第3節 女性のライフステージと就業

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第3節 女性のライフステージと就業

1 女性のライフステージと就業に関する男女の意識と行動

(1) 女性のライフステージ

(年齢階級別の配偶の状況)

生産年齢の女性には,結婚,出産・育児,配偶者との死別・離別,家族の介護と,多くのライフイベントを迎える可能性がある。結婚しない,あるいは結婚しても子どもを持たないというケースも考えられる。

総務省「労働力調査(詳細集計)」(平成24年)を基に,平成24年における女性の年齢階級別の配偶状況を見ると,55~59歳に向けて有配偶の割合が高くなっている(第1-特-18図)。

第1-特-18図 女性の年齢階級別配偶状況(平成24年) 別ウインドウで開きます
第1-特-18図 女性の年齢階級別配偶状況(平成24年)

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(有配偶の女性と子ども)

国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」(平成22年)によると,初婚どうし夫婦の20歳代の妻の約7割が子どもを少なくとも1人持っている。子どものいない妻の割合は年齢が上がるにつれて減少するものの,初婚どうし夫婦の40歳代の妻の1割弱には子どもがいない(第1-特-19a図)。

また,有配偶の女性の出産年齢を見ると,27~28歳が第1子出産のピークとなっており,第2子,第3子と出産年齢のピークが遅くなるとともに,出産する女性の数も減少する(第1-特-19b図)。

第1-特-19図 有配偶の女性と子ども(平成22年) 別ウインドウで開きます
第1-特-19図 有配偶の女性と子ども(平成22年)

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(生涯未婚率の推移)

生涯未婚率11の推移を見ると,平成22年における女性の生涯未婚率は約1割となっている。男女共に近年急速に上昇しており,男性の生涯未婚率は2割を超えている(第1-特-20a図)。

11生涯未婚率は,50歳時の未婚率であり,45~49歳と50~54歳の未婚率の単純平均により算出する。


生涯未婚率を教育別に見ると,男性については,到達した教育段階が高いほど未婚率が低い。女性については,以前は到達した教育段階が高いほど未婚率が高かったが,平成22年には,小学校・中学校卒の女性の生涯未婚率が大きく上昇している(第1-特-20b図)。

第1-特-20図 生涯未婚率の推移(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-特-20図 生涯未婚率の推移(男女別)

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(介護・看護)

厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)によると,要介護者と同居する主な介護者及び介護時間が「ほとんど終日」に及ぶ同居介護者において,それぞれ約7割を女性が占めている(第1部第4章 第1- 4- 8図第1- 4- 9図参照)。

要介護者1210万人に対する同居の主な介護・看護者数を年齢階級別に見ると,男女とも50歳代で急増している(第1-特-21図)。

12要支援者及び要介護度不詳を含む。厚生労働省「介護保険事業状況報告」(平成24年12月)によれば,平成24年12月末における要介護・要支援者数は554万人である(暫定値)。


第1-特-21図 要介護者10万人に対する同居の介護・看護者数:年齢階級別(男女別,平成22年) 別ウインドウで開きます
第1-特-21図 要介護者10万人に対する同居の介護・看護者数:年齢階級別(男女別,平成22年)

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(2) 有配偶の女性による就業の選択

(配偶者間の収入と就業の関係)

夫の就業率は,妻の年収の水準と関係なく90%以上となっている(第1-特-22a図)。

一方,平成14年に比べて,24年は全体的に妻の就業率が高くなっているものの,夫の年収が多くなるほど妻の就業率が低下するという関係13は,この10年で変化しておらず,妻が就業するかしないかは夫の所得水準の影響を受けていることがうかがわれる。

13一般に,「ダグラス・有沢の法則」と呼ばれる。


(夫婦の受けた教育の組合せ)

夫婦が受けた教育の組み合わせを見ると,中学・高校卒の女性の夫の66.7%が同じく中学・高校卒である一方,大学・大学院卒の女性の夫の79.7%が同じく大学・大学院卒となっており,到達した教育段階の近い男女が結婚する傾向がうかがわれる(第1-特-22b図)。

第1-特-22図 夫婦の就業と教育の組合せ 別ウインドウで開きます
第1-特-22図 夫婦の就業と教育の組合せ

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(男女の平均年収)

