平成23年版男女共同参画白書

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第10章 メディアにおける男女共同参画の推進

第1節 女性の人権を尊重した表現の推進のためのメディアの取組の支援等

1 メディアにおける男女共同参画の推進,人権尊重のための取組等

(1) 性・暴力表現を扱ったメディアの,青少年やこれに接することを望まない者からの隔離

内閣府では,「子ども・若者ビジョン」(平成21年7月23日子ども・若者育成支援推進本部決定)等に基づき,青少年を取り巻く有害環境への対応を図っている。また,有害環境の実態について調査・分析,情報の提供等を行うことにより,地域における有害環境の浄化活動に関する取組の推進等を図っている。

警察では,青少年保護育成条例により青少年への販売等が規制されている有害図書類について,関係機関・団体,地域住民等と協力して関係業界に対して自主的措置を講ずるよう働きかけるとともに,個別の業者に対する指導の徹底や悪質な業者に対する取締りの強化を図っている。

また,インターネット上の過激な暴力シーンや性的な描写を含むサイト等の少年に有害なコンテンツに少年が接することを防ぐため,携帯電話やパソコンにおけるフィルタリングの普及促進に努めており,特に,平成22年11月以降,関係府省等と連携し,児童が使用する携帯電話に係るフィルタリングの100%普及を目指して,関係事業者に対する要請活動,保護者に対する啓発活動等を強力に推進している。

文部科学省では,青少年を取り巻くインターネット上の有害情報をめぐる深刻な問題に対応して,メディア・リテラシー指導員の養成やフィルタリングの普及啓発,ネットパトロールの実施など,地域の実情に応じた有害情報対策の推進体制の整備を総合的に支援している。


(2) 児童を対象とする性・暴力表現の根絶

警察では,平成20年6月に出会い系サイト事業者に対する規制の強化等の改正がなされた,インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年法律第83号)を効果的に運用し,インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪からの児童の保護を図っている。

また,児童ポルノは児童の性的搾取・性的虐待の記録であり,児童の人権を著しく侵害するものであることから,平成21年6月に警察庁が策定した「児童ポルノの根絶に向けた重点プログラム」に基づき,16年6月に法定刑の引上げ等の改正がなされた児童買春・児童ポルノ法による児童ポルノ事犯の取締りを積極的に推進するとともに,心身に有害な影響を受けた児童の保護等に努めている。

さらに,平成22年7月に犯罪対策閣僚会議において「児童ポルノ排除総合対策」が決定されたことを受け,警察庁においても,ファイル共有ソフト利用事犯等の一斉取締りの調整や捜査員の技術向上を図るための研修の実施,国際関係機関との情報交換・連携の強化等により,児童ポルノ事犯の取締りの徹底を図っている。内閣官房,内閣府,警察庁,総務省,経済産業省においては,インターネット・サービス・プロバイダ等の関連事業者による実効性のあるブロッキングの自主的導入に向けた環境整備に努めている。

2 インターネット等新たなメディアにおけるルールの確立に向けた取組

(1) 現行法令の適用による取締りの強化

警察では,ネット上に流通するわいせつ図画等の違法情報・有害情報を,サイバーパトロール等を通じて早期に把握し,検挙等の措置を講じている。


(2) 青少年インターネット環境整備法に基づく取組

内閣府では,青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号。以下「青少年インターネット環境整備法」という。)及び「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」(以下「青少年インターネット環境整備基本計画」という。)に基づき,関係省庁,団体等と連携し,青少年のインターネット利用環境実態調査や諸外国における青少年のインターネット環境整備状況等調査等の施策を総合的かつ効果的に実施するとともに,有識者による青少年インターネット環境整備法の施行状況等の検討を推進している。


(3) インターネット等新たなメディアにおける情報の規制等及び利用環境整備の在り方等に関する検討

内閣官房では,IT安心会議(インターネット上における違法・有害情報等に関する関係省庁連絡会議)の決定等に基づき,関係省庁における違法・有害情報対策に係る取組を督励している。

また,インターネット上の違法・有害情報に起因する問題に対し,官民横断的な実務家間での迅速かつ正確な情報共有を実現することにより,各業界における自主的な取組を推進するため,政府,事業者,関係団体等,関係セクターを横断したワンストップのスキームとして,「違法・有害情報対策官民実務家ラウンドテーブル」の枠組みを活用し,関係省庁,関係団体間の情報共有を図るとともに,関係団体における取組についての国民への情報提供を推進している。

さらに,関係団体等の違法・有害情報対策に係る取組を総合的に紹介するための「インターネット上の違法・有害情報対策ポータルサイト」により,違法・有害情報への具体的対策や関係省庁及び関係団体の取組等について,分かりやすく利便性の高い情報提供を推進している。

総務省では,性や暴力に関するインターネット上の有害な情報から青少年を保護するための有効な手段の一つであるフィルタリングに関し,総務大臣から携帯電話事業者等に対し,フィルタリングの導入促進及び改善等に関する要請を行うなど,その導入促進及びサービスの多様化に取り組んでいる。また,プロバイダ等に対して自主的なルールの形成及びその遵守を促し,情報提供発信を行う者のモラルを確立するため,広報啓発活動を推進している。さらに,平成21年1月に策定された,インターネット上の違法・有害情報対策の総合的な政策パッケージである「安心ネットづくり」促進プログラムに基づき,同年2月に設立された「安心ネットづくり促進協議会」を中心とする民間団体等の自主的取組を支援している。また同年8月より,違法・有害情報相談センターを設置し,関係事業者等によるわいせつ情報等の違法・有害情報への対応を促進している。

経済産業省では,青少年のインターネットの利用環境の変化に対応するため,事業者や有識者等の参加するレイティング/フィルタリング連絡協議会の研究会を開催し,望ましいフィルタリング提供の在り方についての判断基準を策定するとともに,フィルタリングを保護者がより適切に利用できるよう,保護者に対して事業者が提供し得る支援策を検討した。また,セミナーの開催等を通じ,青少年のインターネット利用にかかるリスクとその対策を説明することで,関係者全体のインターネットリテラシーの向上と保護者等による実効的な自主的対策を促進し,インターネットの利用環境整備を実施している。

警察では,産業界等との連携の在り方について検討を行う総合セキュリティ対策会議を開催しているほか,都道府県単位でのプロバイダ連絡協議会等の設置を推進し,有識者,関係機関・団体,産業界等を通じ,官民が一体となってわいせつ図画等の違法情報・有害情報の排除を図っている。

また,平成18年6月に運用を開始したインターネット・ホットラインセンターでは,インターネット利用者から,インターネット上のわいせつ図画等の違法情報・有害情報に関する通報を受け付け,警察への通報や,プロバイダ等への削除依頼等を行っている。

3 メディア・リテラシーの向上

総務省では,放送分野におけるメディア・リテラシー(メディアからの情報を主体的に読み解き,自ら発信する能力)の向上に資する教材を「放送分野におけるメディアリテラシー」サイトを通じて広く公開することにより,メディア・リテラシーの普及を図っている。また,インターネット,携帯電話等の情報通信分野におけるメディア・リテラシーの育成に資する教材を開発し,普及を図っている。さらに,子どもを取り巻くインターネットのトラブルについて,保護者・教職員が知っておくべき事項等をまとめた「インターネットトラブル事例集」をウェブ上に公開し,普及を図るとともに,地域における啓発講座等において活用している。

文部科学省では,学校教育,社会教育を通じて,情報を主体的に収集・判断し,インターネットを始めとする様々なメディアが社会や生活に及ぼす影響を理解することで,情報化の進展に主体的に対応できる能力の育成を図っている。