平成21年版男女共同参画白書

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第2節 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

1 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

急速な少子化の流れを変え,子どもの育ちや子育て家庭を社会全体でしっかりと応援するため,平成17年度より,「子ども・子育て応援プラン」等に基づき,若者の自立や働き方の見直し,地域における子育て支援など総合的な取組を進めている。

また,地方公共団体においては,次世代育成支援対策推進法に基づき,地域における子育て支援や母性,乳幼児の健康の確保・増進等を内容とする地域行動計画が策定され,18年10月1日現在で,すべての都道府県及び市区町村が策定済みであり,これに基づく取組が進められている。

さらに,平成19年12月に取りまとめられた「子どもと家族を応援する日本」重点戦略(平成19年12月少子化社会対策会議決定)で示された課題を受けて,家庭的保育事業等の新たな子育て支援サービスの創設,虐待を受けた子ども等に対する家庭的環境における養護の充実,仕事と家庭の両立支援のための一般事業主行動計画の策定の促進などを内容とする,児童福祉法等の一部を改正する法律(平成20年法律第85号)が成立し,地域や職場における次世代育成支援対策を推進することとしている。また,20年3月より,社会保障審議会少子化対策特別部会において次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について検討を行っている。


(1) 保育サービス等の充実

厚生労働省では,平成20年2月,保育施策や放課後対策を質・量ともに充実・強化し,推進するための「新待機児童ゼロ作戦」を展開することとし,20年度からの3年間を集中重点期間として,取組を進めることとしている。このため,20年度には,「新待機児童ゼロ作戦」による保育所の整備等,認定こども園等の新たな保育需要への対応及び保育の質の向上のための研修などを実施し,子どもを安心して育てることができるような体制整備を行うための「安心こども基金」を都道府県に創設した。


(2) 「放課後子どもプラン」の推進

文部科学省と厚生労働省が連携し,地域社会の中で,放課後等に子どもたちの安全で健やかな居場所づくりを推進するため,総合的な放課後対策として実施する「放課後子どもプラン」を平成19年度に創設し,原則として,すべての小学校区での実施を目指し推進を図るとともに,必要な経費の支援を行っている。


(3) 幼稚園における子育て支援の推進

文部科学省では,幼稚園の通常の教育時間(4時間)の前後や長期休業期間中などに行われる「預かり保育」を実施する幼稚園に対して支援を行うなど,幼稚園における子育て支援を推進している。

また,平成19年6月の学校教育法改正では,幼稚園における家庭及び地域の幼児教育支援に関する規定を新設するとともに,「預かり保育」を適正に実施するための規定の整備等を行った。さらに,20年3月に公示した幼稚園教育要領において,預かり保育の具体的な留意事項を示すとともに,子育ての支援の具体的な活動を例示した。


(4) 認定こども園制度の普及促進

近年の急速な少子化の進行や家庭・地域を取り巻く環境の変化に伴い,多様化するニーズに柔軟かつ適切に対応するため,平成18年6月に,就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)が成立し,同年10月から施行された。この法律では,幼稚園,保育所等のうち,(1)就学前の子どもに教育・保育を提供する機能(保育に欠ける子どもも欠けない子どもも受け入れて教育・保育を一体的に行う機能),(2)地域における子育て支援を行う機能(すべての子育て家庭を対象に,子育て不安に対応した相談や親子のつどいの場の提供などを行う機能)を備える施設について,都道府県が「認定こども園」として認定する仕組みとしており,20年4月1日現在,全国で229件の認定が行われている。

文部科学省と厚生労働省が平成20年3月に実施した地方公共団体,施設,保護者に対する認定こども園制度に係る実態調査によると,施設を利用している保護者の8割近く,認定を受けた施設の9割以上が認定こども園を評価している。一方,施設や地方公共団体からは,財政的支援が十分ではない,会計処理の簡素化が必要などの課題も指摘されている。これを受けて,(1)認定こども園に対する,幼稚園・保育所の枠組みを超えた新たな財政措置,<2>20年7月に文部科学省及び厚生労働省の両省局長級検討会で取りまとめられた,会計処理の改善や制度の普及啓発などの改善方策に基づいた運用改善策の実施に取り組んでいる。あわせて,20年10月に内閣府特命担当大臣(少子化対策),文部科学大臣,厚生労働大臣の3大臣合意により立ち上げた「認定こども園制度の在り方に関する検討会」において,<1>財政支援の充実,(2)会計処理等における二重行政の解消,(3)教育と保育の総合的な提供の推進,(4)家庭や地域の子育て支援機能の強化,(5)質の維持・向上への対応などの認定こども園における課題について議論を進め,21年3月に報告をとりまとめた。


(5)幼稚園就園奨励事業の促進

保護者の所得状況に応じて経済的負担を軽減するとともに,公・私立幼稚園間における保護者負担の格差の是正を図ることを目的として,保育料等を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,文部科学省では,幼稚園就園奨励費補助金により所要経費の一部を補助している。