男性の年齢階級別平均年収を教育別に見ると,20~24歳においては教育別にそれほど大きな差はないが,到達した教育段階が高いほど年齢に伴う年収の伸びが大きくなっており,45~54歳の年齢階級では,高校卒の男性と大学・大学院卒の男性の年収の差は300万円弱に達する(第1-特-23b図)。

女性の平均年収を教育別に見ると,高校卒の女性の年収は,正規雇用者は30歳代以降で300万円を超えており,非正規雇用者は年齢階級にかかわらずおおむね200万円強である(第1-特-23a図)。男性の教育別の年収の違いを考えると,平均値で見た場合,高校卒同士の共働き夫婦の年収の合計は,大学・大学院卒の男性の平均年収とほぼ同水準となる。

第1-特-23図 教育(学歴)別年齢階級別平均年収(男女別,平成24年) 別ウインドウで開きます
第1-特-23図 教育(学歴)別年齢階級別平均年収(男女別,平成24年)

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コラム5 男性への稼ぎ手としての役割期待

(3) 性別役割分担意識

(性別役割分担意識の変化)

有配偶の女性が職業を持つかどうかを決めるに当たって,経済的な理由の他に,性別役割分担意識が影響を与える可能性が考えられる。

内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成24年10月)によると,「夫は外で働き,妻は家を守るべきである」という考え方(以下,性別役割分担意識)について,賛成の割合(「賛成」+「どちらかといえば賛成」)が反対の割合(「反対」+「どちらかといえば反対」)を上回った(第1-特-24図)。賛成の割合が男女共に前回調査より増えたのは,昭和54年の調査開始以来,今回が初めてである14

14上記以外の世論調査でも性別役割分担意識についても質問しているが,選択肢が比較可能ではないため省略した。

第1-特-24図 「夫は外で働き,妻は家を守るべきである」という考え方に関する意識の変化 別ウインドウで開きます
第1-特-24図 「夫は外で働き,妻は家を守るべきである」という考え方に関する意識の変化

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このような「賛成」の割合の上昇は,例えば,同世論調査よりも対象年齢層の低い国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(夫婦調査)」では,平成17年調査以降において既に観察されている15。北欧を除く先進諸国でも,1990年代には同様の傾向が見られたことが知られている。

15内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」の調査対象は,全国20歳以上の日本国籍を有する者であり,国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(夫婦調査)」は,妻の年齢が50歳未満の夫婦である。


平成4年調査と24年調査を比較すると,同じ年齢階級では,男女とも,若い世代ほどおおむね性別役割分担に賛成の割合が低いものの,男性の20~29歳では賛成の割合が上昇している。また,同一の世代における回答の傾向の変化を見ると,いずれの世代についても, 4年調査と比べて24年調査の方が賛成の割合が低くなっている(第1-特-25図)。

第1-特-25図 性別役割分担意識に関する世代による特徴:賛成の割合 別ウインドウで開きます
第1-特-25図 性別役割分担意識に関する世代による特徴:賛成の割合

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平成14年調査では,50歳代男女を除く各年齢階級において,また,昭和28~37年生まれの男性を除く各世代において,前後の調査と比べて賛成の割合が少なくなっており,調査時点での経済的・社会的影響を受けていると考えられる。

なお,性別役割分担に反対であると考える傾向は男性よりも女性に強く,職種では専門・技術職に強く見受けられる16

16内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成24年10月)を基に,男女共同参画局が独自に行ったプロビット分析に基づく。女性は男性よりも反対の確率が14.2%高い。また,無職を基準とした場合,専門・技術職は14.3%高い(他の職種と無職の間には有意な違いは見られない)。専門・技術職の詳細については脚注5を参照。


(性別役割分担意識と平等感や女性の職業観との関連性)

女性は,家庭生活及び職場において男性が優位であると認識している人ほど,性別役割分担意識に反対であると考えている傾向が見られる。一方,男性は,男女の地位の平等感と性別役割分担意識との間にはほとんど関連が見られない17。また,女性が職業を持つことに関する考え方と性別役割分担意識の関連性を見ると,「子どもができても,ずっと職業を続ける方がよい」と考えている人は,性別役割分担意識に反対する傾向が強いことがうかがわれる。

17内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成24年10月)を基に,男女共同参画局が独自に行った因子分析に基づく。


