平成15年版男女共同参画白書

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第2節 政治・行政分野における女性の参画

男性と女性が社会の対等な構成員として政治・行政分野に参画することは,男女共同参画社会の形成を図っていく上での基盤をなすものであり,あらゆる政策的取組において,女性の視点を盛り込むことが重要である。

男女共同参画社会形成に向けての国際的な動きが活発化する中で,日本においても徐々に政治・行政分野への女性の参画の重要性が認知されてきたが,女性の参画については,諸外国に肩を並べるには至っていない。

ここでは,諸外国において,どのように政治・行政分野への女性の参画を加速させてきたのか,日本の現状と比較しつつ分析する。

1.女性の政治への参画状況

(国会議員)

1970年から2002年までの変化をみると,すべての国において,女性の国会議員の増加がみられるが,その増加の時期や増加のスピードに差がみられる(第1-序-5図)。

第1-序-5図 女性議員割合 別ウインドウで開きます
第1-序-5図 女性議員割合

スウェーデンは,1970年代から高い水準となっており,1990年に約40%となるまで着実に増加し,2002年では45.3%となっている。その他の国においては,1970年から85年まではどの国でも低く,ほとんど差がない状況であったが,ドイツ,イギリス,アメリカでは1985年以降に増加がみられ,特にドイツでは1987年の選挙において大きな伸びを示し,2002年では32.2%となっている。

日本,韓国では,1995年以降上昇しているものの,その伸びは小さく,2001年でも10%を下回る状況となっている。

女性の国会議員の増加の要因としては,以下で記述するように,選挙制度やクォータ制等の取組などがあるが,それ以外にも社会的状況が大きく影響する。

例えば,スウェーデンでは,1970,80年代の女性の国会議員の著しい増加は,女性の職場進出が進み多くの女性が労働者及び納税者としての意識を持つようになったこと,仕事と家庭の両立という課題に直面するようになったこと等により政治への関心が高まり,政治への女性の参画の風潮があったこと,並びに女性団体(フレドリカ・ブレーメル協会など)の積極的な活動があったこと等が影響したと考えられる。また,女性の国会議員が増加したことが女性の就労に対する環境条件の整備を促進し,環境条件が整備されたことで,女性の職場への進出が更に進んだといわれている。

(閣僚)

スウェーデン,ドイツでは,閣僚に占める女性の割合が40%を超えている。また,韓国,フィリピン,アメリカ,イギリスにおいても,女性の国会議員の増加を反映し,閣僚に占める女性割合も年々増加している。特に,ドイツ,韓国では,近年著しい増加がみられる。

日本においては,内閣によってかなり差があり,年々着実に増加しているとはいえないが,現在は,国会議員に占める女性の割合よりも高い割合となっている(第1-序-6表)。

第1-序-6表 閣僚に占める女性の割合 別ウインドウで開きます
第1-序-6表 閣僚に占める女性の割合

(地方議員)

アメリカ,スウェーデン,イギリスでは国会議員に占める女性の割合よりも,地方議員に占める女性の割合が高くなっており,より地域に根ざしたレベルでの女性の参画が進んでいる。日本,韓国においては,国会議員とほぼ同じ割合だが,ドイツは地方議員に占める割合が国会議員よりも低くなっている(第1-序-7表)。

第1-序-7表 地方議会における女性議員割合 別ウインドウで開きます
第1-序-7表 地方議会における女性議員割合

2.女性議員の選出に影響を与える要因

女性の国会議員の選出を決定づける要因としては,社会的経済的要因,文化的要因,政治的要因等があるが,ここでは,政治的要因をとりあげる。

(選挙制度)

日本,韓国,フィリピン,ドイツでは,現在,小選挙区制と比例代表制を組み合わせた選挙制度がとられている(下院又は一院)。スウェーデンは,比例代表制となっており,アメリカ,イギリスでは,小選挙区制となっている(下院又は一院)。

