平成19年版男女共同参画白書

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第2節 国際比較でみた男女共同参画の現状

本節では,政治・行政,働く場,生活という3つの側面から,男女の参画について,いくつかの指標をもとに国際比較する。

1 政治・行政における参画

社会の構成員の意思を公正に反映できる男女共同参画社会の実現のためには,男性と女性が対等に政治・行政に参画し,あらゆる政策的取組において,男女双方の視点を盛り込むことが極めて重要である。

男女共同参画社会形成に向けての国際的な動きが活発化する中で,日本においても徐々にその重要性が認知されてはきたものの,政治・行政分野における女性の参画については,諸外国と比較して依然進んでいるとは言いがたい状況にある。

(国会議員)

女性の国会議員について,1970年から2006年までの変化をみると,全ての国において増加がみられるが,その増加の時期や増加のスピードに差がみられる(第1-特-4図)。

第1-特-4図 国会議員に占める女性の割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-4図 国会議員に占める女性の割合の推移

スウェーデンは,1970年代から高い水準となっており,1990年に約40%となるまで着実に増加し,2006年では47.3%とほぼ半数に近づいている。ノルウェーはそれに次ぐ水準である。その他の国においては,1985年まではどの国でも低く,ほとんど差がない状況であったが,ドイツ,オーストラリア,英国,米国では1985年以降に増加がみられ,特にドイツでは1987年,オーストラリアは1998年の選挙において大きな伸びを示し,2006年にはそれぞれ31.6%,24.7%となっている。また,アジアにおいても,一部の国では議員に占める女性の比率が着実に増加している。例えば,シンガポールでは2000年にはわずか4.3%であったが,2006年には21.2%と大幅な増加となっているほか,フィリピン,韓国でも,1990年代後半から着実な伸びを示している。

一方,日本,マレーシアでは,おおむね上昇傾向にはあるものの,その伸びは小さく,2006年でも10%を下回る状況となっている。これは,世界的に見ても低い水準であり,IPU(列国議会同盟)が調査対象としている189か国中,それぞれ131位,135位という順位である(第1-特-5表)。

第1-特-5表 国会議員における女性の割合 別ウインドウで開きます
第1-特-5表 国会議員における女性の割合

女性の国会議員の増加の要因としては,まず,選挙制度やクォータ制等の取組などがある。例えば,韓国では,2000年まで歴代国会における女性議員の比率は2.5%に過ぎなかったが,2000年の政党法の改正により政党公選割当制が導入され,さらに改正により強化された結果,2004年の国会議員選挙においては,同13%を占めるまでに増加した。

また,制度的要因以外にも,社会的・文化的状況が大きく影響する。例えば,スウェーデンでは,1970,80年代の女性の国会議員の著しい増加は,女性の職場進出が進み,多くの女性が労働者及び納税者としての意識を持つようになったこと,仕事と家庭の両立という課題に直面するようになったこと等により政治への関心が高まり,政治への女性の参画の風潮があったこと等が影響したと考えられる。また,女性の国会議員が増加したことが女性の就労に対する環境条件の整備を促進し,環境条件が整備されたことで,女性の職場への進出が更に進んだといわれている。

(議会議長)

国会議員に占める女性の割合が増えるにつれ,女性の議会議長も増加傾向にある。第二次世界大戦前には,唯一オーストリアが,1927年に女性議長を輩出したのみであったが,ここ20年ほどで急増し,現在では,日本,英国,米国を含む32か国の議会で35名(13.4%)の女性議長が活躍している(第1-特-6図)。

第1-特-6図 世界の議会議長に占める女性の割合 別ウインドウで開きます
第1-特-6図 世界の議会議長に占める女性の割合

(閣僚)

国会議員同様,ノルウェー,フランス,スウェーデンでは,閣僚に占める女性の割合も高水準であり,既に40%を超えている。特に,ノルウェーの女性の閣僚は47.4%と半数に迫っている。また,2007年5月に成立したフランスの新内閣でも半数に近い閣僚が女性であった。ドイツ,英国,米国,フィリピンにおいても,女性の国会議員の増加を反映し,閣僚に占める女性の割合も年々増加している。特に,ドイツ,英国では,近年著しい増加がみられる。

日本においては,諸外国と比べると高い水準とは言えず,現在は,11.1%となっている(第1-特-7表)。

第1-特-7表 閣僚に占める女性の割合(2007年) 別ウインドウで開きます
第1-特-7表 閣僚に占める女性の割合(2007年)

(コラム:世界の女性リーダー達)

(国家公務員)

国家公務員に占める女性の割合は,日本の場合,20.0%であり,上位の役職に占める女性の割合は1.8%と,諸外国に比べて著しく低い(第1-特-9表)。

第1-特-9表 女性国家公務員の在職状況 別ウインドウで開きます
第1-特-9表 女性国家公務員の在職状況

まず,全職員をみると,英国,フランス,シンガポール,フィリピン,オーストラリアで50%以上を女性が占めている。また,米国も43%と半数近くとなっている。上位の役職に占める女性の割合は,職員全体に占める割合に比べて低いが,スウェーデンで40%を超えているほか,シンガポールで62%,オーストラリアでも3分の1を占めている。