(4) 女性のライフコースの理想と現実

以上に見たような経済的要因や性別役割分担意識等を背景に,実際にどのような女性のライフコース18が志向され,選択されるかを見ると,女性が理想とする自らのライフコースは,平成9年以来大きな変動はない(第1-特-26図)。一方,女性が予定している自らのライフコースでは,専業主婦コースの割合が9年の17.7%から22年の9.1%に半減している。再就職コースも減少しており,非婚就業コースと両立コースが増えている。

18国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(独身者調査)」(平成22年)では,ライフコースを以下のとおり分類している。
・専業主婦コース:結婚し子どもを持ち,結婚あるいは出産の機会に退職し,その後は仕事を持たない
・再就職コース:結婚し子どもを持つが,結婚あるいは出産の機会に一旦退職し,子育て後に再び仕事を持つ
・両立コース:結婚し子どもを持つが,仕事も一生続ける
・DINKSコース:結婚するが子どもは持たず,仕事を一生続ける
・非婚就業コース:結婚せず,仕事を一生続ける


男性が女性に期待するライフコースでも,専業主婦の割合が平成9年の20.7%から22年の10.9%に半減している。また,再就職コースは1割減となっており,両立コースが大きく上昇している。

第1-特-26図 女性のライフコースに関する考え方の変化(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-特-26図 女性のライフコースに関する考え方の変化(男女別)

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2 女性のライフイベントと就業

(1) ライフイベントによる就業形態の変化

(結婚前後の就業形態の変化)

厚生労働省「第10回21世紀成年者縦断調査」(平成23年)によると,結婚前に仕事ありの女性(農林漁業を除く)のうち,正規雇用は64.2%であるが,結婚後には43.6%に低下する。また,仕事ありの女性の27.7%が結婚後に離職している(第1-特-27図)。

第1-特-27図 ライフイベントによる女性の就業形態の変化(平成23年) 別ウインドウで開きます
第1-特-27図 ライフイベントによる女性の就業形態の変化(平成23年)

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(出産前後の就業形態の変化)

国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」(平成22年)によると,出産前に就業していた女性の約6割が出産後に離職している(第1部第3章 第1- 3- 3図参照)。結婚前から出産後までの就業状況の変化については,厚生労働省「第10回21世紀成年者縦断調査」(平成23年)によると,結婚前に仕事ありの女性(農林漁業を除く)の36.0%が,第1子出産を機に離職している。第1子出産後に就業を継続している(転職を含む)割合は32.8%であるが,第2子,第3子の出産で,その割合は更に低下する。

(介護・看護による就業形態の変化)

総務省「労働力調査」(平成24年)によると,介護・看護を理由に前職を離職した人は,完全失業者263万人のうち,男性が2万人,女性が3万人であり,非労働力人口3,232万人のうち,男性が13万人,女性が88万人である19

19完全失業者に占める介護・看護を理由に前職を離職した人の割合の推移は,第1部第4章 第1- 4-10図参照


介護・看護を理由に離職した女性の大部分は非労働力人口に見られることから,早期の再就職を計画していないことがうかがわれる。


(2) 雇用形態の選択と希望

(雇用形態の選択)

厚生労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査(個人調査)」(平成22年)によると,M字カーブの谷に当たる30~44歳の年齢階級の女性の非正規雇用者の4割が,非正規雇用を選択した理由として「家庭の事情(家事・育児・介護等)や他の活動(趣味・学習等)と両立しやすい」ことを挙げている。

20歳代後半を除いて,「正社員として働ける会社がなかった」ことは理由の上位に挙がっておらず,非正規雇用を柔軟な働き方であると考えて選択している割合が高いと考えられる(第1-特-28図)。

第1-特-28図 非正規雇用を選択した理由:女性(平成22年,複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-28図 非正規雇用を選択した理由:女性(平成22年,複数回答)

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(就業に対する希望)

M字カーブの左側の山から下り坂に当たる25~34歳の年齢階級の非正規雇用の女性で,会社勤務継続を希望している人のうち,35~40%の者が正社員として働くことを希望している(第1-特-29図)。

また,M字カーブの底から右側の山に向かう40~49歳の年齢階級では, 2割程度の者が正社員として働くことを希望している(第1-特-29図)。同年齢階級の正社員になりたい理由については,他の年齢階級と同様「より多くの収入を得たい」及び「正社員の方が雇用が安定している」が高い割合となっていることに加え,「家事・育児・介護等の制約がなくなる(なくなった)」が他の年齢階級に比べて高くなっている。