選出方法別の女性議員割合をみると,比例代表制の方が選挙区制よりも女性議員の選出割合が高くなっている(第1-序-8表)。

第1-序-8表 選出方法別女性議員割合 別ウインドウで開きます
第1-序-8表 選出方法別女性議員割合

比例代表制では,政党が作成する候補者名簿に女性がどの程度,どの順位に掲載されるかが,女性議員が選出される機会を得るということに直結している。このため,候補者名簿に女性を一定割合掲載するクォータ制が政党独自の取組又は法制度として多くの国で導入されている。

(女性議員増加のための様々な取組)

諸外国で行われている女性議員の選出を増やすための様々な取組には,クォータ制のように女性に対して積極的かつ直接的に機会を与える手法と女性に対する資金援助,教育等のように間接的に支援する方法の二つがある。

(クォータ制)

クォータ制には,党内の役員や党内選挙の候補者に女性を割り当てる方法と,対外選挙における候補者名簿に女性を割り当てる方法の二つがある。党内のクォータ制は,女性が党内の主要なポストを経験することで,対外的な選挙の候補者として擁立されやすくなる。一方,候補者名簿に女性を一定数割り当てることは,女性が議員に選出される直接的な機会を得ることになる(第1-序-9表)。

第1-序-9表 諸外国における女性議員増加のための主な取組 別ウインドウで開きます
第1-序-9表 諸外国における女性議員増加のための主な取組

クォータ制については,スウェーデン,ドイツ,イギリスのように政党が自らの党綱領などにより規定する場合と,韓国,フィリピンのように法律により規定する場合があるが,アメリカを除く5か国すべてでクォータ制を導入した実績がある。クォータ制の導入状況は,各国の女性の議会への参画状況や社会的背景を反映して様々であり,その効果についても,女性の政治への参画に関する社会的基盤があるか否かで大きく異なる。

スウェーデンは,1991年の選挙で,女性議員の割合が減少したことから,政党が選挙名簿におけるクォータ制を導入し,その後の選挙において女性議員が大幅に増加することとなった。スウェーデンにおいては,女性自身の政治への参画意識が高く,女性の政治参画を促す社会的な環境が整備されていたことから,クォータ制が大きな効果を発揮したといえる。

ドイツでは,主要政党がクォータ制を導入し始めた1980年代後半以降,着実に女性議員が増加した。それまでも,各政党において党内の女性の地位向上に関して取組が進められていたが,はかばかしく進展しなかったことから,事前に詳細な検討が行われた後,クォータ制が最終的な手段として導入されており,女性の政治参画への気運は高まっていたといえる。

二大政党制のイギリスでは,女性政策が選挙の争点の一つとなっており,1990年代に入って,労働党が様々な方法でクォータ制を導入したことから,1992年から97年にかけて,女性議員数が60人から120人へと倍増した。

韓国は,日本と同様に女性議員の割合が低い状況にある。2000年の第16代選挙の前に政党法を改正し,比例代表選挙名簿の30%を女性とする割当制を導入したことから,16代選挙では女性議員が9人(3.0%)から16人(5.9%)へ増加したが,依然として低い数値にとどまっている。1987年の民主化宣言以降,各政党は女性の地位向上のための施策を打ち出し,1992年の第14代大統領選挙以降,女性の政治参画の拡大の支援が公約とされるなど女性の政治参画への意識の高まりがみられる。また,1995年に制定された女性発展基本法においても,女性の政治への参画の拡大に対する政府の支援を明記しており,このような変革の波が政党法の改正につながっている。

一方,アメリカにおいては,1970年代後半以降,雇用や教育分野でのアファーマティブ・アクションに関する訴訟において,違憲・違法の判決が出されるなどの動きがあり,政治分野においても各政党はクォータ制に対して慎重な姿勢をとっている。

 

(クォータ制以外の特徴的な取組)

クォータ制以外の特徴的な取組としては,ドイツ,イギリスの政党において行われている現職の議員が,候補者に対して教育的指導や経済的援助などを行うメンター制や,アメリカ,イギリスでみられる民間団体による女性議員候補者への資金の援助や選挙キャンペーンの協力等がある。

