平成19年版男女共同参画白書

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第5節 人身取引への対策の推進

1 人身取引対策行動計画の積極的な推進

「人身取引対策行動計画」(平成16年12月人身取引対策に関する関係省庁連絡会議決定)に沿って,関係施策を推進している。

また,「男女共同参画基本計画(第2次)」においては,女性に対するあらゆる暴力の根絶を図るため,人身取引について総合的・包括的な対策を推進することとされている。

2 関係法令の適切な運用

国際的な組織犯罪である人身取引は重大な犯罪及び人権侵害であるとの認識の下,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」の締結について,平成17年6月,第162回通常国会において,承認されるとともに,人身取引その他の人身の自由を侵害する犯罪に対処するための法整備に関し,人身売買罪等の創設等を内容とする刑法等の一部を改正する法律(平成17年法律第66号)が全会一致で可決,成立した。

また,我が国は,政府協議調査団をタイ,フィリピン,コロンビア,ロシア,ルーマニア,ウクライナに続いて,インドネシア,カンボジア,ラオス等に派遣し,先方政府やNGO等の関係機関との協力を促進するとともに,人身取引に関連した地域間会合等の主催や人身取引の防止等に関して国際的な支援を行うなど積極的な取組を行っている。

警察では,人身取引の被害者である外国人女性が,風俗営業や性風俗関連特殊営業において売春の強要等の搾取を受けている状況を改善するため,平成17年11月に成立した風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第123号)において,人身売買の罪等を風俗営業の許可の欠格事由に加えること,接待飲食等営業を営む者等に接客従業者の生年月日,国籍,就労資格等の確認を義務付けることなどを内容とする改正を行い,平成18年5月から施行した。

法務省では,「人身取引対策行動計画」において在留資格「興行」の基準についても抜本的な見直しを行うこととされ,また,「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)(平成17年3月閣議決定)」においても,在留資格「興行」の悪用を防止するため,招へい業者等が人身取引に関係することのないよう,上陸許可基準の見直しを平成17年度中に措置すべきこととされたことを踏まえ,18年3月,演劇等の興行活動を行おうとする外国人芸能人と「興行契約」を締結する機関(契約機関)及び出演施設を運営する機関の経営者及び常勤の職員について,過去に人身取引や外国人の不法就労に関与したもの,暴力団員等に該当しないことを要件とし,さらに,契約機関については,外国人芸能人との間において,月額20万円以上の報酬を支払う義務を行うことが明示されている興行契約を締結し,かつ過去3年間に締結した興行契約に基づく報酬の全額を支払っていることを要件とすることを内容とする在留資格「興行」に係る基準省令の改正を行い,同年6月に施行した。また,出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)に関し,人身取引等の定義規定を置くこと,人身取引等の被害者が上陸特別許可・在留特別許可の対象となることを明確にすることなどを内容とする改正を行い,17年7月から施行しているところ,17年は,不法滞在者であった外国人女性47人に,また,18年は,同27人に対して,在留特別許可を与えた。

3 被害者等の立場に立った適切な対処の推進

内閣府では,女性に対する暴力をなくしていく観点から,関係省庁,地方公共団体等と連携・協力して,国民一般に対し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施している。

警察では,女性と児童の人身取引を防止するため,関係法令による適切な取締りを始め,被害女性の保護等の総合的な対策を,関係省庁,関係団体と連携して推進する一方で,日本国民による海外での児童買春等の問題については,児童買春・児童ポルノ法に基づく取締りを推進するとともに,CSEC(Commercial Sexual Exploitation of Children)東南アジアセミナーの開催等により,外国捜査機関等との情報交換の緊密化や連携強化に取り組んでいる。さらに,警察庁では,人身取引問題について,在京大使館,関係NGO等との間で,人身取引問題に関するコンタクトポイントを設置して人身取引に関する情報交換を行っている。

厚生労働省では,人身取引被害者の保護の充実を図るため,平成18年度より婦人相談所で保護した人身取引被害者の医療費(ただし,他法他制度が利用できない場合に限る)について補助している。

独立行政法人国立女性教育会館では,人身取引とその防止・教育・啓発に関する調査研究を実施している。平成18年度は,海外現地調査を実施するとともに,日本国内の意識調査等をアンケート形式等で実施した。

文部科学省では,セクシュアル・ハラスメント防止のため,国立学校等に対して職員・学生等への啓発活動や苦情相談体制の一層の充実について積極的に取り組むために必要な情報の提供を行ってきたほか,公私立大学・教育委員会等に対しても引き続き防止のための取組を促している。