「共同参画」2024年1月号

巻頭言

誰もが安心して生活できる社会を目指して

3人に1人。

これは国連が発表した、親密な関係にあるパートナーから身体的または性的暴力を受けたり、パートナー以外から性的暴力を受けている女性の割合です。

この数字を紹介すると「日本では違うでしょう?」と言われるのですが、そんなことはありません。令和4年度に内閣府が実施した16~24歳の性暴力被害の実態に関する調査では、約4人に1人が、何らかの性暴力被害にあったことがあると回答しました。警視庁の発表したデータでも、痴漢、盗撮などの迷惑防止条例の被害は、駅構内や電車内で多く発生し、被害者の5人に3人が、20代までの若い女性であることが指摘されています。そしてその多くが、被害を訴えたり相談窓口に行かず、泣き寝入りしているのが現状です。

被害にあった方をさらに苦しめるのは、「スキがあったから」「声をあげればいいじゃない」等、周囲から投げかけられる言葉です。圧倒的に悪いのは加害者なのに、身体的・精神的・性的暴力に苦しめられた被害者が声をあげることができないでいる。それは「自分が悪いんだ」という自尊感情の低さや、暴力を受忍してしまうことにもつながりかねません。

私は男女共同参画推進連携会議で「若年層に対する性暴力の防止・啓発動画の作成」の活動に令和4年度に参加しました。映像制作を勉強している学生の方に参加していただき、同世代の視点から、シナリオから動画作成をする取り組みに監修として参加しました。

制作中に何度も感じたのは、「あなたはもっと怒っていい」、ということです。

被害者は怒っていい。声をあげていい。そして周囲は、声を封じるのではなく、耳を傾け、性暴力が起きない環境づくりをするのだと、その決意を具体的に示す必要があるのだと、改めて実感させられました。

プラン・インターナショナルの呼びかけでたちあがった「Equal Measures 2030」が令和2年に発表した報告では、「夜一人で歩いても怖くない」と答える女性の割合は2018年で55.1%。現在の変化率ですべての人が安心して夜一人で外を歩けるようになるのは2179年という試算が出されています。

150年もの年月を待つことはできません。性暴力のない世界、すべての人が、ジェンダーに関わらず安心して過ごせる社会の実現を目指し、今年も活動を続けたいと思います。

編集部注:数値は原稿提出時点のもの

長島 美紀
長島 美紀
Miki Nagashima
公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
アドボカシーグループ リーダー

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