男女共同参画白書(概要版) 平成25年版

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第5節 女性の活躍に向けた今後の課題等

1 諸外国における最近の関連施策の動向
(企業の情報開示等を通じた女性の活躍促進)

女性に関する情報について行政当局への報告(韓国・オーストラリア)や,コーポレート・ガバナンス(企業統治)等の観点による資本市場への情報開示(英国等)を通じて,企業における女性の活躍を促進する仕組みが見られる。

(役員会における多様性(ダイバーシティ)の確保)

近年,同質的な人的構成による役員会よりも,様々なバックグラウンドや属性をもつ者によって構成される役員会の方が多様な価値を受容しやすく,市場変化への適応力やリスク耐性の点で一般に優れているとの考え方が広まりつつある。女性役員の登用は多様性(ダイバーシティ)の確保の一つと位置付けられ,欧州では,法律によって企業の役員会に一定の割合以上の女性の登用を義務付けるクオータ(quota:割当て)制の導入が進んでいる。

(企業へのインセンティブ付与による支援)

女性の活躍促進に積極的に取り組む企業の活動を促進するため,政府が補助金の給付や税制上の優遇等を行ったり(英国・ドイツ等),公共調達において女性が経営する小規模な企業を優先的に調達先とするといった形で支援を行っている国(米国等)もある。

2 我が国における最近の取組・議論
(第3次男女共同参画基本計画等)

第3次男女共同参画基本計画では,基本的な方針の中で,少子高齢化による労働力人口の減少への対応,グローバル化や消費者ニーズが多様化する中での新たな価値の創造といった質・量両面の観点から,女性の能力発揮への期待と必要性が改めて強調されている。

(「女性の活躍促進による経済活性化」行動計画の策定,その後の取組)

平成24年5月からは,経済活性化に資する取組に焦点を当てて具体化・加速化を図るため,関係閣僚で構成する女性の活躍による経済活性化を推進する関係閣僚会議が開催され, 6月には「女性の活躍促進による経済活性化」行動計画~働く「なでしこ」大作戦~が取りまとめられた。同行動計画は7月に閣議決定された「日本再生戦略」に反映され,直ちに取組や検討が始められた。

(女性の活躍促進を加速するための新たな動き)

第二次安倍内閣は,女性の力の活用や社会参画の促進が日本の強い経済を取り戻すために不可欠との認識に基づき,全ての女性がその生き方に自信と誇りを持ち,輝けるような国づくりを目指すとの方針の下,地方での開催を含む若者・女性活躍推進フォーラム等を通じて幅広い意見を集めながら,成長戦略に盛り込むべき具体策の取りまとめを進めた。

内閣総理大臣は,平成25年4月19日,男女共に仕事と子育てを容易に両立できる社会の実現が重要との考えを示した上で,女性の活躍の推進に関して経済界に要請を行い,これに続いて行われた成長戦略スピーチでは,女性の活躍を成長戦略の中核に位置付け,待機児童解消加速化プラン,希望に応じて子育てに専念した後の職場復帰支援,子育て後の再就職・起業支援といった取組を打ち出した。

内閣総理大臣のリーダーシップによるこうした政策方針の提示を受けて,女性の活躍を推進するための関連施策が可能なものから順次展開されており,従来の取組の強化・加速化,新たな取組の具体化も図られている。

若者・女性活躍推進フォーラムでは,産業競争力会議における成長戦略の検討に資するため,平成25年5月19日の第8回会合でそれまでの議論を集約し,女性の活躍促進に向けた施策については,(ア)女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与 等,(イ)女性のライフステージに対応した活躍支援,(ウ)男女が共に仕事と子育て・生活を両立できる環境の整備という3つの観点から,直面する課題の抜本的解決に向けた具体的方策を盛り込んだ提言を取りまとめた。

3 今後の課題と取組の方向性
(1)女性の活躍促進をめぐる課題
(女性が就業を継続することの難しさ)

雇用者の場合,職位,賃金等が就業を継続することによって形成される自らのキャリアやスキル等に密接に結び付いていることが多い。

雇用者の労働時間が長く,他方で,育児,介護,家事といった役割が女性に偏っている現状においては,雇用者である女性が就業を継続することは容易ではない。労働市場における流動性が低い現状においては,一旦退職すると,育児等が一段落して再び仕事に就く際に,勤務形態は柔軟であっても正規雇用者に比べて賃金水準が低く,雇用が不安定な非正規雇用者となることが多い。

保育への需要は増え続け平成29年度末にピークを迎えるものと見込まれており,特に都市部ではその受け皿が量的にも質的にも十分とは言えず,待機児童問題が深刻になっている。

今後,高齢化が一層進んでいく中,そうした役割分担が変わらなければ,女性の就業と介護の問題の関わりも一層大きなものとなってくる。

(十分に進んでいない意思決定過程への女性の参画)

学校卒業後の最初の就職に当たって,男性に比べて女性は正規雇用者となる割合が低く,正規雇用者であることが多い管理職の候補となり得る人材において,女性は男性よりも絶対数が少ない。出産,子育て等をきっかけとして更に仕事を離れてしまえば,管理職への登用の前提となるキャリアやスキルの形成等の点で,就業を継続することが一般的な男性との差が大きくなる。