当該補助金は,これまで兄弟姉妹の同時就園を条件に,第1子に対して,第2子以降の園児の保護者負担を軽減する優遇措置を講じてきたところであるが,平成18年度から小学校1年生に兄・姉を有する園児について優遇措置の対象とする条件緩和を講じ,20年度は保護者負担の一層の軽減を図るため,小学校3年生までに兄・姉を有する園児を優遇措置の対象とした。


(6)地域の子育て・介護支援体制整備

厚生労働省では,乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として,保育施設までの送迎や放課後の預かり,病児・病後児の預かり等の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進している。平成20年度は579か所で実施されている。

経済産業省では,商店街の空き店舗等を活用して,保育所等の育児支援施設を設置・運営する際の改装費や賃借料など立ち上げに係る費用の一部を補助し,待機児童問題の解消や女性の社会進出といった少子化社会等への対応を図っている。


(7)家庭教育支援

文部科学省では,子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親の相談に気軽に応じ,アドバイスを行う子育てサポーター同士の相互連携の促進や,情報交換の機会の提供などの役割を担う「子育てサポーターリーダー」を養成し,相談支援体制の一層の充実を図っている。

また,家庭教育に関するヒント集として,家庭における子育てやしつけの在り方などを紹介した「家庭教育手帳」を作成し,全国の教育委員会等に提供しているほか,平成18年度から,早寝早起きや朝食をとるなど,子どもの望ましい基本的な生活習慣を育成し,生活リズムを向上させるため,様々な民間団体と連携して「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進している。

独立行政法人国立女性教育会館では,家庭教育の重要性にかんがみ,現代の家庭教育・子育て支援の現状と課題の把握,さらに子育ての新たな支え合いと連帯を推進するため,「家庭教育・次世代育成支援のための指導者養成セミナー」を実施した。その他,地域で家庭教育・次世代育成支援を進めるためのプログラムに関する調査研究を実施している。


(8)児童虐待への取組の推進

児童虐待への対応については,平成12年11月,児童虐待の防止等に関する法律(以下,「児童虐待防止法」という。)が施行されたが,重大な児童虐待事件が後を絶たず,全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数も増加を続け,19年度には4万639件となるなど,依然として社会全体で早急に取り組むべき重要な課題となっている。児童虐待は,子どもの心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるため,児童虐待の防止に向け,虐待の「早期発見・早期対応」,虐待を受けた子どもの「保護・自立支援」に至るまでの切れ目のない総合的な支援体制を整備・充実していくことが必要である。

厚生労働省では,(1)発生予防に関しては,生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し,子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握を行う「生後4か月までの全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」や,養育支援が必要な家庭に対して,訪問による養育に関する相談,指導・助言・援助等を行う「育児支援家庭訪問事業」の推進,子育て中の親子が相談・交流できる「地域子育て支援拠点」の整備,(2)早期発見・早期対応に関しては,市町村における「子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)」の設置促進及び機能強化,児童福祉司の配置の充実など児童相談所の体制強化,虐待をした親への再発防止対策として,家族再統合や家族の養育機能の再生・強化に向けた取組を行う親支援の推進,(3)保護・自立支援に関しては,児童養護施設等の小規模ケアの推進,個別対応職員や家庭支援専門相談員の配置等のケア担当職員の質的・量的充実,里親委託の推進,身元保証人を確保するための事業などの取組を進めている。

平成20年4月,改正児童虐待防止法及び児童福祉法が施行された。主な改正事項については,(1)児童の安全確認等のため,裁判官の許可状を得た上で,解錠等を伴う立入を可能とする立入調査等の強化,(2)保護者に対する面会・通信等の制限の強化,都道府県知事が保護者に対する面会・通信等の制限の強化,都道府県知事が保護者に対し児童へのつきまといやはいかいを禁止できる制度の創設等,(3)保護者に対する指導に従わない場合の措置の明確化等がある。厚生労働省では,16年から11月を「児童虐待防止推進月間」と位置づけ,児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図るため,関係府省庁や地方公共団体,関係団体等と連携した広報・啓発活動を実施している。20年度においては,月間標語の公募,全国フォーラムの開催(滋賀県大津市),広報・啓発ポスター等の作成,配布及び政府広報を活用したテレビ,新聞等による広報啓発等を実施した。また,民間団体が中心となって実施している「オレンジリボンキャンペーン」について後援を行っている。

警察では,児童虐待防止法の趣旨を踏まえ,児童虐待事案の早期発見と迅速かつ確実な通告,児童相談所長等による児童の安全確認等に万全を期するための適切な援助,適切な事件化と児童の支援等に努めるなど,関係機関と緊密な連携をとりつつ,児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応を図っている。

法務省の人権擁護機関では,子どもの人権問題に関する専用の電話相談窓口である「子どもの人権110番」を設置し,全国一斉「子どもの人権110番」強化週間を実施するほか,相談用の便せん付き返信用封筒「子どもの人権SOSミニレター」を小中学生に配布し,さらに,子ども向けのインターネット人権相談受付窓口(子どもの人権SOS-eメール)を開設して24時間365日相談の受付登録を可能とするなどして相談体制の充実を図っている。また,人権擁護委員の中から指名された,子どもの人権にかかわる問題を専門に扱う「子どもの人権専門委員」を全国に設置し,「児童虐待防止推進月間(11月)」における法務省の取組の一つとして,子どもの人権専門委員全国会議を開催し,児童虐待防止に向けた活動の強化を図っている。さらに,全国各地で講演会・研修会等の実施などの啓発活動を積極的に推進するとともに,人権相談,人権侵犯事件の調査処理を通じて,児童虐待の問題に取り組んでいる。

