平成20年版男女共同参画白書

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第1節 仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し

1 仕事と家庭の両立に関する意識啓発の推進

関係閣僚,経済界・労働界・地方公共団体の代表等からなる「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」(以下「官民トップ会議」という。)では,平成19年12月,仕事と生活の調和に関する基本的な考え方を示す「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び国・地方自治体や企業の具体的取組や政策の方針を示した「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を合意した。その一環として,20年1月,内閣府に「仕事と生活の調和推進室」を設置した。

男女共同参画会議仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会では,「「ワーク・ライフ・バランス」推進の基本的方向」を取りまとめた。

内閣府では,地方公共団体におけるワーク・ライフ・バランスに係る施策事例を収集し,好事例を普及することを目的として,ワーク・ライフ・バランス取組事例集を作成し,地方公共団体に配布した。

厚生労働省では,国の基本施策である「少子化社会対策大綱」(平成16年6月閣議決定)の具体的実施計画として策定された「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について(子ども・子育て応援プラン)」(平成16年12月少子化社会対策会議決定)を踏まえつつ,あらゆる機会をとらえ,職業生活と家庭生活の両立を図りやすくするための雇用環境の整備に関する周知啓発活動を積極的に行っている。

また,平成18年に,「男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会」において取りまとめた,男性も育児参加できる働き方の必要性とその利点や,そのような働き方を可能とする取組等についての企業経営者向けの提言の普及に取り組んでいる。

2 仕事と子育て・介護の両立のための制度の定着促進・充実

厚生労働省では,育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)に規定されている,育児休業,介護休業,子の看護休暇制度,時間外労働の制限の制度,深夜業の制限の制度,勤務時間短縮等の措置等について周知徹底を図るとともに,同法が遵守されるよう引き続き事業主に対して,指導などを行っている。

また,育児・介護休業法の改正により平成17年4月から導入された一定の範囲の期間雇用者の育児休業の取得についても指導を行うとともに,育児休業等の申出や取得を理由とした不利益取扱いなどについて労働者からの相談があった場合には,的確に対応し,必要に応じて,事業主に対する適切な指導を実施している。

また,平成19年4月に雇用保険法(昭和49年法律第116号)の改正を行い,19年10月から暫定措置6として,育児休業の取得を促進し,雇用の継続を援助,促進するための育児休業給付の給付率を休業前賃金の40%(休業期間中30%・職場復帰6か月後に10%)から50%(休業期間中30%・職場復帰後6か月後に20%)に引き上げることとした。

さらに,次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づく従業員の仕事と子育ての両立を図るために必要な雇用環境の整備等に関する「一般事業主行動計画」の策定・実施及び一定の基準を満たした企業の認定の制度について,企業等に対して周知・啓発を行っている。

一般事業主行動計画については,平成20年3月末現在で,策定・届出が義務付けられている300人を超える企業の届出率は99.4%,努力義務である300人以下の企業の届出数は11,449社となっており,特に,300人以下の企業に対し,次世代育成支援対策推進センター及び地方公共団体と連携し,より多くの企業において行動計画の策定・届出が行われるよう取組支援を進めている。また,20年3月末現在の認定企業は428社となっており,より多くの企業が認定を目指して取組を行うよう周知・啓発を行うとともに,認定マークである「くるみんマーク」の周知を進めている。

また,国及び地方公共団体においても,職員を雇用する「事業主」の立場から,職員の仕事と子育ての両立支援等に関する「特定事業主行動計画」を策定することとされており,平成19年10月1日現在で国及びすべての都道府県では策定済みであり,市区町村については94.6%が策定済みである。

6 平成19年3月31日以降に職場復帰した者から平成22年3月31日までに育児休業を開始した者までが対象となる。

3 育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備

(1)働き方の見直し

厚生労働省では,いわゆる「労働時間分布の長短二極化」の進展,長時間労働を一因とする脳・心臓疾患に係る労災認定件数の高水準での推移,労働者の抱える事情の多様化等の新たな課題に対応するために,労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(平成4年法律第90号)及び労働時間等設定改善指針(平成18年厚生労働省告示第197号)に基づき,事業主等への周知啓発を行うとともに,年次有給休暇の取得促進及び所定外労働の削減を始めとした労使の自主的な取組を促進する施策を推進した。

(2)企業における仕事と子育て・介護の両立支援の取組の促進,評価

厚生労働省では,企業の「仕事と家庭の両立のしやすさ」を示す両立指標についてインターネット上でその進展度を診断できるファミリー・フレンドリー・サイトや両立支援に積極的に取り組んでいる企業の取組等を掲載したサイト「両立支援のひろば」の活用を進めるなど周知・広報を行うとともに,ファミリー・フレンドリー企業への表彰(厚生労働大臣賞及び都道府県労働局長賞)の実施により,仕事と育児・介護とが両立できるような様々な制度を持ち,多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行うファミリー・フレンドリー企業の普及促進を図っている。

また,育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい雇用環境を整備する事業主に対し,助成金を支給するなどの支援を行っている。

さらに,育児・介護等の各種サービスに関する地域の具体的情報をインターネットにより提供している(フレーフレーネット)。

経済産業省では,中小企業における仕事と育児を両立できるような職場環境整備の取組を促進すべく,先進的に取り組んでいる中小企業における少子化対策のポイントを分析,整理などを行い,中小企業に対する仕事と家庭の両立支援を実施した。

また,従業員の出産・育児と仕事の両立を支援するため,事業所内託児施設等を設置する中小企業者に対する融資制度を創設した。また,税制においては,法人が一定の要件を満たす事業所内託児施設等を設置した場合について,税制上の優遇措置が講じられた。