平成23年版男女共同参画白書

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第4章 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保

第1節 雇用の分野における男女の均等な機会と待遇の確保対策の推進

1 男女雇用機会均等の更なる推進

(1) 男女雇用機会均等の更なる推進

少子化の進展に伴う労働力人口の減少が見込まれる中,女性労働者の能力発揮は一層重要となっている。しかし,女性労働者の就業を取り巻く現状を見ると,依然として男性と比べて女性の勤続年数は短く,管理職比率も低い水準にとどまっている。また,継続就業を希望しながらも出産・育児等により離職を余儀なくされている者も多く,就業を継続するに際して具体的な見通しを持ちにくくなっている状況が見られることから,なお実質的な機会均等が確保されたとは言い難い状況にある。

このため,厚生労働省では,男女雇用機会均等法の履行確保はもとより,ポジティブ・アクションの一層の推進等の取組により,働き続けることを希望する者が就業意欲を失うことなくその能力を伸長・発揮できる環境整備を進めている。


(2) 男女雇用機会均等法に基づく行政指導

厚生労働省では,企業における男女均等取扱い等を確保するため,事業所を訪問し,雇用管理の実態を把握するとともに,性別による差別的な取扱いや妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等,男女雇用機会均等法に違反する雇用管理の実態が把握された企業に対して,是正指導を行っている。


(3) コース等で区分した雇用管理に関する留意事項の周知徹底

厚生労働省では,コース等で区分した雇用管理制度を導入している企業に対しては,「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」の周知徹底を図るとともに,法違反企業に対しては是正指導を行っている。


(4) 紛争解決の援助,相談体制の充実

厚生労働省では,性別による差別的取扱い,妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い,セクシュアル・ハラスメント,母性健康管理措置等に関する労働者と事業主との間の紛争については,都道府県労働局長による紛争解決の援助及び機会均等調停会議による調停により,紛争の円滑かつ迅速な解決を図っている。

また,これらの措置が十分活用されるよう,紛争解決援助制度について,男女労働者等に積極的に周知している。


(5) 女子学生等の就職問題に関する施策の推進

採用面接,選考等の採用過程において男女差別的取扱いが依然として見られることから,厚生労働省では,女子学生の就職に関する均等な機会の確保を図るため,企業の採用担当者等に対して男女雇用機会均等法に沿った男女均等な選考ルールの徹底を図るとともに,採用実績に男女差が大きい企業に対し,実態を把握し,法違反企業に対しては是正指導を行っている。

また,女子学生等が的確な職業選択が行えるよう,意識啓発を図っている。

文部科学省では,平成23年度大学等卒業予定者の就職・採用活動のルールを協議する際に,男女雇用機会均等法の趣旨に沿った採用活動を行うよう,企業側に要請を行った。

2 企業における女性の能力発揮のための積極的取組(ポジティブ・アクション)の推進

厚生労働省では,男女労働者間の格差が大きい企業に対して,ポジティブ・アクションの取組を行うよう具体的取組方法についての相談,情報提供等を実施し,企業における取組を促進している。

また,ポジティブ・アクションの取組を一層広く普及させていくため,経営者団体と連携し,企業のトップをメンバーとする女性の活躍推進協議会を開催し,ポジティブ・アクション普及促進のためのシンボルマーク「きらら」を決定するとともに,これからポジティブ・アクションに取り組もうとする企業に具体的な取組を促すため,企業の委員から「ポジティブ・アクション宣言」を発表し,厚生労働省ホームページ上のサイトで公表することにより,企業が自主的かつ積極的にポジティブ・アクションに取り組むことを促している。

さらに,ポジティブ・アクションを積極的に推進している企業に対し,公募により「均等・両立推進企業表彰」(厚生労働大臣賞及び都道府県労働局長賞)を実施しているほか,事業所から選任された機会均等推進責任者宛て,メールマガジンによる情報提供を行い,その活動の促進を図った。

その他,事業主がポジティブ・アクションの実施状況を開示する場合の国の援助として,「ポジティブ・アクション情報ポータルサイト」内に「ポジティブ・アクション応援サイト」を設け,個別企業から寄せられた取組状況を紹介したり,企業が自社の女性の活躍推進の状況を自己診断できるシステムの開発運営を行うなど,ポジティブ・アクションについての総合的な情報提供を行うとともに,中小企業におけるポジティブ・アクション導入に対する支援,人事労務担当者を対象にしたポジティブ・アクションのノウハウを提供する研修を実施している。

3 セクシュアル・ハラスメントに関する雇用管理の改善の推進

厚生労働省では,事業主のセクシュアル・ハラスメントに関する雇用管理上の措置義務を徹底するため,男女雇用機会均等法及び「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)の内容について周知を図るとともに,措置を講じていない事業主に対しては是正指導を行っている。

4 男女間の賃金格差の解消

平成20年6月より「変化する賃金・雇用制度の下における男女間賃金格差に関する研究会」を開催し,近年の男女間賃金格差の状況を把握するとともに,企業における賃金・雇用管理制度やその運用が男女間賃金格差に与える影響について分析し,男女間賃金格差縮小のためのより効果的な対応方策について検討を行い,22年4月に同研究会の報告書を取りまとめた。

これを受けて,厚生労働省では,平成22年8月末に,労使が自主的に取り組むための賃金・雇用管理の見直しの視点や格差の実態を把握するための調査票といった実践的な支援ツールを盛り込んだ「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」を新たに作成し,その普及・啓発に努めている。