アメリカでは,1971年に,選挙に出る女性候補者のリクルート等,教育,選挙支援を行う民間団体が設立され,その後,二大政党において女性議員候補者への資金の援助や選挙キャンペーンの協力等を行う民間団体がそれぞれ設立されたことが,1990年以降の女性議員の増加に影響を与えている。

ドイツでは,政党のみならず州政府においても政治により多くの女性を参画させるためメンター制度を採用している。

また,スウェーデン議会では,議員の代理人制度が導入されていることから,議員が育児休業を取得する際にも代理人がその議員の代理として活動することができ,仕事と家庭を両立しやすい制度となっている。

日本においては,小選挙区・比例代表並立制の導入を契機に2000年の選挙において女性議員割合が増加したが,1970年からの推移をみると,諸外国に比べて増加のスピードは遅い。

上記のように諸外国では,クォータ制を始め,様々な手法で女性の政治参画を促進する取組を行っている。しかし,クォータ制等の取組も,女性の政治参画に対する意識や女性の政治参画を促すための環境整備等の社会的基盤がなければ,その効果が十分に発揮されない可能性がある。

今後,日本において,政治への女性の参画をより加速するには,まず,女性の政治への参画意識の高まりと,政党,民間団体等における女性候補者を育てる指導や資金援助等の積極的な取組が行われ,女性の政治参加のための社会的基盤が確立されることが重要である。

(コラム:クォータ制と女性議員) 別ウインドウで開きます

3.女性の政治への参加意識

(投票率)

女性の政策決定への参画に影響する社会的背景の一つとして,政治に対する関心の度合いがあり,投票率はそれを測る指標となる。

各国の国政選挙における投票率をみると,フィリピン,スウェーデン,ドイツでは,80%前後の高い投票率となっている。日本,韓国,イギリスはほぼ60%前後となっており,アメリカは男女とも50%を下回り低くなっている(第1-序-13表)。

第1-序-13表 国政選挙における投票率 別ウインドウで開きます
第1-序-13表 国政選挙における投票率

時系列でみると,すべての国において投票率は下がってきており,全体的に政治への関心は薄れてきている。

また,男女別の投票率では,日本,アメリカ,スウェーデン,フィリピンで女性の方が男性をやや上回っており,女性の政治への関心は決して低くない。

(国会議員に対する期待)

「女性が増えるとよい役職」についてみると,国会議員・地方議会議員については,日本,アメリカ,スウェーデン,イギリスで女性が増えるとよいとする回答が最も多くなっており,韓国,ドイツでも2番目に多い回答となっている(第1-序-14表)。

第1-序-14表 各国の女性が増えるとよい役職の上位3位(複数回答)(男女計) 別ウインドウで開きます
第1-序-14表 各国の女性が増えるとよい役職の上位3位(複数回答)(男女計)

スウェーデンにおいては,現在,女性国会議員が45.3%を占めているが,それでもまだ,女性が増えるとよいと感じている人が7割を占めており,平等意識が高い国民性ということに加えて,女性議員の実績が認知されているということの表れとも考えられる。

一方,日本では,最も多い国会議員等とそれ以外の役職との差が諸外国と比較して大きくなっており,女性の政治への参画ということに関しては,意識面でのバックアップがあることから,今後,女性議員が大きく増加することも期待される。

(政治の場における平等感)

スウェーデンでは,既に,国会議員に占める女性割合,閣僚に占める女性の割合は40%を超えているが,女性の政治における平等感をみると,女性議員の少なかった1982年よりも平等と感じている割合が減少し,男性の方が非常に優遇されていると感じている割合が10%以上も増加した(第1-序-15図)。

第1-序-15図 政治の場における平等感(女性) 別ウインドウで開きます
第1-序-15図 政治の場における平等感(女性)

また,日本,アメリカ,イギリスにおいても,女性議員が増加しているにもかかわらず,意識の面においては平等感が薄れているという同様の傾向がみられる。

この現象は,20年前と比較すると,女性の平等に対する意識が高まっていることを示唆しているものと考えられる。

一方,ドイツについては,20年前と比べると,政治の分野において平等であると感じている割合が増加し,男性が優遇されていると感じている割合が減少した。ドイツでは,1980年代後半から主要政党においても選挙名簿におけるクォータ制が導入され,女性議員の割合が急増したことが,平等感に影響を与えたものと考えられる。

