「共同参画」2023年7月号

特集3

配偶者暴力防止法の改正について

内閣府男女共同参画局男女間暴力対策課

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の一部を改正する法律(令和5年法律第30号。以下「改正法」という。)が令和5年5月12日、国会において成立し、同年5月19日に公布されました。

令和6年4月1日の施行に先立ち、改正法のポイントを概説します(次頁の図参照)。

改正法のポイント

1.保護命令制度の拡充

[①接近禁止命令等の対象の拡大]

裁判所に接近禁止命令等を申立てることができる被害者について、現行は、身体に対する暴力を受けた者と生命又は身体に対する加害の告知による脅迫を受けた者に限られているところ、これに加え、「自由、名誉又は財産に対する加害の告知による脅迫を受けた者」が追加されます。

加えて、「生命又は身体に対する重大な危害を受けるおそれが大きいとき」という要件のうち、「身体」が「心身」に改められ、重篤な精神的被害も対象に含まれることとなります。

なお、接近禁止命令等の対象となる「脅迫」に該当するか否かは、個別の事案において裁判所が判断することとなります。

[②接近禁止命令等の期間の伸長]

接近禁止命令等の期間について、現行の6か月から1年間に伸長されます。

[③電話等禁止命令の対象行為の拡大]

被害者への電話等禁止命令の対象となる行為に、緊急時以外の連続した文書の送付・SNS等による通信文等の送信、性的羞恥心を害する電磁的記録の送信、GPS機器等を用いて位置情報を無承諾で取得すること等が追加されます。

[④未成年の子への電話等禁止命令の創設]

被害者と同居する未成年の子への電話等禁止命令が設けられます。要件は、既存の子への接近禁止命令と同じです。この点、被害者に対してではなく、子に対して行われるという差異に鑑み、次頁の図④注2に列挙した行為が禁止行為となります。

[⑤退去等命令の期間の特例の創設]

退去等命令の期間は、命令を受けた者に対する居住の自由及び財産権の制約が過大なものとならないよう、現行では2か月とされています。この命令期間について、被害者が単独で住居を所有し、又は賃借している場合に、6か月とする特則が設けられます。

なお、退去等命令については、申立てをすることができる被害者の範囲はこれまでと変わりません。

[⑥保護命令違反の厳罰化]

保護命令に違反した者に対する罰則を、現行の1年以下の懲役又は100万円以下の罰金から、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金へと加重します。

2.国の基本方針及び都道府県基本計画の記載事項の拡充

国が定める基本方針及び都道府県が定める基本計画の記載事項について、①被害者の自立支援のための施策に関する事項と②関係機関の連携・協力に関する事項が追加されます。

3.協議会の法定化

関係機関等から構成される協議会が法定化され、協議会の事務に関する守秘義務等が設けられます。都道府県においては協議会を組織する努力義務が設けられます(市町村においては「できる規定」です。)。


配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の一部を改正する法律(令和5年法律第30号)(概要)


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