平成21年版男女共同参画白書

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第6章 男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援

第1節 仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し

1 仕事と家庭の両立に関する意識啓発の推進

平成20年4月には,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」に基づき,その点検・評価を行うとともに,仕事と生活の調和の実現のための連携推進を図るため,関係閣僚,経済界・労働界・地方公共団体の代表等からなる「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」の下に,「仕事と生活の調和推進連携・評価部会」(以下「推進連携・評価部会」という。)を開催した。

推進連携・評価部会では,7月に,平成20年度の効果的な取組推進と21年度の新たな展開を視野に入れ,重点的に取り組んでいく事項を「仕事と生活の調和の実現に向け当面取り組むべき事項」としてとりまとめ,官民一体となった取組を推進している。

男女共同参画会議仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会では,平成20年4月に,働く場としての企業の理解や取組を促進するために,「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」を公表した。また,7月からは,男女共同参画推進の観点から,仕事と生活の調和の推進を社会の各分野における女性の参画の進展につなげるため,「多様性時代において様々なニーズを抱えた男女がそれぞれ持てる能力を存分に発揮できる男女共同参画社会を実現するために,仕事への意欲向上や能力発揮を促すことに留意した『仕事と生活の調和』の取組推進について」調査検討を行っている。

内閣府では,国や地方公共団体等が実施する女性の活用や仕事と生活の調和推進に関連する企業や団体等に対する主だった表彰の一覧を掲載している。また,男性を取り巻く職場や家族の意識を変えていくことを目的に,育児休業を取得した又は取得中の男性の体験記を募集し,これを「パパの育児休業体験記」としてとりまとめ,育児休業取得から復帰までの実践例として広く周知した。

厚生労働省では,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を踏まえつつ,あらゆる機会をとらえ,職業生活と家庭生活の両立を図りやすくするための雇用環境の整備に関する周知啓発活動を積極的に行っている。

また,平成18年に,「男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会」において取りまとめた,男性も育児参加できる働き方の必要性とその利点や,そのような働き方を可能とする取組等についての企業経営者向けの提言の普及に取り組んでいる。

さらに,男性の育児休業の取得促進及び男性の仕事と育児の両立の推進に関する周知啓発を目的として,「父親のワーク・ライフ・バランス~応援します! 仕事と子育て両立パパ~」ハンドブックを作成した。

2 仕事と子育て・介護の両立のための制度の定着促進・充実

厚生労働省では,育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)に規定されている,育児休業,介護休業,子の看護休暇制度,時間外労働の制限の制度,深夜業の制限の制度,勤務時間短縮等の措置等について周知を図るとともに,計画的に事業所を訪問し,就業規則等で必要な制度が設けられているかを確認するなど,制度の普及・定着に向けた行政指導等を実施している。

また,休業の申出又は取得を理由とした不利益な取扱いなど,育児・介護休業法に基づく労働者の権利が侵害されている事案について,労働者からの相談があった場合は的確に対応し,法違反がある場合その他必要な場合には事業主に対する適切な指導を行っている。

これらの取組により,女性の育児休業取得率は平成19年度において約9割に達するなど,着実な定着が図られつつあるが,第1子出産を機に約7割の女性が離職している状況があり,男性の育児休業取得率も1.56%に留まっている。

こうした現状も踏まえ,平成20年8月から,更なる仕事と家庭の両立支援の推進を図るため,労働政策審議会雇用均等分科会において育児・介護休業法の見直しについて議論を行い,同年12月に同審議会により建議が行われたところである。

建議においては,(1)短時間勤務制度,所定外労働の免除の義務化,(2)父母ともに育児休業を取得する場合の休業可能期間の延長,(3)子の看護休暇の拡充や介護のための短期の休暇制度の創設などが提言されており,この建議に基づき,育児・介護休業法の見直しに向けた検討を進め,平成21年4月に同法の改正法案を国会に提出したところである。

また,育児・介護休業法の改正により平成17年4月から導入された一定の範囲の期間雇用者の育児休業の取得についても指導を行うとともに,育児休業等の申出や取得を理由とした不利益取扱いなどについて労働者からの相談があった場合には,的確に対応し,必要に応じて,事業主に対する適切な指導を実施することとし,21年3月には,現下の雇用労働情勢を踏まえた妊娠・出産,産前産後休業及び育児休業等の取得等を理由とする解雇その他不利益取扱い事案への厳正な対応等について,各都道府県労働局長宛て改めて通知したところである。

