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第1節 高齢男女をめぐる状況
(経済的自立がしにくい高齢女性)
平成22年10月1日現在,我が国の総人口は1億2,806万人であった。一方で,高齢化率(総人口に占める高齢者人口の割合)は前年の22.7%から23.1%となり,国民の5人に1人が65歳以上の高齢者となっている。75歳以上では6割以上を女性が占めている(第1-5-1表)。
高齢者の中でも,経済的に厳しい状況に置かれているのが高齢単身女性である。中でも特に厳しい状況に置かれているのが離別女性である。離別女性は,夫の収入や遺族年金に頼ることもできず,安定した再就職もままならないことが少なくない。離別女性は,その3人に1人が年収120万円未満であるが(第1-5-2図),雇用者のうち約4割が非正規雇用中心の就労経歴であったことなどが影響しているとみられる(内閣府「高齢男女の自立した生活に関する調査」(平成20年))。
女性の働き方は,結婚・出産・育児等のために非正規雇用が多く,就業年数も短い傾向にあり,その結果,高齢期における年金等の収入も少なくなりがちである。55~74歳の男女について本人の就業パターン別に現在の年間収入を見ると,正規か非正規かという雇用形態による収入格差に加えて,同じ正規雇用中心でも女性は男性に比べて収入が極めて低いことが分かる(第1-5-3図)。
第1-5-2図 高齢単身世帯(55~74歳)における低所得層の割合(年間収入)
第1-5-3図 高齢者等(55~74歳)の本人の就業パターンによる年間収入(平均額)(性別)
(単身男性の問題)
他方,男性については,単身の男性の地域における孤立が深刻化している。内閣府「高齢男女の自立した生活に関する調査」では,単身の55~74歳の男性の4人に1人が「話し相手や相談相手がいない」と回答している(第1-5-4図)。男性で単身の場合は,約半数は子どもがいないため,家族による支えも期待しにくいといえる。
また,特に未婚の単身男性について,約1割が年収60万円未満であるなど,一部に経済的に厳しい状況があることも分かる(第1-5-2図(再掲))。
第1-5-4図 話し相手や相談相手がいる者の割合(55~74歳)
(高齢単身世帯の増加)
孤立や貧困などの状況に置かれやすい高齢の単身世帯は,未婚や離婚が増える中で今後急速に増えていくと考えられる。特に単身世帯の増加が著しいのが男性である。2030年には男女共に高齢者の約2割が一人暮らしの社会になると予測されている。
(多様な働き方~非正規雇用の増加)
雇用就業をめぐる状況が変化する中,非正規雇用が若年層も含めて増加傾向にある(第1-2-6図(再掲))。
非正規雇用者は,現状においては厚生年金等被用者保険の適用から除外されやすい状況にあるとの指摘もあり,その増加は将来において老後の生活設計を描きにくい層の増加に結び付く可能性がある。