1995年から2005年では,全職員に占める女性の割合は大きく変化していない国が多いものの,上位の役職に占める女性割合は,特に英国,米国で著しく増加した。

日本では,上位の役職に占める女性の割合は,着実に増加しているものの,依然として低水準となっている。

(審議会等委員)

審議会等の諮問機関の委員に占める女性の割合は,スウェーデン,ノルウェー等で高く,ドイツ,シンガポールで低くなっている。日本においても,審議会等における女性の登用は着実に進んでおり,2006年には31.3%となっている(第1-特-10表)。

第1-特-10表 審議会等における女性委員の割合 別ウインドウで開きます
第1-特-10表 審議会等における女性委員の割合

2 働く場における女性の参画

就業は,人々の生活の基礎となるものであり,男女共同参画社会の実現にとって,極めて重要な意味を持つ分野である。

日本の女性は,出産・育児を契機に就業を中断する者が多く,約7割を占める。また,再就職しても,フルタイムの労働者との賃金格差の大きいパートタイム労働者として働くことが多い。これらは,女性の登用を妨げ,また,女性が能力を社会の中で十分活かしきれない原因の1つともなっている。一方では,欧米諸国を中心に,女性が育児期にも就業を中断することなく継続している国も多い。

ここでは,こうした働く場での女性の参画状況を各国のデータを比較しつつ分析する。

(各国の管理的職業従事者への登用状況)

日本の労働分野においては女性が管理的職業従事者に占める割合が低くなっている。日本においては,就業者の4割を女性が占めているが,諸外国も30%台後半から40%台となっており,ほぼ同じ水準を示している。ところが,管理的職業従事者に占める女性の割合を見ると,日本は,欧米諸国と比べて極端に低く,フィリピン,マレーシア,シンガポール等のアジア諸国にも大きく引き離されている。女性の就業者割合と管理的職業従事者割合の差についても,フランス,韓国を除く諸外国と比較して目立って大きい(第1-特-11図)。

第1-特-11図 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合 別ウインドウで開きます
第1-特-11図 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合

次に,各国の就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合の1985年からの変化を見ると,各国とも女性就業者の割合の変化はそれほど大きくないが,女性の管理的職業従事者割合は諸外国では増加幅の大きな国が多く,特にオーストラリア,フィリピン,マレーシア等では割合が倍増しており,変化が目立つ。これに対し,日本,韓国は増加幅が非常に小さい(第1-特-12図)。

第1-特-12図 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(1985~2005) 別ウインドウで開きます
第1-特-12図 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(1985~2005)

(女性の労働力率)

働く場で指導的立場に立つ女性の割合が伸び悩んでいる原因として,就業の中断が考えられる。日本の女性の労働力率は全体として上昇傾向にあるが,年齢階級別にみると30~34歳層を底とするM字カーブを描き,依然として子育て期に就業を中断する者が多い。日本の女性も子育て期にも就業継続を希望する者が多いが,実際は,就業できていない状況を示している(第1-特-13図)。

第1-特-13図 日本における女性の年齢階級別潜在的労働力率 別ウインドウで開きます
第1-特-13図 日本における女性の年齢階級別潜在的労働力率

諸外国の女性の1970年代からの年齢別労働力率の推移をみると,各国とも労働力は上昇している。年齢階級別に各国女性の労働力率の変化をみると,フィリピンについては1970年代から,米国,スウェーデンについては,1980年代には既に逆U字型を示している。英国,フランス,ノルウェーなどは,1970年代,80年代はM字カーブを示していたが,2005年には完全にM字カーブの底が解消して逆U字カーブを形成している。このように,欧米諸国を中心に,逆U字カーブを示している要因としては,仕事と子育ての両立支援策の充実等女性が働きやすい環境条件の整備や一般的にフルタイム労働とパートタイム労働の転換が可能であること等が考えられる。なお,韓国,オーストラリアなどは,日本と同様,依然M字カーブを示しているが,1990年代には25~29歳層であったM字カーブの底が,2005年には30~34歳層へと移行しており,就業を中断する時期が高齢化していることが分かる。一方,シンガポール及びマレーシアは,全体として女性の就業率が低く,また,就業中断の高齢化の傾向は見られるものの,いったん就業を中断すると再び就職する者が少ない「への字型カーブ」を描いている(第1-特-14図)。

第1-特-14図 各国年齢階級別女性労働力率 別ウインドウで開きます
第1-特-14図 各国年齢階級別女性労働力率 第1-特-14図 各国年齢階級別女性労働力率

(日本の男女間賃金格差)

女性の登用状況や就業の中断は,男女間賃金格差にも影響する。つまり,男女間賃金格差もまた,働く場における女性の地位を示す指標の1つである。男女間の賃金格差は,他国でもある程度見られる問題ではあるが,フィリピンをはじめ,スウェーデン,ノルウェー,オーストラリア,フランス等で格差が解消されてきている一方で,日本の格差は韓国,マレーシアと並んで大きい(第1-特-15図)。

