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第3節 高齢期の所得保障
公的年金制度を持続可能なものとし,その信頼を確保するための財政上の措置として,基礎年金国庫負担割合2分の1の維持が必要不可欠となっている。この観点から,平成23年度政府予算では,財政投融資特別会計から一般会計への特例的な繰入金などの臨時の財源2.5兆円を確保し,基礎年金国庫負担割合2分の1を維持することを盛り込むとともに,第177回国会に所要の法案を提出した。その後,23年3月11日に発生した東日本大震災に対処するための23年度第1次補正予算の財源として,臨時財源2.5兆円がこれへ充てられることとなった。予算の提出に際し,国庫負担2分の1との差額2.5兆円については,税制抜本改革により確保される財源を活用して年金財政に繰り入れるよう,先に提出した法案の修正を行った。
また,現行制度における無年金・低年金問題への対応も極めて重要な課題となっている。将来の無年金・低年金の発生を防止し,国民の高齢期における所得の確保をより一層支援する観点から,国民年金保険料の納付可能期間を2年から10年に延長する等の措置を行うことを盛り込んだ「国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律案(年金確保支援法案)」を第174回国会に提出した。本法案は第176回国会において一部修正の上,衆議院で可決され,参議院で継続審議の取扱いとなっている。
年金制度改革については,平成22年6月には,内閣総理大臣を議長とする「新年金制度に関する検討会」において,新たな年金制度の基本原則を取りまとめた。同年10月には,総理を本部長とする「政府・与党社会保障改革検討本部」を設置し,同年12月に「社会保障改革の推進について」を閣議決定して社会保障改革についての基本方針を示した。さらに,同本部の下に設置された「社会保障改革に関する集中検討会議」の中で,基本方針を踏まえた年金制度改革の方向性や具体策について検討を行っている。
法務省では,判断能力の低下した高齢者などを対象として財産管理等のためのシステムである成年後見制度を導入し,高齢期における資産の有効活用を可能としている。