平成24年版男女共同参画白書

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第6章 男女の仕事と生活の調和

第1節 仕事と生活の調和の実現

1 仕事と生活の調和に関する意識啓発の推進

平成19年12月に策定された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(以下「行動指針」という。)に基づき,仕事と生活の調和実現に向けた取組が行われてきたが,リーマン・ショック後の経済情勢等の変化や,労働基準法(昭和22年法律第49号),育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)等の改正等の施策の進展を受け,22年6月29日,経済界,労働界,地方公共団体の代表者,有識者,関係閣僚により構成される「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」において,政労使の合意の下,新たな「憲章」・「行動指針」が策定された。新たな「憲章」・「行動指針」では,「ディーセント・ワーク」や「新しい公共」等新しい概念が盛り込まれたほか,2020年に向けた数値目標が設定されている。

官民トップ会議の下に設置されている「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」は,平成23年度においても数次にわたって開催され,「憲章」・「行動指針」に基づく取組の点検・評価を行った。

平成23年12月には,企業と働く者,国民,国,地方公共団体等の取組を今後の展開を含めて紹介するとともに,今後重点的に取り組むべき事項を提示した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2011」を取りまとめ公表した。本レポートでは,第1子出産前後で継続して就業している女性の割合が約4割と長期的にあまり変化していない理由として,非正規職員の就業継続割合が低く,ほとんど増加していないことを示し,非正規雇用者についても多様で柔軟な働き方を可能とする制度の利用促進等を図ることを課題とした。また,家族の介護等を理由とした離・転職者が男女共に増加傾向にあることから,介護休業等の多様で柔軟な働き方を可能とする環境整備を新たな課題とした。

さらに,本レポートでは,東日本大震災発生以降,全国的に,人々の意識や生活に様々な変化が生じたり,節電対策に取り組む必要から,多くの企業が働き方の見直しに取り組んだことから,そのような企業等の取組事例を紹介した。

内閣府では,国や地方公共団体等が実施する女性の活用や仕事と生活の調和推進に関連する企業や団体等に対する主だった表彰の一覧を掲載している。また,平成21年度に実施した「地方公共団体におけるワーク・ライフ・バランス推進施策に関する調査」について,その後の取組の変化と,「憲章」・「行動指針」の改定を踏まえた新たな取組状況等を確認するため,都道府県と政令指定都市を対象に,23年度における取組について調査を行った。

さらに,気運の醸成に向けた取組として,「カエル!ジャパン」キャンペーンを推進しているほか,月に1回,その月のテーマに応じた仕事と生活の調和に関するコラムや施策・調査研究,イベント等のトピックスをまとめたメールマガジン「カエル!ジャパン通信」を配信している。

平成23年12月には個人の「ライフ」の特性が「ワーク」の特性に与える影響及び「ワーク」の特性が「ライフ」の特性に与える影響,その双方向について相互に与える影響(相互作用)等を明らかにすることを目的として調査した「『ワーク』と『ライフ』の相互作用に関する調査」の報告書を取りまとめ,公表した。

また,平成24年2月には,企業の人事労務を担当する管理職層を対象とする企業担当者交流会を開催した。これは,企業における仕事と生活の調和を推進する上での現場の隘路,課題,政策に関するニーズ等の情報を聴取し,実態に即した点検・評価を行うことを目的に実施することとしており,23年度は,企業のダイバーシティ担当者より,東日本大震災前後の働き方の見直しの状況や仕事と生活の調和推進に係る行政への要望等の意見を収集した。

厚生労働省では,「憲章」及び「行動指針」を踏まえつつ,あらゆる機会を捉え,職業生活と家庭生活の両立を図りやすくするための雇用環境の整備に関する周知啓発活動を積極的に行っている。