第1-特-15図 男女間賃金格差 別ウインドウで開きます
第1-特-15図 男女間賃金格差

(パートタイム労働)

日本では,男女の勤続年数の差が昇級・昇格の格差を生じさせる要因の一つとなっている。日本の女性の平均勤続年数が短いのは,出産・育児により退職する者が多いためである。さらに,日本において,いったん退職した女性が再就職する場合,多くはパートタイム労働者5となる。そこで,各国のパートタイム労働者の割合の推移をみてみると,全体的に男女とも1990年に比べてパートタイム労働者の割合は増加する傾向にあるが,水準としては女性の方が男性に比べて圧倒的に高い。また,日本は,男女ともパートタイム労働者の比率が急激に伸びてきており,国際的に見ても高水準となっている(第1-特-16図)。

第1-特-16図 パートタイム労働者の比率の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-16図 パートタイム労働者の比率の推移

(フルタイム労働者とパートタイム労働者との処遇格差)

EU諸国では,1980年代から同一労働・同一賃金の考え方に基づき,パートタイム労働者とフルタイム労働者との均等待遇について法的整備が進められていたが,1997年には,EU加盟国の共通ルールとして労働時間による差別的取扱いを禁止するEUパートタイム労働指令が制定され,これに基づいて各国の取組が進んだ。特に,パートタイム労働者の増加と共にワークシェアリングが進み,長期の経済停滞から抜け出すことのできたオランダをはじめ,ドイツ,英国,スウェーデンでもフルタイムとパートタイムの相互転換が法令に定められている。

一方,日本のパートタイム労働者は,同一職務である場合もフルタイムで働く正社員との賃金格差・処遇格差が存在する(第1-特-17図)。

第1-特-17図 パートタイム労働者の賃金水準(正社員との比較) 別ウインドウで開きます
第1-特-17図 パートタイム労働者の賃金水準(正社員との比較)

また,パートタイムの非正規社員から正社員への転換制度をもつ事業所は相当程度あるが,パートタイム労働者を責任ある地位へ登用する事業所は全体の1割程度とごく少数にとどまっている(第1-特-18図)。さらに,日本の場合は,正社員の身分を維持したままでのパートタイム労働とフルタイム労働の相互転換は活発に行われていない。

第1-特-18図 パートタイム労働者の正社員への転換制度 別ウインドウで開きます
第1-特-18図 パートタイム労働者の正社員への転換制度

3 生活における参画

日本では,多くの女性が出産・育児を契機に退職しており,仕事と出産・子育て等との両立に苦労している状況にあるが,その背景には,男性も含めた働き方等の問題があると考えられる。ここでは,主に家庭における参画に関して諸外国との比較を通じ,日本における問題点を分析する。

(育児期の役割分担)

未就学児のいる共働き家庭を対象とした調査結果から男女計の家事・育児時間に占める男性の割合をみてみると,各国とも5割を下回っており,夫より妻が家事・育児に費やす時間が長いことが分かるが,ノルウェー,オーストラリア等,4割前後を夫が分担している国がある一方で,日本は12.5%,韓国は12.2%と目立って低くなっている(第1-特-19図及び第1-特-20図)。

第1-特-19図 男女計の家事・育児時間に占める男性の割合 別ウインドウで開きます
第1-特-19図 男女計の家事・育児時間に占める男性の割合

第1-特-20図 育児期にある夫婦の育児,家事及び仕事時間の各国比較 別ウインドウで開きます
第1-特-20図 育児期にある夫婦の育児,家事及び仕事時間の各国比較

(日本人の労働時間)

育児時間の短さと表裏一体であるのが労働時間の長さである。韓国,シンガポール等時短の進んでいないアジア諸国と並び,日本の実労働時間は,西欧諸国と比較して長くなっている(第1-特-21図)。また,週労働時間が50時間以上の長時間労働者の割合も,他の西欧諸国と比べて極端に多く,4人に1人以上が長時間労働者となっている(第1-特-22図)。年間休日数を見ても,西欧諸国と比較して祝日等の休日は多いものの,年次有給休暇の取得が少ないために,全体としての休日数が少なくなっている(第1-特-23図)。男女の役割分担意識が変化してきているにも関わらず,長時間労働のために,家事や育児に時間を費やすことができない実情があると考えられる。

(コラム:都市比較に見るワーク・ライフ・バランスと父親の家事・育児参加)

第1-特-21図 週当たり実労働時間 別ウインドウで開きます
第1-特-21図 週当たり実労働時間

第1-特-22図 週労働時間50時間以上の労働者割合 別ウインドウで開きます
第1-特-22図 週労働時間50時間以上の労働者割合

第1-特-23図 年間休日数の国際比較 別ウインドウで開きます
第1-特-23図 年間休日数の国際比較