平成18年版男女共同参画白書

本編 > 第2部 > 第6章 > 第1節 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

第6章 男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援

第1節 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

1 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

急速な少子化の流れを変え,子どもの育ちや子育て家庭を社会全体でしっかりと応援するため,平成17年度においては,国の基本施策である「少子化社会対策大綱」(平成16年6月閣議決定)の具体的実施計画として策定された「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について(子ども・子育て応援プラン)」(平成16年12月少子化社会対策会議決定)に基づき,若者の自立や働き方の見直し,地域における子育て支援など幅の広い取組を進めている。

また,平成17年4月の「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)の本格施行に伴い,地方公共団体においては,地域における子育て支援や母性,乳幼児の健康の確保・増進等を内容とする地域行動計画,各事業主においては,仕事と子育ての両立支援のための雇用環境の整備,働き方の見直しに資する労働条件の整備等を内容とする一般事業主行動計画が策定され,これに基づく取組が進められている。

(1)保育サービスの整備

厚生労働省では,平成17年度において,待機児童の解消に向け,保育所を中心に受入児童数の増を図るため,保育所の整備を進めるとともに「子ども・子育て応援プラン」に基づき,多様な需要に応える保育サービスの提供の充実を図った。

また,待機児童が50人以上いる市区町村等においては,平成16年度に策定した保育計画に基づき,17年度より待機児童解消に向けた総合的な取組を行っている。

さらに,国庫補助対象の放課後児童クラブを800か所増の1万3,200か所とした。このほか,年長児童等が赤ちゃんと出会い,ふれ合う場づくり,中・高校生の交流の場づくり,絵本の読み聞かせ,親と子の食事セミナーを開催するなどの「児童ふれあい交流促進事業」を実施した。

経済産業省では,商店街の空き店舗を活用して,保育所等を設置・運営する際の改装費や賃借料など立ち上げに係る費用の一部を補助し,待機児童問題の解消や女性の社会進出といった少子化社会等への対応を図っている。

(2)幼稚園における子育て支援の充実

文部科学省では,幼稚園の通常の教育時間(4時間)の前後や長期休業期間中などに行われる「預かり保育」を実施する幼稚園に対して支援を行うなど,幼稚園における子育て支援を推進している。

また,幼児期からの「人間力」の向上を図るため,平成17年度から新たに,教育委員会等に保育カウンセラー等の専門家からなる幼児教育サポートチームを設置し,幼稚園,保護者・家庭等を支援する「幼児教育支援センター事業」を実施している。さらに,幼稚園の機能を活用し,親に子育ての喜びを実感する機会を提供し,親の子育て力の向上を図る「幼稚園における親の子育て力向上推進事業」を実施している。

(3)総合施設の制度化に向けた取組

小学校就学前の子どもやその保護者の教育・保育のニーズが年々多様化していることを踏まえ,幼児教育・保育と地域の子育て支援を総合的に提供する機能を持った「就学前の教育・保育を一体としてとらえた一貫した総合施設」の実施に向け,中央教育審議会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会の合同の検討会議において検討を進め,平成16年12月に総合施設の基本的な在り方について「審議のまとめ」を取りまとめた。

平成17年度には総合施設における教育・保育の内容,職員配置,施設設備の在り方等について検討するため,総合施設モデル事業を全国35か所で実施した。この実施状況も踏まえた上で総合施設の具体的な制度設計を行い,平成18年度からの本格実施に向けて,「就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律案」を第164回通常国会に提出した。

(4)幼稚園就園奨励事業の促進

保護者の所得状況に応じて経済的負担を軽減するとともに,公・私立幼稚園間の保護者負担の格差の是正を図ることを目的として,幼稚園の保育料等を減免する「就園奨励事業」を実施する地方公共団体に対して,文部科学省では,幼稚園就園奨励費補助金により所要経費の一部を補助している。(負担割合は,おおむね国3分の1,市町村等3分の2。)

当該補助金では,1所得水準に応じて補助額を設定し,2同時就園している幼児数に応じて補助率の優遇措置を設け,また,3公私立間の入園料・保育料の格差を是正するため,補助単価の改善に努めている。平成17年度には,同時就園の場合の第1子の保育料等に係る保護者負担を1とした場合,第2子の保護者負担を0.6,第3子以降は0.2として設定し,入園料・保育料実績の増加に伴い,補助単価を1%増額した。

(5)子育てに関する相談支援体制の整備

文部科学省では,子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親の相談に気軽に応じ,アドバイスを行う子育てサポーター同士の相互連携の促進や,情報交換の機会の提供などの役割を担う「子育てサポーターリーダー」を養成し,相談支援体制の一層の充実を図っている。平成17年度からは,新たに,携帯電話やパソコンを活用した子育て相談や情報提供を行う手法の開発・普及を行っている。

また,子育てのヒント集として,家庭における子育てやしつけの在り方や様々な相談窓口を紹介した「家庭教育手帳」を作成し,乳幼児等を持つ親に配布している。

さらに,独立行政法人国立女性教育会館では,家庭教育の重要性にかんがみ,子育て関係者の情報交換・研究協議,さらには関係機関・団体・リーダー等のネットワーク形成を促進する協議会,「子育てネットワーク in ヌエック」などを開催するとともに,家庭・家族の変化,家庭教育の実態や親の意識等に関する国際比較調査を実施している。

