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「共同参画」2025年9月号

特集2

女性活躍推進法施行後10年の変化及び一部改正の概要

内閣府男女共同参画局推進課、厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)の延長等を含む改正法が、令和7年6月4日に国会で可決・成立し、同年6月11日に公布されました。本稿においては、女性活躍推進法施行後10年の変化及び改正内容について紹介します。

女性活躍推進法施行後10年の変化及び課題

女性活躍推進法は、女性の活躍推進の取組を着実に前進させるため、令和7年度末までの時限法として、平成27年に制定されました。女性活躍推進法の施行から10年、我が国における15歳から64歳までの女性の就業率は、平成27年には64.6%であったところ令和6年には74.1%となっており、着実に上昇しています(図1)。子育て期の女性に焦点を当てると、平成17年から平成21年に第一子を出産した女性では、出産を機に56.6%の女性が離職していましたが、平成27年から令和元年に第一子を出産した女性では30.5%と減少しています(図2)。女性の年齢階級別労働力人口比率は、平成27年には結婚・出産期に当たる30~34歳を底とするいわゆる「M字カーブ」を描いていましたが、令和6年には20歳代から50歳代まで台形に近い形を描いており、「M字カーブ」はほぼ解消していると言えます。

しかしながら、出産後の女性の継続就業率は高くなってきているものの、現在は女性の正規雇用比率が25~29歳をピークに年齢が上がるにつれて低下する、いわゆる「L字カーブ」を描いており、この時期に働き方を変えたり、キャリアを中断・断念したりする状況が残っていることがうかがえます。

また、女性の職業生活における活躍に関する取組の結果を測る観点から有効な指標である男女間賃金差異については、長期的には縮小傾向にある(図3)ものの、その縮小ペースは緩やかであり、国際的に見れば依然として差異が大きくなっています。男女間賃金差異の大きな要因の1つとされている管理職に占める女性の割合についても、長期的には上昇傾向にある(図4)ものの、依然として低い水準に留まっているところです。


図1 女性就業率の推移
図1 女性就業率の推移


図2 子供の出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴
図2 子供の出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴


図3 男女間賃金差異の推移
図3 男女間賃金差異の推移


図4 役職別管理職等に占める女性割合の推移
(企業規模100人以上)
図4 役職別管理職等に占める女性割合の推移


近年は、月経、不妊治療、更年期等の健康課題が女性の働き方に与える影響やそれに対する取組への関心も高まっています。更には、ハラスメント関係の相談件数が高止まり傾向にあり、求職者等に対するセクシュアルハラスメントなどが社会的関心を集めている状況にあります。

こうした状況に鑑みれば、女性活躍推進法に基づく集中的かつ重点的な取組は、性別を問わず、職業生活と家庭生活の双方において活躍できる社会の実現を目指す上で引き続き必要です。女性活躍の推進を一層強化し継続する必要があることから、関係府省等における検討及び国会での審議を経て、法の期限延長を含む改正法が令和7年6月に成立しました。

令和7年改正法の内容

改正法では、法の期限を10年間延長し令和18年3月31日までとするとともに、

① 事業主における女性の職業選択に資する情報公表の強化のため、男女間賃金(給与)差異及び女性管理職比率の公表を常時雇用する労働者の数が101人以上の一般事業主※1及び特定事業主※2に義務付け

② 女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の健康上の特性に配慮して行われるべき旨を基本原則において明確化

③ 政府が策定する女性活躍の推進に関する基本方針の記載事項の一つにハラスメント対策を位置付け

④ 女性活躍の推進に関する取組が特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)の認定要件に、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を公表していることを追加

⑤ 特定事業主が策定する行動計画に係る手続の効率化

などが盛り込まれました。

今後は、法の円滑な施行に向け、基本方針、内閣府令・厚生労働省令、事業主行動計画策定指針等の改定や、改正内容の周知徹底等により、誰もが自らの個性と能力を十分発揮し、安心して働ける職場づくりを推進していきます。


