男女共同参画社会基本法逐条解説

1 趣旨

本条は、社会における制度又は慣行が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査研究、その他の男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の策定に必要な調査研究を推進するよう国に努力義務を課しているものである。

このような調査研究は、男女共同参画社会の形成に与える影響への配慮、男女共同参画社会の形成の促進等を行う際の基礎となるものであり、調査研究の成果を利用して、国は施策を策定、実施していくことになる。

基本理念の第4条(社会における制度又は慣行についての配慮)において、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするよう配慮することが掲げられている。

本条では地方公共団体については言及していないが、地方公共団体も第9条により、基本理念にのっとり、国の施策に準じた施策を策定し、実施する責務がある。本条により国が行う調査研究も、国の施策の一つであることから、地方公共団体においても調査研究を推進することが期待される。


2 用語解説

(1)「社会における制度又は慣行が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響」

本条の「社会における制度又は慣行」は第4条と同義である。

社会にある制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に中立でない影響を及ぼすことがあるので、国がこの影響についての調査を行うよう明示している。

「社会における制度」は、国、地方公共団体の策定、実施する施策、民間の策定、実施する取り決め、計画等全般を広く含む。

(2)「影響に関する調査研究」

社会における制度又は慣行が、どのような影響を男女の社会における活動の選択に及ぼすかという観点からの調査研究である。

(3)「国及び地方公共団体のその他の男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の策定及び実施に資する調査研究」

我が国における男女共同参画社会の形成の状況に関する調査研究、国民意識についての調査研究、諸外国の状況の調査研究などが含まれる。
 また、独立行政法人男女共同参画機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和7年法律第80号)に基づく改正により、国が国の施策の策定に必要な調査研究だけでなく、国及び地方公共団体の施策の策定及び実施に資する調査研究を推進する努力義務があることが明確化された。
 

[改正前]

第18条 国は、社会における制度又は慣行が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響に関する調査研究その他の男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の策定に必要な調査研究を推進するように努めるものとする。