(6)児童虐待への取組の推進

児童虐待の防止については,関係府省庁,関係団体(40団体)等による児童虐待防止対策協議会において,国レベルのネットワークの構築を図っている。

また,関係府省庁や地方自治体,関係団体等が連携・協力して,児童虐待の発生予防から早期発見・早期対応,子どもの保護や自立に向けた支援,アフターケアに至るまでの切れ目のない総合的な取組を推進している。

厚生労働省では,1発生予防の観点から,子育て中の親に対する交流・つどいの場の提供や地域子育て支援センターの拡充及び養育が困難になっている家庭を訪問し,育児・家事の援助等を行う育児支援家庭訪問事業の推進,2早期発見・早期対応の観点から,児童相談所が夜間休日を問わず,いつでも相談に応じられる体制の整備(24時間・365日体制),子どもの生命の安全と心身のケアに万全を期し,迅速かつ的確な対応を図るため,児童福祉司の配置基準の見直しなど児童相談所の体制強化,3虐待を受けた子ども等を保護・支援する観点から,児童養護施設等における小規模グループケアの推進,総合的な家庭環境調整を行う家庭支援専門相談員の配置などを行った。

また,地域の住民に最も身近な市町村における要保護児童地域対策協議会(虐待防止ネットワーク)の設置を促進している。

法制度についても,1児童虐待に係る通告義務の範囲の拡大等を内容とする児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「児童虐待防止法」という。)の改正(平成16年10月施行),2児童相談に関する体制の充実等を内容とする児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正(平成17年4月施行)など,その充実が図られているところである。

警察では,児童虐待防止法の趣旨を踏まえ,児童虐待事案の早期発見と迅速かつ確実な通告,児童相談所長等による児童の安全確認等に万全を期するための適切な援助,適切な事件化と児童の支援等に努めるなど,関係機関との緊密な連携を図りつつ,被害児童の迅速かつ適切な保護に努めている。

法務省の人権擁護機関においては,子どもの人権問題に関する専用の電話相談窓口である「子どもの人権110番」を設置するなどして相談体制の充実を図っている。また,毎年11月の「児童虐待防止推進月間」において,子どもの人権専門委員全国会議を開催し,児童虐待防止のための取組強化を図っている。さらに,平成17年度人権に関する国家公務員等研修会において,児童虐待をテーマとする講演を行ったほか,全国各地で児童虐待を含む虐待をテーマとした啓発冊子の作成・配布,講演会・研修会等の実施などの啓発活動を積極的に推進するとともに,人権相談,人権侵犯事件の調査処理を通じて,児童虐待の問題に取り組んでいる。

文部科学省では,児童虐待への適切な対応等について,学校教育及び社会教育関係者に対し引き続き周知を図り,学校教育・社会教育関係者と児童相談所等の関係機関との緊密な連携を図っている。また,各学校・教育委員会における児童虐待防止に向けた取組の充実を図るため,国内・海外の先進的取組等の収集・分析などを行う「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究」を平成17年度より実施している。

(7)子育てを支援する良質な住宅,居住環境及び道路交通環境の整備

国土交通省では,子育てを支援する良質な住宅,居住環境の整備として,公共賃貸住宅の整備等において保育所等の子育て支援に資する施設等の一体的整備を推進している。加えて大規模な公共賃貸住宅団地の建替えに際し,保育所等の施設との併設を原則化し,生活拠点の形成を図っている。さらに,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自動車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備等,交通安全施設等の整備を推進している。

警察では,子ども連れでも自宅周辺や通学路を安心して歩くことができるよう,「あんしん歩行エリア」として国土交通省とともに指定している死傷事故発生割合が高い住居系地区や商業系地区において,信号機,光ビーコン等の交通安全施設等を重点的に整備し,生活道路における通過交通の進入抑制や速度抑制,外周となっている幹線道路における交通流円滑化等の道路交通環境の整備に努めている。

また,交通安全の観点からの子育て支援策として,幼稚園・保育所,病院等と連携したチャイルドシートの正しい取付け講習会を開催したり,地方公共団体,民間団体等が実施している各種支援制度の活用を通じて,チャイルドシートの普及促進に積極的に取り組んでいる。

(8)子育てバリアフリー等の推進

国土交通省では,高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成12年法律第68号)や高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号)等に基づき,多くの方が利用する建築物,公共交通機関及び道路や都市公園等の公共施設について,妊産婦や子連れの方にも利用しやすいように段差の改善等のバリアフリー化を推進している。

また,ハード整備と併せて,交通バリアフリー教室の開催やバリアフリーボランティアの実施等により「心のバリアフリー社会」の実現を図るとともに,鉄道駅等の旅客施設や宿泊施設のバリアフリー化の状況に関する情報提供を行う等ソフト面の施策についても積極的に推進している。

さらに,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS:スペシャル・トランスポート・サービス)の普及を推進している。

2 ひとり親家庭等に対する支援の充実

厚生労働省では,母子家庭の母等について,平成15年4月に施行された改正母子及び寡婦福祉法に基づき,1子育て短期支援事業,日常生活支援事業等の子育て・生活支援策,2母子家庭等就業・自立支援センター事業,母子家庭自立支援給付金等の就業支援策,3養育費の確保策,4児童扶養手当の支給,母子寡婦福祉貸付金の拡充等の経済的支援策といった自立支援策を総合的に展開している。

また,平成15年7月に成立し,同年8月に施行された母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法(平成15年法律第126号)に基づき,より一層の就業支援策を講じている。