男女共同参画社会基本法逐条解説

(年次報告等)

第12条 政府は、毎年(1)ア、国会に、男女共同参画社会の形成の状況(1)イ及び政府が講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策(1)ウについての報告を提出しなければならない。

2 政府は、毎年、前項の報告に係る男女共同参画社会の形成の状況を考慮して講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策(2)を明らかにした文書を作成し、 これを国会に提出しなければならない。

1 趣旨

男女共同参画社会の形成が重要な課題であることにかんがみ、その適正な実施を確保していくため、政府に対し毎 年、国会に報告を提出することを義務付けている。

第1項において報告すべき事項を、男女共同参画社会の形成の状況及び男女共同参画社会の形成の促進に関する 施策(積極的改善措置を含む。)としている。第13条に規定する男女共同参画基本計画は、男女共同参画社会の形成の 促進に関する施策の大綱であるので、この施策の進捗状況についても報告がなされることになる。

また、第2項において、男女共同参画社会の形成の状況を考慮して講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に 関する施策(積極的改善措置を含む。)についても、毎年、国会に提出することを求めている。

講じた施策及び講じようとする施策の両方を明らかにすることにより、同計画の進捗を促す効果や、国の施策を踏まえ て地方公共団体が施策を講ずることなどが期待される。

類似の年次報告の国会提出に係る規定は他の基本法にもあるが、講じようとする施策の提出まで政府に義務付けて いるのは環境基本法(平成5年11月19日法律第91号)に基づく年次報告、高齢社会対策基本法(平成7年11月15日法 律第129号)に基づく年次報告などである。

実務上は、本年次報告及び講じようとする施策を明らかにした文書は閣議決定の後、国会に提出される。

なお、本年次報告及び講じようとする施策を明らかにした文書は、いわゆる法定白書として、国会に提出後、刊行さ れ、また内閣府のホームページで概要が公開される。


2 用語解説

(1)第1項
ア「毎年」

毎年国会に提出することが必要であるが、時期は特に定められていない。

イ「男女共同参画社会の形成の状況」

第2条第1項に定義する「男女共同参画社会の形成」の状況すべてをいう。

ウ「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」

第8条において国の責務として規定されている施策で、積極的改善措置を含む。同条では、国は基本理念にのっと り、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するとされている。第1条 と第8条を受けて第13条に男女共同参画基本計画を規定しているので、毎年国会に報告される男女共同参画社会の形 成の促進に関する施策は、主として男女共同参画基本計画の進捗状況について報告することになる。

(2)第2項
ア「講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」

第1条で男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することとされている。このためには、講じられた施策 の報告だけでなく、これから講じようとする施策についても明らかにし、文書で提出することによって、男女共同参画社会 の形成の促進を図ることとしている。

広報や行政サービスの提供、行政指導、斡旋などが考えられる。なお、税制上の措置や金融上の措置は、法制上の 措置、財政上の措置に包含される。


<参考1>

基本計画のような公表に係る規定はないが、国会への提出により事実上公開される。また、男女共同参画白書として 市販されている。

<参考2>

昭和53年1月には国内行動計画に関する報告書(第1回)として「婦人の現状と施策」が取りまとめられた。これは、 「国際婦人年以降の国内行動計画に関連ある施策の実施状況と、婦人及び婦人をめぐる社会的環境に関する状況を明 らかにするとともに、今後の施策の効率的推進に資するため」策定されたものである。

「婦人の現状と施策」はその後、「女性の現状と施策」(平成4年12月)、「男女共同参画の現状と施策」(平成9年7 月)と名称を変え、国内行動計画に関する報告書として取りまとめられ、男女共同参画推進本部に報告された後、閣議に 配布されてきた。

なお、本規定に基づく初の年次報告は平成12年5月26日に閣議報告され、国会に提出された。

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