文部科学省では,児童虐待への適切な対応等について,学校教育及び社会教育関係者に対し引き続き周知を図り,学校教育・社会教育関係者と児童相談所等の関係機関との緊密な連携の促進に努めている。また,各学校・教育委員会における児童虐待防止に向けた取組の充実を図るため,国内・海外の先進的取組等の収集・分析などを平成17年度より実施し,18年5月に報告書を取りまとめた。18年度においては,教職員向けの研修モデル・プログラムの検討を行い,20年度には,18年5月に取りまとめた「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究」の調査研究の成果を踏まえ,虐待を受けた子どもへの支援等について教職員の対応スキルの向上を図るよう,研修教材を作成した。


(9)子育てを支援する良質な住宅,居住環境及び道路交通環境の整備

国土交通省では,子育てを支援する良質な住宅や居住環境の整備のため,住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを活用し,親子リレー返済制度による子育てに適した広い住宅の建設の支援や,優良住宅取得支援制度による耐久・可変性能が特に高い住宅に係る金利引下げを行っている。公的賃貸住宅においては,地域優良賃貸住宅制度により子育て世帯等を対象とした良質な賃貸住宅の供給を促進している。また,大規模な公共賃貸住宅団地の建替えに際し,保育所等との併設を原則化するとともに,平成20年度から公的賃貸住宅団地を地域の福祉拠点として再整備する安心住空間創出プロジェクトを推進し,公的賃貸住宅と子育て支援施設との一体的整備を推進している。さらに,高齢者等の所有する戸建て住宅等を,広い住宅を必要とする子育て世帯等への賃貸を円滑化する住み替え支援制度により,子育て世帯等の生活に適した広い住宅の供給を図っている。さらに,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備等,交通安全施設等の整備を推進している。

警察では,子ども連れでも自宅周辺や通学路を安心して歩くことができるよう,生活道路等において,信号機,光ビーコン等の交通安全施設等を重点的に整備し,通過交通の進入抑制や速度抑制,外周となっている幹線道路における交通流円滑化等の道路交通環境の整備に努めた。

また,交通安全の観点からの子育て支援策として,幼稚園・保育所,病院等と連携したチャイルドシートの取付け講習会を実施し,正しい着用の徹底を図るほか,地方公共団体,民間団体等が実施している各種支援制度の活用を通じて,チャイルドシートの普及促進に積極的に取り組んでいる。

さらに,妊婦のシートベルト着用の必要性,正しいシートベルトの着用方法について周知を図るため,交通の方法に関する教則(昭和53年国家公安委員会告示第3号)の一部を改正した。


(10) 子育てバリアフリー等の推進

国土交通省では,平成18年12月に施行された高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)等に基づき,多くの方が利用する建築物,公共交通機関及び道路や都市公園等の公共施設について,妊産婦や乳幼児連れの方にも利用しやすいように,段差の改善等による個別のバリアフリー化を図るとともに,これら施設等の一体的なバリアフリー化を推進している。

また,ハード整備と併せて,高齢者等の介助体験・疑似体験等を内容とする「バリアフリー教室」の開催等により「心のバリアフリー社会」の実現を図るとともに,「らくらくおでかけネット」や「都道府県別バリアフリー情報」等によって,施設のバリアフリー化の状況に関する情報提供を行うなどソフト面の施策についても積極的に推進している。

さらに,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS:スペシャル・トランスポート・サービス)の普及を推進している。

2 ひとり親家庭等に対する支援の推進

厚生労働省では,母子家庭の母等について,平成15年の改正母子及び寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)等や母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法(平成15年法律第126号)(同年8月から施行されたが,5年間の時限立法であったため平成20年3月末で失効)といった法律及びその趣旨に基づき,子育て短期支援事業,日常生活支援事業等の子育て・生活支援策,母子家庭等就業・自立支援センター事業,母子家庭自立支援給付金等の就業支援策,養育費相談センターの設置等の養育費の確保策,児童扶養手当の支給,母子寡婦福祉貸付金の拡充等の経済的支援策といった自立支援策を総合的に展開している。

また,平成20年度からは,母子家庭等就業・自立支援センター事業について,在宅就業推進事業を追加するとともに,指定都市,中核市を除く市等においてもこれと同様の事業が実施できるようにする「一般市等就業・自立支援事業」や直ちに就業に移行することが困難な母子家庭の母についてボランティア活動等への参加を促し就業意欲の醸成等を行う「就業準備支援コース事業」を創設している。

さらに,平成21年2月から高等技能訓練促進費の支給期間の延長を行うなど,母子家庭の母の就業支援策等の充実を図っている。