長時間労働を前提とした評価の考え方の下では,子育て中の女性のように限られた勤務時間の中で生産性高く働いて帰宅する従業員が,家庭での役割を配偶者に委ねて長時間職場にとどまっている従業員に比べて評価されにくいと考えられる。

仕事を一旦離れることでキャリアやスキルの形成が中断する場合,育児や介護等の役割を担いながら仕事を続けている場合,いずれの場合も,女性が管理職,役員といった立場で意思決定過程に参画していくための環境は十分に整っていない。

(女性の進路選択,起業等における課題)

教育は,生涯を通じた知識・スキルの習得の基盤ともなっており,男女共にライフステージを通じて活躍を続ける上でポイントの一つと言える。

女性技術者を積極的に採用しようとする企業の中には,大学・大学院等において業務に対応する理工系の分野にもともと女性が少ないため,人材の確保に苦労している企業が少なくない。

女性は,非正規雇用の割合が20歳代の新卒時点においても男性に比べて高い。非正規雇用はキャリア形成やスキルアップの点で正規雇用者との間に差ができてしまうことが多く,その後の生涯を通じて就業や,職位,賃金,資産形成等に幅広く影響を与え続けることが懸念される。

働き方の選択肢には「起業」もあり,女性の新しい視点によるビジネスの成長や社会の変革を促し,東日本大震災の被災地での復興の原動力となることが期待されている。他方で,一般に就業経験の浅い女性が起業しようとする場合,開業資金の調達,経営ノウハウ等の点で男性以上に困難な場合が多い。

(企業による自主的な取組に際しての課題)

企業を取り巻く内外の厳しい経営環境も見据えれば,中長期的には,女性を含む多様な人材の力を引き出すことのできる企業の方がそうでない企業よりも優位に立つと考えられるが,女性活躍を推進するための制度や職場環境の整備のために,一時的には様々なコストが必要となることも多い。

女性の活躍推進に取り組むことが企業の活動や職場にプラスの効果をもたらすことをステークホルダーに対して示していく必要がある。

(2) 女性の活躍促進のための今後の取組の方向性

女性が直面する課題を克服し,女性の活躍を我が国経済の活性化につなげるためには,女性のライフステージごとの課題に対応した施策を展開するとともに,企業における積極的な取組を促していくことが重要である。

女性の働き方は男性に比べてライフステージに応じて多様なことから,自分らしい生き方や進路の選択ができるよう,男女共同参画の視点に立ったキャリア教育や,理工系分野を目指す女子中高校生に対する支援を推進するとともに,社会人になってからのキャリア形成を支援していく必要がある。

結婚・出産・育児の各段階では,女性がキャリア形成やスキルアップと子育てとを両立できるよう支援していくことが重要である。その際,仕事と家庭生活の両立を図る上で男女に共通かつ根底の問題とも言える長時間労働の抑制や働き方の見直し等を通じてワーク・ライフ・バランスを推進していくことも不可欠である。男女が共に総労働時間を抑制して,職場外での多様な生活体験や自己啓発も通じながら時間当たり生産性を高めることが求められている中,子育て等を担いながら限られた時間の中で生産性を高めようと努力している女性の働き方が評価されるようになることも望まれる。個人が,それぞれの状況に合わせて,社会での活躍の場を見い出せるよう,正社員と非正規社員といった両極端な働き方のモデルを見直し,職務に着目した「多様な正社員」モデルを普及・促進していくとともに,非正規雇用であっても自らのキャリアや職業能力を軸に,転職をした場合も生活の安定を図ることができるような労働市場の整備を図っていくことが重要である。

出産・子育て等を契機に一旦離職した女性に対しては,効果的な学び直しなど離職によるブランクや企業のニーズと本人の知識・スキルとの差を埋め合わせるための支援が重要である。起業や農業経営にチャレンジしようとする女性に対する支援も必要である。

女性の活躍促進や,仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業を政策的に後押ししていくとともに,企業における役員,管理職等への女性の登用に向けた働きかけ,登用状況の開示促進等にも取り組んでいく必要がある。

上記の取組に当たっては,中小企業が置かれている経営環境に応じた取組や,母子家庭の母親のように特別の配慮が必要な人々への支援にも十分な留意が必要である。公務部門が自ら率先して女性の活躍促進に取り組み,民間における取組を先導していくことも重要である。

併せて,職場等における慣行や固定的性別役割分担意識を始めとする人々の意識,社会制度といった男女の働き方に影響を与えている要因にも幅広く目を向けて,女性が経済分野で能力を存分に発揮できる環境を整えていくことが必要である。

4 おわりに

成長の原動力として女性の活躍が進んでいけば,これまで女性と男性がそれぞれ担ってきた立場や役割も変わっていく。

そのような変化は,女性も男性も,その意欲に応じてあらゆる分野で活躍できる男女共同参画社会への過程であり,ひとりひとりの豊かな人生に通じる道のりでもある。

持続可能な経済成長を達成しつつ,職場で,家庭で,地域社会で,女性にも男性にも全ての人々にチャンスがあり,活躍できる社会の構築を目指して取り組んでいかなければならない。