平成20年版男女共同参画白書

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第3節 性犯罪への対策の推進

1 性犯罪への厳正な対処等

捜査機関では,強姦罪,強制わいせつ罪,児童福祉法(昭和22年法律第164号)の淫行をさせる罪等の関係諸規定を厳正に運用し,適正かつ強力な性犯罪捜査を推進するとともに,適切な科刑の実現に努めている。

2 被害者への配慮等

警察では,指定された警察職員が事件直後から被害女性に付き添い,病院の手配,自宅等への送迎,困りごとの相談等そのニーズに応じた適切な支援活動を行っている。被害女性からの事情聴取等に当たっては,その精神状態等に十分配慮するとともに,被害女性が安心して事情聴取等に応じられるよう,女性警察官による事情聴取体制を拡大するとともに,内装や設備等に配慮した事情聴取室や被害者対策用車両の活用を図っている。

また,性犯罪の被害女性に対し,その被害に係る初診料,診断書料,緊急避妊措置費用,検査費用等を公費で支給することとし,その経済的負担の軽減に努めている。

さらに,性犯罪や性的虐待等の被害を受けた少女の再被害防止や立ち直りの支援のため,少年補導職員が中心となり,「被害少年カウンセリングアドバイザー」や「被害少年サポーター」等の協力を得て,被害少年の特性に配慮した継続的な支援活動を推進している。

加えて,警察では被害者連絡制度に基づき,被害者等に対する事件の捜査状況などの情報提供に努め,その精神的負担の軽減を図っている。

法務省では,被害者等通知制度を導入し,検察庁において,被害者等に対し,事件の処理結果,裁判結果,加害者の刑の執行終了予定時期及び釈放された年月日などの情報を提供することに努めてきたところ,平成19年12月1日からは,検察庁,刑事施設及び保護観察所等が連携して,被害者等からの希望に応じて,刑事裁判確定後の加害者の受刑中の処遇状況に関する事項,仮釈放審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知し,その精神的負担の軽減を図っている。

なお,少年審判において保護処分を受けた加害者についても,少年院及び保護観察所等が連携して,被害者等からの希望に応じて,少年院在院中の処遇状況等に関する事項,仮退院審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知し,その精神的負担の軽減を図っている。

また,被害者等の再被害防止を目的として,検察庁,刑事施設及び地方更生保護委員会等と警察との間における情報提供に関する制度を整備し,検察庁において,更に詳細な釈放に関する情報を被害者等に通知しており,警察においても「再被害防止要綱」に基づき,再被害の防止のための施策を強化している。

さらに,平成19年12月1日から,加害者の刑事施設からの仮釈放や少年院からの仮退院の審理において被害者等の意見等を聴取する制度や保護観察中の加害者に対して被害者等の心情等を伝達する制度を実施し,被害者等の希望にできる限り配慮している。

加えて,平成19年12月に施行された「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(平成19年法律第95号)により,裁判所は,相当と認めるときは性犯罪等の被害者の氏名等について,公開の法廷で明らかにしない旨の決定ができることとされ,この場合において,訴訟手続は,被害者の氏名等を明らかにしない方法により行うことになった。また,検察官は,証拠開示の際,被害者の氏名等が明らかにされることにより,被害者等の名誉が害されるおそれ等があると認めるときは,弁護人に対し,被害者の氏名等がみだりに他人に知られないようにすることを求めることができることになり,刑事手続における被害者等に関する情報の保護が図られることになった。

検察庁では,犯罪被害者への支援に携わる「被害者支援員」を全国の検察庁に配置して,被害者からの様々な相談への対応,法廷への案内,付添いなど各種の手助けをするほか,被害者の状況に応じて精神面,生活面,経済面等の支援を行っている関係機関や団体等を紹介するなどの支援活動を行っている。

更生保護官署では,被害者等の支援業務に従事する「被害者担当官」と男女各1名以上の「被害者担当保護司」を全国の保護観察所に配置し,被害者等からの相談に応じ,悩み,不安等を傾聴し,その軽減又は解消を図るとともに,関係機関等を紹介し,その円滑な利用を支援するなどしている。

3 加害者に関する対策の推進等

法務省では,指定した全国の刑事施設及び全国の保護観察所で性犯罪者処遇プログラムを実施している。