男女共同参画社会基本法逐条解説

1 趣旨

本条は、男女共同参画社会を形成する上で、国及び地方公共団体とともに国民が行う取組の果たす役割が大きいこ とから、男女共同参画社会の形成について、国民の責務を宣明したものである。

職域、学校、地域、家庭等あらゆる分野で、いろいろな立場から、互いに責任を担い、協力することにより、男女共同参 画社会が形成されるよう努めることが本条における責務の内容である。具体的には、例えば、国民各人が、性別による 差別的取扱いをしないよう心がけること、家庭において家族を構成する男女が、互いに協力し合うことなどが含まれる。


2 用語解説

(1)「国民」

国民は、自然人及び法人を意味する。

自然人には、日本国籍を有する者及び日本に居住する外国人を含む(前文の用語解説中<参考3>参照)。

国会においても、本法案の国民については、当然ながら事業主も含まれますし、法人、事業そのものも対象となる旨答弁(5月18日)されている。

なお、最高裁判所の昭和45年6月24日の判決(八幡製鉄政治献金事件)においても、「憲法第3章に定める国民の権利 及び義務の各条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用されるものと解すべきである。」とされている。

(2)「職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野

「職域」は「職場」と同義である。「職域、学校、地域、家庭」は例示であり、「その他の社会のあらゆる分野」を指す。

基本法答申では「職場、家庭、学校、地域社会等あらゆる分野で」とあり、これと同趣旨である。

(3)「男女共同参画社会の形成に寄与するよう努めなければならない」

国民には、男女共同参画社会の形成に寄与するよう努力義務を課している。

男女共同参画社会の形成のためには、国民は国、地方公共団体の施策への協力だけでなく、地域活動、企業活動等 の中にある慣行の中立化など、国民自らが男女共同参画社会の形成に取り組むことが重要であり、「協力」ではなく「寄 与」としている。

公的施策の主体である国や地方公共団体には、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の策定、実施を義務 付けているが、国民にはそれより緩やかな責務を課していることになるが、男女共同参画社会の形成のために国民が行 うことを期待される分野は幅広く、それらを全て「義務」とすることは困難なこともあり、努力義務の規定となっている。

他の基本法(高齢社会対策基本法、障害者基本法等)においても本法と同様に国、地方公共団体には義務規定、国 民には努力義務規定としている。

なお、環境基本法では、特に、施策への協力等を国民の責務としている。(環境基本法第9条では、国民は、環境の保 全に自ら努めるとともに、国、地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する等と義務規定 を設けている。)

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