男女共同参画社会基本法逐条解説

第2章 男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的施策

(男女共同参画基本計画)

第13条 政府(1)アは、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策(1)イの総合的かつ計画的な推進を図るため、 男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な計画(以下「男女共同参画基本計画」という。)を 定めなければならない(1)ウ

2 男女共同参画基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする(2)ア

総合的かつ長期的に講ずべき男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の大綱(2)イ

前号に掲げるもののほか、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項(2)ウ

3 内閣総理大臣は、男女共同参画会議の意見を聴いて(3)ア、男女共同参画基本計画の案を作成し、閣議の決定(3)イを求めなければならない。

4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく(4)ア、男女共同参画基本計画を公表(4)イしなければならない。

5 前二項の規定は、男女共同参画基本計画の変更について準用(5)する。

1 趣旨

(1)意義

本条は、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な計画として、男女共同参画基本計画を策定すべきことを 政府に義務付けたものである。

基本法第1条では、「男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進」すべきことが規定さ れており、第8条では「国は、第3条から前条までに定める男女共同参画社会の形成についての基本理念(以下「基本理 念」という。)にのっとり、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)を総合的 に策定し、及び実施する責務を有する。」と規定されている。本条はこれらを受けた規定であり、国は男女共同参画基本 計画(基本計画)を定めることが義務付けられ、基本計画に沿って、国は男女共同参画社会の形成の促進を図ることとな る。

第2項は、基本計画に盛り込むべき事項として、積極的改善措置を含む男女共同参画社会の形成の促進に関する施 策の大綱(第一号)と、施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項(第二号)を規定している。

第3項、第4項は基本計画策定の手続を定めたものである。第3項では、内閣総理大臣が内閣府に置かれる重要政 策会議である男女共同参画会議の意見を聴き、計画案を作成して閣議の決定を求めることとしている。

第4項では、内閣 総理大臣に閣議決定後の遅滞ない公表を義務付けている。

第5項は、基本計画を変更する場合の手続を規定しているもので、第3項及び第4項の手続きを準用することを定め ている。  基本計画の進捗状況については、第12条に基づき、年次報告として国会に報告されることになる。

また、第22条に定める男女共同参画会議の所掌事務として、第四号に「政府が実施する男女共同参画社会の形成の 促進に関する施策の実施状況を監視し、、、、必要があると認めるときは、内閣総理大臣及び関係各大臣に対し、意見を 述べる」と規定されており、基本計画の進捗状況については男女共同参画会議の監視の対象とされている。

(2)基本計画の役割

男女共同参画社会の形成に当たっては、労働、教育、福祉、保健、農業などの施策との連携が図られながら進められ る必要がある。男女共同参画基本計画は、政府部内で調整を行った上で、第3項にも規定されているように閣議決定を 経て定められるものである。閣議の決定はいうまでもなく、内閣における意思決定であり、政府における男女共同参画社 会の形成の促進に関する施策が、基本計画に沿って、総合的、計画的に実施されていくこととなる。

(3)公表の意義

男女共同参画社会の形成は21世紀の我が国社会を決定する最重要課題であり、また、国、地方公共団体、国民のすべ てが男女共同参画社会の形成を担っているということから、政府の基本計画を速やかに公表することは当然である。環 境基本法等他の基本法にも基本計画の公表について同様の規定がある。

また、第14条により、政府の基本計画を勘案して都道府県男女共同参画計画、市町村男女共同参画計画が策定され ることから、広く公表することにより、地方公共団体や国民の取組を促すことも期待される。

実務的には、第16条(国民の理解を深めるための措置)の趣旨に沿って、広報用の分かりやすい資料を作成するなどし ている。


2 用語解説

(1)第1項
ア「政府」

本規定は具体的施策に関する規定であり、その実施の主体を明らかにするため「国」ではなく、「政府」として規定し ている。

イ「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」

 「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」は、第8条に規定されているように、積極的改善措置を含む国の 施策である。

