平成22年版男女共同参画白書

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第2節 生活困難の背景と男女共同参画をめぐる問題

(女性が生活困難に陥る背景)

固定的性別役割分担意識が十分に解消されておらず,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が不十分な現状において,女性は,育児や介護などで就業を中断しやすい。また,税制・社会保障制度の影響による就業調整の影響もあり,女性は相対的に低収入で不安定な非正規雇用につきやすい就業構造がある。さらに,このような若い時期からの働き方の積み重ねの結果として女性の年金水準等は低く,高齢期の経済的基盤が弱いという問題もある。

さらに,女性に対する暴力も,女性の自立を困難にする大きな要因である。女性に対する暴力は女性の自尊心や心身を傷つけ,自立に向けた就業や社会参加を一層困難なものにしている。

これらの女性の生活困難の背景には,「男は仕事,女は家庭」という固定的な性別役割分担意識があり,女性の若い時期からのキャリアに対する考え方に影響を与えるとともに,生き方の選択肢を狭めている可能性がある。また,結婚後,夫へ生計を依存しているような場合には,例えば配偶者である男性の雇用不安によって家庭に困難が生じたり,離婚等に際して女性が自立の困難となりやすいなどの問題が生じる。

(男性特有の状況)

一方で,男性特有の生活困難な状況もみられる。父子世帯や一人暮らしの高齢男性が地域で孤立しがちである傾向や,「男性が主に稼ぐべきもの」,「男性は弱音を吐いてはならない」といった男性役割のプレッシャーが,男性を困難な状況に追い込んでいるという指摘がある。例えば,男性の非正規労働者の有配偶者の割合が低いことについて,経済的に安定しないことが結婚を阻害する一因になっているとの指摘がある。また,40~50歳代の男性で「経済・生活問題」を原因・動機とする自殺が多いことなども,男性役割のプレッシャーの影響であるとの指摘もある。

(非正規雇用と女性の生活困難)

学歴での不利が職業の選択を限定し,低収入となりがちな状況があるが,男女別に若年層(20-24歳層)の正規従業員の比率をみると,平成4年から平成19年の間にかけて,学歴による就業状況の差が開き,中学卒業者や高校卒業者の状況が厳しくなる中,特に女性が厳しい状況に置かれている(第1-5-3図)。 また,多くが母子家庭であるひとり親世帯の貧困率をみると,有業者であっても貧困率が高いという日本特有の状況がある(第1-5-4図)。 この背景には,育児等との両立等の理由により,選べる職種が臨時・パート等非正規雇用が多くなりがちであることが影響していると考えられ,母子家庭の就労率は85%と高いにもかかわらず,約7割が年間就労収入200万円未満という状況がある(平成17年)。母子世帯では子育てを一人で担うという責任と経済的な困難に陥いるリスクの双方に直面していると考えられる。

第1-5-3図 若年人口(20-24歳層)に占める正規従業員の比率(性別) 別ウインドウで開きます
第1-5-3図 若年人口(20-24歳層)に占める正規従業員の比率(性別)

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第1-5-4図 子どものいる世帯の相対的貧困率(2000年代中盤) 別ウインドウで開きます
第1-5-4図 子どものいる世帯の相対的貧困率(2000年代中盤)

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