4.行政分野での女性の参画

(女性国家公務員の現状)

国家公務員に占める女性の割合についてみると,日本は20.2%と最も低く,上位の役職に占める女性の割合も1.4%と最も低い(第1-序-16表)。

第1-序-16表 女性国家公務員の在職状況別ウインドウで開きます
第1-序-16表 女性国家公務員の在職状況

全職員でみると,アメリカ,イギリスは50%弱,フィリピンは60%弱を占めているが,上位の役職では職員に占める割合に比べて低い。一方,スウェーデンでは,全職員に占める女性の割合は40%程度だが,上位の役職に占める女性の割合は50%を超えている。

1995年と99年では,全職員に占める女性の割合は大きく変化していないものの,上位の役職に占める女性割合は,特にアメリカ,イギリスで著しく増加した。

日本では,上位の役職に占める女性の割合にほとんど変化がなく,女性職員の登用のスピードは,韓国,ドイツと同様遅くなっている。

(採用方法)

国家公務員の採用に関しては,スウェーデン以外の国では,競争試験が原則とされており,一定割合の女性の採用を義務付けている韓国を除けば,特段の違いはみられない(第1-序-17表)。

第1-序-17表 国家公務員の採用・登用方法 別ウインドウで開きます
第1-序-17表 国家公務員の採用・登用方法

アメリカ,ドイツでは,上位役職者等について政治的任用を行っている。

日本では,上位役職への登用のシステムに男女の差はないものの,女性の採用が少なく,また,家事・育児等との両立が困難等の理由により途中で辞めてしまうことが,女性の上位役職者が少ない要因となっている。また,中途採用による上位の役職者もほとんどいないことから,短期間で飛躍的に女性の上位役職者が増加することはない。しかし,女性の採用も徐々にではあるが増加しており,また,育児休業の可能な期間が3年に延長されるなど,両立支援策の充実が図られたことなどから,上位役職者となる女性が増えるまでには時間がかかるものの,着実に増加すると期待される。

(各国での女性職員の採用・登用拡大の取組)

女性国家公務員の採用・登用拡大に関する取組としては,一定の目標値などを定め,女性の採用・登用を促す方法と女性に対する研修や教育を充実させる方法の大きく二つが挙げられる(第1-序-18表)。

第1-序-18表 女性国家公務員の採用・登用拡大の主な取組 別ウインドウで開きます
第1-序-18表 女性国家公務員の採用・登用拡大の主な取組

アメリカでは,1960年代から女性等の積極的雇用計画を5年ごとに策定し,数値目標とタイムテーブルの設定が義務付けられていたが,現在はこれらの設定は義務付けられていない。

ドイツでは,2001年に制定された連邦平等法において,一定の条件下でのクォータ制を認めている。

韓国では,2002年までの時限的な措置として,女性国家公務員の採用に関して数値目標を設定している。女性採用目標制が導入された1996年は,女性の国家公務員試験合格率が26.5%であったが,2001年には33.4%に増加した。

フィリピンでは,女性の国家公務員の登用に関して,空席ポストへの男女共の推薦を義務付けている。

日本は,2001年に,各府省が各々採用・登用拡大計画を策定し取組を進めており,数値目標の設定は義務付けられていないものの,いくつかの府省においては数値目標を設定している。

一方,スウェーデンでは,1995年以降,女性職員に対する研修,教育に力を入れており,イギリスでも,メンター制を導入するなど教育・指導に重点を置いている。また,韓国においては,女性の昇任・任用に積極的に活用するため,管理職女性公務員に関するデータベースを構築し,女性管理職の人材情報を提供している。

日本における女性国家公務員の採用・登用拡大のための取組は,第一歩を踏み出したところである。今後,各府省において策定された採用・登用計画に盛り込まれた目標達成に向けて,各国において行われている様々な手法が参考になると思われる。

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