平成18年版男女共同参画白書

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特集 女性が再チャレンジしやすい社会へ

少子高齢化が進行する中,日本は遂に人口減少時代に突入した。我が国が将来にわたり活力ある経済・社会を維持していくためには,急速な少子高齢化が進む中,新たな発想の下で社会の在り方を考えていく必要がある。

社会の担い手は男性,女性を含めたすべての国民である。社会全体に活力が生まれるためには,国民一人一人が個性と能力を十分に発揮できるよう,多様な選択肢が用意され,誰でも意欲を持って社会参画ができるような環境が整っていなければならない。しかしながら,我が国のおかれた現状をみると,特に女性にとっては,自らの意欲や能力を生かせるような環境が十分に整っているとは言えないのではないか。

例えば,女性の社会進出が進んだと言われる今日でも,仕事を続けたいと希望しながらも出産により退職を余儀なくされている女性も多い。そして,子育てが一段落してから再び仕事に戻ろうとしても,本人の希望する仕事に就くのが非常に困難であるという現実がある。このような境遇におかれた女性の意欲と能力を生かせる環境を作ることは,女性本人にとっても,企業や社会全体にとっても有益である。

結婚,出産などの家庭生活上の変化があっても退職せずに仕事を続けることができる選択肢が制度面だけでなく実態としても用意されていることが重要であり,このためには,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のとれた働き方ができ,就業を継続しやすい環境を整えることが重要である。同時に,子育て等によりいったん退職した女性が再チャレンジしやすい社会づくりを進めていくことも当面する重要課題である。

働きながら子育てできる環境を整えるとともに,子育てのためにいったん女性が家庭に入っても,希望すれば再チャレンジできる環境が整備されることで,安心して子どもを生み育てることができる。女性の再チャレンジ支援などを進め男女共同参画社会を実現することは,安心と喜びを持って子どもを生み育てることができる社会の実現につながり,少子化対策としても有効なのである。

第1節では,まず子育て期を中心とした女性の労働の現状を明らかにする。

第2節では,女性の再就職・起業等をめぐる問題点を整理し,希望に沿った再チャレンジがなかなか進まない状況を明らかにする。

第3節では,求められている支援策や実際の支援の事例について紹介する。また,現在の国の再チャレンジ支援策を紹介するとともに,今後さらに必要とされる取組について言及する。

特集のポイント


第1節 子育て期の女性の労働の現状

  • 女性の労働力率は子育て期に低下するが,子育て期の就業希望者は多い。
  • 仕事と家庭に関する男女の意識の変化をみると,女性が職業を持つことについて,男女ともに継続就業支持が最多となっている。
  • 女性の勤続年数は長期化傾向にあるが,第1子出産前後で就業を継続できている女性は3割に満たない。
  • 今後,人口の減少,団塊世代の大量退職等により人材不足が懸念される中,企業における女性の活用が重要になってくると予想される。

第2節 女性の再就職・起業等の現状

  • 就業希望率が30歳代で最も高くなる一方,30歳代の再就職率は低く,希望と現実が大きく乖離している。また,40歳代の大学・大学院卒の有業率が低い。
  • 女性の再就職における雇用形態はパートが多数を占めている。正社員での再就職を希望しても,実際に正社員となるのは難しい。
  • 希望に沿った再就業が難しい要因を女性の意識からみると,仕事と子育ての両立,企業の採用行動の問題など様々な課題がある。

第3節 誰でも再就職・起業等ができる社会を目指して

  • 女性が再就業に当たって企業に求めているのは,家庭との両立に関する事項や,採用時の年齢制限の緩和などが多い。一方、企業は専門的・技術的人材に不足感を感じている。
  • 政府では平成17年12月に「女性の再チャレンジ支援プラン」を策定しており,今後,総合的な情報提供,地域におけるネットワーク構築,学習・能力開発支援,再就職支援,起業支援などの施策を講じることとしている。