ウ「定めなければならない」

政府に対して基本計画策定を義務付けているものである。

(2)第2項
ア「定めるものとする」

男女共同参画基本計画に規定すべき事項について第一号及び第二号についての規定を定めたりすることについて一定の拘 束を与えるものである。

イ「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の大綱」

男女共同参画基本計画に定めるものとして、「総合的かつ長期的に講ずべき男女共同参画社会の形成の促進に関 する施策の大綱」及びこの他に「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために 必要な事項」がある。

「施策の大綱」は、様々な分野にわたる男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本的方向を定めるもの である。

総合的かつ長期的な施策とあるが、これは幅広い取組にわたり長期的視点に立って政府の施策の方向性を示すべ きことを定めたものである。

なお、この施策の大綱として対象とする期間は、他の例を見ると、5年(科学技術基本計画)又は10年(障害者基本 計画)の例が多く、国際会議等の男女共同参画社会の形成に関する国際的動向も踏まえて設定される。

ウ「必要な事項」

男女共同参画基本計画の円滑な実施の推進を図るため、地方公共団体、国民への期待を総論的に記述したり、推 進体制、計画管理や一定期間後の見直しなどのフォローアップに関する事項等を定めるものである。

(3)第3項
ア「男女共同参画会議の意見を聴いて」

男女共同参画基本計画は、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための ものであり、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の大綱案について広く関係府省等の大臣、学識経験者の意 見を求め、施策の実効性の検討や、また、広い視野に立った多角的な面からの検討が必要である。こうしたことから、男 女共同参画基本計画の案の策定に当たっては、内閣総理大臣の諮問により、男女共同参画会議の意見を聴くこととして いる。

なお、「意見を聴いて」は、男女共同参画会議の議決にそのままの形では法的には拘束されないものとされている (「議により」が拘束力が最も強く、「議を経て」が比較的拘束力が強いとされている)。しかしながら、意見の尊重がなされ るべきことは当然である。

イ「閣議の決定」

男女共同参画基本計画は、各省庁にわたる男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本的方向を示すも のであり、その策定に当たっては、内閣としての統一の意思決定を経ることが適当である。また、政府における男女共同 参画社会の形成の重要性にかんがみ、内閣総理大臣は男女共同参画会議の意見を聴いて案を策定し、これについて閣 議の決定を求めることとしている。

(4)第4項
ア「遅滞なく」

時間的即時性は求めておらず、正当な又は合理的な遅滞は許される。

イ「公表」

基本計画の円滑な実施の推進を図るとともに、男女共同参画社会の形成の促進に関する行動がすべての者の公平 な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようにする上で、これを公表し、地方公共団体、国民の理解と協力を得 ることが重要である。このため、男女共同参画基本計画については、閣議の決定があったときは、遅滞なく、これを公表す ることとしている。

(5)第5項
ア「変更について準用する」

基本計画は上述のとおり重要なものであり、その内容を変更する際にも、内閣総理大臣は、男女共同参画会議の意 見を聴き、案を作って閣議決定をすること(第3項)、閣議決定後、遅滞なく公表すること(第4項)と同じ手続を求めてい るものである。


<参考>

それまでも、国際婦人年以来の国際的な動きに対応して、国内行動計画が策定され、平成8年12月にも、第4回世界 女性会議の北京行動綱領における要請を踏まえ「男女共同参画2000年プラン」が総理を本部長とする男女共同参画推 進本部において決定された。これらは国際的要請に基づき策定されてきたものであり、法律に基づく計画ではない。基本 法の本規定において、基本計画が法的に位置付けられたことにより、国際協調の理念は尊重されるものの、国際的要請 の有無にかかわらず、基本計画の策定が義務付けられたことになる。

昭和50年7月 「世界行動計画」
→昭和52年1月「国内行動計画」
昭和55年7月 「国連婦人の十年後半期行動プログラム」
→昭和56年5月「婦人に関する施策の推進のための「国内行動計画」後期重点目標」
昭和60年7月 「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」
→昭和62年5月「西暦2000年に向けての新国内行動計画」
平成2年5月 「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略に関する第1回見直しと評価に伴う勧告及び結論」
→平成3年5月「西暦2000年に向けての新国内行動計画(第一次改定)」
平成7年9月 「北京宣言」及び「行動綱領」
→平成8年12月「男女共同参画2000年プラン」
内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
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