特に父親の子育てについては,平成22年6月30日の改正育児・介護休業法の施行と併せ,育児を積極的にする男性「イクメン」を広めるため,「イクメンプロジェクト」を開始した。本プロジェクトでは,男性が育児をより積極的に楽しみ,また,育児休業を取得しやすい社会の実現を目指し参加型の公式サイトの運営やシンポジウムの開催,ハンドブックの配布等を行っている。

イクメン本人だけでなく,周りの人や企業等広く社会に活動を広げていくために,公式サイトではイクメンを応援するイクメンサポーターを募集している。さらに,イクメンサポーター企業が従業員向けに行っている両立支援の取組を紹介するなど,企業の自発的な取組を促進している。

2 育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備

(1) 働き方の見直し

厚生労働省では,いわゆる「労働時間分布の長短二極化」の進展,長い労働時間等の業務に起因した脳・心臓疾患に係る労災認定件数の高水準での推移,労働者の意識や抱える事情の多様化等の課題に対応するために,労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)及び「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針(平成18年厚生労働省告示第197号))に基づき,年次有給休暇の取得促進及び所定外労働の削減を始めとした労使の自主的な取組を促進する施策を推進した。


(2) 父親の子育てへの参画や子育て期間中の働き方の見直し

文部科学省では,就学時健診等の多くの親が集まる機会を活用した家庭教育に関する学習機会の提供を支援している。

また,父親の家庭教育への参加を促進するため,父親の家庭教育を考える集いや,企業に出向いた学習講座の実施等を支援している。


(3) 企業における仕事と子育て・介護の両立支援の取組の促進,評価

次の世代を担う子どもたちが健やかに生まれ育つ環境をつくるために,次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号。以下「次世代法」という。)に基づき,国,地方公共団体,事業主,国民がそれぞれの立場で次世代育成支援を進めている。

地域や企業の更なる取組を促進するため,平成20年12月に次世代法が改正された。この改正法の施行により,23年4月1日から一般事業主行動計画(以下「行動計画」という。)の策定・届出等が義務となる企業が常時雇用する従業員数301人以上企業から101人以上企業へ拡大したことから,厚生労働省では,次世代育成支援対策推進センター,労使団体及び地方公共団体等と連携し,「行動計画」の策定・届出等の促進を図っている。

また,適切な「行動計画」を策定・実施し,その目標を達成するなど一定の要件を満たした企業は厚生労働大臣の認定を受け,認定マーク(愛称:くるみん)を使用することができるとされているところである。この認定制度及び認定マークの認知度を高めるため,認定企業の取組事例や認定を受けるメリット等を積極的に紹介するとともに,平成23年6月に創設された認定企業に対する税制上の措置4を周知し,認定の取得促進を図っている。


4 平成23年4月1日から26年3月31日までの期間内に開始する各事業年度において次世代法に基づく認定を受けた企業は,認定を受けた日を含む事業年度終了の日において有する建物等のうち,認定を受ける対象となった行動計画の計画期間開始の日から認定を受けた日を含む事業年度終了の日までの期間内に取得・新築・増改築をした建物等について,普通償却限度額の32%の割増償却ができる。

【参考:平成24年3月末現在】

・一般事業主行動計画届出状況

規模計 70,235社

301人以上企業 14,969社

(届出率98.9%)

101人以上300人以下企業 30,876社

(届出率96.9%)

100人以下企業 24,390社

・認定企業 1,219社

さらに,仕事と育児・介護とが両立できる様々な制度を持ち,多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行うファミリー・フレンドリー企業の普及を促進しているほか,インターネットで設問に答えると自社の「仕事と家庭の両立のしやすさ」を点検・評価することができる両立指標や両立支援を積極的に取り組んでいる企業の取組等を掲載したサイト「両立支援のひろば」(http://www.ryouritsu.jp/index.html)を運用し,仕事と家庭の両立に向けた企業の自主的な取組を促進している。

加えて,仕事と育児・介護等との両立支援のための取組を積極的に行っており,かつ,その成果が上がっている企業に対し,公募により「均等・両立推進企業表彰」を実施し,その取組を讃え,広く周知することにより,労働者が仕事と家庭を両立しやすい職場環境の整備を促進している。