また,平成19年4月,第166回通常国会で成立した雇用保険法等の一部を改正する法律(平成19年法律第30号)において,19年10月から22年3月31日までの暫定措置として,雇用の継続を援助,促進するための育児休業給付の給付率を休業前賃金の40%(休業期間中30%・職場復帰6か月後に10%)から50%(休業期間中30%・職場復帰6か月後に20%)に引き上げることとした。

3 育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備

(1)働き方の見直し

厚生労働省では,労働者全体に占める長時間労働者と短時間労働者の割合が同時に高まる,いわゆる「労働時間分布の長短二極化」の進展や長時間労働に起因する脳・心臓疾患や精神障害といった健康障害の増加などの状況を踏まえ,労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)及び「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針(平成18年厚生労働省告示第197号))に基づき,年次有給休暇の取得促進及び所定外労働の削減を始めとした労使の自主的な取組を促進する施策を推進した。


(2)企業における仕事と子育て・介護の両立支援の取組の促進,評価

次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)では,常時雇用する労働者が301人以上の企業に対し,労働者の仕事と子育ての両立支援に関する取組を記載した一般事業主行動計画を策定し,その旨を厚生労働大臣に届け出ることが義務づけられており,また,適切な行動計画を策定・実施し,その目標を達成するなど一定の要件を満たした企業は厚生労働大臣の認定を受け,「くるみんマーク」を使用することができるとされているところである。

一般事業主行動計画については,平成21年3月末現在で,策定・届出が義務付けられている301人以上の企業の届出率は99.1%,努力義務である300人以下の企業の届出数は18,137社となっており,特に,300人以下の企業に対し,次世代育成支援対策推進センター等と連携し,より多くの企業において行動計画の策定・届出が行われるよう取組支援を進めている。また,21年3月末現在の認定企業は652社となっており,より多くの企業が認定を目指して取組を行うよう周知・啓発を行うとともに,認定マークである「くるみんマーク」の周知を進めている。

平成20年12月3日には,我が国における急速な少子化の進行等の現状にかんがみ,地域や職場における総合的な次世代育成支援対策を推進するため,児童福祉法等の一部を改正する法律(平成20年法律第85号)が公布され,同法により次世代育成支援対策推進法の一部が改正された。

一般事業主行動計画に関する主な改正事項は以下のとおりである。

(1)一般事業主行動計画の策定・届出の義務付け対象を労働者数301人以上企業から101人以上企業へ拡大(平成23年4月1日施行)

(2)一般事業主行動計画の策定・届出が義務付けとなっている企業について,当該行動計画の公表及び従業員への周知を義務付け(平成21年4月1日施行)

また,国及び地方公共団体においても,職員を雇用する「事業主」の立場から,職員の仕事と子育ての両立支援等に関する「特定事業主行動計画」を策定することとされており,平成20年10月1日現在で国及びすべての都道府県では策定済みであり,市区町村については96.8%が策定済みである。

厚生労働省では,企業の「仕事と家庭の両立のしやすさ」を示す両立指標についてインターネット上でその進展度を診断できるファミリー・フレンドリー・サイト(http://www.familyfriendly.jp/)や両立支援に積極的に取り組んでいる企業の取組等を掲載したサイト「両立支援のひろば」(http://www.ryouritsushien.jp/)の活用を進めるなど周知・広報を行うとともに,ファミリー・フレンドリー企業への表彰(厚生労働大臣賞及び都道府県労働局長賞)の実施により,仕事と育児・介護とが両立できるような様々な制度を持ち,多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行うファミリー・フレンドリー企業の普及促進を図っている。

また,育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい雇用環境を整備する事業主に対し,助成金を支給するなどの支援を行っている。

さらに,育児・介護等の各種サービスに関する地域の具体的情報をインターネットにより提供している(フレーフレーネット)。

経済産業省では,中小企業における仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に対応した総合的なマネジメント手法の導入を支援すべく,先進的に取り組んでいる中小企業における取組のポイントを分析,整理し,導入マニュアルを作成するなど,中小企業に対する仕事と家庭の両立支援を実施した。

また,従業員の出産・育児と仕事の両立を支援するため,株式会社日本政策金融公庫を通じ,事業所内託児施設を設置する中小企業者に対する融資制度を講じた。さらに,一定の要件を満たす事業所内託児施設等の取得等をした法人に対して,税制上の優遇措置を講じている。