男女共同参画社会基本法逐条解説

(家庭生活における活動と他の活動の両立)

第6条 男女共同参画社会の形成は、家族(1)を構成する男女が、相互の協力(2)社会の支援(3)の下に、子の養育(4)、家族の介護その他の家庭生活における活動(5)について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ、 当該活動以外の活動(6)を行うことができるようにすることを旨として、行われなければならない。

1 趣旨

子の養育、家族の介護等の家庭責任の多くは女性が担っているという状況の中で、少子・高齢化が進展している状況 にある。男女が共に社会のあらゆる活動に参画していくためには、家族を構成する男女が相互に協力をするとともに、社 会の支援を受けながら、家族の一員としての役割を円滑に果たし、家庭生活と他の活動(働くこと、学校に通うこと、地域 活動をすることなど)との両立が図られるようにすることが重要であることから、基本理念として定められたものである。

女性だけでなく、男性にとっても、家庭生活に目を向けることは、青少年の健全育成や、高齢期を含めた生活を充実し て送る上で重要な課題である。特に我が国は男性の家庭参画が少ない状況にあり、平成13年の総務省「社会生活基本 調査」によると、家事・育児・介護等の時間は、共働き家庭で夫は25分、妻は4時間12分、専業主婦家庭で夫は32分、妻 は6時間59分となっている。

なお、男女共同参画2000年プランにおいても、多様なライフスタイルに対応した子育て支援対策の充実や育児・介護 等を行う労働者雇用の継続を図るための環境整備など、職業生活と家庭生活・地域生活を行う労働者の両立の問題を 取り上げ、施策の推進を図っていた。(現在の男女共同参画基本計画でも「男女の職業と家庭・地域生活の両立の支援」 を一項目として取り上げ、施策の推進を図っている。)


2 用語解説

(1)「家族」

婚姻、血縁、縁組などを基礎として生活上の関係を有する社会の自然かつ基礎的な集団単位。

(2)「相互の協力」

どのように協力していくのかについては、個々の家族生活における活動、家族生活以外の活動の状況を踏まえ、家族を 構成する男女の話し合いにより決められる。

(3)「社会の支援」
(4)「子の養育」

養育は乳幼児に限定されるものではない。親権を行う親は子の監護、教育を行う権利と義務がある。なお親がいない 場合には、未成年後見人が親権を行うことになる。

(5)「その他の家庭生活における活動」

調理、掃除、洗濯、買い物、家の管理など家庭生活を行う上での様々な活動が考えられる。

(6)「当該活動以外の活動」

仕事、学習、地域活動、ボランティア活動等家庭生活における活動以外の活動をいう。


<参考1>

国連は家族の重要性を指摘しており、「Building the smallest democracy at the heart of society」(家族から始まる小 さなデモクラシー)を共通スローガンとし、家族の重要性を強調し、 家族問題に対する社会の関心を高めることにより、 家族の役割や機能等の理解や認識を深め、 家族の福利を支援する施策を促進することを目的に平成6年(1994年)を「国際家族 年」とした。

<参考2> 関係法令
(1)憲法
第24条
1
婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維 持されなければならない。
2

配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律 は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

(2)民法
第725条(親族の範囲)

左に掲げるものは、これを親族とする。

6親等内の血族

配偶者

3親等内の姻族

第727条(縁組による親族関係の発生)

養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけると同一の親族関係を生ずる。

第730条(親族間の互助)

直系血族及び同居の親族は、互に扶け合わなければならない。

第752条(同居・扶助の義務)

夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない。

第818条(親権者)
1

成年に達しない子は、父母の親権に服する。

2

子が養子であるときは、養親の親権に服する。

3

親権は、父母の婚姻中は、父母が共同してこれを行う。但し、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が、これを行う。

第820条(監護教育の権利義務)

親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

第838条(後見開始の原因)

後見は、次に掲げる場合に開始する。

未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。(二は略)

第857条(未成年被後見人の身の上に関する権利義務)

未成年後見人は、第820条から第823条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。(以下略)

第877条(扶養義務者)
1

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。

<参考3>

当然のこととして本条文は、「家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約(第156号)」(平成7年条約第10号)を前提としている。

第1条1

この条約は、被扶養者である子に対し責任を有する男女労働者であって、当該責任により経済活動への準 備、参入若しくは参加の可能性又は経済活動における向上の可能性が制約されるものについて、適用する。

2

この条約は、介護又は援助が明らかに必要な他の近親の家族に対し責任を有する男女労働者であって、当該責任 により経済活動への準備、参入若しくは参加の可能性又は経済活動における向上の可能性が制約されるものについて も、適用する

3

(略:「被扶養者である子」及び「介護又は援助が明らかに必要な他の近親の家族」の定義。各国で定める。)

4

1及び2に規定する労働者は、以下「家族的責任を有する労働者」という。

第3条1

男女労働者の機会及び待遇の実効的な均等を実現するため、各加盟国は、家族的責任を有する者であっ て職業に従事しているもの又は職業に従事することを希 望するものが、差別を受けることなく、また、できる限り職業上の責任と家族的責任との間に抵触が生ずることなく職業に 従事する権利を行使することができるようにすることを国の政策の目的とする。

第7条

家族的責任を有する労働者が労働力の一員となり、労働力の一員としてとどまり及び家族的責任によって就 業しない期間の後に再び労働力の一員となることができるようにするため、国内事情及び国内の可能性と両立するすべ ての措置(職業指導及び職業訓練の分野における措置等)をとる。

第8条

家族的責任それ自体は、雇用の終了の妥当な理由とはならない。

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