また,国及び地方公共団体においても,職員を雇用する「事業主」の立場から,職員の仕事と子育ての両立支援等に関する「特定事業主行動計画」を策定することとされており,実情を踏まえつつ,より一層職員の職業生活と家庭生活の両立を図っている。


(4) 自営業者,農林水産業に携わる人々など多様な働き方における仕事と生活の調和の普及

農林水産省では,生産と育児や介護との両立を支援するため,家族経営協定の締結の促進を図った。

3 仕事と子育てや介護との両立のための制度等の普及,定着促進

育児・介護期は特に仕事と家庭の両立が困難であることから,仕事か家庭かという二者択一構造とならないよう,仕事と家庭の両立支援策を重点的に推進する必要がある。

平成23年度には,女性の育児休業取得率は87.8%と,育児休業制度の着実な定着が図られつつある。しかし,第1子出産後も継続就業をしている女性は38.0%にとどまっており,仕事と育児の両立が難しいため,やむを得ず辞めた女性も少なくない。

また,男性の約3割が育児休業を取りたいと考えているが,実際の取得率は平成23年には過去最高となるものの,2.63%にとどまっている。さらに,男性の子育てや家事に費やす時間も先進国中最低の水準にとどまっている。こうした男女とも仕事と生活の調和のとれない状況が女性の継続就業を困難にし,少子化の原因の一つとなっていると考えられる。

こうした現状も踏まえ,男女共に子育て等をしながら働き続けることができる環境を整備することを目的に,平成21年6月に育児・介護休業法の一部が改正され,22年6月30日に施行された。

この改正育児・介護休業法の周知・徹底を図るとともに,法律に規定されている育児・介護休業や所定労働時間の短縮等の措置等の両立支援制度を安心して利用できる職場環境の整備を支援している。

特に,都道府県労働局雇用均等室では,計画的に事業所を訪問し,就業規則等で必要な制度が設けられているかを確認するなど,育児・介護休業法に規定されている制度の普及・定着に向けた行政指導を実施している。

育児休業等の申出や取得を理由とした不利益取扱いに対しては,相談者の意向に配慮しつつ,相談事案が生じている事業所に対する報告徴収を積極的に実施し,迅速かつ厳正に対応している。

また,平成19年4月に成立した雇用保険法等の一部を改正する法律(平成19年法律第30号)において,19年10月から22年3月31日までの暫定措置として,雇用の継続を援助,促進するための育児休業給付の給付率を休業前賃金の40%(休業期間中30%・職場復帰6か月後に10%)から50%(休業期間中30%・職場復帰6か月後に20%)に引き上げ,21年3月に成立した雇用保険法等の一部を改正する法律(平成21年法律第5号)において,22年3月末まで給付率を引き上げている暫定措置を当分の間延長するとともに,休業中と復帰後に分けて支給している給付を統合し,全額を休業期間中に支給することとした。

政府では,平成22年5月に「新たな情報通信技術戦略」を策定し,その中で様々な働き方を希望する者の就業機会の創出及び地域の活性化等に資する「テレワークの推進」を位置付け,2015年までに在宅型テレワーカーを700万人とする目標の実現に向けて,関係各省が連携して,テレワークの一層の普及拡大に向けた環境整備,普及啓発等を推進している。

また,テレワークの着実・迅速な実施に向けて,総務省,厚生労働省,経済産業省,国土交通省のテレワーク関係4省は,平成17年度に産学官から成る「テレワーク推進フォーラム」を設立し,課題解決のための調査研究や普及活動を展開している。

国土交通省では,テレワークによる働き方の実態やテレワーク人口の定量的な把握,多様な働き方を実現するテレワークセンターについて,社会実験の実施等による立地促進方策等の検討,企業のテレワーク普及・推進を図るためのセミナーの開催等,テレワークの普及に向けた取組を行った。