「共同参画」2024年8月号

巻頭言

災害多発・人口急減時代の男女共同参画

令和6年能登半島地震の発生から半年がたった6月、地方公共団体における男女共同参画の視点からの防災・復興に係る取組状況のフォローアップ調査結果(令和5年度)が発表されました。同様の調査はこれが3回目となります。

取組は徐々に進んでいますが、その進捗のスピードは緩慢です。特に気になる点として、未だに996(57.3%)の市区町村で防災・危機管理部局の女性職員ゼロの状況が続いています。女性の配置が増えると女性だけでなく乳幼児・高齢者など要配慮者向けの対策全般が進むことは過去の調査結果でも把握されていましたが、大きな改善はありませんでした。人口規模が小さな自治体で全般的に対策の導入が遅い傾向も引き続きみられています。

阪神淡路大震災(1995年)から約30年、巨大地震が頻発しています。気候変動の影響により気象災害も激化しています。一方で、社会の側も人口急減・超高齢化の局面を迎え、一人暮らし高齢者世帯が増加しており、地域防災の担い手も高齢化が進んでいます。ハザードの傾向も社会そのものも変わったことが明確な現在、防災の担い手も変わっていかねばなりません。

では、「防災・危機管理部局の女性職員ゼロ」問題については、何が女性職員の配置を妨げているのでしょうか。一般的に、防災や危機管理を担う部署では昼夜問わず緊急対応が多く、日頃から家庭で育児や介護といったケア労働を多く担っているのが女性であるため、配置しづらいという話を聞きます。しかし、それは「災害などの緊急時の対応は女性には難しい」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に過ぎないかもしれません。また、男性職員でも育児や介護に従事している人はいます。小さなことでもできることから対策を導入し、女性を配置した自治体は多くあります。変化をもたらす工夫を共有することが大切です。

今回のフォローアップ調査では、都道府県別に各市区町村の取組状況を一覧化・マップ化して結果の「見える化」に力を入れています。ぜひお住まいの自治体のマップを確認してください。そして災害が多発し、人口急減・超高齢化が進行する時代を生き延びるために、男女が共に力を発揮できる体制へとスピードアップしていきましょう。

池田恵子
池田恵子
Ikeda Keiko
静岡大学グローバル共創科学部 教授

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