行う「長寿社会における生涯学習政策フォーラム」を開催した。

さらに,消費者が自ら進んで,その消費生活に関し必要な知識を習得し,必要な情報を収集するなど自主的かつ合理的に行動することを支援するため,学校における消費者教育推進のための調査研究を実施した。また,文部科学省の取組成果を学校や地域等に広く還元し,多様な主体との連携・協働を進める機会である「消費者教育フェスタ」の開催等を通して,消費者教育のより一層の充実を図った。


(4) リカレント教育の推進

文部科学省では,大学等における編入学の受入れ,社会人入試の実施,昼夜開講制の推進,夜間大学院の設置,履修証明プログラムや公開講座の実施等により,大学等の生涯学習機能の拡充とともに,キャリアアップを目指す社会人の受入れ体制の整備を図っている。


(5) 放送大学の整備等

放送大学では,多彩な300の科目を提供するとともに,地域活動や社会貢献活動等様々な分野で一定の科目群を体系的に学んだ学生に対して,学位以外の履修証明を与える「科目群履修認証制度(放送大学エキスパート)」を推進した。また,文部科学省では,放送大学の学習環境の整備・充実や学習機会の拡大のための支援をしており,平成24年4月には都市型学習センターとして東京渋谷学習センターが設置され,ビジネスパーソン向けの科目が開講されるなどした。

専修学校は,社会の要請に即応した実践的な職業教育機関として着実に発展してきており,平成24年5月現在,3,249校に約65万1,000人の生徒が学んでいる。そのうち,約7万2,000人が社会人であり,社会人への学習機会の提供において大きな役割を果たしている。また,産業界等のニーズを踏まえた中核的専門人材養成を戦略的に推進していく観点から,各成長分野における人材育成に係る取組を先導する広域的な産学官コンソーシアムを組織化し,中核的専門人材養成のための新たな学習システムを整備する取組を行った。

さらに,学習歴や生活環境等が多様な者が高等学校教育を受けられるよう,単位制高等学校の配置が進んでおり,平成24年度までに960校が設置されている。

そのほか,文部科学省では,学校や一般社団法人,一般財団法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っている。


(6) 学校施設の開放促進等

文部科学省では,地域住民の学習機会や子どもたちの活動拠点(居場所)づくり等を推進するため,学校施設を,子どもたちの安全確保に十分配慮しつつ,放課後や週末等に開放し,多様な活動の場として提供する取組を支援している。また,学校・家庭・地域社会が連携協力することの重要性に鑑み,地域コミュニティの拠点としての学校施設,クラブハウス,屋外運動場照明,水泳プール,武道場等,学校開放諸施設の整備や活用を支援している。


(7) 青少年の体験活動等の充実

文部科学省では,体験活動を通した青少年の健全育成を図るため,家庭や企業等に対して体験活動への理解を求める普及啓発や自然体験活動の指導者養成に取り組むとともに,防災教育の観点に立った体験活動の推進等を実施した。

また,独立行政法人国立青少年教育振興機構では,全国28か所にある国立青少年教育施設において,様々な体験活動の機会と場を提供するとともに,指導者の養成に取り組んでいる。さらに,「子どもゆめ基金」によって,民間団体が実施する体験活動に対する助成を行っている。


(8) 民間教育事業との連携

文部科学省を始めとした府省庁等が連携して実施している「子ども霞が関見学デー」においては,平成24年8月8,9日に,各参加機関の業務説明や職場見学等を行うとともに,民間教育事業者等の協力を得ながら,子どもたちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会を提供した。

また,文部科学省では,生涯学習活動の成果をいかした社会づくりに取り組む行政,NPO等の団体,企業,大学等の者が一堂に会する研究協議を実施するとともに,それらのネットワーク形成を促進するためとして,「全国生涯学習ネットワークフォーラム2012」を平成24年10月から同年11月にかけて,宮城県,福島県,岩手県で開催した。


(9) 学習成果の適切な評価

文部科学省では,様々な学習活動の成果が適切に評価され,その成果の社会的通用性の向上が図られるよう,検定試験の評価手法や評価の視点・内容,情報公開が望まれる項目等について示した「『検定試験の評価に関するガイドライン(試案)』について(検討のまとめ)」を平成22年6月に公表し,民間事業者等が行う検定試験の評価や情報公開の取組を促進することなどにより,検定試験の質の確保や向上を図っている。また,民間教育事業者が質の保証の取組に必要な手法等を容易に会得できるように,民間教育事業者における評価・情報公開等の仕組みの構築について検討した。さらに,大学等において,各大学等の判断により,専修学校での学修等の成果を単位として認定することを可能としている。


2 エンパワーメントのための女性教育・学習活動の充実

(1) 女性の生涯にわたる学習機会の充実

文部科学省では,男女共同参画の視点を持ち地域づくりに参画できる女性人材の育成を支援するため学習プログラムを収集,発信した。また,女性が主体的に働き方・生き方を選択できるよう,若い時期から結婚,妊娠,出産といったライフイベントを視野に入れ,長期的な視点で自らの人生設計を行うことを支援するため,文部科学省のホームページで情報提供を行っている。


