「共同参画」2023年5月号

特集3

G7各国の男女共同参画の取組
-2023年G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当会合によせて-

内閣府男女共同参画局総務課

G7ロゴマーク

イタリア国旗 イタリアでの取組

駐日イタリア大使館特命全権大使
駐日イタリア大使館特命全権大使
ジャンルイジ・ベネデッティ

イタリアでの男女共同参画・女性活躍についての取組概要

今日、男女間のジェンダー平等ならびに女性と少女のエンパワーメントを促進させるためには、公的機関やビジネス界、そして市民社会全体に注意喚起を促すため、長期的なビジョンが必要です。共通目標は女性と少女に対する文化的ステレオタイプと社会的偏見をさらに強めるリスクのある女性差別をなくすことです。

イタリアは、他国や欧州連合と同様に、男女間のジェンダー平等に関する国家戦略を設けており、ワーク・ライフ・バランス、STEM教育、および女性リーダー育成支援に関する対策など機会均等や女性のエンパワーメントを支持するために国としての取組を行っています。

こうした枠組みの中で、子どもを産む女性を支援することは、男女が求めるニーズやそれぞれの特性に基づいて、男女間の平等を真の意味で強化する役割を担うことからも、国にとって主要な課題になるべきものです。イタリアでは、女性が子どもを産むことと出生率は、社会福祉と公衆衛生の持続可能性の問題、過疎地域や小規模市町村における人口減少、国内総生産の低下、若者の数の減少など、こうしたすべての要因に基づくということを勘案されなければなりません。

ジェンダーに基づく暴力を撤廃するために

2021年、女性に対する暴力撤廃に関する戦略計画2021-2023が採択されました。2022年5月5日の最新法第53号は一方で、女性に対するジェンダーに基づく暴力に関し、論理的で一貫性の保たれた情報発信の保証を目指しており、これにより適切な防止政策や対策が講じられ、効果的な監視が保証されることになりました。

ジェンダーに基づく暴力との闘いはイタリアにとって絶対的な最優先課題であり、男女機会均等を確保し、現代社会にはびこるステレオタイプを排除するにあたり最も大きな障害であると認識されています。

企業に求められる新たなるジェンダー平等の認証

イタリアにとってデジタルスキルに関する男女間の格差を埋めるということは、新たな雇用機会を得るための平等な条件を少女と女性に提供し、イノベーションと持続可能な開発プロセスへの彼女たちの積極的な参加を促すということを意味します。

ビジネス界においては、復興レジリエンス国家計画は、企業のジェンダー平等認証のための国家システムの定義となっています。子どもを産んだ女性の労働時間と育児時間を調整し、正当な報酬を保証するなど適切なサポートをすることでより透明性を高めることを目指しています。ジェンダー平等の認証は、生産業界だけでなく社会全体に利益をもたらす女性のエンパワーメントにより新しいエネルギーや知識が広がることで、新たなビジネス界やキャリアの機会、ならびに生産システムを創造するツールになりうるのです。近年の取組としては「子どもを産む女性のためのコーポレートガバナンス・コード」が提案されました。


フランス国旗 フランスでの取組

首相付 女男平等・多様性・機会均等担当大臣 イザベル・ローム
首相付 女男平等・多様性・機会均等担当大臣
イザベル・ローム

家父長制の逆襲

我々が進歩を既得成果と思い込んでいたとき、歴史が再び頭をもたげました。蒙昧主義の不穏な影が地平線を暗くし、大丈夫だと信じていた国々で、女子と女性の権利に悲惨な影響を及ぼしています。

人工妊娠中絶は今日、米国の大半の州で違法です。ウクライナはロシアによって国家主権を侵害され、人々は傷つき、女性は国外へ避難、あるいは戦争が起こるごとにそうだったように暴虐にさらされています。

フェミニスト外交の最初の礎石である「女性に対する暴力及び家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約」(通称「イスタンブール条約」)の署名式が行われたトルコは2年前、この条約から離脱しました。

このような状況を踏まえれば、20世紀後半以降に女性の権利が遂げた重要な前進は不可侵だと考えるのには無理があります。そこで政府としての課題が2つあります。

一つには既得権を可能な限り守らなければなりません。それゆえにエマニュエル・マクロン大統領は3月8日、我が国の最高法規である憲法に女性が人工妊娠中絶を選ぶ自由を明記するよう提案しました。同時に、女性と男性の間に根強く残る耐えがたい不平等をなくす努力を続ける必要もあります。

ジェンダーギャップが顕著な分野の一つとして、今日もなお、職業の領域があります。我々には女性に有利になるよう行動するための方策があります。

何よりもまず、賃金の平等です。首相の権限下で私が策定した「すべての女性及び男性平等」計画には、女性の労働条件の改善に向けた多くの措置が盛り込まれています。

女性の職業キャリアを阻害する要因は、時として家庭内の不平等が職業領域に反映された結果でもあります。フランスでは今から3年前、この格差を縮小するため、父親休暇期間が14日から28日に延長されました。