第1-特-29図 非正規雇用者の女性の今後の就業に対する希望(平成22年) 別ウインドウで開きます
第1-特-29図 非正規雇用者の女性の今後の就業に対する希望(平成22年)

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(3) 市場化される家事活動等の規模

女性の活躍とそれに伴う仕事と家庭の両立が今後一層進んだ場合,これまで家庭でなされてきた活動が市場化されていくことになる。

総務省「社会生活基本調査」(平成23年)における家事(炊事,掃除,洗濯,縫い物,家庭雑事),介護・看護,育児,買い物,社会的活動に使った時間に関するデータを基に, 1年当たりの日本全体のこれらの活動の評価を行うと,推計方法によって幅が大きいものの,機会費用法では,平成23年時点で138.5兆円程度(名目GDPの29.4%)と推定される(第1-特-30図)20。男女別に見ると,いずれの推計方法でも女性が家事活動等全体の8割以上を占めている。

20推計には,機会費用法,代替費用法スペシャリストアプローチ,代替費用法ジェネラリストアプローチの3つの手法が用いられている。それぞれの手法の概要は以下のとおりである。
・機会費用法:家計が無償労働を行うことにより,市場に労働を提供することを見合わせたことによって失う賃金(逸失利益)で評価する方法。
・代替費用法スペシャリストアプローチ:家計が行う無償労働を,市場で類似サービスの生産に従事している専門職種の賃金で評価する方法。
・代替費用法ジェネラリストアプローチ:家計が行う無償労働を家事使用人の賃金で評価する方法。


第1-特-30図 家事活動等の評価:機会費用法による推計(平成23年) 別ウインドウで開きます
第1-特-30図 家事活動等の評価:機会費用法による推計(平成23年)

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3 女性のライフステージとキャリア形成

(1) 結婚・出産・育児と昇進

(雇用者数割合の低下と昇進の時期の重なり)

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成24年)によると,役職者(従業員100人以上の企業における雇用期間の定めのない雇用者より集計)が増えるのは,男女ともおおむね30歳代前半から40歳代前半である。

従業員100人以上の企業における雇用期間の定めのない雇用者数の対人口割合は,男性では台形となり,女性では20歳代後半を頂点とする山形となる。女性については,雇用者数の割合の低下が始まる年齢階級(30~34歳)が昇進の増え始める時期に重なっていることが分かる。役職者人数は男性では40~44歳で最大となるが,女性では45~49歳の年齢階級になっている。また,同年齢階級の男性と比べて女性の部長級人数は極めて少ない(第1-特-31図)。

第1-特-31図 年齢階級別雇用者数の対人口割合と役職者人数(男女別,平成24年) 別ウインドウで開きます
第1-特-31図 年齢階級別雇用者数の対人口割合と役職者人数(男女別,平成24年)

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(管理職への女性の登用に関する企業の意識)

厚生労働省「雇用均等基本調査(企業調査)」(平成23年)によると,常用労働者10人以上の企業のうち,女性管理職が少ない(1割未満)あるいは全くいない管理職区分が1つでもある企業は78.7%であり,そのうち48.9%は,女性管理職が少ない/全くいない理由として,「現時点では,必要な知識や経験,判断力等を有する女性がいない」ことを挙げている。このほか,「現在,管理職に就くための在職年数等を満たしている者はいない」(16.3%),「勤続年数が短く,管理職になるまでに退職する」(15.0%)等,勤務年数の短さに関連する要因が複数挙げられている(第1-特-32図)。

第1-特-32図 女性の管理職が少ない(1割未満)/全くいない理由(平成23年,複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-32図 女性の管理職が少ない( 1割未満)/全くいない理由(平成23年,複数回答)

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この調査では,「女性が希望しない」という理由も2番目に多く挙げられており(17.9%),女性従業員を対象とした別の調査からもその傾向がうかがわれる(コラム6参照)。

(コース別雇用管理制度)

厚生労働省「雇用均等基本調査」(平成22年)によると,従業員5,000人以上の大企業の約半数及び1,000~4,999人の企業の45.9%が,コース別雇用管理制度を導入している21。このような企業の場合,管理職に任用される年齢が一番若いのは総合職であると考えられる。

