「共同参画」2023年5月号

巻頭言

女性の政治参画は民主主義の刷新のために

政治に女性が少ないことが広く知られ、これを変えていくべきだという社会意識が日に日に高まりつつあるのを感じます。きっかけのひとつは、2018年に成立した政治分野における男女共同参画を推進する法(候補者男女均等法)でした。2021年にはハラスメント防止を含む大幅改正が実現しています。この法律を基盤にして、社会のあらゆる現場―議会、行政、市民社会―にて、取り組みを加速化させる必要があります。

今年の統一地方選挙では女性の候補者・当選者はさらに増え、都市部では女性割合が3割を超える市区議会は珍しくありません。2割を超える都道府県議会も増え、参議院は世界平均の26%と同水準です。問題は、女性がゼロかひとりしかいない「ゼロワン議会」が地方議会の約4割を占めること、そして衆議院に女性が1割も満たないことです。

こうして日本国内の相違を見つめると、日本全体で女性の政治参画が停滞しているわけではなく、地域格差が大きいこと、そして選挙制度の違いが大きな影響を及ぼしていることがわかります。候補者男女均等法の下で、数値目標を掲げる政党が増え、またハラスメント対策を講じる政党や地方議会も増えてきました。市民社会においても、女性候補者を支援する仕組みが広がりを見せています。これらはどれも重要な取り組みですが、さらに男女同数に近づけていくには、より抜本的な制度改革が不可欠であることを意味しています。

地方議会ではなり手不足の問題が深刻です。無投票も多く、投票率は国政よりも低い状況です。住民の関心が決定的に低いのです。つまり、政治を変えることで暮らしがよくなるとか、より良い未来を実現することができるという実感を持つ人が、極めて少ないのです。民主主義が足下から崩れていこうとしていることに、私たちはもっと危機感を持たなくてはなりません。

つまり、女性議員を増やすことは、民主主義を刷新するという大きなプロジェクトのなかに位置づける必要があるのです。女性に限らず、若者、非正規雇用、障がい者、性的少数者など、社会の多様性を議会に反映させること、そしてなり手不足解消や投票率上昇を目指して、さまざまな住民参加の機会を作っていくことが有効でしょう。

何をすべきかに関して様々なアイディアで出ています。それらを参考に、具体的な行動を起こす人が増えることを願っています。

編集部注:数値は原稿提出時点のもの

上智大学法学部教授 三浦まり
上智大学法学部教授
三浦 まり

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