そして最も重要なのは、キャリアに関する「ジェンダーバイアス」を回避するため、女性があらゆる職域にアクセスできるようにすることです。

我々が全職域の男女混合化を促進するため、理系分野の研究を続ける女性1万人を支援するなど、数多くの措置を講じた理由もそこにあります。この伴走型支援は物的、財政的両面から、さらにメンタリングを通して実施されます。

我々の世界の将来像は、世界中の人々と共に手を携えて、性差のない言葉で描かれるべきです。我々G7メンバーがこの進歩的な前進の旗振り役でなければなりません。私は来る6月に栃木県日光市で開催されるG7男女共同参画・女性活躍担当大臣会合で、これらの極めて重要なテーマをめぐって活発な意見が交わされるものと確信しています。

我々には地球が蒙昧主義により、世界人口の52%を占める女性にとって無法地帯とならないようにする義務があります。私は皆さまの積極的関与に期待していますし、私も積極的に関与する決意を皆さまにお伝えします。


欧州旗 EUでの取組

駐日欧州連合(EU)特命全権大使 ジャン=エリック・パケ
駐日欧州連合(EU)特命全権大使
ジャン=エリック・パケ

EUでの男女共同参画・女性活躍についての取組概要

欧州連合(EU)とEU加盟国は、域内外でジェンダー平等と非差別の支援と促進に取り組んでいます。生き方を制限する窮屈な性別役割をなくすことで、すべての人が性自認に関係なく、誰も置き去りにしない社会の中で、それぞれの潜在的な能力や創造性を最大限に発揮できるようになります。

ジェンダー平等は、EUの中心的な価値の一つとして「欧州社会権の柱」の基本的権利かつ重要原則に設定されています。平等な待遇に関する堅固な法律や法制度、様々な政策分野でジェンダーの視点を主流化する取り組み、特定の不平等を是正する法などにより、ここ数十年でEUにおける男女平等は大きく進展し、その結果、男女平等に関する上位20カ国のうち14カ国がEU加盟国となっています。女性初の欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエンの下、EUは「平等の連合」を目指しています。

「EUジェンダー平等戦略」

2020年3月、欧州委員会は、2020~2025年の主な目標と施策を定めた非常に野心的な「EUジェンダー平等戦略」を発表しました。同戦略は次の3つの柱からなります。

⃝ジェンダーに基づく暴力の撲滅とジェンダーの固定観念への挑戦

⃝労働市場におけるジェンダー格差の解消(労働参加、賃金、ケアなど)

⃝意思決定や政治におけるジェンダーバランスの達成

同戦略の下で2022年に提案された重要な取り組みとしては、賃金の透明性を強化する対策や女性への暴力・家庭内暴力に関する対策があります。後者により、全EU加盟国で、最も悪質な形態の女性への暴力を犯罪と位置付けるための最低基準が整備され、被害者の保護・支援や司法へのアクセスが確保されるようになりました。

EUはまた、性的指向、性自認、性的特徴を理由とする非差別と平等の原則にも強くコミットしており、LGBTIQの人々の人権を積極的に促進し保護しています。2020年11月、欧州委員会はEU初となるLGBTIQの平等に関する戦略を採択しました。

EUジェンダー平等戦略についての記者会見を行うヘレナ・ダッリ平等担当欧州委員

© European Union, 2020
EUジェンダー平等戦略についての記者会見を行うヘレナ・ダッリ平等担当欧州委員(2020年3月)

対外関係におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメント

「国連持続可能な開発目標(SDGs)」の目標5であるジェンダー平等は、重要な課題であり機会でありますが、そのために使われた資金は17目標中下位3位に入ります。目標となっている「2030年までに完全な男女平等の実現」を達成できそうな国はひとつもないものの、状況は改善しています。とはいえ、根深い不平等が残り、コロナ禍による状況悪化も見られ、財政支援の必要性が一段と高まっています。EUの2020~2025年を対象とした「対外行動における男女平等と女性のエンパワーメントに関する行動計画」では、対外関係全体を通じたすべての新しい取り組みの85%を、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに貢献させることが求められています。

EUは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを促進するため、日本とも緊密に連携しており、駐日欧州連合代表部はWomen 7の支援に積極的に関与しています。EUは、G7 パートナーと協力してジェンダー平等など地球規模の課題に取り組む決意を表明し、G7 議長国である日本が、この問題を主要な議題に押し上げる推進力となるべく取り組んでいることを歓迎します。

W7日本2023キックオフイベントでディスカッションに参加するパケ駐日EU大使

写真:Yuichi Mori
W7日本2023キックオフイベントでディスカッションに参加するパケ駐日EU大使(2023年1月)

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