21厚生労働省「コース別雇用管理制度の実施・指導状況」(平成22年度)では,労働者の職種,資格等に基づき複数のコースを設定し,コースごとに異なる配置・昇進,教育訓練等の雇用管理を行うシステムであると定義されている。コース形態として,総合職,一般職,準総合職,中間職,専門職,現業職がある。総合職は基幹的業務又は企画立案,対外折衝等総合的な判断を要する業務に従事し,原則転居を伴う転勤がある形態である。また,一般職は,主に定型的業務に従事し,原則転居を伴う転勤がない。


厚生労働省「コース別雇用管理制度の実施・指導状況」(平成22年度)によると,総合職採用予定者(平成23年)に占める女性割合は11.6%,総合職在職者に占める女性割合は5.6%である。10年前に採用された総合職の離職割合を見ると,女性は男性の2倍以上に当たる65.1%となっており,10年前に採用された総合職の女性が既に全員離職している企業は48.9%に上っている(第1-特-33図)22

22一般職で入社して,途中で総合職に転換するというキャリアパスも用意されている。厚生労働省「コース別雇用管理制度の実施・指導状況」(平成22年度)によれば,コース別雇用管理制度を導入している企業の86%がコース転換制度を設けており,そのうちのほぼ全てに当たる85.6%の企業で過去3年間に少なくとも1回以上制度が利用されている。調査企業全体の51.3%が一般職から総合職への転換の実績がある一方で,総合職から一般職への転換についても42.6%の企業に実績がある。


第1-特-33図 10年前に総合職で採用された社員の現在の職位(男女別,平成22年) 別ウインドウで開きます
第1-特-33図 10年前に総合職で採用された社員の現在の職位(男女別,平成22年)

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加えて,継続就業している社員の職位の内訳を見ても,女性は一般職員にとどまっている雇用者が多く(採用時人数の22.1%,継続就業者数の63.3%),男性は係長相当職以上に昇進している人が多い(係長相当職と課長相当職の合計で,採用時人数の39.2%,継続就業者数の55.4%)。

以上により,一般に,コース別雇用管理制度を導入している企業では,入社時点での女性割合が低いことに加え,入社後10年間の離職率が高かったことが,知識や経験を身につけた女性管理職候補が少ないことの一因となっている可能性が推察される。


(2) 介護・看護と役員就任

総務省「労働力調査(基本集計)」(平成24年)によると,家族経営による小規模なものを含む全ての事業規模の企業を対象とした場合,平成24年における役員に占める女性の割合は23.1%である。年齢階級別に見ると,50歳代後半以降に男女とも役員の人数が増加しているが(第1-特-34図),女性において介護・看護者の人数が特に多くなる年齢階級とほぼ重なっている(第1-特-21図(再掲))。

第1-特-34図 年齢階級別役員人数(男女別,平成24年) 別ウインドウで開きます
第1-特-34図 年齢階級別役員人数(男女別,平成24年)

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(3) 学び直しの状況

継続就業及び再就職のいずれの場合においても,学び直しはキャリアの可能性を拡大する機会であると考えられる。法務,会計,経営等の実務的な知識やスキルを習得する専門職学位は,修士号に比べて仕事により直結した学位であると言える。平成15年以降における専門職学位課程への社会人入学者に占める女性の割合は,修士課程への社会人入学者に占める女性の割合と比べると低い(第1-特-35図)。

第1-特-35図 社会人大学院入学者数の推移(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-特-35図 社会人大学院入学者数の推移(男女別)

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入学者全体を年齢階級別に見ると,専門職学位課程については,大学(学部)卒業直後の入学では,女性の割合は約3割となっているが,その後減少し,35歳以降で微増に転じる。

修士課程への入学者に占める女性の割合は,大学(学部)卒業直後の時期が一番低く,その後次第に上昇し,40歳~54歳では50%を超える(第1-特-36図)24

24ただし,これらのデータには海外の大学院への留学は含まれていないため,女性の高等教育機関での学び直しの実態を網羅しているわけではない。


第1-特-36図 大学院入学者(博士課程を除く)における女性割合(平成24年度) 別ウインドウで開きます
第1-特-36図 大学院入学者(博士課程を除く)における女性割合(平成24年度)

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