(2) 女性の能力開発の促進

文部科学省では,大学病院における女性医師・看護師に対する臨床現場定着や出産・育児等による離・退職後の復帰支援等,人材育成の取組を支援している。

さらに,独立行政法人国立女性教育会館では,地域活動を含む社会活動を行っている女性を対象に,「地域課題の解決と女性の経済的自立に関する調査研究及びプログラム開発」を実施したほか,職業活動,社会活動を包括した新たなキャリア概念への捉え直しを行うとともに,長期的な視野に立ったキャリア形成を学ぶ場として,女性関連施設職員,女性団体・NPOのリーダー,大学職員等を対象に「男女共同参画の視点に立った多様なキャリア形成支援研修」を実施した。


(3) 女性の学習グループの支援

文部科学省では,教育委員会や女性教育団体等が行う女性教育指導者の研修を奨励し,学習活動の企画・運営への女性の参画の促進を図るよう促している。

また,独立行政法人国立女性教育会館では,女性団体リーダー等を対象に,地域の男女共同参画を積極的に推進するリーダーとしてのエンパワーメント等を目的とした「女性関連施設・地方公共団体・団体リーダーのための男女共同参画推進研修」を実施したほか(本章第1節4参照),利用者のニーズに応じた研修プログラムの作成を支援するとともに,職員の専門性をいかし男女共同参画や女性教育等に関する積極的な情報提供を行っている。


(4) 独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)の事業の充実等

独立行政法人国立女性教育会館は,女性教育のナショナルセンターとして,基幹的女性教育指導者の育成,女性のキャリア形成支援や配偶者等からの暴力被害者支援に関する研修等喫緊の課題への対応,アジア太平洋地域等の女性のエンパワーメント支援,男女共同参画社会形成に資する多様なニーズに応じた情報提供サービス等を行っている。

また,平成20年6月に開設した女性アーカイブセンターでは,男女共同参画に関する理解の促進を図り,学習・研究支援を行うため,女性教育の振興や男女共同参画社会の形成に向けて顕著な業績を残した女性や女性教育・男女共同参画の行政施策に関する史・資料を収集し,展示や閲覧,所蔵資料データベースである女性デジタルアーカイブシステム18等を通じて提供している。

18独立行政法人国立女性教育会館 女性デジタルアーカイブシステム http://w-archive.nwec.jp/

そのほか,平成24年度も「大学職員のための男女共同参画推進研修」及び埼玉大学・埼玉県私立短期大学協会との連携授業等を試行的に実施し,男女共同参画の視点に基づくキャリア教育プログラムの共同開発等に取り組んでいる。

独立行政法人国立女性教育会館女性教育情報センターでは,男女共同参画社会形成を目指した情報の総合窓口「女性情報ポータル“Winet(ウィネット)”」において,事業企画や施策の実施の参考となる人材の情報提供を目的とした「男女共同参画人材情報データベース」を公開し,その充実に努めている。また,女性が様々な新しい分野へチャレンジし,キャリアを形成していくために有用な事例(ロールモデル)や学習支援情報を提供している。

3 進路・就職指導の充実

中学校及び高等学校においては,性別に捉われることなく,生徒が自らの生き方を考え,自分の意志と責任で進路を選択・決定する能力・態度を身に付けることができるよう,進路指導の充実に努めている。

特に,平成25年3月卒の高校新卒者の就職状況(平成25年3月末現在)については,就職内定率が前年同期を上回ったものの,女子の就職内定率が男子に比べて低いなど,全体的に厳しい状況である。こうした状況を踏まえ,進路指導主事等と連携して,組織的・継続的に就職を希望する生徒に対する就職相談・支援を行い,求人企業の開拓等を行う「高等学校就職支援教員(ジョブ・サポート・ティーチャー)」を配置するなど,きめ細やかな就職指導を展開している。

一方,高校生を始めとする若者の就職行動をめぐっては,学校を卒業しても就職も進学もしない者の増加やフリーター志向の高まり,就職しても早期に離転職する者の増加等,若者の勤労観,職業観の希薄化を指摘する声も少なくない。このため,文部科学省では,子どもたちが,社会の一員としての役割を果たすとともに,それぞれの個性,持ち味を最大限発揮しながら,自立して生きていくことができるよう,キャリア教育を推進している(本節1(1)参照)。

そのほか,大学生に対する就職支援として,全国就職指導ガイダンスや各種会議において,企業に対して,学生の就職機会の拡充や女子学生の男子学生との機会均等の確保に努めるよう要請するとともに,各大学等に対して,全ての学生にきめ細かな就職指導や就職相談体制の充実を行うよう要請している。

厚生労働省では,女子学生等が的確な職業選択を行うことができるような啓発資料を作成し,大学や高等学校を通じて配布することにより,意識啓発を図っている。また,学生に対して,就職先を選択する際には,「ポジティブ・アクション応援サイト」等を参考にしながら,企業の女性の活躍状況やポジティブ・アクションの取組も考慮するよう,文部科学省と連携して大学や高等専門学校を通じて啓発を図っている。

総合科学技術会議では,人材の活用に関する改革の方向として,女子生徒・学生が自然科学系の分野に進む意欲をかき立てるように進路指導の充実を図るとともに,身近なロールモデルを整備すること,大学等において進路選択等の悩みに関する相談体制を整備することを奨励している。