※1 民間企業等 ※2 国・地方公共団体


改正法の詳細は、こちらをご覧ください。
https://www.gender.go.jp/policy/suishin_law/horitsu_kihon/index.html


【参考】女性の職業選択に資する情報の提供


女性活躍推進の取組に成果をあげる企業紹介
~加山興業株式会社(愛知県豊川市)~

厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課


愛知県の企業は、管理職に占める女性の割合が小さく(6.4%、全国第47位)、男女の平均勤続年数の差が大きく(5.3年、全国第46位)、その結果、男女間賃金差異が大きい(73.2、全国第43位)という状況にあります(出典はいずれも令和5年賃金構造基本統計調査)。

そうした愛知県において、新卒女性の採用拡大と定着に着実な成果を上げ、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」認定(3段階目)を取得した中小企業の取組をご紹介します。

加山興業株式会社(愛知県豊川市)

加山興業株式会社(愛知県豊川市)

[従業員数]133人(令和6年9月現在)

[事業内容]産業廃棄物処理・資源循環をメインに、SDGs、脱炭素、再生可能エネルギーなど幅広い環境問題の解決に取り組んでいます。

・管理職に占める女性の割合 22.6%

・男女の平均勤続年数の差異(正社員)0.52年

・男女間賃金差異

役職者 61.7% 非役職者 81.3%

(データはいずれも令和6年9月現在)


環境問題の解決をめざす事業拡大で応募増

経営企画室で活躍する女性社員の皆さん
経営企画室で活躍する女性社員の皆さん


同社は、令和3年より会社の方針として持続可能性の追求を掲げ、男女問わず会社で活躍できる人材の確保に向けて「ダイバーシティ&インクルージョン」を目標とした取組を始めました。それまで女性の配置は事務や営業サポート等限定的な部門にとどまっていましたが、SDGsなど社会問題の解決に貢献する事業を拡大したことで、新卒採用の応募者増加につながりました。ホームページに様々な部門の社員のインタビューや日々の業務などを掲載し、若い社員がやりがいを感じて活躍する様子を紹介しています。

女性社員からは、「入社してすぐに経営企画に携われる点に魅力を感じて入社した。」「大学や大学院で研究していた環境問題の解決に取り組む企業と知って応募した。」という声が寄せられています。

社員のニーズを把握し満足度を上げる

以前より業務の改善提案制度はあったものの、社員のニーズを把握する仕組みはありませんでした。このため、1on1ミーティングで各社員のキャリア観を確認し、希望を踏まえながら最適な人員配置を図るようにしました。また、部門ごとに求める人材像や必要な教育プログラムを人的資本開発委員会で検討し、人材の育成を図っています。

また、定期的なエンゲージメント調査等によりニーズ把握に努め、時間単位で取得できる年次有給休暇や失効年休の積立制度、法で定める基準を上回る育児との両立支援制度、不妊治療休暇などを整備し、社員からは、「従業員に寄り添った制度が次々に講じられており、働きやすい環境づくりに会社が真摯に取り組んでいると実感できる。」と評価されています。

女性活躍推進の取組の成果

多様な視点を持つ社員が増えることで、新たなアイデアやイノベーションが生まれやすくなり、組織全体の業績の改善につながりました。また、ワーク・ライフ・バランスのための諸制度により全従業員の満足度とモチベーションが高まり、労働生産性も向上しています。長期的な企業経営に向けて優秀な人材の確保と定着が図られているところです。

また、女性活躍に関する情報公表によって、「求職者へ安心感を与えることや会社に好印象を持ってくれる機会があり、会社説明会等でも質問をもらい、前向きな回答ができる」といったメリットを感じています。


加山興業株式会社をはじめ全国の「えるぼし」認定企業等の取組は、「女性の活躍推進企業データベース」でご覧ください。
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/