「共同参画」2024年2月号

特集2

女性デジタル人材育成プランの概要

内閣府男女共同参画局総務課

政府は「女性デジタル人材育成プラン」(以下、「プラン」)に基づき、女性のデジタル人材の育成に取り組んでいます。今回は、プラン策定の背景や概要、具体策についてご紹介します。

1.プランのポイント

プランは、令和4年4月26日、男女共同参画会議において決定されました。

ポイントとしては以下の3点です。

①基礎的なデジタルリテラシー獲得の支援など、デジタル分野への間口を広く取り、女性の参入を促進

②育児・介護等でフルタイムの仕事ができない女性も、柔軟な働き方でデジタル就労ができる環境を整備

③自治体や企業等に対して周知・啓発を強力に行うことで、全国各地域へ官民連携の取組を横展開

2.プランの主な具体策

○デジタルスキル教育コンテンツの提供

「デジタル人材育成プラットフォーム」において産学官のデジタルスキル教育コンテンツを提供しています。

○公的職業訓練を通じたデジタルスキル向上

公的職業訓練において、デジタル分野のコース設定を促進するとともに、eラーニングコースの拡充や託児サービス付きの訓練コースを実施しています。

○地域女性活躍推進交付金

自治体における、デジタルスキルの取得とスキルを生かした就労を支援するための地域の実情に応じた取組を「地域女性活躍推進交付金」により後押ししています。

○女性デジタル人材育成の事例集

官民の優良事例を「事例集」として取りまとめ、「デジタル人材育成プラットフォーム」のポータルサイト等に掲載し、随時更新を行っています。

次頁では、会津大学の事例をご紹介します。

3.プラン策定の背景・今後の見直し

プランは、就労に直結するデジタルスキルを身に付けた女性デジタル人材の育成を強力に進めるため、次の3つの観点から、策定されました。

○コロナの影響と女性の就労支援

新型コロナウイルス感染症は特に女性の就業面に大きな影響を与えました。他方で、コロナ下においてもデジタル人材の需要は高まり、女性のデジタルスキルの向上と就労支援が重要となっています。

○女性の経済的自立

人生100年時代を迎え、女性が経済的に自立できるよう、新たなスキルを習得する必要があります。特に、デジタル分野で働く女性は、経験年数に比例して順調に年収が伸びており、女性の所得向上の実現を期待できる成長分野となっています。


【図1】デジタル分野の人材(女性)の年収の推移(令和4年)
【図1】デジタル分野の人材(女性)の年収の推移(令和4年)


○デジタル分野におけるジェンダーギャップの解消

IT技術者や、公的職業訓練のITコースの利用率は、いずれも女性割合が低くなっています。デジタル人材の需要が高まる中、男女間の偏りの解消に向け取組を進める必要があります。


【図2】IT技術者の女性比率(令和4年)
【図2】IT技術者の女性比率(令和4年)


プランに基づき、デジタルスキル習得支援及びデジタル分野への就労支援を政府一体で3年間集中的に推進しています。また、プラン策定3年後を目途に、プランの効果を検証し、必要な見直しを行うこととしています。


Special introduction

内閣府男女共同参画局では、官民の事例集を取りまとめた『女性デジタル人材育成プラン事例集』を発行しています。第3版にて、新たに掲載した会津大学の取組について、ご紹介します。

※『女性デジタル人材育成プラン事例集』については、こちらからご覧ください。
https://www.gender.go.jp/policy/digital/index.html

内閣府男女共同参画局総務課

会津大学における取組み
~「会津大学女性のためのITキャリアアップ塾」について~

会津大学 復興創生支援センター 教授
田中 秀樹

概要

会津大学では、ICTに特化した大学の強みを活かして、福島県内での就業等に意欲のある女性を対象に、ITの基礎・Webデザイン・プログラミングなどを学び、県内での就業やキャリアアップ等を目指すための事業として、「会津大学女性のためのITキャリアアップ塾」を開講しています。

受講コースは2種類。3か月の「IT基礎・Webデザイン基礎コース」と7か月の「プログラマ基礎コース」です。なお、2023年度の受講者は両コース合計で110名でした。

具体的な取組み

①習得内容に適した学習方法をベストミックス

オンライン講義やeラーニング視聴を基本としつつ、会津大学・福島市・郡山市・いわき市における対面式の現地スクーリング等を組み合わせています。オンライン講義やeラーニング視聴のみでは理解しづらい部分は対面で講師に質問しながら、また、ロボットやPC等を実際に操作することで、理解の促進や知識・技能の習得を図る仕組みです。さらに、会津大学の教員が開発した「Aizu Online Judge」というプログラミング自動採点システムも活用し、受講者の都合が良い時にプログラミング学習を行うことができる環境も構築しています。


対面式の現地スクーリングの様子
対面式の現地スクーリングの様子


働き方・キャリア形成に関する情報やジョブマッチングの提供

人生100年時代と言われる現代においては、働き方やキャリア形成について受講者自身が考えることがとても重要です。そのような観点から、本塾では、働き方・キャリア形成に関する講演会や、受講者と県内企業とのジョブマッチングの機会を年2回提供しています。


働き方・キャリア形成に関する講演会の様子
働き方・キャリア形成に関する講演会の様子


効果や実績

2017年の事業開始以降、これまで582名が受講し、338名の就労に貢献しており(2023年3月末時点)、福島県における女性の就業や地域経済の活性化に貢献出来ていると考えています。また、多様な働き方へのニーズが強い女性受講生からは「オンラインなので子供の面倒を見ながらでも参加しやすい」、「内容もサポートも充実していた」などの好評を得ています。

取り組む中で見えた課題と今後の展望

オンライン形式は時間や場所に左右されないというメリットがある反面、受講者自身がスケジュール管理する必要があるため、人によってはモチベーションの維持、つまり、学習の継続が難しくなる場合があり、それが一つの課題です。本事業の開始以降、受講者の修了率は上昇傾向にありますが、今後も引き続き様々な工夫を重ね、修了率の更なる上昇、そして、県内女性の就業を更に支援していきたいと思います。

取組みへの想いやメッセージ

女性デジタル人材の育成に関しては、国(内閣府男女共同参画会議)においても2022年4月に「女性デジタル人材育成プラン」が策定されています。会津大学における本事業は、福島県や国の重要な政策課題に貢献する取組みとして重要な位置づけになると考えています。

「女性デジタル人材を採用したい」、「女性活躍を応援したい」とお考えの福島県内企業の皆様は、ぜひ本塾へお声掛けください!

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019