「共同参画」2024年12月号

特集2

ISOガイドラインの策定、発行について

内閣府男女共同参画局総務課

国際標準化機構(ISO)は、2024年5月15日、約3年に及ぶ審議・検討を経て、「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進と実施のためのガイドライン」(ISO 53800)を発行しました。このガイドラインは、男女共同参画推進に関する重要な国際的指針の一つといえます。各組織における今後の活用が期待されます。

国際標準化機構(ISO)とは

国際標準化機構(International Organization for Standardization)(略称:ISO)は、1946年に設立された非政府機関(本部:スイス・ジュネーブ)であり、製品やサービスの国際的な取引をスムーズにするため、世界共通の規格を制定しています。その制定や改訂は、わが国を含む165か国の参加国(2024年現在)の投票に基づいて決定されています。ISO規格の身近な例として、非常口のマーク(ISO 7010)、カードのサイズ(ISO/IEC 7810)、ネジ(ISO 68)に関する規格などがあります。

ISOは、そうした製品そのものを対象とする規格だけでなく、組織の活動を管理するための仕組みについての規格(「マネジメントシステム規格」)やガイドラインを定めており、これまで、品質(ISO 9001)、環境(ISO 14001)、食品安全(ISO 22000)、労働安全衛生(ISO 45001)に関する規格や、社会的責任(ISO 26000)、リスクマネジメント(ISO 31000)に関するガイドラインを制定しています。なお、マネジメントシステム規格には、「要求事項」(requirement)が含まれ、基準を満たした組織に対して、認証機関が証明書(certification)を発行することが一般的です。

今回のガイドラインの基本的性格

今回のISO 53800「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進と実施のためのガイドライン」(Guidelines for the promotion and implementation of gender equality and women’s empowerment)は、こうしたガイドラインの一つであり、要求事項は含まず、認証の対象となるものではありません。官民や規模を問わずあらゆる組織に対して、各組織の状況に応じた継続的な改善のための実用的なサポートを提供するものとされています。

発行までの経緯

2021年5月、2030年を期限とするSDGsの実現に向けて、ジェンダー平等に関する多くの課題が残されている状況を踏まえ、フランスから新たな規格(ガイドライン)の創設に関する提案が行われました。

これを受けて同年9月、わが国のほか、米、英、独、仏、中、印、瑞など37か国(他にオブザーバー24か国)からなるプロジェクト委員会(PC337)が設置され、各国の専門家らが参加する総会(3回)やワーキンググループ(10回)等において審議、検討が進められました。


第2回PC337総会(2022年11月)参加者
第2回PC337総会(2022年11月)参加者


同委員会は本年2月に最終案を取りまとめ、同案はISO加盟国の投票で可決され、5月15日にISO規格として発行されました。

今回のガイドラインの概要

このガイドライン(ISO 53800)は、官民、規模、この問題に関する成熟度を問わず、あらゆる組織が、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進及び達成に向けて持続的に進歩するよう、奨励し支援するものです。

対象とする領域は、組織の外部との関係も含む以下の4つとされており、採用、給与、勤務条件、昇進、ハラスメント、予算、調達、契約、広報などの事項について、各組織の状況も踏まえて適用することが期待される取組の手法や行動などが示されています(一律の数値目標などを定めているものではありません)。

1)組織内部(ガバナンス、労働慣行、意識啓発等)

2)組織の活動及び投資(持続可能な調達等)

3)組織の対外関係(働きかけ、パートナーシップ等)

4)内外とのコミュニケーション

具体的には、各事項に応じ、現状の把握・分析、担当者・組織の設置、目標設定を含む計画の策定、ステークホルダーの特定・組入れ、継続的改善などに関する仕組みを定めて実践することなどを促しており、その仕組みは、一般的には、以下の図に示されている6つのステップからなるものとされています。なお、附属書Cには各国における優良事例が紹介されています。

その意義について

このガイドラインは、2011年に国連が策定した「女性のエンパワーメント原則」(WEPs)などとともに、組織における男女共同参画推進のための重要な国際的指針となるものです。

企業を含む様々な組織が、このガイドラインに沿ってこれまで以上に積極的な取組を進めることにより、職場環境の改善や生産性の向上がもたらされるとともに、SDGsの中核の一つにも位置付けられているジェンダー平等が世界全体で一層推進されることが期待されます。

関連資料

ISO 53800は、以下の日本規格協会HPから、本文(英語版若しくは英日対訳版、いずれも有料)又はパンフレット(無料)が入手可能です。

<日本規格協会>

(本文)

https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=ISO+53800%3A2024

(パンフレット)

https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/dev/md_6386.pdf


手法の実施ステップ(ISO53800:2024より図1を引用)
手法の実施ステップ(ISO53800:2024より図1を引用)

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