「共同参画」2023年7月号

特集1

女性版骨太の方針2023

内閣府男女共同参画局総務課

令和5年6月13日に、全閣僚からなる「すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部合同会議」を開催し、「女性版骨太の方針2023」を決定しました。今回は、本方針の概要や具体策について御紹介します。

「女性版骨太の方針」について

我が国では、5年に1度、施策の基本的な方向性や成果目標などを示す「男女共同参画基本計画」を策定するとともに、毎年6月を目途に、政府全体として当該年度及び翌年度に重点的に取り組む事項を「女性版骨太の方針(女性活躍・男女共同参画の重点方針)」として決定しています。

基本的な考え方

我が国の男女共同参画の現状は、いわゆる「M字カーブ」の問題は解消に向かい、女性役員数なども増加しているものの、国際的に見て立ち遅れています。特に、出産を契機に、女性が非正規雇用化する、いわゆる「L字カーブ」(図1)の存在に象徴されるように、様々なライフイベントに当たりキャリア形成との二者択一を迫られるのは多くが女性であり、その背景には、長時間労働を中心とした労働慣行や女性への家事・育児等の無償労働時間の偏り、それらの根底にある固定的な性別役割分担意識など、構造的な課題が存在します。


図1 女性の年齢階級別労働力人口比率と正規雇用比率
図1 女性の年齢階級別労働力人口比率と正規雇用比率
(出典)総務省「労働力調査(基本集計)」(令和4年)


こうした構造的な課題の解消に向けては、従来よりも踏み込んだ施策を講じることが不可欠であり、女性活躍の機運醸成、キャリア形成を支える環境づくりを両輪で進めていく必要があります。

このため、「女性版骨太の方針2023」では、


Ⅰ 女性活躍と経済成長の好循環の実現に向けた取組の推進

Ⅱ 女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の強化

Ⅲ 女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現


という3つの重点事項に基づき、具体策を取りまとめました。以下、それぞれの事項に沿って、主な具体策を御紹介します。

主な具体策について

Ⅰ 女性活躍と経済成長の好循環の実現に向けた取組の推進

社会全体で女性活躍の機運を醸成し、多様性を確保していくことは、男女ともに自らの個性と能力を最大限に発揮できる社会の実現のために不可欠です。また、イノベーションの創出と事業変革の促進を通じて企業の持続的な成長、ひいては日本経済の発展に資するものです。これらを踏まえ、女性の活躍をけん引するため、下記のような施策を講じます。


①プライム市場上場企業を対象とした女性役員比率に係る数値目標の設定等

我が国の女性役員比率について、プライム市場においても女性役員がいない企業が約2割に上る(図2)など、未だ低い水準にあります。


図2 女性役員がいない企業数・割合
図2  女性役員がいない企業数・割合
(出典)東洋経済新報社「役員四季報」及び日本取引所グループホームページより作成。調査時点は原則として各年7月31日現在。「役員」は、取締役、監査役及び執行役。


このため、令和5年中に、取引所の規則に以下の内容の規定を設けるための取組を進めます。

・2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める。

・2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す。 

・上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する。

あわせて、企業経営を担う女性リーダー研修の更なる充実、リスキリングによる能力向上支援、好事例の横展開など、女性の育成・登用を着実に進め、管理職、更には役員へという女性登用のパイプラインの構築に向けた取組の支援を行います。


②女性起業家の育成・支援

ロールモデルとなる女性起業家の創出・育成支援のため、政府機関と民間が集中支援を行うプログラム(J-Startup)において、女性起業家の割合を20%以上とすることを目指します(図3)。

あわせて、女性起業家のためのネットワークの充実、女性起業家による資金調達への支援等を行います。


図3 J-Startup選定企業における女性経営者の割合
図3 J-Startup選定企業における女性経営者の割合
(備考)J-Startup選定企業とは経済産業省が2018年6月に立ち上げた政府機関と民間の支援プログラムに基づき、大企業の新事業担当者等の外部有識者からの推薦により、外部審査委員会での厳正な審査により選ばれたスタートアップ企業のこと。J-Startup選定企業238社における、女性経営者の割合(2023年5月時点)。


Ⅱ 女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の強化

男女が家事・育児等を分担して、ともにライフイベントとキャリア形成を両立できる環境づくりに向けて、また、女性に多い非正規雇用労働者や経済的に厳しいひとり親世帯の現状等を踏まえ、女性の所得向上・経済的自立に向けた取組をあらゆる観点から進めるため、下記のような施策を講じます。また、仕事と健康の両立による女性の就業継続を支援します。


①平時や育児期を通じた多様で柔軟な働き方の推進

長時間労働慣行の是正、投資家の評価を利用した両立支援の取組の加速、多様な正社員制度の普及促進等に取り組みます。

「男性育休は当たり前」になる社会の実現に向けて、制度面と給付面の両面からの対応を抜本的に強化します。


②女性デジタル人材の育成などリスキリングの推進

デジタルスキル標準やITパスポート試験の活用促進、女性デジタル人材育成プランの実行等に取り組むなど、リスキリングのための環境を整備します。


③地域のニーズに応じた取組の推進

地域のニーズに応じた女性活躍を支える各地の男女共同参画センターの機能強化を図るとともに、独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)による各センターへのバックアップの強化等を図るため、同法人の主管の内閣府への移管や、同法人及び各地のセンターの機能強化を図るための所要の法案について、令和6年通常国会への提出を目指します。

Ⅲ 女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現

女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現するため、下記のような施策を講じるほか、ハラスメント対策や、政策決定過程のあらゆる段階における女性の参画を確保し、ジェンダーの視点を反映するための取組、平和・安全保障の分野における女性の参画に取り組みます。


①配偶者等からの暴力への対策の強化

配偶者暴力防止法改正法の円滑な施行(令和6年4月)に向けた環境整備等に取り組みます。

配偶者暴力防止法改正法の概要

1.保護命令制度の拡充・保護命令違反の厳罰化

・接近禁止命令等を申し立てることができる被害者の範囲の拡大

・接近禁止命令等の期間の伸長

・電話等禁止命令の対象行為の追加 等

2.基本方針・都道府県基本計画の記載事項の拡充

(1) 被害者の自立支援のための施策

(2) 国・地方公共団体・民間団体の連携・協力

3.協議会の法定化


②性犯罪・性暴力対策の強化

被害が潜在化・深刻化しやすいこどもを始め、多様な被害者がためらうことなく相談できるよう相談先等の周知を徹底します。

「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」や「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」に基づく施策を着実に実行します。


③困難な問題を抱える女性への支援

困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の円滑な施行(令和6年4月)に向けた支援体制の整備等を図ります。


④生涯にわたる健康への支援

「女性の健康」ナショナルセンターの創設、事業主健診の充実、フェムテックの利活用、生理休暇制度の普及促進、女性アスリートが抱える健康課題等に取り組みます。

むすびに

今回策定した女性版骨太の方針に基づき、関係府省一体となって取組を進めてまいります。より詳細な考え方や具体策については、以下のリンクから資料を御覧ください。


リンク

女性版骨太の方針2023
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/sokushin.html


配偶者暴力防止法改正法
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/pdf/r5_01.pdf


性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/pdf/kyouka_01.pdf


痴漢撲滅に向けた政策パッケージ
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/jakunengekkan/pdf/chikan_bokumetsu_gaiyo.pdf


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