「共同参画」2023年9月号

特集2

性犯罪に関する法改正等について

法務省刑事局 

「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(令和5年法律第67号。以下「性的姿態撮影等処罰法」という。)が、令和5年6月16日に成立、同月23日に公布され、一部の規定を除き、同年7月13日から施行されました。

以下では、これらの法律による性犯罪に関する規定の改正のポイントを概説します。

【1】強制性交等罪は「不同意性交等罪」 になりました!

改正前の刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪などでは、要件として、「暴行」・「脅迫」、「心神喪失」・「抗拒不能」が定められていました。しかし、このような規定では、それらの要件の解釈により犯罪の成否の判断にばらつきが生じてしまう余地があるのではないかといった指摘がされていました。

今回の改正では、こうした指摘を踏まえて、強制性交等罪・準強制性交等罪及び強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪が「不同意性交等罪」・「不同意わいせつ罪」に改められ、「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」が中核的な要件として定められました。また、被害者がそのような状態にあったかどうかの判断を行いやすくするため、その原因となり得る行為や事由についても、具体的に列挙されました。

列挙されたのは、「暴行」や「脅迫」のほか、例えば、「障害」、「アルコール」、「薬物」、「フリーズ」、「虐待」、「立場による影響力」などです。また、これらの行為・事由は、それ自体の程度は問わないこととされており、そうした行為・事由の程度がどのようなものであれ、それらが原因となって、被害者が「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」となり、そのような状態で性的行為がなされた場合には、これらの罪が成立することとなります。

不同意性交等罪・不同意わいせつ罪は、改正前と比べて、より明確で、判断にばらつきが生じない規定となったことで、本来処罰されるべき行為がより的確に処罰されるようになると考えられます。

また、今回の改正では、これまで、わいせつな行為として強制わいせつ罪によって処罰されていた、身体の一部や物を肛門や膣に挿入する行為について、「性交等」として不同意性交等罪によって処罰することとされました。

さらに、これまでも一般的な理解として、配偶者同士でも不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が成立し得るとされていましたが、今回の改正では、この点を確認的に明らかにするため、「婚姻関係の有無にかかわらず」、これらの罪が成立することが条文上明確に規定されました。

【2】 いわゆる性交同意年齢が 「16歳未満」 に引き上げられました!

今回の改正では、若年者の未熟さにつけ込んだ性犯罪を抑止するための規定の整備も行われました。

その一つが、いわゆる性交同意年齢の引上げです。

改正前の刑法では、13歳未満の人に対して性的行為をした場合、「暴行」や「脅迫」などがなく、その人が性的行為に同意しているように見える場合であっても、一律に、強制性交等罪や強制わいせつ罪として処罰することとされていましたが、今回の改正では、この年齢が「16歳未満」に引き上げられました。これにより、16歳未満の人に性交等やわいせつな行為を行った場合、それ自体が処罰の対象となります。

なお、(※)にあるとおり、13歳以上16歳未満の人に対して性的行為が行われた場合、この規定によって処罰されるのは、その行為をした人が5歳以上年長のときですが、年齢差が4歳以下の場合であっても、【1】の要件を満たす場合には、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が成立します。

【3】 わいせつ目的での16歳未満の者への面会要求などは犯罪です!

また、若年者の性被害を未然に防止するため、刑法に面会要求などの罪が新設されました。

①は、16歳未満の人に対して、わいせつの目的で、うそをついたり、金銭・物品を渡すことを約束するなどの不当な手段を用いて、面会を要求する行為を、②は、そうした要求の結果、わいせつの目的で16歳未満の人と実際に面会する行為を、それぞれ処罰するものです。また、③は、16歳未満の人に対して、自身の性的な写真・動画を撮影して送信するよう要求する行為を処罰するものです。

なお、これらの罪は、若年者の性被害を未然に防止するために設けられたものですが、②の面会の結果、16歳未満の人に対して実際に性的な行為をした場合は、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が成立し、③の要求の結果、実際に16歳未満の人に自身の性的な写真・動画を送信させた場合にも、不同意わいせつ罪やいわゆる児童ポルノ処罰法違反の罪等が成立し得ることとなります。

【4】 性的な画像の盗撮は「撮影罪」です!

近時、スマートフォン等を用いた下着等の盗撮事案などが多数発生しており、その被害は深刻なものとなっています。性的姿態撮影等処罰法は、こうした行為に厳正に対処できるようにするため、新しく制定された法律です。

この法律では、人の性的な部位や身に付けている下着などを撮影する行為のうち、正当な理由なく、ひそかに撮影する場合(①)のほか、撮影の対象者が【1】で述べたような状態、すなわち、そこで列挙されている行為・事由が原因となって、「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」で撮影する場合について、「撮影罪」として処罰することとされています。また、16歳未満の人を対象として、正当な理由なく撮影行為が行われた場合(②)には、その人の同意の有無にかかわらず、同様に、「撮影罪」が成立します。さらに、こうした行為によって撮影された写真・動画を人に提供したり(③)、インターネット上にアップロードした場合も処罰の対象となります。

【5】性犯罪の公訴時効期間が延長されました!

性犯罪は、一般的に、その性質上、被害申告が難しいことなどから、被害が潜在化しやすいといわれています。そこで、今般、刑事訴訟法が改正され、性犯罪についての公訴時効期間が延長されました。

具体的には、性犯罪についての公訴時効期間が、改正前からそれぞれ5年ずつ延長され、①から③までのとおりの期間となりました。また、被害者が18歳未満である場合には、その者が18歳に達する日までの期間に相当する期間について、更に公訴時効期間が延長されることとなりました。これにより、例えば、18歳未満の時に不同意性交等罪の被害に遭った場合、33歳に達する日まで公訴時効は完成しないこととなります。


今回の改正には、ほかにも様々なものがあります。
詳細は法務省のホームページを御覧ください。
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html

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